深層 Ⅵ
数十名の衛兵を率いて現れたのは、意外なことに見知った人物だった。
「『極光の騎士』、まさかこんなところで会うとはな。……私はヴェルギウス・マイル・ウィラン。ウィラン男爵家の当主であり、この衛兵たちの長でもある」
ウィラン男爵はこんな役職に就いていたのか。微妙な立ち位置だな。さすがに衛兵たちの直接の上司ということはないだろうが……。
それでも、他の衛兵たちが無数の巨人の遺骸に怯むなか、堂々と立っているところはさすが貴族と言うべきか。
「……それで、どうした」
彼の顔を見ると、地下施設で死んだメイナードを思い出すが、彼の亡骸も転移してきたのだろうか。巨人の遺骸がこぞって転移してきているのだから、その可能性も高いはずだ。
そう思うと、目の前の男爵が不憫になってくる。
「どうしたもこうしたもない。光壁は現れる、巨人の目撃情報はある、街中は惨状。いったい何がどうなっている?
偉そうな魔術師の爺さんと交渉して、ようやく光壁の穴をくぐったかと思えば、今度は光壁は消えるし、爆発音は聞こえてくるしで、訳が分からん」
「ほう……」
その言葉に俺は感心した。ということは、あの『魔導災厄』とちゃんと意思疎通できたのか。意外と見どころがあるな。
俺がそんな失礼なことを考えているとはつゆ知らず、ウィラン男爵は真剣な顔で俺を見る。
「集めた情報では、『極光の騎士』がまず光壁を突破したと聞いた。どういう状況であったか聞かせてもらいたい」
「ふむ……」
男爵の要望は俺の目的と合致していた。正体の隠蔽という観点からすると、彼らの前で長話をしたくはないが、ここは踏ん張りどころだろう。
俺が一歩踏み出すと、衛兵たちがざわついた。
「うぉっ、『極光の騎士』だ……」
「この辺りに散乱してる巨人の死体は、全部『極光の騎士』がやったのか……?」
たとえ衛兵であろうと、この都市の住民である以上、剣闘試合と無縁ということはない。そのため、彼らの視線は俺をはじめ、ユーゼフや『剣嵐』に注がれていた。
「……長話は得意ではない。手短に説明するぞ」
その言葉にウィラン男爵は渋い表情を浮かべたが、やがて思い直したのだろう。特に文句を言うことなく頷いた。
「光壁を突破して三十七街区に侵入したところ、全長五メテルほどの巨人が暴れており、住民や建物に大きな被害が出ていた。数は二十体ほどだ。
これらの巨人を排除し、生き残っていた住民を保護した」
「生き残りがいるのか!?」
驚いた様子でウィラン男爵は声を上げた。街の惨状を見て、住民の生存は絶望的だと思っていたのだろう。
「事件発生時、偶然三十七街区内にいた『天神の巫女』の尽力によって、数百人は生き残っている」
「おお、そうか! 生き残りはどこにいる? 薬や食料は必要か?」
「集会場に避難している。あの建物だ」
そう言って指差すと、男爵は指し示された建物を見つめた。
「薬も食料も、あれば喜ぶだろう。自分の家が破壊された者も多いはずだからな」
「む、それはそうか……。それで、その後はどうした? 光壁を展開していた術者は見つかったのか?」
男爵は素直に頷くと、話の続きを促す。
俺は軽く息を吸い込むと、できるだけ平静を装って口を開いた。
「術者は自爆した」
「なんだと……まさか、さっきの爆発音か」
男爵の表情が再び渋くなる。彼の立場としては首謀者を捕らえたいことだろう。だが、その対象が死んでいてはどうにもならない。
「術者との戦闘は激しいものだった。この辺りに転がっている巨人の死体は、どれも奴が新たに召喚したものだ。
だが、手傷を負い、劣勢を悟った術者は、俺たちの降伏勧告にも聞く耳を持たず、アジトと見られる建物ごと自爆した」
目の前にある黒焦げの廃墟を指差すと、男爵は気圧されたように頷いた。ありがたいことに、彼は俺の説明を信じているようだった。
もちろん、そこには『極光の騎士』の名声による後押しもあるのだろう。二年前に帝都を救った英雄が、今になって帝都に災いをもたらす可能性は低い。
ユーゼフは、俺の説明が事実と食い違っていることに気付いているだろうが、長い付き合いだ。何かあればこっちに合わせてくれるだろう。
「なるほどな……しかし、どうやって術者の居場所を知ったのだ?」
「神託だ。神託で奴が潜む場所を知った」
「……神託?」
答えを聞いて、男爵は怪訝な表情を浮かべた。だが、やがて何かを納得したように頷くと、顔をこっちに寄せてくる。
「それはお前の正体と関わってくるのではないか?」
その声は非常に小さく、俺にだけ聞こえるギリギリの音量だった。
「俺の正体……?」
少し考え込んでから、ふと思い当たる。そう言えば、ウィラン男爵は『極光の騎士』が天神の聖騎士ではないかと疑っていたな。
そうではないようだと、支配人から答えておいたのだが、まだ疑っていたのか。
「支配人から聞いている。俺は天神の聖騎士ではない。……疑うなら、好きに喧伝するがいい。ただし、天神教を怒らせても俺は知らん」
そう伝えると、男爵は少し怯んだ。
「ぬ……だが、神託が下りるなど、高位の神官か聖騎士でなければあり得ないはず」
「それは『天神の巫女』によるものだ。彼女が同行してくれたのでな」
俺がシンシアを手で差し示すと、ウィラン男爵はようやく彼女の存在に気付いたようだった。
「たしかに見覚えのある顔だ。……なるほど、『天神の巫女』であれば神託が下りて当然か」
彼は納得したように呟く。
「しかし……あれほどの光壁だ。たった一人の人間に展開できる代物だとは思えんが……」
「魔法陣や触媒を大量に用意していたようだが、あの爆発でアジトごと吹き飛んだからな」
「むう……それでは、証しだてるものがないぞ」
「そうだな」
あっさり答えると、ウィラン男爵は拗ねたように口を尖らせた。
「お前たちは気楽でいいな。私は陛下になんと報告すればよいのだ……」
「皇帝に直接報告するのか?」
俺は思わず尋ねた。もしそうなら、ウィラン男爵家の警戒レベルをだいぶ引き上げる必要があるが……。
「そうではないが、突き詰めていけば陛下のお耳に入る話だ。いい加減なことは言えん」
そういうことか。俺はほっとしつつ、目の前の男爵に少し同情した。貴族は貴族で大変だな。
そう考えていると、ウィラン男爵は面倒なことを言い出す。
「やはり、お前を証人として喚問する必要があるな。後日、使いを出すから……」
「断る」
「そうか――何っ!?」
男爵が目をむくが、そこは譲れない。そんなことで貴重な鎧の使用回数を消費するわけにはいかなかった。
「俺は暇ではないし、いつもこの街にいるわけでもない」
それに、と俺は後ろの衛兵たちを差し示す。
「彼らも俺の話を聞いていたはずだ。……そうだろう?」
「は、はい!」
「聞きました!」
問いかけられて、衛兵たちが昂揚した様子で返事をする。
名声を悪用するようで気が引けるが、彼らは戦いと縁が深い職業だ。最強の戦士とされている『極光の騎士』に話しかけられれば、反応しないはずはなかった。
「おい、お前たち……!」
彼らの反応に、ウィラン男爵は苦虫を噛み潰したような顔になる。
さて、いい加減話を切り上げるべきだろう。正直、この姿で話をしすぎた。低い声を出しすぎて喉が痛いし、気を抜くと素の性格も出てきそうだ。
「……俺の話をこれだけの人間が聞いていたのだ。彼らはこの国を守る誇りある衛兵だ。これ以上の証人は必要あるまい」
そう言われて、男爵の後ろにいる衛兵たちが嬉しそうな表情を浮かべる。そんな中、ウィラン男爵は一人悩んでいたが、やがて妙案を思いついた、とでもいうように顔を上げた。
「そう言えば、『天神の巫女』は最初からこの街区にいたのだな? そして、『極光の騎士』に同行していたと。ならば、一部始終はそちらに聞けばいいな」
「……はい」
シンシアは静かに頷く。もっと動揺するかと思っていたが、事前に口裏を合わせることを頼んでいたからか、その表情に戸惑いはない。
「ならば、証人として話を聞かせてもらおう」
「――待て。彼女は半日にわたって、この巨人どもの攻撃から住民を守り続けていた。その疲労は誰よりも重い」
そこへ口を挟む。ウィラン男爵が迷惑そうな顔をしたが、シンシアのためにもここは押し通す。
「『天神の巫女』は俺がマーキス神殿まで送り届ける。聞き取りをしたければ、改めてマーキス神殿に申し入れるのだな」
「マーキス神殿か……」
男爵は少し憂鬱そうに呟く。貴族にとって、宗教組織は権力が通じにくい難敵だ。まして、相手が大陸一の信徒数を誇るマーキス神殿ともなれば、そう無茶はできない。
それに、あの神殿長なら、シンシアに過度の負担をかけることはないだろう。半日ほど前に話したガロウド神殿長のことを思い出して、俺はそう結論付けた。
「彼女は立っているのも辛いはずだ。……それではな」
言って、俺は男爵に背を向ける。後は、宣言通りシンシアを神殿に送り届けて、闘技場に帰るだけだ。
俺の動きに合わせて、シンシアが傍に寄ってくる。
「――待て」
「……なんだ」
俺は努めて落ち着いた様子で振り返った。説明にどこか矛盾があっただろうか。だが、男爵の指摘は予想外のものだった。
「……ちなみに、そのでかい雛はなんだ?」
その視線の先にあるものは、もちろん地下施設で拾った薄緑の雛だ。
「ピィ!」
自分が話題になっていることを悟ったのか、雛はシンシアの胸元でぱたぱたと羽を動かしてみせる。……飛べないため、ただのデモンストレーションにしかならないが。
そして、その様子に衛兵たちが和んでいた。完全武装でその顔はどうなんだ。違和感が物凄いことになってるぞ。
「……彼女のペットだ」
「……そうか、ペットか」
見れば、ウィラン男爵の顔も心なしか緩んでいる。……ひょっとして、こういうの好きなんだろうか。いや、別にいいんだけどさ。
それ以上追及してこないことを確認すると、俺はもう一度彼に背を向けた。
本来なら、こうもあっさり引くことはないのだろうが、『極光の騎士』の名声と、マーキス神殿の威光は絶大な効果を発揮してくれたようだった。
「……シンシア、どうする。一度集会場へ寄るか?」
「あ、はい……! もしよければ、セイナーグさんたちにご挨拶してから――」
そんな会話を交わしながら、俺たちはその場を離れたのだった。
◆◆◆
【支配人 ミレウス・ノア】
「お帰りなさい、ミレウス。だいぶ遅かったけれど、マーキス神殿で何かあったの? 人をやったら、もう帰ったはずだって言われて心配したわ」
巨人たちを倒して、光壁を消し去った後。シンシアをマーキス神殿へ送り届けた俺は、魔導鎧を脱いで支配人室へ戻っていた。
「なんというか……色々あって遅くなった」
「色々って?」
「まあ……主に光壁の観察だな」
『極光の騎士』の正体を知らない彼女に詳細を語るわけにも行かず、俺は適当にごまかした。
少し決まりが悪かったため、ヴィンフリーデから眼を逸らす。すると、彼女は小さく溜息をついた。
「……つまり、野次馬になっていたのね。ユーゼフに変な心配をさせちゃったわ」
「後で謝っておくよ。……光壁の内部で、巨人の群れが街を襲ってたんだ」
その言葉を聞いて、ヴィンフリーデの動きが固まる。
「それって、本当のことだったの? 噂は聞こえてきたけど……さすがに話半分だと思っていたわ」
「――いや、ミレウスの言う通りだよ。三十七街区はかなりの惨劇だったね」
そんな声とともに部屋へ入ってきたのは、『極光の騎士』としてさっきまで顔を合わせていたユーゼフだった。
彼は意味ありげな視線を俺に向けると、部屋の扉を目で示す。つられてそちらへ目をやると、ちょうどレティシャが姿を見せたところだった。
「シンシアちゃんと『極光の騎士』がいなければ、住民は全滅していたはずよ」
「レティシャも来たのか」
「あら、ひどい言いようね。ミレウスが三十七街区のことを気にしていると思って、家にも寄らずここまで来たのに」
レティシャは口を尖らせる。どこまで本気なのか分からないが、素直に謝っておいたほうがいいだろう。
「……悪かった」
もし俺が『極光の騎士』じゃなければ、たしかに三十七街区の情報を欲しがったはずだ。
闘技場の運営にも多少は影響するし、街の治安という意味ではそれ以上に直接的な影響があるからな。
「それで、三十七街区はどんな感じだったんだ?」
水を向けると、ユーゼフとレティシャは事の経緯を説明してくれた。ユーゼフの説明がレティシャより簡潔なのは、俺があの場にいたことを認識しているからだろう。
だが、俺があの場を去った後の話は別だ。
「――結局、ウィラン男爵は変な難癖をつけることもなく引き上げたよ」
「そうなのか?」
「僕らにも話を聞いてきたけど、今回の主役は『極光の騎士』と『天神の巫女』だからね。あまり満足していないようだった。ただ――」
「……ただ?」
尋ね返すと、ユーゼフは複雑な表情で言葉を追加した。
「巨人に混じって、一般人の遺体が見つかってね。……それが、ウィラン男爵の従者だったんだ」
「……以前にユーゼフが叩きのめした奴か」
今思い出した、という体を装って口を開く。そう言えば、メイナードの件はユーゼフに話せていなかったな。
「うん、あの男だよ。そのことに気付いたウィラン男爵はかなりショックを受けたみたいで、その後すぐに撤収したんだ」
「たまたま三十七街区を訪れていたのかしら……あの男爵の従者とは言え、さすがに気の毒ね」
ヴィンフリーデは同情するように呟く。だが、その一方でユーゼフは物言いたげな視線を俺に向けていた。……後でちゃんと説明しておかないとな。
ユーゼフたちが事件の顛末を語り終えると、妙な沈黙が訪れた。その中で、俺は今後のことに思いを巡らせていた。
今後は、帝国が俺を通じて『極光の騎士』に事の顛末を確認しようとする可能性も高いが、上手くあしらっておく必要があるな。
マーキス神殿という巨大なバックがあるため、男爵もシンシアには手を出しにくいだろうし、こっちに来る可能性は高いはずだ。
そして何より重要なことは、あの光壁は死んだペイルウッドが大掛かりな魔法儀式を経て展開した魔法だったという見解の維持だ。
帰り道でシンシアとも打ち合わせをしたが、ここが一番重要だった。
「――それにしても、『極光の騎士』は意外と紳士的なのね」
「……ん?」
考え事に没頭していた俺は、ヴィンフリーデの言葉に首を傾げた。
「聞き取りをしようとする男爵の言葉を却下して、疲れているシンシアちゃんを神殿までエスコートしたんでしょう? もっと不愛想な性格だと思っていたわ」
「私もそう思ったわ。あの騎士様、意外と人間味があるのね」
ヴィンフリーデの言葉を聞いてレティシャが強く同意する。彼女たちが意気投合するのを、俺は不思議な気分で眺めていた。
「いったいどんなイメージを持ってたんだ……」
「……冷たい人、かしら?」
「コミュニケーションの下手な人、ね」
二人が口々に答えるのを聞いて、俺は少し落ち込んだ。……意識的に演じてる部分もあるし、別にいいんだけどさ。それでもちょっと落ち込むな。
ユーゼフが同情するような、それでいて笑いを堪えているような目で俺を見ているが、助け舟を出す気はないようだった。
そんな確認をしている間にも、ヴィンフリーデが口を開く。
「このままだと、シンシアちゃんを『極光の騎士』に取られちゃいそうね。……ミレウス、ちゃんと引き止めるのよ?」
「どうしてそうなる……」
「だって、ずっと二人で事件の解決に当たっていて、最後には神殿までエスコートしたんでしょう? 『極光の騎士』は天神の聖騎士なんて噂もあるくらいだし、聖騎士と巫女でお似合いの二人じゃない」
「――ごほっ」
ヴィンフリーデの話を聞いて、変な声でむせたのはユーゼフだ。咳の勢いでごまかしているが、あれは完全に笑っているな。
「ユーゼフ、大丈夫?」
恋人の問いかけに無言で頷くと、ユーゼフは大きく深呼吸をした。その澄ました顔がなんだか憎たらしい。
「それはないと思うが……もしそうだとしても、シンシアは闘技場の務めを放り出すような子じゃないだろう」
答えると、ヴィンフリーデは残念、とでも言いそうな表情を浮かべた。
「そっちじゃなくて……もう、ミレウスはからかい甲斐がないわね」
「あら、ミレウスには私がいるんだから、何も困ることはないわ。ね、ミレウス?」
レティシャが入ってきて、会話がさらにややこしくなる。そんなやり取りを目にして、再びユーゼフがむせていた。
「――じゃあ、私はそろそろお暇するわね。魔術ギルドに報告書を出さないと」
そうして、賑やかさが落ち着いたところで、レティシャはそう切り出した。そう言えば、彼女は光壁の調査を依頼されていたんだったな。
「どんな魔法陣と触媒を使ったのか興味があったけど……あれだけ木端微塵になると、解析のしようがないわね」
残念そうな表情を浮かべながら、レティシャは支配人室を後にする。その姿に少し罪悪感を覚えるが、割り切るしかないだろう。
そして、支配人室には昔からの三人だけが残される。
「……誰もいないな」
俺はレティシャを見送りがてら、廊下に人がいないかを確認した。そして、慎重な手つきで扉を閉めると、鍵をかける。
「ミレウス、どうしたの?」
「……内密の話かい?」
彼らの問いかけには答えず、俺は真面目な顔でソファーに腰を下ろす。同じソファーに座る二人と向かい合う形だ。
――二人はこの提案をどう捉えるだろうか。
ヴィンフリーデもユーゼフも、俺との付き合いは非常に長いし、親密だという自負もある。だが、それと同時に、親父に対して特別な思い入れがある二人でもある。
感情的な反発は必ずあるだろうが、それを説得することができるのか。
そんな思いを胸に、俺は口を開く。
「ずっと課題だった、客席や設備の防御結界について当てができた。地価もそう高くないから、かなり広い施設を作ることができる。
……だけど、最大の課題は従業員のみんなだ。下手をすれば、親父を慕って残ってくれた人たちを失いかねない」
そう告げたものの、つい具体的な言葉を避けてしまったせいだろう、二人には言葉の意味がピンときていないようだった。
その言葉を機に、俺たちの間に沈黙が下りた。だが、やがて思い当たったようで、ヴィンフリーデが口を開く。
「ミレウス、それって――」
彼女の言葉に頷くと、俺は今度こそはっきりと宣言した。
「――この闘技場を引き払って、新しい闘技場を建設する」