2-2.援軍には誰が行く?
さて、勇者サイドの一人のお話し。
守ると宣言してくれたダイキくんは果たして…
2-2.援軍には誰が行く?
〜加藤 桃華〜
「こうして集まってもらったのは他でもない。勇者殿たちの中から数名援軍に行って貰いたいのだ」
その言葉に勇者たちはざわめきだす。
「無論、援軍に向かってもらった者には戦利品をいくつか自由にする権利を与える」
この言葉に男子たちが色めきたつ。
「俺行こうかな?できれば男子だけで行きたいな!」
「そうだな、女子がいると少し面倒だな」
「いや、俺は敗戦国の人々に救いの手を差し伸べるためにだな…」
「俺もいこうかな…ここにいても女子どもはみんなダイキの方に流れてくしなー、メイドさんもなんでも言うこと聞いてくれるから面白くねぇーし…」
男子の一部が行く方向に傾いている。
私は知っている。一部の男子はメイドと体の関係を持っていることを…合意の上でだから周りがとやかく言うことじゃないのはわかっているが、メイドは勇者が相手ならなんでも言うことを聞くように王に厳命されている。ここ数ヶ月の雰囲気を見る限り、勇者に歯向かえば解雇、禁固刑、最悪極刑までありえる…
男子たちも知ってて体の関係を迫ったのだろう。
まさか無理やりはしないだろうが…
「ねぇ、聞いてる?モモカ?」
「え、あ、私ですか?すみません」
「んー、まぁいいけど、モモカが今回戦争行ってきてくれない?男子だけに任せると今より偉そうになるじゃん?」
「え、な、なんで私、なんですか?」
「モモカが行くのがいいって意見が1番多いからよ!それにモモカなら男子たちに襲われる心配もないじゃん?私たちあいつらに訓練中にケツ触られたり胸揉まれたりいろいろドサクサに紛れてされてちょっと信じられないのよね、男子を」
「そ、そんなの私も…」
「大丈夫だって、モモカなら!」
そう、訓練中からずっとこんな調子だ。
女子は男子連中に軽い性的スキンシップを怒れない程度にされてイライラしていた。そんな時、私が目に付いたのか標的になってしまった。
あからさまなイジメはない。
でも、嫌なことをは私任せ、悪口、噂。地味な目立たない嫌がらせの毎日だ。
ダイキくんにも相談した。
結果は「みんな悪気があるわけじゃないと思うんだ。当人どうしで話し合って見るべきだよ」と言われ、女子全員集められ、話し合いさせられた。最悪だった。
それからはお風呂に入ることを禁じられた。
私は日に日に臭くなり、噂では私は専用の臭い消しを使わないとこの体臭を隠せないことになっているらしい。男女問わず私を避けるようになった。おかげでどれだけイジメが激しくなっても私に触れることはないだろう。
訓練ダンジョンで何組かのチームに分け探索することになった。
私は一人取り残されていた。数人チームに入りそびれていた人がいたみたいだが、運良くダイキくんと目があった。私はダイキくんに「ダンジョン怖いし私もダイキくんのチームに入っていい?」と聞いた。ダイキくんは「ああ、ちょっと待ってね」といい、周りを見回し、私より強い女の子を見つけると、その子をチームに入れた。そして、「ごめんね、もうチームうまっちゃったんだ」だってさ…
そのあと別のチームに無事入れた私はダンジョンの中で囮にされた。チームメイトは私の足をウィンドカッターで切り、「ごめん、誤爆した。全員退避だからなんとか逃げて」と言われた。その時、ダイキくんと目があったが普通に、「頑張れ」と言っていた。他の人たちは目を逸らしこちらを見ようとしない。
そして今日のこれだ。これで最後にしよう。
「あ、あの、ダイキくん。私、こ、今回戦争に参加することになったんだけど…ダイキくんも一緒に…」
「悪い、モモカ。今回日本人らしき人の発見報告があったから参加するつもりだったんだが、男だけだったみたいなんだ。ユメノは間違いなくいないし参加はしないよ」
やっぱりね…なにそれ?僕が守るって…王子様みたいって…怖いけど頑張ってみようかなって…思ったのに…
ギリギリまで頼っちゃいけないって努力して強くなったのに…
でも私も悪いか…戦争に行って、死ぬのかな…頑張って逃げてみようかな?ここにいるよりマシだよね?
「そ、そうだよね…私、頑張ってくるよ」
でも最後に一言言ってやろう…
「ダイキくんが守ってくれるって言った言葉信じて、戦争に行ってくるね」
私がそういうと、ダイキくんは少し驚いた顔をして、口を開いた。
「ああ、モモカ、頑張ってきてくれ。戦場では他のクラスメイトが守ってくれる。帰ってきたらまた俺が守ってあげるよ」
そらを聞いてわかってしまった。ああ、この人バカなんだ…
私は、このクラスメイトたちから離れることを第一に考え、戦場でどうやって気付かれずに逃げるのかを考え始めるのであった。
お読みいただきありがとうございます。
どうやらダイキくんは守っているつもりのようですね…
守るってなんなんでしょう?
次話もお読みいただければ幸いです。