移転 Ⅴ
「まさか、ミレウス殿にご承諾頂けるとは思いませんでした」
「そろそろ、行動を起こそうと思いまして……とは言っても、どちらにお譲りするかについては――」
「ええ、心得ておりますとも。我々の誠意につきましては、金額でお示しすることにしましょう。他のどの商会よりも、あの土地を高く評価していることがお分かり頂けることでしょう」
とある一室で、俺たちは商売用の笑顔を向け合う。腹の探り合いの合間に飛び交う金額は、今までの人生で見たことがない桁数になっていた。
「そう仰って頂けると、こちらとしても助かります。私たちにとっては思い入れの強い場所ですからね。あまり安く見積もられると、土地の売却そのものに反対する者も出かねません」
……そう。現在の第二十八闘技場の敷地を売り払うべく、俺は商会と秘密裏に交渉をしているのだった。
第二十八闘技場は帝都の中心近くにあり、かなりの好立地だ。そのため、土地を売ってほしいと申し出たことのある組織は一つや二つではなかった。
いつかは闘技場を移転しなければならないと考えていた俺は、話を持ち掛けてきた商会等を逐一記録に残していたのだが、それが役に立った格好だ。
そして、いくつかの組織に的を絞った俺は、他にも交渉相手がいることをちらつかせながら、個別に価格交渉をしていた。
「それにしても、第二十八闘技場が移転するとは、知れば皆驚くことでしょうな」
話が一段落すると、相手は屈託のない笑顔を浮かべた。雑談のような雰囲気を醸し出しているが、その実質が情報収集であることは間違いない。
「そうでしょうね。……まだ計画段階ではありますが」
「おお、もちろんこのお話を外部へ漏らしたりはしませんとも。商人は信用が命ですからな。移転先はどちらかお決まりで?」
その問いかけに、俺は悩ましげな表情を浮かべて答える。
「それが、いくつか候補があって迷っているところです。当然ながら、どこも一長一短ですからね」
「ほうほう、たとえばどちらですかな? ……ああ、もちろん探りを入れるつもりではありません。区域によっては、私どもがお役に立てるかもしれないと、そう思った次第です」
「お心遣いありがとうございます。……ここだけの話ですが、有力な候補地は二十一街区と二十九街区、それに三十三街区ですね」
「なるほど、お目が高くていらっしゃる。あの辺りなら地価も高騰していませんし、将来性にも期待できますな。
今ほどの利便性はないでしょうが、もともと第二十八闘技場は独自性の強い剣闘試合を提供しています。固定客も多いでしょうし、客数が減ることはありますまい」
「恐縮です」
澄ました顔で答えるが、もちろんそれは大嘘だ。いろんな組織に移転予定エリアを伝えているが、それは昔の俺が移転を検討していたエリアでしかない。俺の中では、移転先は三十七街区で固まっていた。
だが、それを正直に答えるわけにはいかない。目の前の商人が裏切るとは思っていないが、情報が漏れれば地価をつり上げる人間も出るだろうし、あの事件の記憶がまだ鮮明な今は、時期ではないとも考えていた。
それに、もう場所の選定が済んでいるとなれば、早急に資金が入用だろうと足下を見られる可能性もあるからな。できるだけ高値をつけてもらうためにも、ここは黙っておこう。
「よろしければ、その地区で懇意にしている工務店や、建材の卸売商をご紹介しましょうか?」
「ありがとうございます。移転先によっては、またお願いさせて頂くかもしれません」
曖昧に頷く。二十九街区は三十七街区と近いし、本当に依頼するかもしれないが、それはこの商会に土地を売った場合の話だ。今は記憶に留めておくだけにしておこう。
そんなことを考えながら、俺は笑顔の仮面を被り続けた。
◆◆◆
闘技場には、貴賓席をはじめとしていくつか個室がある。
身分の高い人間が使用することはもちろん、特別感を出したい時や、公にできない逢瀬などに利用されることも多く、個室は常に満席と言っていい状態だ。
そんな個室の一つで、俺は三十七街区を束ねる顔役、セイナーグさんと面会していた。
「お呼び立てしてしまって、本当に申し訳ありません」
「なに、一番自然な接触方法ですからな。お気になさらず」
俺たちは剣闘試合を観ることなく、向かい合って座っていた。
俺とセイナーグさんが何度も会っていることがバレると、移転先が三十七街区であるということに勘付かれる可能性もある。
そのため、念には念を入れて、闘技場という俺のフィールドでこっそり話をすることにしたのだった。
「それで、用地の取得はどんな感じでしょうか?」
早速とばかりに尋ねる。俺が表立って動けないこともあり、三十七街区の用地取得交渉はセイナーグさんが一手に引き受けてくれていた。
「概ね順調ですな。下落前の地価を提示したことがよかったようです」
「土地に愛着があって手放したくないという方はいませんでしたか?」
「今のところはおりませんな。三十七街区は、いわゆるスラム街を潰して作られた区域ということもあって、先祖伝来の土地建物といった類は存在しません。
もちろん、それでも愛着はあるでしょうが、あの事件の後では……」
セイナーグさんは苦い表情を浮かべた。三十七街区の発展に寄与してきた人間として、やるせない気持ちが強いのだろう。
「だからこそ、まとまった金銭はありがたいでしょうな。ところで、資金のほうは順調ですかな? ……ああ、もちろん答えたくなければ答えて頂かなくて結構です」
「現在の土地の売却益は、予想通りの額になりそうです」
彼の問いかけに、俺は正直に答える。俺とセイナーグさんはある意味で一蓮托生だ。ごまかすつもりはなかった。
「なるほど。悪いニュースではありませんが、いいニュースでもありませんな」
「そうですね」
素直に頷く。新しい闘技場の土地代は、現在の闘技場の土地を売って工面する。それは当初からの計画だったし、地価を考慮すれば実現は可能だ。
ただ、闘技場の移転に伴う支出はそれだけではない。細かいことを挙げるとキリがないが、中でも闘技場の建設費用は莫大だ。人件費と材料費だけで凄まじい金額になることは明らかだった。
もし、土地の売却益で土地代と建設費用が工面できれば完璧だったのだが、さすがにそう甘くはなかった。
「とは言え、ある程度は売却益から回せますし、無理に資金を引っ張る必要はないかと」
「それならよいのですが……」
セイナーグさんは気遣わしげに呟く。土地の売却益を回せるとは言え、穴埋めしなければならない金額はかなりの額に上る。
少なくとも、一般人が全財産をはたいた程度で穴埋めできる規模ではなかった。
「商工ギルドや戦神ディスタの神殿は融資をしてくれそうですし、他にもいくつか資金の当てはあります」
「そうですか、それを聞いて安心しました」
セイナーグさんはほっとした様子で表情を緩めた。場合によっては、マルガ商会として融資せざるを得ないと、そう考えていたのだろう。
だが、彼の本音からすると、巨人事件からの復興にすべての力をつぎ込みたいはずだった。
ちなみに、俺が『極光の騎士』として得た財産も、すべてここで使い切る予定だ。さすがは剣闘士ランキング一位だけあって、蓄積されたファイトマネーはかなりの金額になっていた。
今でこそ三か月に一度しか出場しないものの、当初はランキング一位になるまで戦い続けたこともあるからな。その頃のファイトマネーも合わせると、『極光の騎士』の財産はとても一般人とは思えない金額に膨れ上がっており、闘技場の移転費用に大きく貢献してくれる予定だった。
「それと、一つ気になる動きがあります。……私たちの他にも、三十七街区の土地を取得しようとしている者がいるようですな」
その話は頷けるものだった。あんな騒ぎがあった後だ。早く土地を売って引っ越してしまいたい住民を標的にして、土地を買い叩こうとする人間は必ず存在するはずだ。
だが、セイナーグさんがわざわざ話題に出すということは、それだけではないのだろう。
「どうしてもその場所を借り受けたいと、何度も持ち主の下を訪れている人間がいるそうです。事件前の価格で構わないから、どうしても貸してほしいと。さらに問題なのは、その場所が建設予定地と重複していることですな」
「へえ……ちなみにどの部分ですか?」
俺は身を乗り出した。すると、セイナーグさんは説明用の地図を机に広げてくれる。それぞれの土地の取得状況が記載されており、視覚的に分かりやすい作りになっていた。
「ここです」
彼が指差した場所を見て、俺は思わず顔をしかめた。位置的には建設予定地の端にあたるため、この土地を取得できなかったとしても、大きな問題はない。どこか別の方角を広めに取得すればいいだけだ。
だが、問題が一つある。セイナーグさんが指し示している場所には、かつてペイルウッドが根城にしていた建物があったのだ。
となれば、考えられる可能性は二つ。帝国が事件究明のためにあの廃墟を確保しようとしているか、ペイルウッドの背後にいた組織が動き出したか、だ。
とは言え、後者であれば、ペイルウッドの根城ではなく、古代遺跡に繋がる倉庫を入手しそうなものだが……。ただ、あの時のペイルウッドの言動からすると、詳しいことを知らない可能性もあるか。
「もしかすると、帝国筋の人間かもしれませんね。あの事件の黒幕だった男の根城を確保したいのかもしれません」
だが、俺は前者の懸念だけを口にした。後者をセイナーグさんに伝えるわけにはいかないからな。
「ああ、そうかもしれませんな。街の平和のために、というようなことを口にしていたそうですから」
俺はしばらく考え込んだ。帝国関係者であれば、土地を取得されても問題はない。肝心の地下施設はこちらで確保しているし、あの爆発なら重要書類が見つかるようなこともないだろう。
むしろ、土地を奪い合って目を付けられるほうが厄介だと言える。
問題は後者だ。もしペイルウッドの背後組織が動いていた場合、危険人物がすぐそばに潜むことになるし、リスクは高い。
……いや、それとも気が済むまであの土地を調べさせて、諦めてもらうほうが確実だろうか。それに、場合によってはこちらから探りを入れることもできるしな。
しばらく悩んだ後、俺は方向性を決めた。
「分かりました。難航するようなら、その土地は諦めましょう。その分、どこか別の箇所を広めに取得したいところです」
「……なるほど、分かりました。次に交通網の整備ですが――」
セイナーグさんとの打ち合わせ事項は山のようにあった。それらを一つずつ検討し、方向性を決める。そんな作業が終わるころには、剣闘試合も最後の部となっていた。
見れば、『紅の歌姫』が放つ複数の光弾を、『金城鉄壁』が巨大な魔法盾で受け止めているところだった。
もし結界が強化されたら、あの光弾はもっと派手になるんだろうか。そんなことを考えながら、俺は二人の戦いを眺めていた。
◆◆◆
【『金城鉄壁』/副支配人 ダグラス・フォード】
――突く。薙ぐ。叩きつける。
まるで嵐のように振るわれる斧槍を魔法盾で受け止め、時には剣で受け流す。
息をもつかせぬ猛攻を凌ぎながら、ダグラスは相手の隙を窺っていた。
モンドール・ザン・ルエイン。現皇帝の四男であり、その戦闘力については非常に評価が高かった。
とは言え、相手は皇族だ。噂には実力以上の尾ひれが付いているのだろう。そう考えていたダグラスは、自分の予想が外れていたことを知った。
「……いい腕だ」
仕切り直すように後ろへ跳んだモンドールに対して、ダグラスは素直な称賛を送った。
少し短めの斧槍を自分の手足のように使いこなし、様々な角度から攻撃を仕掛けてくる。
その動きは非常に実戦的なものであり、彼が稽古だけで修練を積んだわけではないことを物語っていた。
「ありがとよ。……と言いたいところだが、どうにも複雑な気分だな。まさか、こんなに層が厚いとは思わなかった。これが帝都五十傑か」
モンドールは苦笑交じりに答える。
彼が剣闘士としてデビューしたのは、つい一月ほど前のことだ。皇族の剣闘士登録は今まで前例がなく、業界全体が驚いたものだが、登録先が第二十八闘技場だと知って納得した人間は多かった。
『極光の騎士』や魔術師を試合に出場させた支配人であれば、あり得ない話ではない。それが世間の反応だったし、ダグラス自身も同じ気持ちだ。
初試合では、無名ながらも有望な若手剣闘士をあっさり倒し、次戦では中堅クラスの魔術師を下している。その後も快進撃は続き、今に至るまで負けなしの状態だ。
二十八闘技場の上位ランカーであり、帝都五十傑にも名を連ねるダグラスが、デビュー一月の剣闘士の相手をするのは異例だが、この実力なら納得もいった。
それに、色々措置は講じているようだが、相手が皇族であることに変わりはない。
それをプレッシャーに感じる剣闘士は少なくないだろう。
――ダグラスさんなら、いつも通り戦ってくれますから。
ミレウスに言われた言葉を思い出す。長年、剣闘士として生きてきたダグラスにとって、相手の出自は二の次だ。剣闘士として試合の間に上がった以上、相手が誰であれ遠慮はしない。
その信念をミレウスが理解し、信じてくれていることは素直に嬉しかった。
ミレウスのことだ。帝都五十傑でもある自分との戦いを見て、外の闘技場で通用するかを早く見極めたいという思惑もあるのだろうが、それはそれで構わない。
「『帝国の獅子』の本気を見せてもらおう」
ダグラスは腰を落とした。『金城鉄壁』の名が示す通り、防御について定評のある彼だが、それだけで帝都五十傑に残れるほどこの世界は甘くない。
「――っ!?」
これまでとは比較にならない速さで、ダグラスは相手との距離を詰めた。これまでの速度に慣れていたモンドールは、その動きに対応しきれない。
ダグラスが繰り出した横薙ぎの一撃は、モンドールの脇腹を捉えようとして……そして、いつの間にか構えられていた斧槍に阻まれた。
いくら短めに作られているとは言え、斧槍を即座にそこまで持ってきた彼の反応は素晴らしいものだった。だが――。
「がっ!?」
次の瞬間、ダグラスはモンドールを吹き飛ばしていた。連撃として繰り出した盾打撃が直撃したのだ。
『おおっとぉぉぉぉっ! ダグラス選手の魔法盾による一撃が入ったあああああっ! さすがは熟練の剣闘士、デビュー以来初めてモンドール選手が膝をついたあああっ!』
実況者の声を聞き流して、ダグラスは相手の様子を窺う。完全な不意打ちだったはずだが、すでにモンドールは立ち上がるところだった。
顔の右側は打撲で腫れ上がっているが、致命的なダメージを受けたようには見えない。上手く盾打撃の威力を殺したのだろう。
「なるほどな……盾も武器だってことか」
「刺がなくても、盾は凶器たり得るからな」
「身をもって知ったぜ。……へへ」
「……なぜ笑う?」
ダグラスは不意に笑い出したモンドールを訝しむ。だが、それはすぐ理解へ変わった。剣闘士の中には、同じような反応をする者が多いからだ。
「あんたみたいに強い奴が、少なくとも五十人はいるんだろ? そう考えたら楽しくなってきた」
彼の言葉はダグラスも理解できるものだった。身近なところで言えば、イグナートやユーゼフも同類だ。それだけに、ダグラスは彼に好感を抱いた。
『今の言葉を聞いたかあああっ! モンドール選手は諦めていない! 帝都五十傑の壁の厚さを目の前にして、不敵に笑っているぞおおお!
我々は今、眠れる獅子が覚醒した瞬間を目にしたのかもしれないっ!』
「――これこれ、この実況がまたいいんだよな。歓声も実況も、面白いくらい気持ちがいい」
モンドールは大きく深呼吸すると、斧槍を再び構えた。その瞳は煌煌と燃えており、先程のダメージを感じていないかのようだった。
「来い」
短く、それだけを伝える。ダグラスの言葉が響いた瞬間、モンドールが彼に向かって突進した。
「うおおおおおっ!」
右側面を狙ってきた斧槍を剣で受け流すと、次の瞬間には頭上に斧刃が降ってくる。それを盾で受け止めたダグラスは、小さく後ろへステップを踏んだ。その直後、彼の足首があった場所を槍の穂先が抉っていく。
「ちっ!」
後ろへ下がったダグラスを追撃するべく、モンドールは無数の突きを繰り出した。一撃一撃が重く、通常の盾なら貫かれていてもおかしくない。そんな攻撃だった。
だが、『金城鉄壁』の名を支える魔法盾は、彼の攻撃にも耐え続ける。やがて、体力の無駄だと判断したのか、今度はモンドールが大きく跳び退いた。
逆に追撃をかけようとしたダグラスだったが、相手の構えに警戒心が呼び起こされ、とっさに追撃を断念する。
その刹那、モンドールの斧槍が赤い輝きを放った。
「くらえぇぇぇっ!」
「ぬっ!」
ドン、という衝撃とともに、斧槍から伸びた赤い光がダグラスを襲う。とっさに構えた魔法盾に巨大な光の槍が突き立ち、眩い光が闘技場を埋めた。
「なかなかの威力だ……!」
魔法盾を支えるダグラスは、自らも盾の魔力を解放し、光の奔流から身を守る。そして、少しずつ盾の角度を変えていくと、圧力を加え続けている赤光がだんだん盾の上を滑り始める。
そして、完全に光の槍を弾いた瞬間、ダグラスはモンドールの喉に剣を突き付けていた。さすがに不意をつかれたのだろう、彼は驚きに目を見張っていた。
「……マジかよ」
「いい戦いだった。……これなら、外の闘技場でも問題ないだろう」
くるりと背を向けると、ダグラスは落ちていた盾を拾った。まだ光槍の熱が残っており、表面からはかなりの熱量が感じられる。
「まさか、あの場面で盾を捨てるとは思わなかったぜ……その盾、あんたの代名詞なんだろ?」
「だからこそ、不意打ちには有効だと思わないかね?」
「違いないな!」
モンドールは賑やかに笑う。その目は今も悔しそうだが、敗北を受け入れて笑うだけの度量があるのだろう。
この男は強くなる。どれほどの観客が気付いていたか分からないが、モンドールはまだ剣闘試合に慣れていない。
彼が闘技場での戦いに慣れてしまえば、自分を越えていくのも時間の問題だろう。ユーゼフほどの逸材となるかは分からないが、先が楽しみな人物だった。
「……イグナート、お前の闘技場はまだまだ面白くなるぞ」
新たな剣闘士を目にして、ダグラスは懐かしむように呟く。イグナートに誘われ、移籍を決めた時には、この闘技場はまだ完成もしていなかった。
それが、今もこうして人々に支持される闘技場となり、注目を集めている。
自分が現役剣闘士と副支配人を兼任する立場になるとは思っていなかったが、だからこそ見えるようになったこともある。
闘技場の運営は、剣闘試合とは異なる部分が多く、叩き上げの剣闘士であるダグラスには異質に思えることも多い。
それでもこれまでやってこれたのは、剣闘士と経営者の両方について理解のある、ミレウスという特異な存在によるところが大きかった。
『勝者! ダグラス・フォードォォォ! さすがは帝都五十傑、新進気鋭の若き獅子に闘技場の厳しさを見せつけたぁぁぁぁっ!』
独り身のダグラスにとって、この闘技場は子供のようなものだ。そして、それはミレウスやヴィンフリーデ、ユーゼフについても同様だ。
彼らとともに、イグナートが作ったこの闘技場を守っていこう。盾を掲げて歓声に応えながら、彼は決意を新たにした。