不思議な猫の話。
これは実際に体験した話を少しアレンジしたものです。
今も不思議で不思議でしょうがありません。
我が家には猫が一匹いる。飼っている訳でも無く、家に上がり込んでは用意したキャットフードを食べ、ゴロゴロして、そのうちいつの間にか何処かに行ってしまう。
うちの家系では代々、必ず傍らに猫がいる。自分の産まれる前からずっと。
祖父母にも、家を引っ越す前にも、必ず猫が一匹いた。
偶然か必然か、現に今も家には猫がいる。
連れて来た訳でも無く、忽然と現れ、ただただそこにいて家族を癒す。
ある日、家族全員で出掛ける事になった。
勝手に上がられて糞でもされたらたまらないと、家のありとあらゆる隙間を塞いだ。家族総出で全て塞いだ――
つもりだったが、何故か猫は家の中にいた。
どこから入って来たんだと驚いていると、すっと外へ出て行ってしまった。
また、一ヶ月位姿を見せない事もあった。
心配して捜していると、家の近くの路地裏にいた。
やっと見つけたと思い、近付くと暗闇へスッといなくなってしまった。
それを最後に猫は姿を見せなくなった。
深夜、何故か目を覚まして居間に行くと、カリカリと雨戸をひっかく音がする。
あの猫が帰ってきたんだ!と雨戸を開けると何もいない。
確かに音はしていた。寝惚けていたのかと戻ろうとすると、またカリカリとひっかく音がする。
不思議に思いつつ雨戸を開けるとやっぱり何もいない。
少し怖くなって、急いで雨戸を閉め部屋に戻ろうと振り向くと、目の前で
「ニャアー」
と、あの猫の鳴き声がした。
今、目の前には何も無い。
辺りを見回してもいつもの居間だ。
そしてもう一度
「ニャアー」
と、今度は耳のすぐ近くで鳴かれたかのように、はっきり聞こえた。
自分は死にもの狂いで部屋に戻り、ベッドに飛込んだ。
静まりかえった狭い部屋の中で、ヒタヒタと猫の歩く音が聞こえる。
鍵は閉めた、入って来れる窓や隙間もこの部屋には無い。
祈る思いで固まっていると、もう一声
「ニャアー」
とはっきり鳴き、足音はしなくなった。
朝になり、一睡も出来ぬままベッドから起きて部屋を見て驚愕した。
辺り一面猫の足跡だらけ。雨戸から続き、居間を通り、この部屋へ、足跡は続いていた。
あの猫が最期の別れに来たのか……と亡骸が見付かったと知らせを聞いて思った。
今も家には猫がいる。
忽然と現れては家族の一員となっている猫が…………。
動物って不思議ですね。これからも少しずつ動物の話でも書いていこうかなと思います。