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夏の湿度  作者: ちゅうに。
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第11話

座り直して進藤と向き合い、改めてぎゅっと抱きしめた。進藤の手が俺の背中に触れる。誰かに抱かれるってこんなに気持ちよかったっけ。

ポンポンと進藤の背中を叩きながら、俺は凄いリラックスしていた。

人の体温ってこんなに安心するんだなあ……。

いや、俺だって抱き合ったことくらいありますよ、だけどさ、こんなに考えながら抱き合ったことなんてないもん。

進藤を安心させたい。

そう思って抱きしめてると、進藤の体温とか、心音とかが伝わってきて俺もホッとしてしまう。

「先生ってさ」

進藤がポツリと呟くようにいう。

「ん?」

「先生って時々すごくかわいいよね。」

言われて俺は進藤を引き剥がして真顔で尋ねてしまった。

「え、どこが?!」

進藤はちょっと笑って、そのまま黙ってしまう。

え、すごく気になるんですけど……。なんなのその笑み。

かっこいいとは言われたいけど可愛いとは言われたくないお年頃だよ?

俺がムーっと納得いかない顔をしていると、不意に進藤が膝立ちになり、俺の額にちゅ、とキスをした。

「ありがとう、あそこから連れ出してくれて。抱きしめてくれて。」

「…………。」

チューされた。ただのデコチューに俺は何を戸惑っているのやら。

「今日からしばらくうちに泊まれ。お袋さんとは俺が話してみるから。」

「先生にそんな迷惑かけられないよ。」

進藤が困った顔をして言う。俺も負けずに言い返す。

「お前がそんな顔してる方がこまる。」

進藤はちょっと不満そうに唸っていたけれど、やがて息を吐き出すように言った。

「母さんのこと責めないで。それだけお願いします。」

殴られてるのに、なんで母親を庇うのか、それは俺にはよくわからないけど、冷静に話をするつもりではあるから頷いた。進藤はホッとしたような顔をして俺に寄りかかってくる。

「誰かのうちに泊まるのなんか久しぶり。俺、急いでたから本当にほとんど何も持ってきてない。」

「あるものは俺の使えばいいし。ないなら買ってこよう。」

安心させるように進藤の腕をポンポンと叩く。

少しでもうちで安心して眠れるように。そう願いながら。

それから俺たちはピザを食って風呂に入り、寝る支度を始めた。

さて問題です、俺は進藤をどこへ寝かせればいいのでしょう。

ダブルベッドではあるけども、隣で寝ろよ……とか言うのはどうなの。

布団も一式揃ってるけど俺だけベッドっていうのもどうなの。

もうわからないから進藤に聞くことにした。

「一緒に寝るのと、布団で寝るのどっちがいい?あ、一緒にって変な意味じゃないからな。」

余計なこと言わなきゃよかった、進藤はしばらくきょとんとした後に笑い出した。

「俺まだ先生を襲う気は無いよ、大丈夫。」

え……?おれ襲われる側なの?

「いやいや、俺襲われるの?俺が進藤を襲う側でしょ?どちらかというと。」

「んー、ぶっちゃけそこらへんはどっちでもいいんだ、先生とくっつけるなら。」

俺の大きめのパジャマを着てニコニコしている進藤は本当に可愛い。左頬が痛々しいけど。

「くっつくって、その、性的な意味じゃ無いよ?一緒に寝る?」

一応念を押して尋ねると、進藤は嬉しそうに頷く。

「うん、くっついていい?性的な意味じゃなければ。」

2人で顔を見合わせて笑い、一緒のベッドに入った。成長期の子と、もともと身長高めの俺だとダブルベッドも狭く感じる。だけど、クーラーで冷やした部屋に人の熱があるのは良いものだ。


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