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さんぽ

作者: かにみそしるこ

今日はいい日になるといいな。そんなことを想いながらツカサは目を覚ました。

編入したての学校に行こうと起き、制服を着ようと思ったのだが制服がない。


あぁそうだ。

昨日汚したんだ。


もしかしたら下に替えが用意されてるかも。

そう思い下の階に降りても部屋には特に変わった様子もない。

ただ一つ一緒に越してきた父がいないことに気づく。

今日何かあったかなぁ。早く出るとか聞いてないしなぁ。

電話して聞いてみるか。

しかし電話をしようと受話器を持ち上げ父の携帯に電話を掛けるが聞こえるのは接続音のプルルルルルという無機質な音が続くだけだった。

もう出ていっちゃったのかなぁ。

そう思い時計を見ると時刻は5時ちょっと前。


まぁいいか。


転校してそんな時間もたってないからここら辺の散策でもしようかな。

定刻までまだ時間あると思うし。

そう考えツカサは適当な服へと着替えると財布と最低限の持ち物をもって外へと歩き出した。



ドアを開けると外の明かりが中へと流れ込む。5時頃とは思えないほどの明るさに少し目を細めるツカサ。

うーん。少し熱いなぁ。もうちょっと薄着に着替えてこようかな。

しかし少しでも時間が惜しいと思ったツカサはそのままの服で出かけることにした。

家を出るとポストのところに大きなクモの巣が張ってあった。ツカサは苦い顔をしながらそそくさと歩を進める。すこし歩くと近くの家からも歩いて来る人がいた。優しそうな小太りの中年男性だった。

この人も最近来たのかな。そう思い声をかけてみることにした。どうせ歩くなら少しでも人と一緒のほうが楽しいだろうし。



おはようございます。


あぁおはよう。君、若いのに感心しないねぇ。


おじさんも似たようなものでしょ。ここへはいつ頃?


昨日着いたんだ。勤めは今日からなんだがこっちでもデスマーチそうだから身が持つかどうか。


私もつい最近来たんです。慣れるまでは大変でしょうけどお互い頑張りましょうね!


そうだね。



会話をしているとなんとなく気が紛れて楽しい。そう思ったツカサは男性とともにゆっくりと川沿いの道を歩いてゆく。道を歩いているとたくさんの綺麗な花が咲いているのに気づいたり大きな牛を見たり新たな発見の連続だった。時々ほかの人に会ったりもしたがみんな忙しそうだったので話す事は出来なかった。


おじさんとの会話も初めは盛り上がったが私の自慢話に愛想をつかしたのか途中から無言になってしまう。それからおじさんは時折時計を見てはため息をついているばかりで面白くなかったのでおじさんとは別れることにした。


散歩を始めてからかなりの時間が経ったようだ。

そろそろ“学校”が始まる。

また荒れるんだろうなぁ。

先生は鬼怖いし周りのみんなとも打ち解けられそうにない。

はぁこれからずっと一人なのかなぁ。

そう思いながら無意識のうちに学校を避けるように歩いていたツカサは学校へと方向転換をする。











今日はいい日になるといいな。



※解説

場面設定は地獄という事になっています。


5時ちょっと前→4時59分で地獄

登場人物のセリフに「」がない→閻魔に舌を抜かれているため

川沿いの綺麗な花→三途の川沿いの彼岸花

大きな牛→牛鬼

忙しそうな人々→地獄で拷問を受けている人々

鬼怖い先生→鬼


と地獄であることを示唆していたつもりです。


最後のツカサの「今日はいい日になるといいな。」は

"学校"に行く途中のツカサではなく、次の日の朝のツカサのモノローグです。

ツカサ君は学校のあまりの苛酷さに毎日記憶がリセットされているんですね。

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