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光壁 Ⅱ

『前回の起動から三十七日……珍しいこともあるものですね、主人マスター


「……緊急事態だ」


 第二十八闘技場の隠し部屋で、俺は荒い息を吐いていた。非力な体質とは言え、身体はしっかり鍛えているつもりだが、俺はその体力をすべて使い果たしていた。


『身体に極度の短期的疲労を確認。疲労回復を推奨します』


 慌ただしく魔導鎧マジックメイルを装着していると、そんな念話が伝わってくる。提案には全面的に同意するが、今は魔法に意識を割く時間も惜しい。


活力付与リフレッシュの発動を要請する」


『権限の限定移譲を確認。術式を構築します』


 宣言すると、クリフは鎧に組み込まれた魔法を発動させる。剣闘試合の時は使わないようにしているが、許可さえ出せばクリフは魔導鎧マジックメイルに組み込まれた魔法を自分で使うことができた。


 クリフが発動させた魔法のおかげで、筋肉疲労や心肺の苦しさがフッと和らぐ。


『――それで、今回の用向きはどのようなものですか?』


「結界らしき光の壁によって街の一部が隔離され、行き来ができなくなっている。その内部では複数の巨人が住民を虐殺している可能性が高い」


『……』


 俺の言葉を聞いたクリフは、なぜか沈黙する。


「クリフ?」


『……失礼しました。てっきり今回も展覧試合かと思っていましたので、反応が遅れました』


 なるほど、そういうことか。俺がクリフの立場だったらやっぱり驚くだろうな。


『以前に、主人マスターは「今後は展覧試合時のみ起動する」と仰っていましたからね。……私としては嬉しい限りですが』


 その言葉に、俺は兜の内側で苦笑を浮かべた。


極光の騎士(ノーザンライト)』として活動できる残り時間は限られている。魔導鎧マジックメイル起動の残回数はあと八回だから、三か月に一度試合をするとして、二十四か月が最大寿命だ。


 だが、ここでその貴重な一回を使ってしまえば、『極光の騎士(ノーザンライト)』の寿命は三か月も縮まってしまう。

 残りが二十四か月しかないことを考えると、試合以外での起動はできるだけ避けたかった、というのが本音だ。だが――。


 垣間見えた三十七街区の光景を、そして手前で泣き崩れる男性の姿を思い出す。その光景は二年前の記憶へと繋がり、頭の奥がズキズキと鈍く痛み出した。


『警告。心拍数の急激な上昇を確認』


「――ああ、すまない。もう大丈夫だ。」


 クリフの警告を受けて俺は我に返った。もう、起動回数を消費することに後悔はなかった。この危機に駆け付けないようなら、『極光の騎士(ノーザンライト)』に英雄として讃えられる資格はない。


『目的は結界の破壊、および巨人型敵性存在の排除ですね。護衛対象の指定はありますか?』


「護衛? まあ、全住民が護衛対象と言えなくもないか……」


『了解しました』


 クリフはテキパキと質問を続ける。いつもの流れではあるが、目的が試合じゃないせいか、その雰囲気は普段と少し違っていた。


「クリフ、訊きたいことがあるんだが……」


『なんでしょうか、主人マスター


「今日のお前、なんだか機嫌がよくないか?」


『さて……主人マスターが短い間隔で起動させてくれたからでしょうか』


 そんな会話をしているうちに、魔導鎧マジックメイルの起動準備が完了する。全身に強化魔法が行き渡っていることを確認すると、俺は隠し部屋を後にした。




 ◆◆◆




 人混みを避けて、建物の屋根から屋根へ跳び移る。魔導鎧マジックメイルの身体強化魔法に加えて、重量軽減の魔法を同時発動させているため、重量のある鎧を着こんでいても屋根が壊れることはない。


極光の騎士(ノーザンライト)』の姿に気付く住民もたまにいるが、彼らが口を開いた頃には遠くへ去っている。


 姿を消さない理由は、魔力の消費を抑えたかったこともあるが、住民たちの間で情報が伝わって、あの項垂れていた男性に『極光の騎士(ノーザンライト)』が救援に向かったという噂が届けばいいな、という気持ちもあった。


 やがて、光壁のそばまで接近した俺は、屋根を蹴って地面に着地する。闘技場から三十七街区までの最短ルートを通ったため、『剣嵐ブレード・ストーム』たちがいる場所からは少し離れていた。


「……相変わらずだな」


 場所が変わっても、光壁の様子に違いは見受けられない。見上げた光壁は、先程と同じようにすべてを拒んでいた。


 壁を前にして方策を考えていると、周囲がざわつき始める。


「おい、『極光の騎士(ノーザンライト)』だぜ……!」


「え? ほ、本物か!?」


 そんな声に交じって、聞き覚えのある声が耳に入った。


「あなた、『極光の騎士(ノーザンライト)』?」


 声の主のほうを向けば、そこに立っていたのは『紅の歌姫(スカーレット・オペラ)』レティシャだった。そう言えば、彼女もこの光壁の調査をしていたんだったな。


「……どうなっている」


極光の騎士(ノーザンライト)』と『紅の歌姫(スカーレット・オペラ)』は闘技場で戦ったことがあるため、この姿でも顔見知りではある。

 俺は彼女に正体を悟られないよう、できるだけ低い声音で答えた。


「ご覧の通り、強力な結界が展開されているわ。結界の解除を試みたけれど、ちょっと難しそうね」


「強力な攻撃によって、一瞬結界に穴が開いたと聞いたが」


 尋ねると、レティシャは肩をすくめた。


「そうね……魔法防御に重点を置いている結界のようだから、物理的な攻撃手段のほうが有効だとは思うわ」


「ふむ……」


 まずは斬ってみるか。そう考えて剣に手をやった俺は、すぐに思い直した。気になることがあったのだ。


「仮にだが……この光壁に強力な攻撃を加えた場合、結界自体が破壊される可能性はあるか?」


 すると、レティシャは首を横に振る。


「可能性は低いわ。この結界は、そうね……例えるなら噴水のようなものかしら。いくら光壁を破壊しても、すぐに復元するわ。

 術者をどうにかしない限り、根本的な解決にはならないわね」


 それは朗報だった。外から見れば邪魔でしかない光壁だが、同時に、あの醜悪な巨人たちを閉じ込めていることを忘れるわけにはいかない。

 だが、彼女の言う通りであれば、結界を破って侵入しても問題はないということだ。


 俺が思考を巡らせていると、横手からまた知った声が聞こえてきた。


「壁、そこ……」


「ふん、言われずとも見えておるわい」


 頭に二本の角を生やした半竜人が、半ば担ぐような形で老人を連れてきたのだ。


「二人とも……」


 彼らの姿を見て思わず呟く。うちの闘技場に所属する『蒼竜妃アクアマリン』エルミラと『魔導災厄スペル・ディザスター』だ。


 二人は俺……というかレティシャの前で立ち止まった。


「様子……どう?」


「光壁のほうは変化なしね。ただ、戦力的には増強されたけれど」


 レティシャは問いかけに答えると、手でこっちを指し示す。気付いていなかったのか、こちらを見た『蒼竜妃アクアマリン』と『魔導災厄スペル・ディザスター』の目が丸くなった。


「久しぶり……見た」


「『極光の騎士(ノーザンライト)』か……ふん、珍しいこともあるものじゃな」


 二人は口々に呟く。だが、のんびり会話をしている場合じゃないのは明らかだ。二人は同時に光壁に目を向けた。


「かなり強固な結界じゃな。魔法障壁に特化しておるか……」


「私も同感ね。さすがに、一人で全ての光壁を消滅させられる自信はないわ」


紅の歌姫(スカーレット・オペラ)』の言葉を聞いて、『魔導災厄スペル・ディザスター』は得意げに鼻を鳴らす。


「まあ、小娘には無理じゃろうな。じゃが、偉大なるワシにかかれば容易いものよ。術者ごと消し飛ばしてみせようぞ。問題は準備に時間がかかることじゃが……」


「ちょっと待って。ひょっとして、三十七街区を木端微塵にする気?」


魔導災厄スペル・ディザスター』の不穏な発言に、レティシャが気色ばんだ。『魔導災厄スペル・ディザスター』は尊大な爺さんだが、魔法の構築規模においては帝都最高の呼び声も高い。


紅の歌姫(スカーレット・オペラ)』のように臨機応変とはいかないため、うちの闘技場でのランキングは少し落ちるが、魔法威力は随一の爺さんだ。本当に三十七街区を灰燼に帰す魔法を使いかねなかった。


「仕方あるまい。これほどの強度を持つ結界ともなれば、生半な魔法では通用せぬ。それに、ワシの魔法とこの結界のどちらが勝っておるか、実験してみたいも――ぬっ!」


魔導災厄スペル・ディザスター』の言葉を遮って、ゴツンという音が聞こえる。見れば、隣にいたエルミラが『魔導災厄スペル・ディザスター』の頭に拳骨を落としていた。


「実験場じゃない。……考えて」


「貴様、叡智の結晶たるワシの頭に何をする!」


魔導災厄スペル・ディザスター』はエルミラを睨みつけるが、彼女のほうはさっぱり意に介していないようだった。


「三十七街区が塵になれば、さすがにこの街にはいられないわよ? 魔法技術を凝らしたあなたの屋敷を手放したいのなら、別に止めないけれど」


 エルミラの言葉を補うように、レティシャは口を開く。すると、『魔導災厄スペル・ディザスター』はぶすっとした顔で光壁を見上げた。


「大規模殲滅魔法のいい実験になると思うたのじゃが……」


「――それは困る」


 俺は一歩踏み出した。『魔導災厄スペル・ディザスター』だけでなく、他の二人にも聞かせるために、少し大きめの声を出す。


「結界の中に多数の巨人がいる。おそらく敵性存在だ。……結界が破壊されて、それでも巨人が生存していた場合、被害は帝都全域に及ぶ」


「それ、本当だったの!?」


 驚いた様子のレティシャに頷きを返すと、言葉を続ける。


「すでに大きな被害が出ている。……俺は先に突入する」


「え? 先にって――」


 レティシャの言葉に答えることなく、俺は光壁に向き直った。そして、抜き放った剣を構える。


穿投槍ジャベリンドライブ


 その構えから打ち出されるのは俺自身だ。構えた剣を先頭にして、光に包まれた『極光の騎士(ノーザンライト)』が光壁と激突する。


「っ!」


 予想以上の衝撃に襲われて、俺は歯を食いしばった。突進のエネルギーと光壁の板挟みになるが、姿勢を保持し続ける。


 やがて、剣の切っ先が光壁を突き破り、続いて剣を持つ腕が光壁の中へ侵入を果たした。だが、身体の半分ほどが結界の中へ侵入したところで、締め付けられるような圧力に襲われる。


『剣によってこじ開けた結界の穴が閉じようとしています。さすが、復元が早いですね』


 どうやら、俺の身体は光の壁に圧迫されているらしい。もし生身のままなら、あっさり潰されるか、切断されるかしていたことだろう。


 だが、魔導鎧マジックメイルは光の壁をものともせず、俺を内部へ侵入させた。


「抜けた……!」


 光壁から解放された俺は、着地すると後ろを振り向く。すると、俺が侵入した箇所にはまだ穴が開いていた。


「ふん。突破口さえあれば、穴の維持など朝飯前よ」


 穴の正面に立つと、向こう側でふんぞり返っている『魔導災厄スペル・ディザスター』の姿が見えた。

 子供がかろうじて通り抜けられる程度のサイズだが、それでも継続的に内外の様子が分かることは大きい。


「『極光の騎士(ノーザンライト)』! この穴を広げて救援に行くから、それまで内部はお願い!」


「……分かった」


 レティシャに言葉を返すと、俺は光壁に背を向けた。……そして、歯を食いしばる。


「なんだよ、これ……」


 辺り一帯に血の臭いが充満している。倒壊した建物も多く、まるで戦場跡のようだった。ざっと見回した様子では、動いている人の姿は見られない。


 だが、そんな中を動き回る複数の人影がある。身の丈五メテルを超えるグロテスクな巨人たちだ。その数は二十体ほどだろうか、思っていたよりも多い。


 手近な建物を破壊している巨人もいれば、何かを探すようにうろつき回る巨人もいる。俺が気になったのは、うろつき回るほうの巨人だった。


 うろつき回っている巨人たちは、他の巨人に比べて身体が赤く染まっていたのだ。


「この……っ!」


 俺は近くの巨人に狙いを定めた。駆け出してある程度近付くと、向こうも俺を認識したらしく、明確な意思を持ってこちらへ向きを変える。


 俺は速度を落とさず巨人の足下へ走り込む。伸ばされた腕は巨木のように太く、通常の人間であれば、握りしめられただけで絶命するだろう。


 俺は巨人の腕を避けると、すれ違いざまに腕を切り落とした。魔力を注いで威力を増幅させた魔剣は、その力を余すところなく発揮していた。


「グウォォォォッ!?」


 およそ人らしからぬ叫びを上げる巨人に対して、もう一閃。今度は右足を斬り飛ばすと、バランスを崩した巨人が横倒しに倒れる。

 俺は即座に頭部へ駆け寄ると、血走った目で睨みつける巨人の首を両断した。


「まず一体……!」


 巨人が復活しないことを確認すると、俺は次の目標を探した。生きている人間がいれば保護を、とも思ったが、人影はまったく見当たらない。


「次はどこだ」


主人マスター、右前方の個体がこちらへ向かってきます』


 クリフの警告に従って、俺は迫りきた巨人を迎え討つ。攻撃をかいくぐると、巨人の身体自体を足場にして跳び上がり、そして首を一刀のもとに斬り捨てる。


『後方より二体接近。少し遅れて左方から三体来ます』


 周囲の巨人は俺を標的にしたようだった。建物を破壊していた巨人もこちらへ向かってくる。

 だが、俺を狙ってくるなら好都合だ。奴らが生存者を探していたのなら、結果的に彼らを助けることにもなるだろう。


 俺は二体の巨人を立て続けに屠ると、迫り来ていた三体の巨人を睨みつける。


「――風魔法強化、連続稼働」


剣嵐ブレード・ストーム』戦でも使用した機能を発動させると、俺は立て続けに真空波を生み出す。


真空嵐舞テンペスト、だったな」


 あの時の戦いを思い出して、『剣嵐ブレード・ストーム』の技を再現する。本家のように上手くはいかなかったが、それでも範囲攻撃としては有効に機能したようで、三体の巨人がまとめて血飛沫を撒き散らした。


剣矢ブレードアロー


 そして、まだ息のある個体に向けて剣を向ける。剣先から射出された光の矢は、その頭部に突き刺さり爆発を起こした。


「あと何体だ……?」


 そもそも、生存者はいるのだろうか。動くのは巨人ばかりという状況に、俺は焦りを感じていた。


 そして、さらに数体の巨人を葬った時、俺は妙なことに気付いた。


「あの巨人、どうしてこっちへ来ないんだ……?」


 周囲の巨人が俺を目がけて押し寄せる中で、一体だけ、執拗に建物を破壊しようとしている巨人がいたのだ。

 たしかに距離は遠いが、それより遠くからこちらへ向かっている個体もいる。あれだけ固執しているということは、まさか――。


「クリフ、左前方にいる、建物を殴り続けている巨人の周囲をサーチしてくれ」


『畏まりました』


 そして数秒後、少し驚いたような念話が伝わってくる。


主人マスター、あの巨人が襲っている建物に、多数の生命反応を感知しました。護衛対象である可能性があります。

 微弱な反応であったため、絞り込んで調べなければ気付きませんでした』


「それだ……!」


 俺は思わず叫んだ。街の被害の割に、遺体が少ないと思ったのだ。何かシェルターのようなものがあったのだろう。


 となれば、あの巨人を倒すのが最優先だ。俺は巨人目がけて走り出した。


『――警告。目標の巨人周辺で時空の歪みを感知』


「なんだって!?」


 俺が聞き返している間にも、前方の巨人の姿が歪んでいく。いや、正確に言えば、歪んでいるのはその手前の空間だろうか。

 まだ距離にして数百メテルはあるが、それでも歪んだ空間から何かが現れようとしていることは分かった。


『新たな巨人を確認。全長十メテ――』


 と、クリフの言葉が途中で止まる。


『クリフ、どうした?』


 問いかけながら、新たに現れた巨人を観察する。

 現れた巨人は、他の倍近いサイズを誇っていた。それも、ただ巨大になったわけではない。ぬめぬめとした液体が皮膚を覆っており、光を受けて怪しげに輝いていた。


 新たな巨人は拳を振り上げると……隣の巨人目がけて振り下ろした。


「なんだ!?」


 あまり知性らしきものは見えないが、仲間割れでもしたのだろうか。信じられないことに、先程まで建物に挑んでいた巨人は、その一撃で血まみれの肉塊になっていた。


 ひょっとすると、利用できるかもしれない。そう期待した俺だったが、事態はそう上手く動いてくれなかった。新たな巨人は、目の前の建物をしばらく見つめると、再び腕を振り上げたのだ。


 巨人の腕に異様な輝きが纏わりつく。詳しいことは分からないが、それが拳の威力を高めることは間違いなかった。


 そして、その拳が建物に振り下ろされる。


「――っ!」


 その瞬間、澄んだ破壊音とともに光が迸った。その眩しさに思わず目を細める。


「なんだ!?」


 思わず叫ぶと、しばらく沈黙していたクリフが口を開いた。


『……障壁が砕け散りました。あの建物にいる術者が展開していたのでしょう。……どうやら、気配遮断の効力もあったようですね』


 今までは微弱だった生命反応が増大しました、というクリフの念話に答えている暇はなかった。俺は走りながら遠見の魔法を発動させる。


 まだ距離は遠いが、幸い遮る建物は少ない。遠見の倍率を増大させると、俺の求めるものが視界に映った。


 それは人の姿だった。大勢の人間が建物の中で身を寄せ合っている。どんどん倍率を上げていくと、彼らの視線の多くは巨人を見ていなかった。


「あれは――?」


 彼らの視線の先にいるのは、一人の少女だった。ひざまずき、青ざめた表情ながらも巨人から眼を逸らさない。その姿は、彼らを守るのが自分の使命だと、そう主張していた。


 だが、新たな巨人は再び拳を振り上げた。再び、その拳には光が集まり始める。障壁が破られた以上、彼女に人々を守る術はない。


 だが、俺と巨人との距離はまだ遠い。俺が駆け付ける前に拳は振り下ろされ、彼女たちの命を奪うだろう。


「っ……!」


 揺れる天秤を前にして、俺は一瞬だけ歯を食いしばった。そして、覚悟を決めて宣言する。


決戦仕様(オーバードライブ)起動」


『了解しました、主人マスター


 ドクン、と視界が揺れる。魔導鎧マジックメイルが機能を解放したのだ。『極光の騎士(ノーザンライト)』の語源となった過剰な魔力光が、銀色の鎧を不思議な色に染め上げる。


流星翔ミーティアスラスト


 決戦仕様(オーバードライブ)時のみ使用できる魔法を発動させると、ふわりとした浮遊感が俺を包む。


 そして、『極光の騎士(ノーザンライト)』は一条の光となった。



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