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夏の湿度  作者: ちゅうに。
7/11

第7話

俺が盗み見ている限りでは、今の所進藤に何か被害が及ぶとかいうことはなさそうだ。

2人はややぎこちなく言葉を交わし、その度にギクシャクと笑ったりもする。

なんだよー、知り合いかよー。

だったら立ち聞きするのも悪いし俺も準備室に帰るか…と思ったところへ、突然向こうの2人の話し声がクリアに聞こえた。


「進藤好きだ、キスさせてくれ!」


それはなんというか話し声というかもう叫びだった。あそこまででかい声出されると流石に俺のところにまで何を話しているのか聞こえる。

俺はとっさに身を隠し、思わず覗き見てしまう。


俺が見た光景は、キスを迫る大男をグーで殴り倒す進藤の姿だった。

殴られて吹っ飛んだ相手も何が起こったのかわかっていないようで、ぽかーんと呆けた顔をしている。


進藤は、はあ、と力無いため息をつくと、座り込んだ相手に目線を合わせて力強く一言叫んだ。


「無理!」


ああなんということだろう、俺は進藤の甘い可愛い面しか見ていなかった、と同時に自分が進藤の唯一の相手なのだと、身が震えるほど実感した。率直に言えば、嬉しい。

だって進藤がこんなに好き嫌いはっきりしてるなんて初めて知ったし。

またちらっと見てみるとどうやら意気消沈した相手に何か話しかけているようで、こっちから見たらどっちが悪そうな奴なのかわかりゃしない。

ここからこっそり逃げ出そう、と全力でこっそり移動した。校舎に入ってからはダッシュした。

年甲斐もなく胸がドキドキした。愛されてるって素晴らしい。

何も手につかないことはわかっていたので、俺は準備室に戻ると元気に「お先に失礼しまーす!」と叫び、カバンを持って帰宅した。


急いで家に帰って、クーラー入れて冷たいシャワーを浴びて出てきたらやっと一息つけた。

あんな場面に出くわして嬉しいと感じる俺もどうかしている。相当残念なおっさんだ。

だけど、今まで心のどこかで、進藤の相手は俺じゃなくてもいいんじゃないかと思っていた気持ちはどこかへ吹っ飛んだ。

ごめんな進藤、疑ってて。

おっさんになるとさ、臆病になってまず疑うことから始めちゃうんだよね。誰でもいいんじゃないか、とか、自分じゃなくてもいい理由から探しちゃう。そんなの進藤からして見たらなんだそりゃ、ってなるよなあ…。

とりあえず今までの態度を心で謝りながら、今日も進藤に会うんだ、とぼんやりと思っていた、そして俺は気がついた。

進藤が俺と会いたくないときはどうすんの?

6時過ぎて進藤がこないときは?俺は待ってればいいの?それともそれがこないっていう合図なの?


乙女のように思い悩む姿は他人から見れば滑稽だと思うが俺本人に関していうならばもう凄い大問題で。なぜか今日は進藤がこないんじゃないかとそっからはそればかり考えてた。

結果としてそれは杞憂に終わるんだけどね。


「先生、どうかした……?」


6時ちょうどにインターフォンを鳴らす几帳面さで、進藤は今日もきちんとうちにきた。

俺はと言えばそれからそわそわしっぱなしで、腹減ってない?とか、宿題進んでる?とかどうでもいいことを聞いては沈黙する始末。そして進藤に不審がられている。こうなったら全部お話しようじゃないか。


「実は話したいことが2点あります。」


改めて話すとなるといいづれぇな!

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