2-4.動揺
2-4.動揺
〜モモカ〜
「これが…戦争…」
私はちゃんと現実を見ていなかったことを実感した。
お城ではイジメはあったものの国に守られ、王様に守られ、兵士に守られ、大事に大事に育てられてきたのだ。
この戦場にくるまでの道中も戦争に参加することに決めたクラスメイトたち (私以外は男子)は、どんな子がいるか…とか、颯爽と助けて惚れてくれるかも…とか、そんな浮ついた話ばかりしていた。
戦争にあまり参加したくないと言っていたクラスメイトたちも全然わかっていないだろう。私たちは本当にあの、戦争をしているのだ。
「キャーーー、助けてーー」
「娘だけは、娘だけはお助けください」
「この子らだけはワシが守る」
悲鳴をあげて逃げ惑う人々、怪我をして動けない娘を抱きながら抵抗するお母さん、子供達を守ろうとするおじいちゃん。
みんな目の前で殺されていく。
殺されるだけならまだいい。
「うへへ、この女俺がもらっていいか?」
「ああ、もうこの国の兵士どもは殲滅済みだ。後は戦利品の分配だけだ。金目のもの探しよりそっち優先っていうならいいんじゃねーか?」
「まぁ金も欲しいがこの女を前にするとな…こいつをいただいてから探しにいくよ」
そう言って、女は組み敷かれ、抵抗するも止む無く犯されていく。
そんな光景を目の当たりにして、私も、男子たちも呆然としていた。
人の焼け焦げた匂い、男と女の汗やいろいろな匂いの混ざり合った匂い、血の匂い、本当にいろいろな匂いが混ざり合い、吐きそうになった。
詳しい話は聞いていなかった。
ただ、戦場に援軍をって言われた。
てっきり責められている味方へ援軍に行くと思い込んでいた。
だって滅ぼされるかもって言ってた。
だから私達が必要だって。
これって滅ぼす側だよね?
私達、他の国を滅ぼすお手伝いをしているの?
知らなかった。
知らなかったで済まされるわけがない。
犯されている人がこちらを涙を溜めた目で睨みつけている。
あの人からすれば、私達は略奪して、体を汚した国の憎むべき相手なのだろう。
その目を見て、同じ女として動揺した。
私が逆の立場だったら私のことを許せるだろうか?
知らなかったからあなたを汚すお手伝いにきてしまいました…最低だ。
だって、戦争は相手がいて初めてできるもの。
日本でもそうだ。
自国を守る為。
自国を潤す為。
いろいろな大義名分を掲げて戦っている。
この戦争がどうやって始まったのかも知らない。知ろうとしなかった。
守るという言葉に酔って、何も見ていなかった。
ああ、私はなんて馬鹿なんだろう…ダイキくんのことを、この人バカなんだ…なんて考えてる場合じゃなかった。私も、私たちもバカだ…
そんなことをしばらく考えていると、クラスメイトたちがいきなり騒がしくなった。
「お、おい、あそこ、なんか動いたぞ」
「ひっ、まだ敵が!?」
「"ファイアーボール"」
ファイアーボールは、動いた場所の瓦礫を吹き飛ばした。
そして、一緒に小さな子供も吹き飛ばした。
「こ、子供!?」
「おい、お前、なんであんな子供殺したんだよ」
「し、しょうがねーじゃん、あの子供も敵なんでよ?そーだ、敵だよ!もしかしたら俺たちが子供だと油断した時に刃物で刺されていたかもしれないだろ!ここは戦場だ!女子供でも戦争に参加してるんだから殺されるのは当たり前だろ」
こいつは何を言ってるんだろう?
この略奪されてる人たちが戦争に参加してるように見えるのだろうか?
どう見てもこの街の人々で略奪され、逃げ惑ってるだけだ。
「いや、しかしこの状況をみるとだな…」
「おい、俺は次はあいつらをターゲットとする。トゥーリオ神聖国を守る為にな!」
そう言って、子供を殺してしまったクラスメイトの指差す先には、年頃の女性数名と子供たちが固まって隠れながら逃げているところだった。
「お前たち、何をしている。大人しく投稿するなら暴力は振るわない」
早速その人たちのところへ行ったようだ。
「あ、あの、本当に、投稿すれば大丈夫なんですか?安全なんでしょうか?」
「その代わりと言ってはなんだが、俺に興味のある奴はいないか?」
「……」
「くそっ、もういい、女と子供は別々にきてもらう」
「そ、それはなぜでしょうか?」
「とぼけなくていい!わかっているだろう?子供達のためだ」
「……はい」
そう言って、物陰に女を複数人連れて行き、犯し始めた。
それを見ていた男子たちは、混乱したのか興奮を抑えられなかったのか女を探しはじめた。
そしてみんなそれぞれ散っていった。
そのうちの一人が私に声をかけてきた。
「な、なぁモモカ。お前、帰った後もイジメられ続けるの嫌だよな?」
私はいきなり何を言ってるのか理解できなかった。
「俺はさ、嫌がってる人を無理矢理とかは趣味じゃねぇんだ…俺が助けてやるからよ、俺の女にならねぇか?」
こいつは本当に何をいってるんだろう?これも無理矢理と対して変わらないじゃない。
「大丈夫、俺の女になれば守ってやるからよ」
この状況で何をいってるのだろうか?こんな卑怯な奴が誰を守るって?しかもこいつに犯される時点で既に私は守られていない。
「あ、あの…ごめんなさい」
私が断ると、すごい驚いた顔をされた。
断られると思ってなかったの?
「こ、この野郎!なら無理矢理でも犯してやる!お前一人帰ってこなくても誰も何も言いやしねぇんだよ!」
いきなりの豹変ぶりにびっくりして動けなかった。そして突き飛ばされて、倒れてしまった。
その時、
「こらはいったいなんなんだ…」
そう言って目の前に現れたのは男女二人ずつ計四人の黒髪黒目の少年少女たちだった。
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