予兆Ⅱ
闘技場での仕事を終えた帰り道。いつも通りの道を通っている俺は、背後の気配に耳を澄ませた。
「うーん……」
確信はないが、おそらく誰かに尾けられている。気配察知には自信がある俺だが、それでも意識を集中しなければ把握できないレベルだ。今まで出会った中でも、気配を殺すという意味では最高クラスだろう。
だが、俺は過度の警戒はしていなかった。この気配に気付いてから二十日ほど経つが、尾行者に敵意が見えなかったからだ。付かず離れずの距離感もそうだし、定期的に三日間隔で尾行していることも、悪意のある追跡者なら不自然だ。
俺は意識を後ろへ向けたまま、十字路を左に曲がる。尾行者を撒くつもりがない俺は、堂々と自宅を目指していた。
「さて……」
いつも通りに最後の角を曲がると、前方に自宅が見えてくる。今頃は、先に帰宅させたシルヴィが俺の帰りを待っていることだろう。
――だが。
俺は神経を研ぎ澄ませた。背後から感じるかすかな気配がだんだん近づいてきて……そして、揺らぐ。
「――!」
その揺らぎを感じとった俺は、すぐさま身を翻して来た道を駆け戻った。先ほど通ったばかりの角を曲がり、そこそこ大きな通りに出る。
「――レディ、よろしければお茶でもいかがですか?」
「生憎と、色男にお茶を奢られる趣味はないの。じゃあね!」
俺の視界に映ったのは、そんなやり取りをする一組の男女だった。一人は幼馴染の剣闘士ユーゼフであり、もう一人は――。
「ローゼさん!」
近くの建物の屋根に飛び乗った女性に、俺は大声で呼びかけた。百パーセントの確証があったわけではないが、彼女くらいしか心当たりがない。
「……へえ、私のこと覚えててくれたんだ」
予想は当たったらしい。屋根の上から降ってきた声は、意外と柔らかなものだった。
「親父の大切な戦友ですから」
そう答えると、ローゼさんはきょとんとした顔を見せた後で、堪えきれなくなったように笑い出した。
「もう、いい男になったわね。うちの娘たちとは大違いだわ」
「――ミレウス。やっぱりローゼさんだったんだね?」
笑っている彼女をすり抜けて、ユーゼフが耳打ちしてくる。ユーゼフには、尾行してくるローゼさんを足止めするよう頼んでいたのだ。
「その通りよ、ユーゼフ君。見事にやられちゃったわぁ」
と、そんな小声の会話もしっかり聞こえていたらしい。彼女は楽しそうな笑顔のまま、ユーゼフの言葉に回答する。
「僕をご存知だったのですか?」
「当たり前じゃない。試合だって観せてもらったわ」
ローゼさんはユーゼフに近付くと、ポンポン、と肩を叩いた。
「闘気、使えるようになったのね。さすがイグナートの弟子だわ」
「ありがとうございます、ローゼさん」
ユーゼフの微笑みが、敬意を含んだものへ変わる。今の会話で、彼女が本当に親父の知り合いだと確信したのだろう。
「……それにしても、二人に尾行を気付かれてたなんて、ちょっとショックだわ。腕が落ちたかしらね」
「いえ、見事な尾行だったと思います。尾行には慣れていますが、尾けられているかどうか、判断に迷ったのは初めてです」
「僕に至っては、ミレウスが言うまで気付いていませんでしたからね」
二人がかりで慰めるが、ローゼさんはまだ落ち込んでいるようだった。
「尾行されているかもって悩まれた時点で、私としては失敗なのよ。……というか、ミレウス君ってそんなに尾行されているの?」
「仕事柄、目の敵にされることも多いものですから」
「闘技場の支配人ってそういうものだっけ……?」
ローゼさんは首を傾げる。そんな彼女の気が変わらないうちにと、俺はあらためて声をかけた。
「こんな所で立ち話もなんですし、よければ家に寄っていきませんか? ……お伺いしたいこともありますし」
なぜ尾行していたのか。どうしてフェルナンドさんやソリューズさんも帝都に集まっているのか。聞きたいことはいくらでもあった。
「ミレウス君は、もうフェルナンドに会ったのよね?」
しばらく沈黙した後で、ローゼさんはそう問いかけてくる。
「はい。そして、ソリューズさんが魔術師ギルドに顔を出したことも聞いています」
「え? あいつ、そんなことしたの? 何が『俺は元来、人と交じることを好まん』よ。『孤塔』が聞いて呆れるわ」
台詞とは裏腹に、ローゼさんは嬉しそうな笑顔を見せた。だが、やがて真面目な顔で俺に向き直る。
「三人でイグナートの墓参りをするつもりだった……なんて言っても、騙されてくれないわよね」
「はい」
「うわ、いい笑顔で答えるわね……」
そうぼやくと、ローゼさんは観念したように目を閉じた。
「分かったわ。どうせなら、改めて席を設けましょう? たぶん、ティエリア神殿になると思うけど」
「分かりました」
場所の選定に文句はない。フェルナンドさんがティエリア神殿の神殿長であることを考えると、本気の言葉なのだろう。
「けど、あまり期待しないでよ? 別に大した理由じゃないんだから」
「そうだとしても、皆さんとまたお会いできることは嬉しいです」
「あはは、ミレウス君は口が回るわねぇ。さすがセ――ともかく、また連絡するわ。本当よ?」
ローゼさんはそう告げると、今度は屋根の上に飛び乗ることなく、背中を見せて去っていく。俺とユーゼフは呆気に取られたまま、その後ろ姿を見送るのだった。
◆◆◆
大地を司る女神ティエリアを奉じる神殿。その神殿長室に初めて通された俺は、親父の旧友たちと顔を合わせていた。
こちらは俺、ヴィンフリーデ、ユーゼフの三人で、向こうは神殿長室の主でもあるフェルナンドさん、魔術師のソリューズさん、そしてローゼさんの三人だ。
全員と顔を合わせたことがあるのは俺だけということもあって、ヴィンフリーデとユーゼフは少し緊張しているようだったが……。
「まさか、ローゼがヘマをするとはな」
「ちょっと、私のせいにしないでよ。ソリューズだって、ノコノコと魔術師ギルドに顔を出したんじゃない」
「俺は魔術師だぞ。ミレウスに来訪を知られたのは予想外だが、ギルドに顔を出して何がおかしい」
「ギルドには顔を出さないでって忠告したら、『任せろ。俺は一人が好きだからな』って答えたでしょ?」
「少し閃いたことがあって、魔法実験をする必要があっただけだ」
早々に繰り広げられた言い争いに、俺はヴィンフリーデやユーゼフと顔を見合わせた。険悪な雰囲気を感じないだけに、止めたものか迷うところだ。
「すみませんね、この二人はいつもこんな感じなんですよ。……さて、二人ともそれくらいにしましょうか」
やがて、慣れた様子でフェルナンドさんが二人を仲裁した。すると、彼らは特に反発することもなく、あっさり言い争いを終える。まるでフェルナンドさんが口を挟むことを待っていたかのようだった。
「さて、ミレウス君は知っているでしょうが、簡単に自己紹介をしておきましょう。私はフェルナンド。ティエリア神官です。そして、こちらが魔術師のソリューズで、そっちが弓使いのローゼ。イグナートが冒険者をしていた頃のパーティーメンバーです」
その言葉にソリューズさんはかすかに頷き、ローゼさんは快活な笑みとともに手を振って応える。
「イグナートの娘、ヴィンフリーデと申します。第二十八闘技場で支配人秘書を務めています」
すると、今度は自分たちの番だと判断したのだろう。俺が紹介するまでもなく、ヴィンフリーデが自己紹介を始めた。
「ほう……父親に似なくてよかったな」
「ちょっと、第一声がそれ!? ごめんね、ヴィーちゃん。たぶん、こいつは『綺麗になったね』って言ったつもりなのよ」
ソリューズさんの言葉を、慌ててローゼさんがフォローする。だが、当のソリューズさんはどこ吹く風だった。
「僕はユーゼフ・ロマイヤー。親父の弟子で、剣闘士です」
次にユーゼフが名乗ると、ソリューズさんは懐かしそうに目を細めた。
「知っている。イグナートやこいつらと一緒に、お前の試合を観たことがあるからな。俺の弟子は凄いだろう、とどれだけ自慢されたか」
「あら、イグナートが羨ましかったの? それなら、ソリューズも弟子を取ればよかったのに」
「いや、俺は……」
「――はいはい、そこまでです。ミレウス君たちが呆気に取られていますよ」
そこへ、再びフェルナンドさんの仲裁が入る。親父と一緒に冒険をしていた頃も、彼らはこんな感じだったのだろう。そう思うと、なんだかおかしさがこみ上げてきた。
「さて。いつまでも寸劇を披露していては、忙しいミレウス君たちに申し訳ありませんからね。そろそろ本題に入りましょうか」
その言葉に俺は姿勢を正した。隣のヴィンフリーデとユーゼフからも、真剣な雰囲気が伝わってくる。そんな俺たちに一人ずつ視線を当てると、フェルナンドさんは口を開いた。
「――イグナートが命を落とした、あの事件の再来。それを防ぐために、私たちは帝都に来ました」
「え……?」
フェルナンドさんが告げた言葉に、ヴィンフリーデが驚きの声を上げた。その意味が浸透していったのか、次第に表情が青ざめていく。
「……そうですか」
そんなヴィンフリーデの反応とは対照的に、俺はそこそこ冷静に話を受け止めることができた。それは肝が据わっているのではなく、ある程度予想していたからだ。
「おや、ミレウス君は意外と驚きませんね」
「私も、それなりに思うところがありまして……」
偽装された物の動きや、フェルナンドさんたちの来訪。そして何より、マイルやウィラン男爵からもたらされた情報。これで安心しろというほうが無理な話だ。
「ほう? それはどういう意味でしょうか」
俺の言葉が気になったようで、フェルナンドさんは興味深そうに身を乗り出した。今さら隠すこともないだろうと、俺はすべてを彼らに説明する。
「――なるほど、そんなことがあったのですか。話してくれてありがとうございます。参考になりました」
俺の説明を聞き終えたフェルナンドさんは、納得した様子で頷いた。こちらの説明はもういいだろうと判断すると、今度はこちらから問いかける。
「それでは、今度はこちらから質問したいのですが……フェルナンドさんは、どうやってその情報を掴んだのですか?」
「ティエリア神殿の情報網や、個人的な人脈。それに神託もですね。それらを総合的に判断した結果です」
フェルナンドさんは、意外なほどあっさりと理由を明かした。シンシアから聞いた話通りであれば、彼は全国のティエリア神殿に影響力を持っているはずだ。それを考慮すれば、あり得ない話ではないが……。
「でも、なぜこの街へ……?」
帝都への赴任は、襲撃に巻き込まれることと同義だ。危険を察知していながら、どうして危険に身を投じるのか。
「実は、あの襲撃事件の時にも神託があったのですよ。ただ、あまりにも内容が曖昧だったため、神殿では解釈不能として処理されましたが」
「……!」
その言葉に、俺はユーゼフたちと目を見合わせた。あの奇襲にそんな予兆があったとは初耳だ。
「以前にこのメンバーで帝都を訪れたのは、その調査のためでもあったのです。ですが……結局、あの時の私は、襲撃の予兆に気付くことができなかった」
そう語るフェルナンドさんの表情は暗い。自責の念に駆られていることは想像に難くなかった。
「仕方ないだろう。神性存在は細かい調整が苦手だからな。直接的に啓示をすると、大概の奴は壊れてしまう」
そんなフェルナンドさんをフォローするように、ソリューズさんがぼそりと告げる。それに続けて、俺も同調するように口を開いた。
「私も何度かお世話になったことがありますが、神託ってけっこう曖昧ですよね」
俺はシンシアに下された神託を思い出す。助けられたのは事実だが、解釈に困るものばかりだった気がする。
「あれ? ミレウス君は神官じゃないわよね。神託なんて縁があるの?」
すると、ローゼさんが不思議そうに首を傾げる。たしかに、一般的な闘技場の支配人には無縁のものだろうな。
「ああ、彼女ですか……」
だが、シンシアと顔を合わせたことのあるフェルナンドさんは、神託の出所に気付いたようだった。そして、ローゼさんがその話に食いつく。
「え、なになに? 彼女って誰? ミレウス君に浮いた話があるの?」
「ローゼ。まだ二、三回しか会っていない相手に聞く内容ではないだろう」
「うっわ、ソリューズに窘められるなんて……ショックだわ」
ローゼさんはわざとらしく肩を落とした。ひょっとして、この一幕もフェルナンドさんを気遣っての演技なのだろうか。そんなことを考えていると、ローゼさんが軽い口調で話を進める。
「ま、そういう訳なのよ。フェルナンドは真面目だから、あの時の自分をどうしても許せないみたいでね。まさか、この街に赴任してくるとは思わなかったけど」
「そのために……?」
俺には理解できない話だった。彼らが責任を感じる必要なんて、どこにもない。
「私も、ローゼとソリューズがこの街に来ることは想定外でした。一応、自分の動きを伝えておこうと思っただけで」
「よく言う。あんなに挑発的な文面は初めて見たぞ」
「本当にねぇ」
そんな会話の後、口を開いたのはまたしてもローゼさんだった。
「というわけで、こっちのことは気にしないで。私たちは勝手に、雪辱を果たしに来たの」
だから見つかるつもりはなかったんだけどね。ローゼさんはそうぼやくと肩をすくめた。彼女としては、話をまとめたつもりなのだろう。だが、俺には一つ気になることがあった。
「ひょっとして……襲撃してくる相手が誰なのか、分かっているんですか?」
俺はローゼさんと視線を合わせる。彼女が口にした『雪辱』という言葉には、明確な相手が想定されているような気がしたのだ。
俺の問いかけを受けて、ローゼさんはフェルナンドさんのほうを見た。つまり、情報源はフェルナンドさんのほうか。
「相手については、世界情勢と神託を組み合わせただけで、推測の域を出ませんが……」
そう前置いて、彼は俺たちをじっと見つめる。
「――今の情勢であり得るとすれば、間違いなくフォルヘイムでしょう。再侵攻、というわけですね」
「!」
俺は身体を強張らせた。話の流れから予想していたものの、やはり衝撃は大きい。
「フォルヘイムでは、クーデターが起きたと聞きましたが……」
そう問いかけると、フェルナンドさんは静かに頷いた。
「その通りです。エルフの純種である王族を追放して、王族の傍流であるハーフエルフが実権を握ったのですが……この人物が切れ者のようで、ドワーフや竜人といった亜人たちをまとめ上げたようです」
「そんなことが……」
話の大きさに俺は唖然とした。もはや一国の話ではない。
「ですが、亜人はそれぞれ、人間種の国々に監視されていますよね? まとめ上げたところで、合流は難しいのでは……」
俺はフォルヘイムを訪れた時のことを思い出す。すると、フェルナンドさんは少し驚いたように俺を見つめた。
「よく知っていますね。たしかに亜人の国は監視されていますが……どうにも上手く機能していないみたいですね。監視をかいくぐっているのか、それとも抱き込まれた国があるのか」
「なるほど、それで『雪辱を果たす』わけですね。またエルフが攻め込んでくるなら、今度こそ返り討ちにしますよ」
そう口を開いたのはユーゼフだ。言葉こそいつも通りだが、その全身から無形の圧力が溢れ出している。
「クク、さすがイグナートの弟子だな。そっくりだ」
そんなユーゼフに怯むことなく、ソリューズさんは笑い声を上げた。
「まあ、今となっては三人しかいないからな。俺たちだけではどのみち対応しきれん」
「前衛が一人もいないしね。誰か、私たちに合わせられる戦士職が欲しいところね」
「まったく、セインがいれば苦労しないものを。あいつはどこをほっつき歩いて――」
「ちょっと! ミレウス君の前でそんな話をしないの!」
ソリューズさんの言葉を、ローゼさんが慌てて遮る。そうか、三人とも俺の実父がセインだということは知っているのか。そう悟った俺は笑顔を浮かべた。
「ローゼさん、お気遣いありがとうございます。でも大丈夫ですよ。両親とは、少し前に会いましたから」
「――は?」
そう報告するが、ローゼさんはピンと来ていない様子だった。そこで、俺は少し言葉を付け加える。
「セインって、セイン・ノアのことですよね? 一年ほど前に、フォルヘイムの近くで再会しました」
「うそぉっ!?」
廊下まで聞こえそうな大音量で、ローゼさんが驚きの声を上げた。他の二人も同様で、目を瞬かせて俺を見詰めている。
「しかも、よりによってフォルヘイム!? あいつ、今度は何に首を突っ込んだのよ。というか、どうやって連絡を取ったの?」
「その……両親から手紙が来まして、しばらく妹を預かってほしいと」
俺は嘘を交えて答える。『極光の騎士』のことに触れられない以上、多少の方便は必要だろう。
「……さすがの俺も、セインの図々しさに呆れたぞ」
「私もよ。ミレウス君、手紙一通でよくフォルヘイムまで行ったわね。顔も知らない状態だったんでしょ?」
二人は口々にセインを非難する。心情的には俺の側についてくれるようだった。
「まあ、興味はありましたから」
「今度セインが顔を出したら、ミレウス君の代わりに眉間に一発射ち込んでやるわ」
と、物騒なことを呟いたローゼさんだったが、ふと何かに気付いたようで、その動きが止まった。
「……妹?」
そして、まじまじと俺を見つめる。そうか、定期的に俺の状況をチェックしていたのであれば、当然シルヴィのことも知っているか。
「ひょっとして、ミレウス君と暮らしてるあの子は……」
「はい。妹のシルヴィです」
「やっぱり……! ミレウス君、十歳くらいの女の子と暮らしてるのよ」
ローゼさんの後半の言葉は、フェルナンドさんたちに向けられたものだ。
「それは大変でしたね……しかし、セインの娘さんですか」
「すっごくかわいいのよ。明るくて元気だし、人懐っこいし」
「どうしてお前が自慢するんだ」
ローゼさんが俺より早く口を開き、ソリューズさんがツッコミを入れる。そんなやり取りを見ていた俺は、ふと思いついたことがあった。
「よければ、今度シルヴィを紹介させてもらえませんか?」
「もちろんです。妹さんさえよければ、ぜひお会いしてみたいですね」
「うふふ、楽しみ」
俺の申し出を、彼らは笑顔で受け入れてくれる。そのことにほっとしていると、ユーゼフが耳元でぼそりと呟いた。
「ミレウス。縁起でもないことを考えているね?」
「……」
その言葉を否定することはできなかった。もしこの街が再び戦禍に見舞われたなら、俺は『極光の騎士』として行動するだろう。だが、生きて帰れる保証はない。
「知り合いは多い方がいいだろう。特にシルヴィは、頼れる人間が少ないから」
フェルナンドさんたちは、親父とともに古竜を倒した実力者だし、社会的な影響力もある。
彼らとシルヴィに面識を作っておけば、俺に万が一のことがあった場合でも、彼女のことを気にかけてくれるだろう。そんな計算があったのは事実だ。
「ところで、フェルナンドさんの神託って――」
そして、俺は話題を変える。彼らに聞きたいことは、いくらでもあった。