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感走

更新をしばらくサボってすみません^^;

本編最終話です。

サイトは少し落ち着きのない動作の慈雨に松野と条一郎を紹介した。


「あー、こいつらは同じ学校の松野と高城条一郎。こんな顔してるけど結構いい絵を描くんだ」


条一郎からカメラを受け取った松野が「こんな顔ってどういう事だよ」と笑い、慈雨の顔を覗き込んだ。慈雨が浅黒い顔から身を仰け反らすと


「やめろよ。こんなヤツ相手にしないで先に行こうか?」そういうとサイトは道の前に立ち慈雨に手招きした。小走りでサイトの元へ駆け寄る


慈雨を条一郎はぼうっとした顔で見送った。


パネルで囲われた道の角を曲がるとCブロックに飾られた絵達が顔を出した。慈雨は一枚の絵を5分くらいかけて見つめる。もちろん飾られている


全ての絵を見るわけではなく自分の感性の琴線に触れた絵をピックアップして観察しているようだ。その間、サイトはすることがなくて手持ち無沙汰


になってしまう。絵を描くのは好きでも人の絵を観るのは苦手だ。サイトが腰に手を当てながら周りを見渡すと女性の裸が描かれた絵が目に


飛び込んできた。ぶは、あの絵か。ハンカチで鼻を拭うとサイトは慈雨に気づかれないよう舞先輩の絵を観察しにいった。



「お待たせ!そろそろ次のブロックに行こうか!」「どうしたの?」


顔を真っ赤にしながら駆け寄ってきたサイトに慈雨が言葉を返す。「いや、初めての大会参加で興奮しちゃってさ!次々!」


まさか舞先輩があそこまではっきり自分の体を描くなんてな。慈雨と一緒にその絵の近くに行くと軽く人集りが出来ていたのでサイトは


咳払いをしてその絵の前を素通りした。


Dブロックに入ると慈雨がまた絵の前で立ち尽くしている。その絵は水彩画で少年マンガに出てきそうな未来都市を描いていた。サイトが絵の作成者と


タイトルを確認すると「あ、これ三上先輩の絵じゃん」と声を漏らした。あの先輩、こういう絵を描く人だったんだ。じっと絵を見つめる


慈雨に「慈雨はこういう絵が好きなのか?」と尋ねると「うん、実際に存在しない物を描けるって凄い才能だと思わない?」そういうと


慈雨はサイトの顔を見上げた。「サイトはどんな絵が好きなの?」


そう聞かれサイトは「まいったな」と顔を掻いた。いままで自分の絵を描くことだけで精一杯だったから人の絵のどんなところが好き


だなんて考えたこともなかった。サイトが視線を動かすと見覚えのある絵が目に入ったので「とりあえずああいう絵はキライかな」と


大和が描いた臓器の絵を指さした。その様子を見て「私も...嫌いかな」と慈雨は苦笑いを浮かべた。その後も2人でパネルに並べられた


絵を見て歩いてたまに感想を言い合いながら大会の終着駅のGブロックまで辿り着いた。神崎が描いた水族館の絵が2人を出迎える。


慈雨がはにかみながら、恥ずかしそうにサイトに言った。


「私、誰かとこういう風に絵を見て周るの初めてだったから...楽しかった」制服の裾で顔を隠す慈雨を見て「ああ、俺も楽しかったよ」と


視線を外しながらサイトが答える。なんだこれ?これが俗にいう青春というヤツなのか。鼓動が少しずつ早くなっていく。何か言おうと


してサイトが口をあけると「おーい、雨宮!こんな所にいたのか。早く学校に帰ってミーティングしようぜ」と慈雨の後ろから歩いてきた


男子学生が声を挙げた。はっとしたように振り返る慈雨の横に学生が来ると「雨宮になんか用?」とサイトの顔を覗き込んだ。正気を取り戻す


ために顔をぺちぺちと叩きながらサイトは自己紹介をした。「俺はしおさい高校の美術部員の斉藤サイト。あんたは?」


せっかくいい空気だったのに邪魔しやがって。険悪な空気の2人の間に慈雨が入ると「彼は同じ高校の和尚琢磨おしょうたくま。」


と慈雨がその学生を紹介した。「よろしく、おしょうクン」サイトが彼に握手を求めると和尚はその手を無視して「先に駐車場で待ってる


からな。早く来いよな」と言い和尚琢磨は去って行った。宙に浮いた右手をぶんぶんと降ると今度はサイトの後ろから声がした。


「サイトー、この後近所のファミレスで反省会やるから早くこいよー」「先輩達から次の部長も発表するってさ」


サイトを呼んだのは神崎と大和の2人だ。サイトは慈雨の方を振り返ると「ここでお別れだね。お互い頑張ろう」と慈雨に別れの挨拶をした。


「今から何を頑張るの?」口に手を当てて笑う慈雨を見てサイトは頭を掻いた。サイトは踵を返すと同じ学校の2人の元へ走り出した。


先輩達はこの大会で引退する。これからは俺達5人が美術部を背負っていかなきゃならないんだ。短い間だったけど先輩達と過ごせた時間、


楽しかったな。短い回想を終え神崎に声をかけるとそのまま3人は待っている仲間の元へ三者三様の笑みを浮かべながら走り出した。


俺達の最初の大会はこうして終わった。乱反射する夏の日差しがこれからの学園生活を照らし出すように背中に降り注いでいた。

これにて『第2部完!』とさせていただきます。途中2ヶ月間中断しましたがなんとか「完走」することができました。今年は色々なことがありましたが「シサアク」という小説を連載することが出来て本当によかったと思っています。第3部の連載が決まりしだい、ブログで報告します。読んで頂いてありがとうございました!

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