三題噺 恐怖 包丁 血
「何なんだよ一体!!」
突然だがなぜか俺は包丁を持った男に追われている。
「くっそ俺が何をしたっていうんだよ!」
大柄な男は何も答えない。
「ウォォォォォァァァァァァ!!!」
ドゴォ!
スキあらば俺の背中めがけて包丁を振り下ろしてくる。
恐怖に足が竦みまくっているのだが、生命の危機に体が反応してなんとか走り続けている。
サクッ
「ヒッ!!」
喉の奥から引きつった声が漏れる。
太ももの裏から軽く血が流れている。
生暖かくぬるりとした血の感覚が現実味を帯びて恐怖となって襲いかかってくる。
「ッ!?」
急に右足から力が抜けて地面とキスしてしまった。
振り返ると巨大な出刃包丁を持った男が包丁を振りかぶって…。
「う、わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
叫んでも男の勢いは止まらない。
むしろ加速する。
ガッ!!
男は目が良く見えていないのか包丁は俺の腕を掠るだけだったが着ていたシャツを皮膚ごと裂いた。
「グッ!」
裂かれた右太股と右腕が焼けつくように熱い。
「クッソォ!」
まだ無事な左半身をかばいながら起き上がって再び走り出す。が、怪我をした足では先ほどのように逃げることはできない。
半ば右足を引きずるようにしてすぐ近くの公園へと入る。
「なにか、何かないのか?」
本能だけで公園のトイレに入る。
鏡で自分の顔を見るがとても青白くなっている。
早く休めるところに行かねば…。
ひた…ひた…ひた…
「!?」
奴が入ってきたようだ…。
殺されかけた時の記憶がフラッシュバックして歯の根がガチガチなっている。
その音で気づいたのか奴が俺の入っている個室に体当たりをしてきた。
ロクにメンテナンスもされていないドアの蝶番はそれだけで今にも外れそうになっている。
ここで…終わりか…。
破られた扉の向こうから正確に俺の顔面を狙った凶器が飛んできて俺の脳の電気信号はブツリと途絶えた。
おわりーーーーー