表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/214

宴席Ⅰ

 対エルフ結界の森に存在する魔工研究所。その中心部では、レティシャとシンシアが大規模な結界を展開していた。

 古代遺跡でもある研究所が排出する歪な魔力。森喰らい(エルフイーター)が異常化した原因となっているそれを恒久的に誘導し、封印する。すでにその結界の効果は確認済であり、あとは定着・恒久化の作業を行うだけとなっていた。


「これで結界は完成ね。シンシアちゃん、お疲れさま」


「は、はい……!」


 シンシアは今にもへたり込みそうな様子だった。第二十八闘技場うちに匹敵する広さの研究所に持続的な結界を展開したのだ。その疲労は当然だろう。そして、彼女を労ったレティシャもまた、顔に疲労の色が濃かった。


「レティシャ、シンシア、お疲れさま。しばらく休もう」


「ええ、お言葉に甘えさせてもらうわ。……この研究所には仮眠室があるのよね?」


「あ、わたしが案内するー!」


 レティシャの言葉を聞いて、シルヴィが元気に名乗りを上げる。


「歩けそうか?」


「歩けないと言えば、抱いて運んでくれるのかしら」


 消耗していても、やはりレティシャはレティシャだった。悪戯めいた彼女の微笑に、俺は肩をすくめて返す。


「構わないが……二人同時だから、肩に担ぐ形になるな」


「それは絵にならないわねぇ……」


 そして、シルヴィの先導に従って、仮眠室へ向かう彼女たちに付き添う。もし途中で倒れた場合には運ぶつもりだったのだが、幸いにもそんなことはなかった。


「ミレウスも一緒に寝る?」


「俺は疲れてないから、遠慮しておくよ」


 そんなやり取りも普段より短くて、彼女たちの疲労の深さを示していた。仮眠室の扉が閉まるのを見届けると、俺はシルヴィと元いた施設へ戻った。


「お帰りなさい……あの子たちはどうだった?」


「疲れてはいるけど、それ以上のことはないと思う」


 そう声をかけてきたのはアリーシャだ。少し調子が悪そうなのは、ここが対エルフ結界の中だからだ。俺やシルヴィのようなクォーターエルフは少しだるい程度ですむが、ハーフエルフの彼女はそうもいかないようだった。


「そう、よかった……」


 それでもアリーシャがここに来たのは、レティシャたちが張った結界を理解しておくためだ。そうでなければ、結界に何かあった時に対応できないと、自らその役目を買って出たのだ。


「それにしても……本当に大したものね」


 感心した様子で、アリーシャは中空を眺めていた。俺には何も見えないが、魔術師である彼女には、レティシャたちが展開した結界が視えているのだろう。


「私はあまり結界術に詳しくないけれど、それでもこの結界の凄さは分かるわ。複雑で、緻密で、それなのに強固で雄大。こんな結界をたった二人で作り上げるなんて……」


「そういうものなのか?」


 感心した様子のアリーシャに尋ねる。戦闘はともかく、結界について俺は門外漢だからな。いつもレティシャを頼っているせいで、彼女の結界術レベルが標準的なものだと思いがちだ。

 そう補足すると、彼女は何を言っているのよ、という顔で俺を見た。


「魔力の流れを遮断するための障壁、歪な魔力だけを導く誘引子、その魔力を漏らさないための封印。どれ一つとっても驚異的なレベルよ? まして、その仕組みを恒久的に機能させるために、核に魔法陣を焼き付けるなんて……あの子は何者なの?」


「あの子……」


 思わず呟く。見た目で言えば、アリーシャも同じくらいの年齢に見えるせいで、違和感が凄いな。


「何者と言われてもな……」


 俺にとってはレティシャはレティシャでしかない。あえて言うなら『紅の歌姫(スカーレット・オペラ)』だが、アリーシャには余計に伝わらないだろう。


「あ、そう言えば『結界の魔女』の直弟子だったっけ」


 そう付け足すと、アリーシャは目を丸くして驚いていた。


「『結界の魔女』ディネア!?」


「知ってるのか?」


「知ってるも何も『古竜殺し』よ? 生きた伝説じゃない。彼女抜きじゃ古竜エンシェントドラゴンは倒せなかっただろうというのが、魔術師の間では通説になっているくらいだもの」


 アリーシャは興奮しているようだった。レティシャの師匠はそこまで有名だったのか。


「それなら、私たちも生きた伝説というわけだな」


 そんなアリーシャを見て、セインが俺の肩を叩いた。そう言えば、この人も古竜エンシェントドラゴンの討伐メンバーなんだよな。


「あなたの活躍を知っている人がもっと多ければ、伝説になったかもしれないわね」


「名誉を求めて戦ったわけではないさ。必要な戦いだっただけだ」


 セインは軽く肩をすくめる。その言葉には彼らの冒険者としての矜持が垣間見えた。そして、彼は俺の肩をもう一度叩いた。


「ミレウスに至っては、正体を隠して戦った挙句に、誰も相手が古竜エンシェントドラゴンだと知らないわけだからな。もっと気付かれにくい」


「闘技場を守るために必要だったからな」


「『古竜殺し』だけじゃなくて、そんなところまで似るなんて……損な親子ね」


 そう言いながらも、アリーシャは嬉しそうだった。そして、ふと思い出したように話題を戻す。


「でも、納得したわ。あの『結界の魔女』の弟子なら、この結界もあり得ない話じゃないから」


「偽装はできそうなのか?」


 俺は気になっている点を訪ねた。そもそも、こうして結界を張った理由は、エルフ族の上層部が魔力汚染を口実に研究所を破壊しようとしたからだ。

 そして、魔力の問題は解決したものの、その手段が人間の魔術師による結界だと知れば、彼らは確実に認めないだろう。


「ええ。古代文明は未だにブラックボックスが多いから、ケチを付けられるような人はいないわ。あえて言えばドゥルガさんだけど、あの人は味方だから」


 それに、と彼女は付け加える。


「結界のせいで、純種たちはここに来るのもやっとでしょうから、詳しい分析なんてできないわよ」


「結界の核は、遺跡から発掘した部品で覆っています。据え置きの装置ということにして、危険だから触るなと言えば、手出しはできないでしょう」


 アリーシャの言葉にヴェイナードが頷く。そして、彼は結界の核である、変異種の遺骸がある場所に軽く頭を下げた。


「彼には申し訳ありませんが、当分の間は結界の核になってもらいましょう」


「かわいそうだけれど……仕方ないわね」


 十年前に失踪したハーフエルフ。それが変異種の原型だと分かったのは、遺骸を処理していた時のことだった。当時生まれたばかりのシルヴィはともかく、それ以外のメンバーは正体に心当たりがあったようで、沈痛な面持ちで事実を受け入れていた。


 ただ、そのおかげで分かったこともある。森喰らい(エルフイーター)がどうやって増殖するのかは謎だったが、生物的に生まれるのではなく、死骸もしくは瀕死体を培地として発生する可能性が高まったのだ。

 そして、それは今後の森喰らい(エルフイーター)対策において、有用な情報になるはずだった。


「ミレウス。ここは私とセインで見ておくから、気晴らしに散歩でもしてきたら?」


 と、少し暗い雰囲気を変えようとしたのか、アリーシャは明るい口調で提案してくる。


「散歩、と言ってもなぁ……」


 ここは研究所……というか古代遺跡の中だし、外は散歩ルートと言うには少し危険だ。散策には適さない気がする。


 そんなことを考えていると、ふとセインが口を開いた。


「そう言えば、戦勝祝いはどうするんだ?」


「え?」


 唐突な質問に首を傾げていると、なぜかセインは俺の両肩をがしっと掴む。


「あんな大物を倒したんだ。祝いの一つもしなければ締まらないだろう」


「……そういうものか?」


「そういうものだ。人生は楽しまなければ損だからな」


 そう言って笑い声を上げる。その姿には見覚えがあった。


「親父もよくそう言ってたっけ」


「そういう部分では、私たちは気が合ったからな。ソリューズやエルメスにはよく小言をもらったものだ」


「でも、あまり大々的にはできないでしょう? 変異種の死骸をどうしたのか、という話にも繋がりかねないわ」


「それもそうだな……仕方ない。関係者だけにしておくか。十数人程度なら、ヴェイナード君の家で大丈夫だろう」


 アリーシャの意見を受けて、セインは勝手に他人の家を使う決定を下す。……なるほど、このあたりの強引さが親父を冒険者の道へ連れ出したのか。そんなことをちらりと考える。


「まあ、それくらいなら大丈夫でしょう」


 意外なことに、ヴェイナードはあっさり許可を出した。そう言えばこの人も酒好きなんだよな。旅の間に、ちょくちょくレティシャと酒に関する情報交換をしていたことを思い出す。


「あとは、仮眠を取っている二人の意見次第か……」


 とは言え、断ることはないだろう。レティシャは言わずもがな、シンシアも賑やかな場自体は意外と好きらしいし。人が楽しそうにしているのが嬉しいそうで、さすがはマーキス神殿が誇る『天神の巫女』だ。


 彼女たちの反応を予想しながら、俺はセインたちの話に耳を傾けていた。




 ◆◆◆




 セインの提案通り、ヴェイナードの家ではこっそり酒宴が催されていた。


「変異種の討伐を祝って、乾杯!」


「乾杯!」


 セインの音頭に合わせて、乾杯の声が唱和する。


「かんぱーい!」


 そして、誰よりも元気な声でシルヴィがグラスを掲げる。……中身は酒じゃないだろうな。セインなら飲ませそうな気がするぞ。


「大丈夫よ。シルヴィにお酒は飲ませないわ」


「それならよかった」


 俺の視線に気付いたのか、近くにいたアリーシャが微笑んだ。彼女がちゃんと目を光らせているなら、今回はあまり気を張らなくても大丈夫か。


「シルヴィのこと、色々と面倒を見てくれてるのね。ありがとう、ミレウス」


「まだ小さいから、放っておくわけにはいかないだろう」


「あの子ったら、旅から帰ってきて以来、ずっとあなたの話をしているのよ。お兄ちゃんがこう言った、お兄ちゃんがこうやってた、って」


 そんなことになっているのか。とは言え、シルヴィならやりかねない気もするな。


「今だけだよ。物珍しさが薄れるまでの話だ」


「この分だと、ミレウスが帝国へ帰る時には泣き出しそうね。……もしくは、『お兄ちゃんと一緒に行く!』なんて言い出すかも」


「さすがにそれはないだろう」


 そんな話をしていると、ふとアリーシャの視線が俺の首筋に向いた。不思議に思っていることが伝わったのか、彼女は慌てたように弁解した。


「シルヴィから、あのイヤリングをペンダントにしていたって聞いたのを思い出して……」


「ああ、それでか」


 服の中に隠れていたペンダントトップを引っ張り出すと、見慣れたイヤリングが姿を現す。


「本当に持っていてくれたのね……それは、セイン(あの人)から貰ったものなの。昔、イグナートさんを冒険者に誘った頃に手に入れたらしいわ」


「そうなのか?」


 思わぬ来歴に驚く。


「小さなイヤリングだから、すっかり存在を忘れていたらしいけど」


 ということは、何かの拍子にセインがそれを見つけて、アリーシャに贈ったのか。そして、今度は俺たちに託した。イヤリング一つにも歴史があるものだ。


「……?」


 感慨にふけってイヤリングを眺めていた俺は、ふと強い視線を感じた。視線の主は……ヴェイナードだ。彼は驚愕した表情のまま、食い入るようにイヤリングを見つめていた。


「ヴェイナードさん、どうかしましたか?」


 普段なら、俺が視線を辿っただけでこっちに気付くのがヴェイナードだ。だが、今日の彼は声をかけられるまで本当に気が付いていないようだった。


「いえ……気になるデザインだったものですから。それはどこかで購入したものですか?」


 そんな受け答えもどこか不自然で、俺は首を傾げた。あまりにもヴェイナードらしくない。


「このイヤリングは、元々は夫が私に贈ってくれたものです」


 俺が答えるより早く、アリーシャが口を開く。すると、ヴェイナードは考え込むように目を細めた。


「そうですか……」


「このデザインが気に入ったのなら、夫に尋ねてみてはいかがですか? お店で買ったなら、同じようなものが買えるかもしれません」


「そうですね、少しお話を伺ってきます」


 そして、ヴェイナードは盃を手にこの場を離れる。本当にセインに聞きに行くようだった。


「……なんだか意外だな。ヴェイナードは装飾品にこだわりがあったのか?」


 ユミル商会の取り扱い品目に装飾品はないはずだが……うちは闘技場だからな。第二十八闘技場向けのリストに載せていないだけで、本当は取り扱っているのかもしれない。


「贈り物かもしれないわよ。ヴェイナード様のお相手はどんな方かしら」


 アリーシャは楽しそうにヴェイナードの後ろ姿を見送る。……と、誰かが俺の服の袖を引っ張った。見れば、シルヴィがキラキラとした目で俺を見ていた。


「お兄ちゃん、あっちに行こうよー! みんながお話したいって!」


「みんな?」


 シルヴィの指差すほうを見ると、そこにはドゥルガさんやマイルといった、魔工部隊の面々が揃っていた。目が合うと、彼らはにこやかにぶんぶんと手を振ってくる。ひょっとしてもう酔ってるんだろうか。


「お! 殊勲者のお出ましだ!」


 シルヴィに連れられて彼らのほうへ行くと、歓声とともに迎えられる。なんだか面映ゆいが、この歓迎の大半はシルヴィの人徳から来るものだろう。


「まさか、シルヴィの『お兄ちゃん』がこんなに強かったとはな!」


 その第一声はドゥルガさんのものだ。その声はとても朗らかであり、すでにだいぶ酒を飲んでいるように思えた。


「本当に。それも戦士として、ですからね。エルフの血が入っている時点で、戦士として大成することは無理だと思っていました」


「セインさんと肩を並べて戦うなんて、未だに信じられないくらいだ」


 彼らは口々に俺を褒め称える。裏があるのかとつい考えてしまうが、彼らの表情を見るにそんなことはなさそうだった。


「皆さんのおかげで、変異種と戦うまで力を温存できましたからね」


「どれだけ力を温存できても、実力がなきゃあいつは倒せないからな」


「さすが、古代鎧エンシェントメイル主人マスターなだけはある」


「えーと……」


 俺はついドゥルガさんのほうを見た。古代鎧エンシェントメイル主人マスターであることは、あまり大っぴらにはしないほうがいいと言われていたからだ。


「この面子は信用できるから、心配せずともよい。そうでなければ、変異種の討伐には連れて行かぬわ」


 それもそうか。俺が納得している間に、話題は古代鎧エンシェントメイルへと移っていた。


古代鎧エンシェントメイル主人マスターになるって、どんな感じなんですか?」


「人工精霊って本当にいるの?」


「どうやって契約したんだ?」


 さすがは魔工技師の集団だけあって、古代鎧エンシェントメイルへの興味は尽きないようだった。当たり障りのない程度で、彼らの質問に答えていく。


古代鎧エンシェントメイルが復活したら、ぜひ整備させてほしいわ」


「本当にな! ヴェイナード様はあまり触らせてくれないからな……」


「そうなんですか?」


古代鎧エンシェントメイルは国宝みたいなものだし、そもそも自動修復機能があるからなぁ」


 そう言えば、俺も自分で整備したことはないな。クリフに言われて、たまに磨いたりはしてたけど。そう伝えると、彼らは一様に目を輝かせた。よく分からないが、どうやら人工精霊は古代文明の叡智の結晶らしい。


「人工精霊って、そんなことを言うのか!? もっとサポートに徹しているイメージがあったな……」


「人工精霊によって性格が異なるって、本当なんですね」


「近衛騎士団長付きの人工精霊でしょう? 主人マスターに裏切られて性格が変わったのかしら」


 彼らは口々に感想を呟く。そして、その中には気になる情報も含まれていた。


「裏切られた?」


 そう言えば、シルヴィもそんなことを言っていた気がするな。


「そっか、『お兄ちゃん』は人間社会で暮らしていたから知らないのね」


 俺が興味を示したことで、その情報をもたらしたクォーターエルフの女性が詳しい説明をしてくれる。


「古代魔法文明が滅亡したのは、当時古代鎧(エンシェントメイル)を賜っていた近衛騎士団長の裏切りが原因だと言われているわ。王女を攫い、文明の粋を集めた秘宝を奪ってね」


「え……?」


 思わぬ展開に声が漏れる。古代魔法文明は、もはや到達できないだろうと言われている技術水準の上に成り立っていた文明……のはずだ。それが、近衛騎士団長の裏切り一つで崩壊するものだろうか。


 だが、思い当たることもある。クリフが昔のことを語りたがらなかった理由だ。基本的にお喋りな性格のくせに、昔のことはいくら聞いても教えてくれなかったが……その理由はここにあったのだろうか。


「裏切りって、何をしたんですか? そう簡単に文明が滅ぶとは思えないのですが」


「さあ……王女様を攫ったところで、文明は崩壊しないものね。王家は断絶するかもしれないけど」


 そんな話をしていると、ヴェイナードが無表情のままこちらを見ていた。王族の末裔だけあって、その手の話は気になるのだろうか。そこまで考えたところで、俺はふとあることに気付く。


「王族がエルフで、近衛騎士もエルフ……?」


 言うまでもなく、両者とも国の重鎮だ。そんな要職にエルフが就いていることに違和感を覚えた。そんな疑問を口に出すと、彼女はきょとんとした表情で答えた。


「だって、古代魔法文明はエルフの文明だもの。エルフが支配者層で、ドワーフや竜人なんかは格下扱いね」


「そんな時代があったんですか……!?」


 俺は目を見開いた。多少は歴史を知っているつもりでいたが、完全に初耳だ。


「ついでに言うと、人間はせいぜい奴隷じゃな」


「え……?」


 ドゥルガさんの補足を聞いてさらに驚く。今の勢力図からは信じられない話だ。


「――人間社会では、あまりその部分は明かされていないわ。統治者にとっては我慢ならない話なのかしらね。だから、知っているのは古代文明の研究者くらいよ。でも、彼らも公言すると統治者に睨まれるから、積極的に情報を発信することはないわ」


 いつの間に話を聞いていたのか、すぐ後ろに立っていたレティシャが情報を追加する。その様子からすると、彼女は知っていたのだろう。


 それなら、シンシアのほうはどうだろう。古代文明については驚くほど知識が豊富な彼女だが――。


 そう思ってシンシアの姿を探すと、彼女は真剣な表情で視線を手元に落としていた。そう言えば、今日はずっと神妙な雰囲気だな。その様子からすると、俺たちの会話が聞こえているようには思えなかった。


 まあ、いいか。無理やり会話に引き込まれても困るだろう。そんな結論を出して、俺はシンシアから視線を逸らした



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ