1-1 勇者召喚
1-1 勇者召喚
「ようこそ、勇者様方。勇者召喚に応じていただきありがとうございます。どうか我々をお救いください」
そういうと煌びやかなドレスを来た美女が頭を下げる。
美女に続いて周りの兵士のような格好をした人達も同じように頭を下げていく。
「え?なにこれ?私たちどうなったの?」
「おいおい、勇者様方って俺たちのことか?何をいってるんだ?」
「こ、これはもしや、異世界転移というやつでは?じゃあ僕はもしかしたらすごい力を…」
などなどみんな(一部を除いて)混乱してるようだ。
俺も混乱中だ、正直このクラスの人達で知ってる人なんて数人程度だ。たまたまこのクラスにプリントを届けにきてただけなのだ。それがこの混乱の渦中にいるという。混乱しないわけがない。
「すみませんが、貴方たちは何者なのでしょうか?僕達は気付いたらここにいて状況が飲み込めていません。できれば説明して欲しいのですが」
さすがイケメン。しっかりまとめて質問してくれる。おっと、イケメンだからなんて言ったら失礼か、さすが天川だ。
「私は"ミネバ・トゥーリオ"ここトゥーリオ神聖国の第一王女です。この国に危機が迫っており、やむなく勇者様方を儀式により召喚しました。詳しいことは謁見の間にて国王の方からから説明させていただきます。私について来て下さい」
そして、謁見の間に到着すると
「ようこそ勇者様方。ワシはこのトゥーリオ神聖国聖王"アダムス・トゥーリオ"である。ここがどんなところなのか、勇者様方を召喚した理由など詳しい話は今からしよう。なのでしばし聞いて欲しい。まず……」
国王様からの説明をまとめると
この世界はアルトリアという。
この世界では、大きく分けると人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、龍人族、魔族などの人々が暮らしている。
この世界では迷宮というところから魔物という生物が生まれ、魔物は迷宮外にでてきて人や街などを襲う。
この国はトゥーリオ神聖国という神の神託を受けられる数少ない国である。
魔族は魔王を崇拝しており、魔王が復活すると魔王と共に人々を虐げる。
魔王の復活により各国の力の均衡が崩れ始めてきた為、勇者召喚をすることになった。
魔王を倒し、各国の力の均衡を保って欲しい。
既に魔族の国とは戦争になっており、人々が虐殺され救いを求めている。
その他近隣諸国とも緊張状態にあり、いつ隙をついて攻められてもおかしくない危険な状態。
召喚されたものはこの世界の一般の人よりも優れた力を持っており、その中でも勇者と名のつく職業をもつ者は別格。
勇者召喚の際に意思疎通の為にこの世界の言語が理解できるようになり、読み書きは自然とできる。
勇者の送還方法は魔王を討伐すると神託が降る。
ということだ。
魔族の国との戦いを戦争と呼んでることや、送還方法が魔王を討伐して神託など疑問に思うところが多々ある。安易に協力するのはよくないかもしれない。
「まずは誰が勇者なのかをはっきりさせておきたい。『ステータス』と念じれば自分のステータスが表示されるので確認してくだされ」
『ステータス』
名:恩明 蓮
性別:男
年齢:17歳
職業:テイマー
レベル:1
HP:10
MP:20
STR:1
DEF:1
INT:1
MGR:1
AGL:5
LUK:100
固有スキル
ユートピア
スキル
テイム1
称号
異世界人
もふもふマニア
ユートピア…
所有の土地に魔物の居住場所をつくることができる。
テイム…
陣を飛ばし魔物を自分の配下に置くことができる。配下に置かれた魔物は命令に逆らえない。
おお、テイムとか最高じゃないか、俺のためにあるようなスキルだ。しかもユートピアってまさに楽園じゃね?魔物にもきっともふもふはいるだろう。目指せもふもふ天国!!
「すみません。この固有スキルとスキルの違いはなんですか?」
おおっと、またまたいい質問だ。さすが天川!
「おお、やはり固有スキルを持っておったか。固有スキルというのはこの世に二つと同時に存在しない固有のスキルのことじゃ。しかし過去に同じスキルを持っておった者はいる可能性があるがの。そしてスキルとは誰もが会得できる可能性のあるスキルじゃ」
「なるほど、わかりました」
「して、皆の職業はどうであったか?」
「俺は闘聖だぜ!」
「わ、私は治癒士です…」
「僕は槍聖ですね」
「私は魔導士よ」
みんな強そうだな……
俺テイマーだよ?でもまぁ強いよりもふもふがいいから良しとするか。生きていけるかだけが問題だな。とここで、やはりあの男が!
「僕が勇者みたいです。スキルも多くて驚いています」
「おお、それは本当か!勇者様、どうかステータスを見せていただけないだろうか?『可視化』と念じれば周りにも見えるようになる」
「わかりました」
名:天川 大輝
性別:男
年齢:18歳
職業:勇者
レベル:1
HP:50
MP:50
STR:3
DEF:3
INT:3
MGR:3
AGL:3
LUK:50
固有スキル
限界突破
武術適正
魔法適正
成長率強化
スキル
剣術1
大剣術1
短剣術1
火魔法1
土魔法1
光魔法1
HP回復力強化
MP回復力強化
称号
異世界人
ハーレムマイスター
異世界の勇者
限界突破…
一定時間自分の限界を超える。
使用後二十四時間このスキルは使えない。
全ステータス二倍。
武術適正…
武術に関するスキルを会得し易くなる。
魔法適正…
魔法に関するスキルが会得し易くなる。
成長率強化…
レベルアップ時ステータス上昇値に補正。
メチャクチャ強いな、AGIとLUKしか勝ってないよ?スキルの数も全然違う。その上レベルアップでも差が出るのか…俺だけ弱いなんてないよな?
「それでは勇者とその仲間達よ、このままではなんの罪もないこの国の民たちが蹂躙されてしまう。どうか我々を救ってはくれないだろうか?もちろん優秀な騎士や魔法士に訓練させる。強くなるまではこちらでしっかりサポートしよう」
いやぁ戦争に参加するのはさすがにしたくないな。そもそも魔族がどんな奴らかも知らないし、近隣諸国とも緊張状態ってことは魔族以外とも戦争する可能性もあるってことだよね?まずはこの国の言葉だけを鵜呑みにするのではなく、自分の目で真実を確かめないとねー
「わかりました、協力しましょう。僕達も困った人達を放っておけない。この国の人達はなんの罪もない、蹂躙されるべきではないはずだ」
えーーーーーーー!!!!!!!
何言ってるの?嘘でしょ?ちゃんと考えようよ、戦争するんだよ?他国の人々を殺さずに戦争とか無理だよ?相手がどんな人間かもわかってないんだよ?
「あ、あの、戦争って少し怖いです……」
おお!!まともな意見がでてきた。この子は戦争をするってちゃんと認識できてるのかも?
「加藤さん、怖いのはみんなも同じさ。でも僕たちは力を得てしまったんだ。力を持つものは力を持つものにしかできないことをやるべきだとは思わないかい?いざとなったら僕が守るから、一緒に頑張ろう」
おいー天川ぁ!!何爽やかな笑顔で綺麗なことだけ並べちゃってるの?いや、本当にそう思っているのか?
「ぼ、僕は特別な力なんて持ってないから、この国をでて自由気ままに旅をしようかと。ですから旅の支度金をいくらかもらえませんか?」
あー、この言い方はまずいぞ、やり方間違えたぞ?どうやってその言葉を選んで今言ったかはわからんが、このタイミングはマズイ。
「快盗くん、君はやっても見ないのに力がないからってこの国の民たちを見捨てるというのかい?まずは訓練して強くなれるかどうか確かめてからでも遅くないんじゃないか?それと君のステータスを見せてくれないか?可視化できるから戦えるかどうかはわかるはずだ」
あー、やっぱこうなったよねーそりゃ可視化できるのにそんな言葉通じないよねー
「いや、今の言葉で気が変わったよ。頑張ってみるよ…」
「いや、一応ステータスは見せてくれないか?今後の参考にもなるし。見せられないことはないんだろ?」
うわーこわいーこれ大丈夫か?
名:快盗 嶺二
性別:男
年齢:18歳
職業:略奪者
レベル:1
HP:5
MP:5
STR:1
DEF:1
INT:1
MGR:1
AGL:1
LUK:1
固有スキル
略奪
スキル
称号
異世界人
読書家
略奪者
略奪…
殺した人間からスキルを一つ奪うことがきる。
いやいやいやいや、怖いよ?魔物からは無理なの?人間からのみ?
にしてもこれで弱いとはいえないなぁ、盗賊討伐とかなら人からスキル奪えるし
「おお、これは素晴らしい。勇者様の次にいいスキルではないか?この世界には盗賊などもいる。残虐な魔族もいる。そういう者達からスキルを奪っていけば、ステータスでは勇者様には及ばないがスキルの数ではトップになれそうではないか」
王様が興奮して話に入ってきた。これは手放す気はなさそうだな…
「確かにステータスだけみたら弱そうに見えるがスキルを考慮にいれると君は強くなれそうじゃないか!一緒に頑張ろう」
「あ、ああ」
ダメだなそりゃもう逃げ道ないわな。さてどうするか……