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ダイスケさん

月曜日です。サザエさん症候群が継続中です...

「サイトー、ごはんができたわよー。サイトー」


下の階から母の呼ぶ声がする。サイトはあぁー、と声をあげながら床に仰向けに倒れた。


昨日の昼から油絵を描き始めたのだが、水彩画と違う油絵の特性にサイトは振り回されっぱなしだった。


写真を見ながら雑木林に色を付けていくのだが濃い発色の油絵の具は隣合った色と衝突するように自分の色を主張し始めた。本来地味な色


であるはずの茶色や紫が木の表面に塗られた赤を覆い隠すように絵の前に立つ。まるで画用紙の中で色同士がケンカをしているみたいだ。サイトが


仲裁するように油を溶いて色を重ねると薄すぎたのかたらたらと画用紙の上を黄土色が流れ出した。もうダメだ。油絵がこんなに難しいもの


だなんて知らなかった。サイトはぐるぐる回る天井を見て気が遠くなってきた。夏休みが始まってもう1週間。こんなんで期間までに間に合うのかよ。


そのまま眠ってしまおうとすると下の方から「おーい、サイトくん、一緒に食べようよー」と野太い声が聞こえてきた。アイツ、晩飯まで


食っていくつもりかよ。サイトは声の主の青山大輔の顔を思い浮かべると憂鬱な気持ちになった。



サイトが居間に降りると「おお、サイトくん。今日の晩御飯はそうめんだ。」と夕刊を眺めながら大輔が言った。サイトは舌打ちをして


「父親面してんじゃねぇよ。とっとと帰れよ」と母の知り合いの大輔に小声で言う。以前のキャッチボール事件から大輔が家に来る回数は


減っていたがそれでもたまに来るこの大輔おじさんがサイトは気に入らなかった。


「そうめんと言えば、ちょっと待った、いい物があるんだ。」そういうと大輔は足元のビニール袋からおもちゃの箱のようなモノを取り出した。


そして中からプラスチックのおもちゃを取り出すとこう言った。


「じゃーん!全自動流しそうめん機~。これで流しそうめんの気分が味わえるぞ。サイトくん、水を持ってきてくれないか。」


サイトは大輔の様子を見て「はぁ!?あんたバカじゃねぇの!?」と声をあげた。台所から母の恵美が


「サイト、お客さんをバカよばわりはないでしょ?」と水の入ったボウルを持ってやって来た。大輔は恵美からボウルを受け取ると水を


機械に流し込み、スイッチを入れた。ブゥーン、という大きめの起動音がテーブルを振るわせる。「待ってろよ~いまそうめんを流すから」


そう言うとボウルに入ったそうめんをその機械に入れ「ほら、見ろ!そうめんが泳いでる!」と流れるそうめんを指さして笑った。


サイトは大きくため息をついた。この人、いい年してなにやってるんだろう。テレビでやっている「サザエさん」の登場人物のノリスケが


このオヤジとダブって見えた。サイトが廊下に向かって歩き出すと「あら、ごはん食べないの?」と母が聞いたので「あとでカップ麺食う」


とだけ言い残しサイトはその場を後にした。あんなおもちゃに入ったそうめんが食えるかよ。俺はおっさんの遊びに付き合ってるヒマはねぇんだよ。


サイトは部屋に戻ると自分が描いた絵を見返した。とにかく短時間で描きかたのコツを掴むしかねぇ。サイトは新しく油絵用の画用紙を


取り出すと油絵の具を油で溶いて再び絵を描き始めた。

大輔は第一部の「キャッチボール」以来の登場です。一部でサイトが油絵セットを買うために翻弄する話がありますが、少しかわいそうになったので大輔から油絵セットをもらう、という形にしました。今週も頑張りましょう^^

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