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別れ

「ユーゼフは右の二体を! ヴィーは僕の後ろへ!」


 鬱蒼とした森に僕の声が響く。


 古代文明のものらしき建造物と、それを貫く大樹を発見した帰り道。行きは大したモンスターに遭わずに済んでいたけれど、帰りまでそうはいかなかったらしい。


 僕は抜き放った剣を振るって前方の魔物を牽制した。


「グギィッ!」


 それを受けて、猿のような魔物が後ろへ跳び退く。大きさは僕らと同じくらいだろうか。僕らを襲撃してきた魔物は、合わせて三体いた。


 一度は後ろへ下がった魔物が、再び飛び掛かってくる。その軌道を読んだ僕は、ステップを踏んで攻撃をかわすと、お返しとばかりに剣で突きを入れた。


 鈍い手応えとともに、剣が魔物の頭部に突き刺さる。


「ミレウス!」


 後ろにいたヴィンフリーデが、彼女の剣を差し出してくれる。頭蓋に刺さった剣を引き抜こうとすると、場合によっては隙ができる。それを心配してくれたのだろう。


 彼女も多少は剣を使えるけど、僕らほどではない。それなら、僕が持っていたほうがいいという冷静な判断だ。

 戦いの間も、下手に戦って僕らの邪魔にならないよう立ち回っているし、その辺りのセンスは親父譲りなのかもしれなかった。


「ありがとう、でも大丈夫だよ」


 ヴィンフリーデの視線を誘導するように、僕は右へ顔を向ける。そこには、剣を布で拭っているユーゼフの姿と、絶命した二体の魔物が倒れていた。これで、襲ってきた魔物は全部だ。


「さすがユーゼフ、あっさり返り討ちにしたね」


 倒れている二体の魔物に目を向けて、僕は感想を呟く。その状態からすると、どちらの魔物も一撃で倒したのだろう。ほとんど斬り捨てるような感覚だったはずだ。


「そう言うミレウスこそ、見事な刺突だね。正確に目を貫いて頭蓋に達している」


 同じく、僕が倒した魔物を見たのだろう。ユーゼフの言葉も僕を褒めるものだった。


 ユーゼフは笑顔で腕を上げると、僕と拳を打ち合わせる。それは、二年くらい前に定着した、僕とユーゼフがお互いを讃え合う仕草だ。

 どこかの剣闘士がやっているのを見て、真似をしたのが始まりだったけど、完全に僕らの間で定着していた。


「あ、またやってる」


「ヴィーもやるかい?」


 ヴィンフリーデを誘ってみると、彼女は拗ねたようにそっぽを向いた。


「べ、別にやりたいわけじゃないもの」


 その様子を見た僕とユーゼフは、顔を見合わせて笑う。その様子は、傍から見れば無邪気にはしゃいでいる三人の子供に見えることだろう。


「……」


 だけど、僕は憂鬱な思いを抱えていた。結果を見れば、僕とユーゼフの差は明らかだからだ。


 襲ってきた魔物三体のうち、ユーゼフに二体を任せたのは、純粋に戦闘力の差だ。

 僕は目という柔らかい部位を経由して、ようやく相手に致命傷を負わせることができたのに対して、ユーゼフは真っ向から魔物を叩き斬ることができる。


 僕が剣を失いかねない突き技を使ったのも、斬るだけでは致命傷を与えられないからだ。今回は、ユーゼフが二体を倒したことを確認していたからできたけど、普段は目なんかを斬り裂いて戦闘能力を喪失させ、隙を見て急所に剣を叩き込む。それが僕の魔物戦闘時のスタイルだ。


 そうやって弱点をつかなければ、身体能力の高い魔物に対して、僕は優位に立ち回ることはできないのだ。


 僕は自分の身体を見下ろした。それは、いつまで経っても大して筋肉がつかない自分の身体だ。

 もちろん同世代に比べれば逞しい部類に入るだろうけど、すでにユーゼフにかなりの差をつけられている。

 考えたくはないけど、もしずっとこのままなら、剣闘士として活躍していくのは難しいだろう。


親父が、成長した僕とユーゼフの試合カードをとても楽しみにしていることを知っているだけに、僕は焦りを覚えていた。


「ミレウス、どうかしたの?」


 そんな僕を不思議に思ったのか、ヴィンフリーデが顔を覗き込んでくる。


「なんでもないよ。さっきの戦いを分析して、次はどうすればいいかを考えてたんだ」


 僕は咄嗟に嘘を答える。僕の不安を打ち明けたところで、みんなが重苦しい気分になるだけだ。成長を待つ以外に解決方法はないのだから、これは僕だけが抱えるべき問題だ。


「へえ、それは僕も興味があるな。ミレウスのアドバイスはとても役に立つからね」


 後ろからユーゼフが口を挟む。ヴィンフリーデはどこか納得していない顔をしていたけど、このまま剣術談義に持ち込んでしまおう。


 そうして、僕らは嘆きの森を後にした。




 ◆◆◆




「ヴィンフリーデ、俺は医者を呼んで来る!」


「ユーゼフが呼びに行ったから大丈夫! お父さんはお母さんの傍に付いていてあげて!」


「お、おう!」


 ヴィンフリーデの言葉に従って、親父はバタバタと走り去った。筋骨隆々の巨体が走った振動で、家が小刻みに揺れる。


「お母さん……大丈夫かな」


 ヴィンフリーデの声は掠れていた。


 事の始まりは、僕らが朝食を食べ終わった直後、エレナ母さんが倒れたことにあった。


 今までも調子が悪そうな時はあったけど、今回のように倒れて意識が戻らないという事態は初めてだった。


 僕はヴィンフリーデを励まそうとして口を開く。


「すぐに命に関わる病気じゃないんだし、大丈夫なんじゃ――」


「でも、もしお母さんが無理してて、本当はずっと苦しかったら……」


 その言葉に僕の顔色も青くなる。喧騒病はすぐに命に関わる病気じゃないけれど、放置していれば最終的には死に至る。


 もしエレナ母さんが苦しさを無理やりごまかしていたのだとしたら、生死の境をさまよっている可能性もあった。


「お医者さんを連れてきたよ!」


 二人で青い顔をして、どれくらい経っただろうか。扉をバン、と開く音とともに、ユーゼフが大声で医者の来訪を告げた。


「先生、こっちです!」


 さっと立ち上がったヴィンフリーデが、エレナ母さんの寝室へ医者を連れていく。僕とユーゼフも後を追いかけたけど、さすがに中に入るわけにもいかず、扉の前で立ち尽くした。


「……ユーゼフはどう思う?」


「どうって、何を?」


「エレナ母さんは、ずっと我慢してたのかな」


 僕は、ヴィンフリーデと話をしていて気付いたことを口に出す。


「たぶん、親父にも隠し通そうと思っていたんじゃないかな」


「親父にも?」


「だって、病気の正体が喧騒病だとしたら、エレナ母さんはこの街から離れなきゃならない。でも、親父には闘技場があるんだから、そう簡単に引っ越すことはできない」


「あ……」


親父にとって、闘技場はかけがえのない重要な場所だ。だけど、エレナ母さんやヴィンフリーデのことだってとても大切にしている。

 一番苦悩するのが親父だということは、考えるまでもなかった。


 もちろん、僕も闘技場に愛着はあるけど、親父の苦悩に比べれば軽いものだろう。ユーゼフはもっと簡単で、親父の指導を受けられればどこでもいいはずだ。


 エレナ母さんは気を回す性格だし、自分のことを後回しにする傾向があるから、親父を苦しませたくなくて、黙っていたのかもしれない。


「――それでは、お大事に」


「ありがとうございました……」


親父の声とともに、医者が寝室から出てくる。僕たちも無言で頭を下げると、ヴィンフリーデが医者を玄関まで案内していった。


 気になって寝室を覗き込んだ僕たちと親父の目が合った。親父は無言で頷くと、僕たちを手招きする。


「二人とも、入ってこい。ヴィンフリーデもすぐ戻ってくるだろう」


「いいの?」


 思わず尋ねる。喧騒病だとするなら、あまり人は多くないほうがいいだろう。


「ああ。ただし、大きな声は上げるなよ」


 その声に頷くと、僕たちは寝室に踏み込んだ。すると、エレナ母さんの細い声が聞こえた。


「ミレウス、ユーゼフ、心配させてごめんなさいね」


 エレナ母さんは意識を取り戻したようだった。そのことにほっとしつつも、衰弱しきった様子に心をかき乱される。


 そんな思いを表に出さないように、僕は意識して表情を固定する。これで不安な顔を見せてしまったら、エレナ母さんはもっと無理をするだろう。


「先生を送ってきたわ」


 そこへヴィンフリーデが戻ってくる。二人用の寝室に五人は少し狭いけど、文句を言うような人間はいない。


「……大切な話がある」


親父はそう切り出した。僕らの今後を決める重要な話だと、誰もが分かっていた。


「これまでの経過から、エレナは喧騒病でほぼ間違いないらしい。それも、かなり深刻な状態だ」


 その言葉は予想通りだったけど、それでもショックを受けずにはいられなかった。申し訳なさそうな顔をするエレナ母さんの肩に親父が手を置く。


「エレナの命がかかってる以上、この街にはいられねえ。引っ越す」


 その言葉に対して、誰も口を開くことはなかった。ただし、と親父は言葉を続ける。


「……俺はあの闘技場を放っておけねえ。夢もあるが、なにより責任があるからな」


「じゃあ、どうするの?」


 問いかけたのはヴィンフリーデだ。その手はベッドのシーツをギュッと掴んでいて、彼女の不安さが現われていた。


「俺はこの街に残る。エレナとヴィンフリーデは、エレナの実家へ引っ越す。あの辺りで喧騒病が発生したことはないらしいから、大丈夫だろう」


「え……?」


 ヴィンフリーデは目を見開いて驚いていた。その様子を、親父は辛そうに見つめる。


「なんで……」


 言いかけて、ヴィンフリーデは口をつぐむ。それが親父に配慮したものなのか、それともエレナ母さんに気を遣ったものかは分からなかったけど、ヴィンフリーデはそれっきり口を開かなかった。


 そして、次に親父は僕を見た。


「ミレウス、お前はどうする。……エレナやヴィンフリーデと一緒に引っ越したいなら、俺が責任をもって頼んでくる。お前は賢いから、上手くやっていけるだろう」


「僕?」


 驚きで声が裏返る。まさか僕に選択肢があるとは思わなかったからだ。だけど、僕の答えは決まっている。


「ここに残るよ。剣の修業が疎かになっちゃいそうだし――」


 そして、悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「親父は家事が苦手だから、僕がやらないと」


「そこかよ……」


親父のぼやきに小さな笑い声が上がる。実際には、家事をしてくれる人を雇う選択肢もあるけど、本当の問題はそこじゃない。


 ヴィンフリーデと違って、僕とエレナ母さんの実家にはなんの繋がりもない。そんな僕が急にやってきても、受け入れてもらえるとは思えなかった。


 もちろん、そんなことを言うわけにはいかないから、表立った理由はさっきので充分だろう。


 ちなみに、親父はユーゼフには何も尋ねなかった。そういう意味では、ユーゼフはこの場にいなくてもいいんだけど、もう四年も一緒に食事をしたり、家族のように暮らしていた仲だ。この話に参加させないわけがなかった。


「急な話だが、三日以内に出発する。エレナの体調を考えると、一刻も早いほうがいい」


「親父も行くの?」


「ああ、俺の勝手が原因だからな。それに、打診もなく急に押しかけるんだから、家に入れない可能性もある。だが、俺がいりゃ部屋の一つくらいは誰かが貸してくれるだろう」


「お父さんは、私の故郷を救ってくれた英雄なのよ。今でも感謝している人は多いはず」


 補足するようにエレナ母さんは口を開く。そう言えば、そんな話を聞いた気がするな。教えてくれたのは、二人の馴れ初めを根掘り葉掘り聞いていたヴィンフリーデだけど。


「片道で一か月くらいかかると思うが、その間の闘技場の運営はダグラスによく言っておく。ミレウス、あいつを補佐してやってくれ」


親父が口にしたのは、現役の剣闘士で、かつ闘技場の副支配人をしてるダグラスさんだ。剣闘士時代から仲が良かったらしくて、闘技場ができた時からうちにいる古株だ。


 普段は静かで温厚なんだけど、言葉の端々に剣闘士らしさが滲み出ていて、僕はけっこう懐いていた。


「うん、分かった」


 ダグラスさんはとても信頼できる人だけど、経営関係の話は得意じゃないみたいで、よく僕に意見を聞いてくる。本人も、自分で経営は苦手だって苦笑いしてたしね。


「よし、俺は色々と手配してくる。ヴィンフリーデ、エレナを頼むぞ。……エレナ、もう少しだけ辛抱してくれ」


「できることなら、あなたの夢を一緒に叶えたかったけれど……ごめんなさい」


「謝ることなんざねえよ。謝るなら俺のほうだ。……本当にすまねえ。定期的にそっちへ顔を出すし、喧騒病を完治させる方法も探し出すからな」


 エレナ母さんを一度抱きしめると、親父は寝室から出て行った。三日以内に引っ越しの手配や支配人としての顔繋ぎをするとなれば、かなりの負担だろう。


「僕、親父を手伝ってくるよ」


 そう言い残して、僕は寝室を後にする。エレナ母さんは心配だけど、ヴィンフリーデとユーゼフがいれば大丈夫だろう。


 僕は、出掛ける準備をしているはずの親父を追いかけた。




 ◆◆◆




 二日後。僕と親父が駆け回った甲斐あって、引っ越しの準備は整っていた。家財道具を大して積み込んでいないからか、身軽な馬車に見える。


 エレナ母さんたちの生活費については、親父が秘蔵の魔道具を売って充分な額を用意したらしい。急いで売ったから買い叩かれたみたいだけど、背に腹は代えられない。


 そして、僕は引っ越す二人と向かい合っていた。


「ミレウス、お父さんをお願いね! 破れてる服を着てたら注意してあげてね!」


 ヴィンフリーデは元気な笑顔を見せた。物心がついた頃から一緒に育った仲だ。それが心からの笑顔じゃないことは分かったけど、それは僕もお互い様だ。


「あはは、ちゃんと縫っておくよ。ヴィーこそ新しい家で大変だと思うけど、上手くいくことを祈ってる」


 そう答える笑顔が、どれくらい上手くできているかは分からない。ヴィンフリーデの表情が少し翳った。


「あと……あんまり無理しないでね」


「うん、お互いにね」


 僕らは静かに頷き合う。すると、今度はエレナ母さんが僕の前に立った。


「私はこの街を出て行くけど、遠くからずっとミレウスを応援しているわ。血は繋がってなくても、あなたは私の息子よ」


 そう言って、持っていた小箱を取り出す。首を傾げていると、エレナ母さんは箱の蓋を開けた。


「あ、綺麗」


 隣にいたヴィンフリーデが声を上げる。それもそのはず、小箱に入っていたのは綺麗なデザインのイヤリングだった。


 だけど、問題が一つある。そのイヤリングは片方しかなかったのだ。


「これは、私からミレウスへの贈り物よ」


 その言葉に僕は首を傾げた。親父やヴィンフリーデと違って、エレナ母さんが突飛な行動をすることはほとんどない。


 そんなエレナ母さんが、ヴィンフリーデではなく僕に女物の装飾品をくれたことも不思議だったし、そもそも片方しかないイヤリングをくれた理由もよく分からなかった。


「――正確に言えば、これはミレウスのご両親から、あなたへ渡してほしいと頼まれていたものよ」


「え?」


 その言葉に驚いたのは僕だけじゃなかった。ヴィンフリーデとユーゼフも驚いている。

 だけど、それだけだ。特に感想があるわけでもない。僕にとっての両親は、これまで育ててくれた親父とエレナ母さんだから。

 興味がないわけじゃないけど、自分の先祖はどんな人だったんだろう、というレベルの関心しかなかった。


「ミレウスが考えていることは分かるわ。……顔も覚えていない両親のことなんて、と思っているでしょう?」


「……別に憎んでるわけじゃないよ」


「でも、好きでもないでしょう?」


 図星を突かれた僕は沈黙する。そんな僕を見て、エレナ母さんは不思議な笑みを見せた。


「だから、ミレウスにこれを渡しても、あっさり捨ててしまうかもしれない。そう思って、ずっと預かっていたのよ」


 その言葉には説得力があった。憎んでいないのは本当だけど、大して関心がないのも事実だ。まして、片方しかない女物のイヤリングを渡されても実用性がないしね。


「だからね……ずるいかもしれないけど、このイヤリングを私から(・・・)のプレゼントとして贈るわ」


「……」


 僕は黙った。たしかに、エレナ母さんがくれた贈り物を捨てることはしないだろう。たとえ、それが使いようのないイヤリングだとしても。


「どうして、そこまで……」


 思わず呟く。あまり聞いたことはないけど、エレナ母さんは僕の両親と大して接点がないはずだ。そこまでする理由が分からなかった。


「子を持つ母として、ご両親の気持ちも分かるの。一緒に暮らせなくても、せめて自分たちとの繋がりを持っていてほしいのよ」


 エレナ母さんは穏やかに、それでいて力強く答えた。


「だから、これを私たち(・・・)だと思って持っていて」


「……分かったよ。ありがとう、エレナ母さん」


 イヤリングの入った小箱を受け取る。すると、エレナ母さんの表情が緩んだ。ひょっとすると、ずっとこのイヤリングを渡すタイミングを悩んでいたのかもしれない。


「ミレウス、元気でね」


 その言葉に頷く。視界の隅で、ヴィンフリーデとユーゼフが別れの言葉を交わしているのが見えた。


「よし、そろそろ行くぞ! ……ミレウス、ユーゼフ、しばらくこっちは頼んだぜ!」


 一段落ついたと見た親父が、威勢のいい声を上げる。エレナ母さんとヴィンフリーデが乗り込むと、馬車はゆっくり動き始めた。


「ミレウス、ユーゼフ、またね!」


 馬車の窓から身を乗り出したヴィンフリーデが大声で叫ぶ。僕たちが手を振ると、彼女も力いっぱい手を振り返していた。

 だけど、その姿もどんどん小さくなっていき、ついには何も見分けがつかなくなる。


「……見えなくなったね」


 ユーゼフがぽつりと呟く。


「うん。でも、ヴィーがまだ手を振っているほうに賭けてもいいよ」


「あはは、たしかに」


 二人で笑い声を上げる。それに、僕たちはまだ若い。また会うこともあるだろう。


「……次に会う時までに、立派な剣闘士にならないとね」


「……そうだね。頑張ろう」


 ユーゼフの言葉に同意する。剣闘士として名を挙げて、二人が引っ越した街まで名前が轟くようにしよう。それが何よりの手紙だ。


 そんな思いを胸に、僕たちは拳を打ち合わせた。


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