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異変 Ⅳ

【『闘神インカーネーション』イグナート・クロイク】




「へっ、まだまだ修練が足りねえぜ」


 大地の(ティエリア)神殿の正門近く。敵部隊を全滅させたイグナートは、こともなげに呟いた。


「これが『闘神インカーネーション』……伝説は本当だったのですね」


「大したことじゃねえよ。あの頃は他に強え奴がいなかっただけだ。……それより、お前もよく頑張ったな。元冒険者だけあって、動きがよかった」


 共に戦った大地神官を褒めると、彼は面映ゆい様子で口を開いた。


「フェルナンド神殿長に憧れて神殿を飛び出しただけですが……まさか、こんなところで役に立つとは思いませんでした」


「連携は重要だからな。ま、俺だってフェルナンドたちとパーティーを組むまで分かってなかったんだ。偉そうに言う資格はねえけどよ」


 旧友の名前に思わず目を細める。彼は、今も自分の神殿で胃痛を堪えているのだろう。その様子を想像するとなんだかおかしかった。


「しかし……後から後から敵が湧いてきますね。帝国の中心部までこっそり忍び込んだにしては、あまりにも規模が大きい気がします」


「そう――だなっ」


 イグナートは相槌とともに剣を振った。生み出された衝撃波は近くの建物に襲い掛かり、近付こうとしていた斥候を吹き飛ばす。他に気配がないことからすると、単独行動だったのかもしれない。


「これだけの規模の軍勢だ。まっとうに進軍してきたってことはねえだろうよ」


「ならば、一体どうやって……」


 考えに沈む神官を見ながら、イグナートは周囲の気配を探る。この一帯の敵はあらかた片付けたのか、攻め寄せてくる気配は感じられない。

 だが、帝都全体からすればこの一帯だけが例外なのだろう。少し高い建物に上れば、帝都の惨状は嫌でも分かる。


 ――そろそろ行くか。


 なりゆきで大地神殿を防衛していたイグナートだが、この神殿に立てこもるつもりはない。家族であるミレウスとユーゼフの動向も気になるし、闘技場がどうなっているかも気掛かりだ。


 こうなってみれば、妻と娘が遠い地へ引っ越してしまったことは幸いだ。戦闘力で不安が残るのはミレウスだが、傍にはダグラスもいる。滅多な事態にはならないだろう。


「……悪いな、そろそろ行くぜ。達者でな」


「え? は、はい! 今までありがとうございました!」


 突然別れを告げられた神官は、戸惑いつつも深々と頭を下げる。彼にヒラヒラと手を振ると、イグナートは散歩に出るかのような軽い足取りで第二十八闘技場へ向かった。




 ◆◆◆




 空から急降下してきた巨虫をすれ違いざまに両断し、自分目がけて撃ち込まれた矢を剣で弾き返す。矢も魔法も関係ない。イグナートの技量があれば、遠距離攻撃に怯む必要はまったくなかった。


 矢をかわし、雷撃を弾く。足元の大地が隆起してイグナートの足首を捕えようとするが、その速度についていけず不発に終わる。敵部隊との距離を詰めることは簡単だった。


 敵前衛まで五メテルに迫ったイグナートに向かって、壁かと錯覚させるような大規模な炎が放たれる。だが、剣の一振りで炎の壁に穴を開けると、彼はその隙間から敵へ接近した。


「――いよっと」


 十数名からなる集団に単身で挑んだにもかかわらず、イグナートは平然としていた。気負うことなく剣を操れば、一振りする毎に敵の数が減っていく。


 イグナートとまともに剣を合わせることができたのは一人だけだったし、その男も二合しかもたなかった。そして、そんな彼らの後衛がイグナートに太刀打ちできるはずはない。


「……これで全部か」


 あっさり部隊を全滅させると、イグナートは周囲の気配を探った。建物の中で息を潜めている人間は多いようだが、敵らしき気配はない。それを確認すると、イグナートは闘技場へ向かって再び歩き出す。その道すがら、彼は今の状況を整理していた。


 帝都が大部隊に急襲された。すでに街には大きな被害が出ている。にもかかわらず、帝国の騎士団は大して動いていない。

 その理由について、イグナートには心当たりがあった。冒険者時代に得た知識の中には、国家機密に属するものがいくつか存在するからだ。皇帝や最高顧問にカマをかけてみたこともあるが、彼らも否定はしなかった。おそらく間違いないだろう。


 となれば、戦力を温存する必要性は理解できる。だが、このままでは帝都が壊滅的な被害を受ける可能性もあった。


 今のところ、イグナートが苦戦するような相手はいない。だが、それでも数は力だ。個の力がすべてを決するわけではない。彼がすべての敵を倒すよりも早く、帝都は崩壊するだろう。


 それに、個としての限界もある。


「いくら俺でも、体力が無尽蔵に湧いてくるわけじゃねえからな」


 手元を見つめる。常人に比べれば、今も規格外の体力を備えている自信はある。だが、無限に湧き続ける敵を屠れるわけではない。


「さすがに、現在進行形で敵の数が増えているとは思いたくねえが――」


 物思いの最中、イグナートはさっと跳び退いた。今までいた場所に太い光線が突き刺さり、石畳が融解する。


「新しい相手か。……これで何試合目だろうな」


 飛び退いたイグナートは体勢を整えた。見れば、六人からなる部隊が散開している。彼らの視線はイグナートに注がれており、明らかな戦闘の意思が見て取れた。


「おっ? 今までの奴らとは違うな」


 かなり鍛えられているのだろう。人数こそ少ないが、いい動きをする部隊だ。前衛に斬りかかったところ、ギリギリではあるが、イグナートが振るった剣に対応して得物を打ち合わせてくる。


「へえ、悪かねえな」


 イグナートは楽しそうに笑う。今までの敵やモンスターは、その大半が剣の一振りで片付いていた。敵としてはありがたいが、対戦相手としては不満だらけだ。


 打ち合わせた剣を支点にして右回りに跳び、左方から突き出された槍を避ける。二人目の前衛の得物だ。イグナートは目の前に立つ剣士を掌底で怯ませると、その隙をついて袈裟懸けに斬りつけた。


「っ!?」


 剣士が倒れ、驚きに目を見開いた槍使いは、それでも槍を鋭く繰り出す。その槍を首を捻ってかわすと、イグナートは伸びきった槍使いの胴を薙いだ。一拍遅れて鮮血が噴き出し、槍使いが崩れ落ちる。


「悪くはねえが……それなりだな」


 個々の技量で言えば、剣闘士五十傑には届かないだろう。今のやり取りから、イグナートはそう判断した。と――。


「おっと」


 イグナートがその場を飛び退くと、先ほどまで立っていた場所に巨大な火柱が上がる。さらに、火柱は膨れ上がるとイグナート目がけて爆発を起こした。


「……魔法の腕はなかなかだな」


 イグナートは評価を改めた。今の火柱を生み出した術者は、一流と言っても差し支えないレベルだろう。イグナートだからこそ避けることもできたが、普通の戦士であれば火柱の爆発にまで対処できないはずだ。


「避けた!?」


「馬鹿な……あの至近距離からの爆発だぞ」


 爆発から無事逃れたイグナートを見て、敵部隊が口々に驚きを示す。それすらも時間稼ぎだったのか、次々に降り注ぐ魔法を、イグナートは片っ端から回避してのけた。


 迸る雷を横っ飛びに回避し、頭上に現れた氷塊を粉砕する。周囲を囲むように現れた渦巻を破壊し、再び襲い来た光線を剣で弾く。多種多様な魔法が降り注ぐ中、イグナートは剣一本でそれらを捌き続けていた。


「さて、今度はこっちから行くか」


 イグナートは降り注ぐ石礫を衝撃波で吹き飛ばす。彼目がけて放たれた無数の石弾は反転し、衝撃波とともに敵部隊に襲い掛かった。


「うぉっ!?」


 予想外の反撃に驚きの声が上がる。彼らが衝撃波や石礫に耐えているうちに、イグナートは間合いを詰めた。そして、面倒な後衛の魔術師から潰そうと狙いを定める。と――。


「フェオル導師! この男は異常です! ここで殺しておくべき敵です!」


「後はお願いします! ……我らの悲願のために!」 


 彼らから上がった声に、イグナートは顔をしかめた。言葉の内容にではない。その声色が狂信者のそれに近かったからだ。


「諸君らの思いは受け取った。……頼むぞ」


 後衛の魔術師が重々しく頷く。やはりリーダー格はこの男らしい。そして、厄介な魔術師にしてリーダーでもある男を狙わない道理はない。イグナートは目の前の戦士にフェイントを入れて斬り捨てると、そのまま彼の横を駆け抜ける。


 ……つもりだった。


「おっ?」


 意表を突かれたイグナートは思わず声を上げた。致命傷を受けたはずの戦士が、武器を放り出してイグナートの腰に飛びついたのだ。驚いたイグナートだが、その程度で動揺することはない。しがみつく血塗れの戦士を力尽くで振り払おうとする。


「うおおおおっ!」


 その隙を狙ったのだろう、残りの二人が突貫してくる。イグナートはしがみついている戦士の身体を空いている左手で掴み、勢いよく振り回した。


「がっ!?」


 その身体が直撃し、一人がよろめく。同時に右手の剣が閃き、迫り来るもう一人の男を貫いた。


「……ん?」


 突き刺した剣を抜こうとしたイグナートは、思わぬ手応えに声を上げた。剣が抜けないのだ。見れば、刺し貫かれた男は刺さった剣を抱きかかえて固まっている。最初からその覚悟だったのだろう。その目からは決死の覚悟が窺えた。


 無理やり引き抜くか、それとも相手の剣を奪って使うか。立ち上がったもう一人の戦士を視界に入れながら、イグナートは最善手を探る。


 と、イグナートの首筋をゾクリと嫌な予感が走った。


殲滅光域エクスターミネーション


「っ!?」


 イグナートですら息を呑む規模の魔力が迸り、凄まじい光量と化した。その直後、周囲一帯が大爆発を起こす。周囲の建造物は一瞬で吹き飛び、爆心地には巨大なクレーターが出来上がっていた。


 もはや、そこに数十件の建物があった痕跡などない。徹底的な破壊だった。


「――諸君らの犠牲は無駄にはせぬ。たしかに、あの男は団長に届き得た。諸君らを犠牲にしてでも葬っておくべき敵であった」


 爆心地に立った魔術師は、重々しい声で宣言する。そして踵を返して……驚愕に目を見開いた。


「おいおい、勝手に殺してんじゃねえよ。……まさか、生きてる仲間ごと広域魔法で殺りにくるとは思ってなかったがな」


「なぜ……生きている」


 魔術師の呻くような言葉に、イグナートは肩をすくめた。


「ま、普通の魔法じゃ俺に当てることは難しいからな。範囲魔法を選択した判断は正しいと思うぜ」


「馬鹿な……」


 そして一閃。地に倒れた魔術師から血液が流れだし、クレーターの中心部を赤く染める。彼が絶命していることを確認すると、イグナートはぼそりと呟いた。


「たしかに危ないところだったぜ。久しぶりにアレを使っちまったからな」


 そして、脇腹に手を当てる。


「けどまあ、一瞬の解放くらいなら大丈夫みてえだな。できれば使いたくねえが……」


 誰も聞く者がいないクレーターで、イグナートは渋い表情を浮かべていた。




 ◆◆◆




「……しっかし、本当にどこもかしこもやられてるな」


 むせかえるような血臭と、その発生源である多数の骸たち。その中を歩いていたイグナートは、思わず口を開いた。


 襲撃者たちは、非戦闘員であろうと容赦なく殺害している。その行動は軍事行動としては効率が悪いように思えた。この国の防衛戦力である騎士団は健在なはずであり、彼らと戦う前に兵力や体力を消耗する理由がよく分からない。


「……お? 盛大にやった奴がいるな」


 しばらく歩いていると、帝都の中央近くで眩い光が弾けた。方向からすると天神の(マーキス)神殿だろうか。かなり強力な神聖魔法を使ったのだろう、神聖魔法特有の気配がうっすら漂っていた。


 この街のマーキス神殿は意外と防衛に向いた造りをしていて、神官の層も厚い。神官の戦闘力はそう高くないはずだが、警備兵や護衛の数は他の神殿よりはるかに多い。そうそう陥落することはないだろう。


 遭遇した敵部隊を次々と全滅させながら、イグナートは闘技場へ向かっていく。もう一刻は経っただろうか。生きている住民の姿があまりないのは、どこに避難しているのか。


 そんなことを考えた時だった。イグナートの耳に戦いの喧騒が届く。喧騒の発生源は前方。このまま進めば、近いうちに接敵するだろう。

 どうせ戦うのなら、生存者が多いに越したことはない。そう判断すると、イグナートは足に力を込める。だが――。


 突如として轟音が響き渡り、前方に無数の雷が降り注いだ。その規模の大きさに、イグナートは感嘆の声をもらす。


「こりゃ凄えな。……問題は、敵か味方か、ってことか」


 かなりの使い手であることは間違いない。もし敵であれば、敗けることはないにせよ、圧勝することはできないだろう。


「敵だとすりゃ、不意打ちで片づけるのがベストだな」


 今までの気軽な足取りが嘘のように、イグナートは慎重な足取りで進む。そして近くの建物の陰から様子を窺った。


「……あの姉ちゃんたちか?」


 赤と青。それが第一印象だった。背格好からすると女性だろう。他にも複数の人間がいたが、存在感を発しているのはその二人だった。


 彼女たち目がけて放たれた矢や魔法は、赤髪の魔術師が展開した障壁に弾かれる。同時に地面を這う雷が放たれ、彼女たちの前に立っていた部隊がまとめて崩れ落ちた。


「多重詠唱か……器用な魔術師だな」


 イグナートはしばらく戦いを観察して、双方の技量を確認する。おそらく先程の大規模魔法も彼女によるものだろう。警戒していた魔術師が敵でないことが分かったため、イグナートは気配の隠蔽を緩めた。


「お?」


 と、その途端にもう一人の女性が動いた。彼女は水色の髪をたなびかせて、まっすぐイグナートの下へ向かってくる。その拳が氷に覆われていることに気付いたイグナートは、反射的に剣を構えた。


 氷で覆われた拳とイグナートの剣が打ち合わされ、ガキン、と硬質な音が響く。


「へえ……結構な硬度じゃねえか」


 イグナートは思わず感想をもらした。敵ではないと分かっていたため、本気で打ち合わせたわけではないが、それでも通常の氷魔法であれば砕けていてもおかしくない。それに、彼女は見た目にそぐわずかなりの腕力を秘めているようだった。


「……いや、見た目通りか」


 イグナートは感想を訂正する。相手の頭に角が生えていたからだ。竜人にしては角が短いから、半竜人と言ったところだろう。それなら、彼女の腕力の強さにも納得がいった。


「敵……違う?」


 一切戦う気を見せないイグナートを目にして、半竜人は目を瞬かせた。それを幸いとイグナートは剣を引く。


「おう、驚かせて悪かったな。突然気配が現れたから警戒したんだろ?」


 その言葉にこくりと頷き、彼女は腕に纏わせていた氷魔法を解除した。そして、興味深そうにイグナートを眺める。


「……強い」


「あ? 俺のことか?」


 再び頷く。どうやら無口な性質のようで、あまり会話が進まない。どうしたものかと考えていると、別の声が聞こえてきた。


「どうしたの?」


 声の主を振り向けば、そこには赤髪の魔術師が立っていた。戦い慣れしているのか、他の魔術師たちより余裕があるように見える。


「俺は敵じゃねえって、そう伝えてたとこだ」


「ええ、分かっているわ。あなた、有名な人なんでしょう? 向こうの同僚に聞いたわ」


「昔の話だ。……ところで、姉ちゃんたちは何者だ?」


 半竜人の女性より話が早そうだと、イグナートは赤髪の魔術師に話しかける。


「何者もなにも、魔術ギルドの構成員よ」


 彼女は守っていた建物を指し示した。周囲が破壊され、すっかり様変わりしていたため気付かなかったが、そこにはたしかに魔術師ギルドの建物があった。


「あー、なるほどな。そりゃ戦力が揃ってるわけだ」


 会話をしながら、イグナートは空に向かって剣を振った。放たれた真空波は、建物の陰から現れた飛行モンスターを四体まとめて斬り裂く。


「……速い」


 少し遅れて迎撃態勢を取った半竜人は、感心したように呟いた。


「あのサイズのモンスターをあっさり……あなたこそ何者なの?」


 次いで、魔術師も驚きに目を見開く。


「姉ちゃんが聞いた通り、ちょいと有名だった人間だ」


「その技量なら、たしかに有名にもなるでしょうけれど……」


 驚きが冷めない様子の彼女は、やがて身を乗り出した。


「ねえ、あなたも一緒に戦ってくれない? 見てのとおり、ここにいるのは魔術師ばかりで、前衛がさっぱりいないのよ」


 その言葉には納得がいった。隣の半竜人は例外のようだが、魔術師ギルドの構成員ならそんなものだろう。しかし……。


「全員魔術師なんだろ? 街の外に逃げることくらいできるんじゃねえか?」


 短期的には魔力を消費するだろうが、いつ終わるともしれない防衛線をするよりはマシではないだろうか。


「ギルドへ逃げ込んできた民間人も多くて、そうもいかないのよ。この辺りには、他に逃げ込める施設もないし」


「あー……」


 近辺の地図を思い描いて、イグナートは同意の声を上げた。


「本当は認識阻害の結界でも展開したいところだけど、そうすると今度は民間人が逃げ込んでこれなくなるから」


「なるほどな……」


 危険な選択だが、イグナートとしては好感を覚えた。彼女たちを手伝いたい気持ちもあるが、イグナートは首を横に振る。


「けど、悪いな。家族の様子を見に行かなきゃならねえ」


「危険よ? と言いたいところだけれど……あなたなら大丈夫かしら」


 肩をすくめた後で、彼女は真剣な表情を浮かべた。


「それでも気を付けてね。……たまに精鋭部隊が混ざっているようだから」


「精鋭?」


「ええ。まだ二グループしか遭遇していないけれど、前衛も後衛も、明らかに能力が抜きん出ていたわ。特に魔術師のレベルはかなりのものよ」


「そう言や、ちょいと厄介な奴がいたな……」


 イグナートは渋い表情を浮かべる。さっき戦った魔術師はたしかに強かった。剣闘士五十傑の中でも、上位の剣闘士でなければ勝利は難しいだろう。もしあのレベルがうようよしているのであれば、かなり危険だ。


「その様子だと、もう遭遇しているみたいね」


「ああ、たしかに強かった。……けどまあ、奴らが集団で登場しない限りは大丈夫だろ」


 それに、集団で現れてくれるなら、覚悟を決めて一気に殲滅することもできる。そう結論付けると、イグナートは闘技場の方角へ目を向けた。


「ま、なんとかなるだろ。……姉ちゃんたちも死ぬなよ」


「ええ、お互いにね」


 小さく笑って頷き合う。そして、イグナートは再び歩き出した。


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