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深層 Ⅳ

「片付いたか……」


 巨人の亡骸に埋め尽くされた空間で、俺はゆっくり息を吐いた。


 先程の雷霆一閃ライトニング・デモリッションで炭化したものも多く、血生臭さはやや薄れたものの、惨状であることに変わりはなかった。


「……」


 あまりこういった光景に縁がなかったのだろう。シンシアは胸元に薄緑の雛をぎゅっと抱き締めたまま、無言でその様子を見ていた。


「……シンシア、大丈夫か」


 呼びかけてみるが、反応はない。


「シンシア?」


「……は、はい、大丈夫です! 『極光の騎士(ノーザンライト)』さんこそお怪我はありませんでしたか……?」


「問題ない。俺は奥へ向かうが、付いてこられるか?」


 異形の巨人種とはいえ、人型生物の遺骸が折り重なるように散乱しているのだ。彼女が同行をためらったとしても、それを責めるつもりは微塵もなかった。


 シンシアは少し沈黙した後、決意したようにこちらを見つめる。


「はい! 光壁を消す手掛かりがあるかもしれませんから……」


 シンシアが言う通りだった。黒幕らしきペイルウッドは倒したが、それは本来の目的ではない。


 叶うことなら、奴を生け捕りにして情報を聞き出したかったのだが、あの状況下でそこまでの余裕はなかったからな。


 俺たちは慎重に惨劇の中へ踏み込む。まだ息のある個体がいないか注意を払いつつ、まずはペイルウッドが立っていた地点へと向かう。


「あれか……」


 周囲を隈無く探すと、やがて通常の人間サイズの腕が目に入ってきた。その上に覆い被さっている巨人の遺骸をどけていくと、やがてペイルウッドの姿が現れる。


 どう見ても無事とは言えない有様だが、雷霆一閃ライトニング・デモリッションの直撃は免れたようだった。巨人をターゲットにしていたため、射線が上向いていたことが幸いしたのだろう。


「まだ息があるのか……?」


 彼の様子を見ていた俺は、その瞼がかすかに震えたことに気付く。


「治癒魔法を――」


 言いかけて、シンシアは口をつぐんだ。そして窺うように俺を見る。思わず治療しようとしたが、ペイルウッドが敵だということを思い出したのだろう。

 その視線を受けて、俺は静かに頷く。


「奴から光壁のことを聞き出す必要がある。死なない程度に頼めるか?」


 そう伝えると、シンシアはほっとしたようにペイルウッドの傍らにひざまずいた。そして、治癒魔法を行使する。


 ペイルウッドが淡い色の光輝に包まれ、その傷が癒されていく。もちろん完全回復させるわけにはいかないが、シンシアもそこは分かっているようで、致命傷の色合いこそ薄くなったものの、ペイルウッドの容体は重傷と言って差し支えないものだった。


「――ペイルウッド。覚醒しているなら、素直に目を開いてはどうだ?」


 目を開かないペイルウッドに対して淡々と告げる。気絶しているフリをして打開策を練っているのだろうが、重傷であるがゆえに、その演技も上手くはいかないようだった。


 やがて、彼はゆっくりと目を開く。


「味方をも欺いて、この施設を探り当てたツケですかな……。まさか、こんな結末が待っているとは……さすがは『極光の騎士(ノーザンライト)』、呆れた戦闘力でしたよ」


「……光壁を発生させたのはお前だな」


 ペイルウッドの話に乗ることなく、その顔に剣を突き付ける。だが、彼に怯えた様子はなかった。


「答える義務はありませんな。……私が術者だと思うなら、その剣でこの首を刎ねればよろしい。それでこの喜劇は幕引きです」


「喜、劇……?」


 あまりの言い様にシンシアが絶句する。だが、ペイルウッドは彼女のほうを見て自嘲気味に笑った。


「たった一人の裏切り者が、長年の仕込みを台無しにしてくれましたからな。これを喜劇と言わずしてどうしますか」


「お前にとっては喜劇かもしれんが、こちらは笑える心境ではなくてな」


 俺はそう前置くと、じっとペイルウッドの顔を見つめる。


「光壁の発生装置は奥の部屋だな? 装置を操る何かがあるはずだ」


「……」


 ペイルウッドは答えない。だが、もはやこの男が術者だという考えは捨てていた。となれば、この施設に答えがあるはずだった。


『クリフ、この手の施設に心当たりはあるか?』


 人工精霊に問いかける。この施設は古代魔法文明の遺跡と見て間違いないだろう。ならば、同じ時代に生み出されたクリフが対処法を知らないかと、そう考えたのだ。


『……奥の部屋をもう一度確認しなければ、なんとも言えませんね。先程はしっかり観察する余裕がありませんでしたから』


『それもそうか』


 俺は部屋の奥へ視線を向けてから、再びペイルウッドのほうを向く。明らかに戦闘不能だが、自由に動き回らせるわけにはいかない。


「鎖でも持ってくるべきだったな……」


 思わず呟く俺の脳裏に、一つ心当たりが浮かぶ。シンシアに障壁の展開とペイルウッドの監視を頼むと、俺はとある部屋に踏み込んだ。


「……なんとか使えそうだな」


 二頭獣オルトロスが閉じ込められていた部屋には、俺が期待した通りの鎖が転がっていた。二頭獣オルトロスに引きちぎられた鎖だが、その長さはなかなかのもので、満足に動けないペイルウッドを縛るくらいはできるだろう。


 ちぎれた鎖のもう一つの端が檻に繋がっていることを確認すると、俺はその根元に剣を振り下ろす。硬質な音とともに、鎖はあっさり断たれた。

 二頭獣オルトロスを繋いでいたくらいだ、もっと強靭な鎖かと思ったが、特別製ではないようだった。


 手に入れた鎖を持ち帰ると、俺はさっそくペイルウッドを縛り上げる。縛り方に問題がないことを確認すると、俺は奥の部屋を見据えた。


「行くぞ」


「はい……!」


 相変わらず何も話さないペイルウッドを尻目に、俺は奥の部屋へ向かった。魔法陣や明滅するなんらかの装置に再び出迎えられ、俺は少し身構える。


 レティシャや『魔導災厄スペル・ディザスター』と違って、俺には魔法のことは分からないが、なんらかの強力な力が発生していることは感じられた。


「なんだか……圧倒されますね」


 緊張と不安の入り混じった表情で、シンシアが近くへ寄ってくる。俺たちは、周囲を観察しながら部屋の奥へ歩を進めた。


「……これか」


「はい、力を感じます」


 俺たちが立ち止まったのは、部屋の奥にある謎の台の前だった。腰くらいの高さであり、横幅は二メテル程度だろうか。奥はそのまま壁に繋がっていた。

 常に不思議な音を響かせており、各所でチカチカと光が瞬いている様子は、あまりに現実味がなかった。


 俺はその台をまじまじと見つめて……そして首を傾げる。


「……分からん」


「私もです……」


 俺たちは顔を見合わせた。なんと言っても古代魔法文明の施設だからな。研究者どころか、魔術師ですらない俺たちに分かるはずはない。


 せめて『紅の歌姫(スカーレット・オペラ)』や『魔導災厄スペル・ディザスター』に解析してもらいたいところだが、ペイルウッドが張った結界のせいで、彼らがここへ来ることは難しいか。


「なんとか光壁を消したいものだが……」


 そう悩んでいた時だった。頭にクリフの声が響く。


主人マスター、この装置を使用するにはキーが必要です。あの男が所持しているのではないかと』


キー?』


『この操作端末の形状からすると、カード型だと思われます』


 そんなやり取りの後、俺は再びペイルウッドの下へ向かう。奴の鎖を一旦ほどいて、徹底的に探すしかない。


「ペイルウッド、あの装置を操作するためのキーを持っているな? カード状のものだ」


「……!」


 俺の言葉を聞いて、奴の表情がぴくりと動いた。心当たりがあるのだろう。俺はしゃがみ込むと、ペイルウッドの鎖をほどき始める。

 全身鎧を身に着けている俺には面倒な作業だが、シンシアに任せるわけにもいかないしな。


 そうして、奴の所持品を調べていた俺は、やがて目的のものにたどり着く。それは、手の平大より少し小さめの硬質なカードだった。


「む……」


 だが、問題が一つ。そのカードは二つに割れていたのだ。ペイルウッドが割ったとは思えないから、巨人たちとの戦いで破損したのだろう。


『クリフ、これか?』


『そうですが……これでは使えませんね。あの装置で修復は可能かもしれませんが……そもそも、起動させなければそれも叶いません』


 やっぱり無理か、とその言葉に肩を落とす。


「残念でしたな。さすがの私も、あの状況下ではそこまで気が回りませんでしたからな」


 その様子を見ていたペイルウッドが、ざまあみろ、とでもいうように笑うが、その相手をする気にもなれなかった。


「どうしましょう……このままじゃ、みなさんがずっと閉じ込められたままに……」


 シンシアの表情が憂いに沈む。一応、光壁の穴は保持されているはずだが、それもいつまでもつか分からないしな。


 それに、結界を解除できなければ、彼女自身もここに閉じ込められてしまうのだ。食糧や水の備蓄が一切ないことを考えると、シンシアのほうが生命の危機と言っていい。


 そう思い悩んでからどれくらい経っただろうか。再びクリフの念話が響いた。


『……主人マスター、もう一度あの装置の前へ』


『どうした?』


 問いかけに対する答えはなかったが、指示通り奥の部屋へと戻る。台の前に立つと、不思議そうな表情をしたシンシアが横に並んだ。


『台の上に手を置いてください』


 言われるまま、台の上に右手を置く。すると、手を置いた場所が淡く輝き出した。驚いた俺は手を離そうとするが、思い直して再び手を台に押し付ける。


「――登録済み個体識別情報を確認。管理者権限:Aランク。……。……。認証しました」


 そして流れたのは、落ち着いた女性の声だった。思わず周囲を見回すが、俺たち以外に人影はない。


「今のって……まさか、この装置がお話したんですか……?」


「……そのようだな」


 そう考えるしかなかった。まさか台が喋るとは思っていなかったが、クリフという例があるのだ。装置に宿る人工精霊がいてもおかしくないだろう。


『あれは人工精霊ではありません。私のように心を持っているわけではありませんからね』


 俺の思考が筒抜けだったのか、クリフが念話を飛ばしてくる。だが、目下の関心事はそこにはなかった。


『この後はどうすればいい?』


『この念話と似たようなものです。手を通じて話しかけるようなイメージで念じてください』


 言われるまま、手に意識を集中する。すると、様々な情報が手から頭へ流れ込んできた。それはこの装置の概要であり、使い方であり、現在の状況でもあった。


「む……」


 俺は異質な情報をなんとかねじ伏せ、少しずつ理解していく。そうして分かったことは、意外とシンプルなものだった。


「やはり、これは結界の発生装置だ。外敵に備えていたようだな」


 隣で不思議そうにこちらを見上げているシンシアに説明する。


「外敵、ですか?」


「そうだ。今は効果範囲を絞り、三十七街区を分断することに悪用されているが、本来は街全体を覆う巨大な結界を発生させるためのものだ」


「街全体……今でも信じられない規模なのに」


 シンシアは唖然とした様子で呟く。それも無理はないだろう。あんな強力な結界を、街全体に展開するなんて魔術師百人がかりでも不可能だ。


「ただし、街全体を覆うレベルの結界は魔力消費が激しく、長くはもたないようだな」


 そこまで説明すると、俺は再び結界発生装置に意識を注ぐ。もちろん目的は光壁の消滅だ。いくつかの過程を経て、再び女性の声が響いた。


「――命令受諾。防御結界を解除します」


「え……? 今のって……」


 そのアナウンスを聞いたシンシアが、目を丸くして驚く。


「そのようだな。適当に操作したが、あのキーがなくても問題なかったようだ」


「『極光の騎士(ノーザンライト)』さん、古代文明の装置も扱えるんですね……凄いです」


 詳しい事情を知らないシンシアが尊敬の眼差しを向けてくる。実際にはクリフの指示に従っただけだが、それを正直に伝えるわけにもいかない。


「偶然だ。本当に結界が解除されたとは限らんしな」


 シンシアにはそう言ったものの、あの装置を操作した手応えはあった。後は地上に出て光壁の有無を確認するだけだ。


「しかし、こんな凄まじい結界発生装置があるとはな……」


 効果範囲を狭めておけば、防御力や持続時間も確保できるし、拠点施設の防衛には打ってつけだ。問題は帝都の中枢から離れていることだが……これほどの装置だ、帝国は嬉々として確保しようとするだろう。


 結界の強固さは『極光の騎士()』や『剣嵐ブレード・ストーム』、それに『紅の歌姫(スカーレット・オペラ)』や『魔導災厄スペル・ディザスター』といった実力者が確認しているわけだしな。


「……ん?」


 そう考えた時、ふと気付いたことがあった。それは、つまり――。


 頭の中で様々な思考が渦巻き、漠然とした思い付きを具体的な形へ昇華させていく。いくつものピースが嵌まり、メリットとデメリットが、そしてそこへ至る道筋が浮かび上がる。


「あの、『極光の騎士(ノーザンライト)』さん……?」


 微動だにしない俺の様子に戸惑ったのだろう、シンシアが困惑した声を上げる。おそらく、俺の表情は目まぐるしく動いているはずだが、フルフェイスの兜じゃそんなことは分からないからな。


「……すまん。考え事をしていた」


 問題はシンシアの扱いだ。彼女は『極光の騎士(ノーザンライト)』に全幅の信頼を置いてくれているようだが、天神の神官である以上、それなりの理由付けは必要だろう。


 さて、どうしたものか。思い悩みながら、俺は地上へと続く階段を目指して歩き始める。すべての結界を解除しておいたから、階段の手前に展開されていた障壁も消えているはずだ。


 そんなことを考えていたからか、俺はとある人物の存在を忘れ去っていた。


「『極光の騎士(ノーザンライト)』、いったいどうやってあの装置を起動させた……!?」


 それは、鎖で縛って転がしていたペイルウッドだった。いつの間にか、彼を放置した部屋まで戻ってきていたらしい。


「……偶然だ」


 そう答えるが、ペイルウッドが納得するはずはなかった。彼は激昂した様子で叫ぶ。


「そんな馬鹿なことがありますか! あのキーを得るために、私がどれだけの年月を費やしたか……! そもそも、あの装置を取り扱う権限を持っているのは――」


 と、ペイルウッドの目が見開かれる。その雰囲気はどこか異様なものであり、声をかけることをためらわせた。


「……そうか、そういうことか」


 しばらく固まっていたペイルウッドはぽつりと呟くと、小刻みに震え始めた。突然の行動に、俺とシンシアは黙って彼を見つめる。


「……くく……はははは! この情報があれば、主もきっと……!」


 なおもペイルウッドの笑い声は続く。その声は止むことなく、いつまでも響き続けた。


「……行くぞ」


「え? は、はい……!」


 笑い続けるペイルウッドに背を向けると、俺はシンシアに声をかけた。気にはなるが、話が通じる状態には見えないし、いつまでも奴に時間を取られるわけにはいかないからな。


「あの人は放っておいていいんですか……?」


「あの長い階段を担いで上るわけにはいかん。担いでいる間に俺たちの命を狙う可能性もある」


 正直に言えば、とどめを刺しておきたいところだが、さすがにシンシアの前で実行するのはためらわれた。

 それに、あれだけ重傷で鎖に縛られているのだ、もはや脅威になるとは考えられない。奴の処断は後で考えてもいいだろう。


 そんなことを考えながら、俺はシンシアと階段を上る。先の見えない階段にげっそりするが、いい加減この地下施設から出たくなっていたところだし、頑張るしかない。


「……シンシア、疲労はどうだ」


「ピィ!」


 俺は足を止めて後ろを振り向く。問題は彼女の体力だ。意外と体力があるところを見せたシンシアだが、さすがにこの階段は堪えたようで、明らかに速度が落ちていた。

 なお、愛着が湧いたらしい薄緑の雛については、さすがに今のシンシアに抱えさせるわけにはいかないため、便宜上俺が抱えている。


「だい、じょうぶ、です……」


 まったく大丈夫には思えない息遣いで答える。まだ五十段も上っていないはずだが、もう限界かもしれない。

 いっそのこと、彼女を背負って階段を上ったほうがいいのだろうか。だが、全身鎧フルプレートに背負われるとゴツゴツして痛そうだな。


 そんなことを考えながら、俺は狭い階段を眺める。ペイルウッドが作らせた階段らしいが、これでは背の高い人間は不自由することだろう。


 そう考えた時だった。俺の中に一つの疑問が生まれた。


「……シンシア。あの巨人どもは、どのようにして地上へ出たのだろうな」


「あ――」


 薄暗い階段で俺たちは顔を見合わせる。そして同時に、わずかに見える下り階段の先に視線を向けた。


「駄目で元々だ。戻ってみるか」


「はい……!」


 これが数百段を上った後であれば、さすがに戻る気にはなれなかっただろう。だが、幸いにして今はまだ五十段だ。無駄足になっても取り返しがつかないほどではない。

 あの階段を上らなくて済む可能性があるのなら、ぜひともそこに賭けたかった。


 そうして、胸に小さな希望を抱いて再び階段を下る。全身鎧フルプレートには優しくない造りだが、そんなことは言っていられない。


 だが、地下施設へ戻ってきた俺たちを出迎えたのは、予想外の展開だった。


「――転移装置起動」


「なんだ……!?」


 施設に足を踏み入れるのとほぼ同時に、アナウンスが流れる。その言葉の意味を認識するなり、俺は次の部屋へ向かって走り出した。それは、ペイルウッドが転がっているはずの部屋だった。


「ペイルウッド……!」


 その声で気付いたのだろう、鎖に縛られたままペイルウッドはこちらを向いた。


「『極光の騎士(ノーザンライト)』、礼を言いますよ。結界を解除してくれたおかげで、転移陣を使うことができました」


 奴はニヤリと笑った。そして、目の前でペイルウッドの姿がかき消える。後に残されたのは、奴を縛っていた鎖だけだった。


「あ……!」


 その様子を見たシンシアが驚きの声を上げる。逃げられたということか。瀕死の状態だったとはいえ、油断が過ぎたと奥歯を噛み締める。


 それに、結界を解除したおかげで、とはどういう意味だったのか。結界の外へ転移したということなのか、それとも結界と転移の並行稼働はできないという意味なのか。


 そんなことを考えていた時だった。けたたましいアラームが一帯に響いた。


「――警告。機器損傷によるエラー発生。完了シークエンスの失敗により、予期せぬ転移が発生する可能性があります」


 警戒心をかき立てるアラーム音が鳴り響く中、またもや女性の声が流れる。


「これは……」


『どうやら、先程の雷霆一閃ライトニング・デモリッションで転移装置が故障したようですね。……これはうっかりしていました』


 クリフの声は少し悔しそうだった。


『それはともかく、何が起きるか分かりません。シンシア嬢から離れないように』


『そうだな』


 その言葉に頷き、シンシアの傍へ寄った刹那――。


 眩い白色光が俺たちを包みこんだ。



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