表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/214

変異種Ⅱ

 二度目となる実家訪問は、前回とは少し雰囲気が違っていた。引け目を感じている親の顔ではなく、フォルヘイムを守る戦士と魔術師の顔をした両親は、静かにヴェイナードの話を聞いていた。


「事情は分かったが……ミレウスと組んで変異種を討伐する?」


「ミレウス支配人はルエイン帝国を救った英雄であり、剣闘の盛んな帝国で最強の剣闘士の座に君臨していた英傑です。不足はないと思います」


 ヴェイナードがむずがゆくなるような褒め言葉を並べる。だが、セインは冷静だった。


「それは古代鎧エンシェントメイルも含めての評価だろう?」


筋力強化フィジカルブーストさえかかっていれば、彼の剣士としての実力はたしかです。そして、彼女たちであれば、対エルフ結界の影響を受けずに支援魔法を使うことができます」


 そして、今度はレティシャたちを指し示す。


「ふむ……たしかに、結界の影響を受けないというメリットは大きいね」


 それでもセインは渋っていた。変異種の討伐は大きな危険を伴う。討伐は俺たちだけではなく魔工部隊も参加するのだから、余計に慎重に判断する必要があるのだろう。


「もともとイグナートさんに応援を頼んで、変異種を討伐するつもりだったのでしょう?」


「あいつの強さは無茶苦茶だからな。古竜エンシェントドラゴンだって、致命傷を与えたのはイグナートだった」


古代鎧エンシェントメイルの助けがあるとは言え、ミレウス支配人もたった二人で古竜エンシェントドラゴンを倒す偉業を成し遂げています」


 そんなやり取りが続く。そして、しばらく悩んでいた様子のセインは、俺を見てニヤリと笑った。その雰囲気には覚えがある。親父が俺と模擬戦をしようとする時の空気だ。


 長い間冒険者パーティーを組んでいると、そんなところも似るのだろうか。そんなことを考えながら、俺は無言で立ち上がる。


「ほう? 察しがいいな」


「悩んだ時は剣に聞く、だろ?」


「はは、その通りだ。いい男に育ったものだ」


 そして、示し合わせたかのように家の外へ出る。三メテルほど距離を空けた俺たちは、抜身の剣を提げて向かい合った。


「ミレウス、筋力強化フィジカルブーストがかかってから始めるぞ」


「ああ」


 セインがそう告げたのは、実際に変異種と戦う時のことを想定しているからだろう。俺が頼む暇もなく、身体に筋力強化フィジカルブーストの効果が現れる。


「ありがとう」


 どっちの魔法だったか分からないため、レティシャとシンシア二人に礼を言う。そして、俺はセインと再度向かい合って――。


「っ!」


 ギィン、と硬質な音が響く。突然仕掛けてきたセインの剣撃を、俺が弾き返したのだ。


「いい反応だ。これでやられるようなら、『魔物はルールなんて守らないぞ』と格好つけて言うつもりだったのだがな」


「親父に鍛えられたからな」


 ふと、親父が仕掛けてきた数々の不意打ちが脳裏に蘇る。そして、今度は俺から剣を繰り出した。剣は途中でトリッキーな軌道を描き、セインの剣をすり抜けようとする。

 簡単なフェイントだが、筋力強化フィジカルブーストがかかった時の速度でこれをやると、引っ掛かる剣闘士は多い。だが――。


「おっと」


 セインはこともなげに俺の剣を弾いた。多少はバランスを崩すことを期待していたのだが、甘く見過ぎていたか。

 お返しとばかりにセインの剣が振るわれ、今度は俺が受け手に回る。矢継ぎ早に繰り出される連撃は、どれもが弾きにくい剣筋であり、セインの技量の一端が垣間見えた。


 ――なんだか『魔鏡リフレクター』みたいだな。戦いながら、俺はそんな感想を抱く。現在の剣闘士ランキング三位である『魔鏡リフレクター』もまた、相手の裏をかくような巧みな剣の使い手だった。


 俺とセインの間で斬撃の応酬が続く。単純に比較することはできないが、セインは親父よりもテクニックのほうに重きを置いているように感じられた。


「っ!」


 セインの連撃の隙を突いて右側に回り込んだ俺は、さらに右から剣を振り切る。半ば背後から襲う形の斬撃は対処しづらいはずだ。


「ちっ!」


 セインは無理やり剣を軌道に割り込ませる。だが、その姿勢はこちらに向き直ることがきておらず、後ろへ向かって剣を突き出すような格好だ。そんな体勢で筋力強化フィジカルブーストのかかった俺の剣を止められるはずがない。


 ――そのはずだった。


 ガキン、と硬い音を立てて、セインの剣が俺の剣撃を受け止める。そして、その腕は赤く輝いていた。


「……やっぱり闘気か」


 先日の森喰らい(エルフイーター)戦でも見た輝き。間近で見たそれは、やはり『大破壊ザ・デストロイ』の闘気と同質のものに見えた。


「しまったな……まだ使うつもりはなかったのだが」


 セインはばつが悪そうな顔で呟く。ということは、不意を打たれて闘気を使わざるを得なかったということか。向こうの本気を引き出せたのなら嬉しい話だ。


「遠慮するな。闘気を使う手合いと戦ったことはある」


大破壊ザ・デストロイ』のことを思い出していたせいか、『極光の騎士(ノーザンライト)』の口調が甦る。セインはそんな俺を面白そうに見ていたが、やがて不敵な笑みを浮かべた。


「イグナートに鍛えられたなら、闘気くらいは知っていて当然か。……先に言っておくが、私の闘気量はあいつほど無尽蔵ではない」


 そう言いながら、自分の剣を赤く輝かせる。やがてその輝きは腕へと移っていき、体幹を通じて足へ移動していく。


「その変わり、器用さには自信がある」


 ――来る。セインの足に力が入った瞬間、俺は剣を構えた。予想に違わず、セインはまっすぐ突っ込んできた。だが、その速度は今までの比ではない。


「――っ!」


 それでも、闘気による強化は予測できていたことだ。セインの足に宿っていた赤光は、いつの間にか腕から先に移っている。それを見た俺は、正面から剣を打ち合わせることなく、相手の力を受け流す。


「おっ?」


 セインから驚きの声がもれる。受け流されるとは思っていなかったのだろう。


「……自分より筋力に優れた相手しかいなかったからな」


「なるほど……何がどう役に立つか、分からないものだ」


 そこからの攻防はめまぐるしいものだった。セインは闘気の有無で速度や剣撃の重さを変化させることができる。さらに、そこに剣技としての緩急やフェイントを織り交ぜられるのだ。今まで戦った相手の中でも屈指の強敵だった。


 剣を突き出し、斬り上げ、受け止め、薙ぐと見せかけて再び突く。セインの猛攻に対応しながら、隙を見てはカウンターを入れ、そのままこちらの連撃に持ち込む。


 そんな攻守交替が幾度も続き、剣戟の音だけが響き続ける。いつしか俺は闘技場で戦っているような錯覚を覚えていた。


 だが、そろそろ決着を付けるべきだろう。セインの剣を捌きながら、俺は決定的な反撃の糸口を探す。セインの剣は技巧的で読みにくいが、剣の呼吸とでも言うべきものはなんとなく掴めた。


「――ぉぉッ!」


 そのほんの僅かな隙をついて、俺はセインに殺到した。闘気によるブーストを考慮しても、相手の剣は間に合わない。俺の突貫に、セインが目を見開いた。


「む……」


 だが、今度は俺が見を見開く番だった。俺の剣はたしかにセインの身体を捉えており、その左腕部に剣が食い込んでいる。それなりに出血もしているようだが、戦いに影響を及ぼすほどではないだろう。


「闘気を盾にしたのか」


 俺の剣を阻んだのは、小さく凝縮された赤光からもたらされる斥力だった。『大破壊ザ・デストロイ』は全身に濃密な闘気を纏っていたが、局所的な厚みであれば遜色ない。


「言っただろう? 器用さには自信があると」


 そして精悍に笑う。その笑顔は、戦いの続きを催促するものだった。


「いいだろう。その器用さも念頭に置いて戦うだけだ」


 俺もまた頷く。そして、戦闘が再開される……はずだった。


「そこまでよ! ……セイン、目的を忘れてるわよ」


 俺たちの戦いを終わらせたのは、アリーシャの鋭い声だった。以前のしおらしい態度からは想像もできないが、こっちが彼女の素なのかもしれない。


「ん?」


「ん?じゃないわよ。闘気を使い出してから、あなた本気だったじゃない」


「いや……ミレウスがこんなに強くなっているとは思わなかったものでな」


 叱られて、セインはばつが悪そうに頭を掻く。その様子にアリーシャは溜息をついた。


「それが分かったら充分でしょ? あのまま戦い続けていたら、どっちかが大怪我をしていたわよ」


 アリーシャは呆れたように呟くが、怒っている様子はなかった。慣れているのだろう。


「気持ちは分かる。強い戦士との戦いは楽しいから」


 俺がセインに同調すると、彼は嬉しそうに俺の肩を叩いた。


「そうだろう? さすがミレウス、いい戦士になったものだ」


 悪びれずに笑い声を上げると、セインは剣を鞘に納める。その彼に向かって、俺は手を差し出した。


「ふむ? 試合後の握手か?」


「いや、そうじゃない」


 不思議そうな顔をするセインに、俺は首を横に振ってみせた。そして本題を口にする。


「一つ提案だが……剣闘士になる気はないか」


「……なに?」


 虚を突かれた様子のセインは、しばらく言葉が出てこないようだった。だが、やがて弾かれたように笑い出す。


「くははははっ! 聞いたかいアリーシャ! まさか息子に剣闘士としてスカウトされる日が来るとはな! これはイグナートを冒険者に誘ったお返しか」


「そういう訳じゃないが……優れた戦士の勧誘は、闘技場の支配人の勤めだからな」


 なおも笑いが止まらない様子のセインに、俺は真面目に答える。


「嬉しいことを言ってくれる。……だが、前も言った通り、私はここを離れるわけにはいかない」


「まあ、そうだろうな」


 その言葉は予想通りのものだった。もともと、セインがすんなり剣闘士になるとは思っていない。強いと思ったから声をかけてみた。それだけだ。


「いつか気が向いたらでいい。帝都に来るようなことがあったら、第二十八闘技場を訪ねてきてくれ」


「ああ、覚えておこう」


 セインは清々しい笑顔で頷いた。あまり一つ所に留まるタイプには見えないが、期間限定の剣闘士というのもアリだろう。そんなことを考えていると、アリーシャが複雑そうな表情で俺たちを見ていた。


「……あなたたち、意外と仲がいいのね」


「ええと……仲がいいというかなんというか……」


 アリーシャの言葉になんと返したものか。そう迷っていると、セインが気取った様子で口を開いた。


「お互いに超一流の戦士だからな。通じるものはあるさ」


 ……この人、自分で超一流とか言ったぞ。たしかにそうだけどさ。


「強い戦士には敬意を払う。当然のことだ」


「ミレウスもそっち側なのね……ふふっ」


 アリーシャは諦めたような、それでいて少し嬉しそうな顔で忍び笑いを漏らした。そして、改めて俺を観察する。


「ミレウス、怪我はない?」


 その質問に、俺は首を横に振った。


「大丈夫だ。むしろ、そっちが怪我をしたはずだが……」


 そう言ってセインを指差すと、彼は大仰に肩をすくめた。


「これぐらい怪我のうちに入らんよ」


「何言ってるのよ。かすり傷にしちゃ深いじゃない」


 アリーシャはセインの負傷した腕を手に取ると、すぐさま魔法を発動させる。みるみるうちにセインの傷は癒され、後には血の痕だけが残っていた。


「本当に、魔法構築の基礎から違うのねぇ……」


 その様子を見ていたレティシャがぽつりと呟く。アリーシャの使った治癒魔法を見て、色々思うところがあったらしい。


「びっくりしました……」


 同じく、シンシアも目を丸くしている。治癒魔法は彼女の得意とする分野だから、余計に驚きが大きいのかもしれない。


 そして俺もまた、エルフ族の魔法に用事があった。セインの傷を治したアリーシャに近付くと、彼女は不思議そうに俺を見る。


「その、頼みがあるんだが……」


「え? 私に?」


 自分に頼みごとがあるとは思わなかったようで、アリーシャは目を瞬かせていた。


「エルフ族の魔法を教えてほしいんだ。……特に、筋力強化フィジカルブーストの効果を持つ魔法を」


筋力強化フィジカルブーストを?」


「お兄ちゃんは魔法戦士になりたいんだってー! そしたら、古代鎧エンシェントメイルがなくても闘技場で戦えるからって」


 なおも不思議そうなアリーシャに、シルヴィが説明をしてくれる。


「前にも魔法を覚えようとしたんだが、その時はその……自分の体質のことを知らなかったからな」


「ああ、人間の魔法を学んだのね。途中からはともかく、基礎は全然違うから……」


 アリーシャはあっさり納得する。魔法教室を開いているだけあって、そっち方面にも詳しいようだった。


「そういうことなら、私に任せて。……とりあえず、家へ戻りましょう?」


 そう言って、彼女は嬉しそうに微笑んだ。




 ◆◆◆




「ミレウスの魔力、なんだかおかしいわね……」


 エルフ族の魔法を覚えるべく、リビングで指導を受けていた俺は、落胆する羽目になっていた。


「おかしいとは、どういうことだ?」


 そう聞いたのは、俺ではなくセインだ。この場は俺がアリーシャから魔法を教わるためのものだが、場所が彼らの家の中だし、みんな興味があるようで集まっていたのだ。

 さらに、ヴェイナードは帰ったものの、レティシャやシンシアも傍聴を希望しており、彼女たちにとても興味を持っているアリーシャは、あっさりそれを許可したのだった。


「なんというか……動く気配がないのよ。魔法を使うためには、魔力を操作する必要があるんだけど……」


「上手くいかないもんだな……」


 思わず呟く。ようやく魔法を使えるかと思ったらこれだ。


「魔力なんて、意識しなくても多少は動くものだけど、驚くほど綺麗に固まっているの。どうしてかしら。……あ、でも、どこかでこんな魔力を見たことがあったような」


 アリーシャは頬に手を当てて考え込む。その視線は見るともなしに部屋の中をさまよい……やがてシルヴィのところで止まった。


「分かった! シルヴィ、あなたの友達に魔道具を使い過ぎた子がいたでしょ?」


「え? ……あ、シーロ君のこと?」


「そうそう、シーロ君よ。魔道具を使い過ぎて倒れちゃった子」


 そんな彼女たちの会話を聞いているうちに疑問が浮かぶ。


「魔道具って、使用者にも負担がかかるのか?」


「魔道具によっては、使用者と接続して魔力を供給させるものがあるのよ。もちろん、魔力を根こそぎ持っていくわけじゃなくて、魔法を起動するための呼び水としてちょっと使うだけなんだけど……」


「シーロ君は面白がって、古代魔道具を一日中使ってたから倒れちゃったんだよね」


「それって、つまり……」


 俺の顔が引きつる。母娘の言葉から連想されることは一つだ。


古代鎧エンシェントメイルのせいなのか……?」


 それでは、ヴェイナードも魔法が使えないのだろうか。そうは見えなかったが……。そんな俺の思考を否定するように、アリーシャは首を横に振った。


「それもあるけど、原因は別のところにあるのよ。ミレウスが器用すぎたのね」


「意味が分からないんだが……」


 アリーシャの回答に首を捻る。器用なら、魔力を動かせないなんてことはないだろう。


「魔道具にとって、接続される魔力は揺らぎがないほうがいいのよ。そういう意味では、ミレウスの固まった魔力はとても理想的なの。たぶん、無意識に古代鎧エンシェントメイルに合わせたのね」


「でも、もう数カ月は古代鎧エンシェントメイルを起動してないぞ」


「たった数カ月でしょう? ……それより問題なのは、魔力の使い方を知らないままに、魔力を固定化してしまったことね。ミレウスの身体は、魔力はそういうものだと思い込んでいるのよ」


「じゃあ、俺が魔法を使うことはできないのか?」


 そう尋ねると、アリーシャは思い出すように中空を見つめた。


「シーロ君の時は、半年ほどかけてなんとか魔力が動くようになったけど……ミレウスはもう大人だし、長い間古代鎧(エンシェントメイル)を使っているものねぇ……」


 そして、アリーシャは言いにくそうに、だがはっきりと宣告する。


古代鎧エンシェントメイル主人マスターである限り、魔法を使うことは難しいと思うわ。魔力を動かすトレーニングをしても、古代鎧エンシェントメイルとの繋がりが、すぐに魔力を固定化するから」


「そうか……」


 俺はそう答えるのが精一杯だった。自分の力で試合の間(リング)に立つためには、古代鎧エンシェントメイルを放棄しなければならない。だが、そうなれば『極光の騎士(ノーザンライト)』は今度こそ消滅する。それに……。


 ――主人マスター……ありがとうございました。


 クリフの言葉が脳裏に蘇る。古代鎧エンシェントメイルはただの鎧ではない。幾度も窮地を切り抜けてきた相棒だ。その存在が俺の夢を阻むとは、あまりに意地の悪い話だった。


「ミレウス……?」


 想念に囚われていた俺は、アリーシャの声で我に返った。気付けば場の全員が俺を心配そうに見つめている。そんなに怖い顔をしていたのだろうか。


「……すまない。少し考え事をしていただけだ。魔法はひとまず諦めるよ。ところで、森喰らい(エルフイーター)の変異種の討伐についてだが……俺も参加できるってことでいいんだよな?」


 そして話題を変える。突然話を向けられたセインは、少し慌てた様子で頷いた。


「あ、ああ。もちろんだ。ドゥルガの爺さんにも言っておく」


「討伐はいつになりそうなんだ?」


「そうだな……私たちはともかく、魔工部隊は兵器の調整があるからな。早くても五、六日はかかるだろう」


「五、六日か……」


 これまでに費やした日数に比べればわずかだが、かと言って無為に過ごすにはやや長いな。そんなことを考えていると、アリーシャが口を開いた。


「今はゆっくり休んだら? 変異種は森の奥にいるから、一日や二日じゃ片付かないはずよ」


「ついでにまた戦わないか? 自分で言うのもなんだが、剣の稽古相手としては悪くないだろう」


 アリーシャの提案に続けてセインが口を開く。たしかに悪くない過ごし方だ。


「駄目よ。あなたたち、放っておいたら体力を使い果たすまで剣を交えてそうだもの」


「否定できないが……少しくらいいいだろう?」


「あんなハイレベルな試合をしていたら、少しの時間でも消耗は大きいわよ」


「そこをなんとか」


 なんだろう、だんだんこの夫婦のやり取りがコミカルに思えてきた。場を和ませるためにわざとやっている……わけじゃなさそうだな。


「ともかく、三人とものんびりするといいわ。もし案内が必要なら言ってね」


 そして、アリーシャが話をまとめる。のんびりか……まあ、特にできることもなさそうだしな。レティシャが研究所にまた行きたいと言いそうだから、それに付き合う心構えだけ持っておくか。


 そんなことを考えながら、俺は椅子にゆったりと掛け直した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ