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裸形のセカイ

サイトに油絵セットとロッカーの鍵を手渡し、ジュディ&マリーの曲を鼻歌で歌うノマ部長に松野が眉を歪めながら話出した。


「部長の方からいってくださいよ。舞先輩のせいで僕達が迷惑してるって。部屋の1つを私物化されたんじゃたまったもんじゃない。」


ノマ部長は鼻歌を止めるとう~んと首を傾げて考え始めた。


「私が部長でエラいのは確かだけど、舞ちゃんは全道大会に出たりして結果を出してるからな~。力関係では舞ちゃんのほうが私より上ってわけ。それに舞ちゃんがここでみんなの前でハダカで絵を描き始めたらどうするぅ?」


ノマ部長が口をすぼめると松野は顔を赤くして「それじゃ、仕方ないですね」と言って視線を落とした。すると、「はいはい、迷惑かけて


ごめんなさいね」といいながら準備室から舞先輩が現れた。バツの悪い松野が「先輩、今日はもう描かないんですか?」と聞くと


「今日は肌のハリが悪いからやめておくわ。それよりサイトくん、もう色塗り始めるの?」


先輩に聞かれサイトは事情を話した。


「いえ、俺油絵描くの初めてだから一度家で画用紙に描いてみてからキャンバスに描こうと思ってるんです。だから油絵セット、家に持って帰ろうかと思いまして。」


サイトの話を聞くと松野が「へぇ。描くの決まったんだ。」と聞いてきた。


「そうなの。3日も休んだから私はてっきり函館の女の子とデートでもしてきたのかと思ったわよ。」


舞先輩が茶化すと「そんな訳ないですよ!函館に言ったのは事実ですけど、絵の題材を探しに函館山に登ってたんですよ!」


サイトが叫ぶと「一枚絵を描くためにそこまでするのかよ。すごいなおまえ。」と条一郎が驚いて言った。


「サイト、とうとう僕がいるフィールドに足を踏み入れたようだね。」松野が不敵に笑みを浮かべて訳のわからないことを言う。


サイトがカバンから写真を取り出すと「函館の写真?」と松野が聞くので「いや、近所で撮った写真」とサイトは答えてその写真を


松野に手渡した。そこには木が6本生えている雑木林の風景が写っていた。


「いい構図の絵だと思うけど...ちょっと周りが寂しすぎない?」


松野が尋ねるとサイトはふっ、ふっ、ふと笑みをこぼして言った。


「木の間には俺が体験した風や光を擬似的に表現して描き加えようと思ってるんだ。写真には写っていない鮮やかな世界。俺は今回の大会でそれを表現してみようと思う。」


サイトの話を聞いて「おおー、なんだかかっこいい~」とノマ部長が拍手した。いやいや、それほどでも。そんなことを言いたかったが


不安もあった。見えないものを描くことが出来るだろうか。いや、論ずるより行うが易しだ。とりあえず家で一枚絵を描いてみよう。


部員達としばし談笑するとサイトは今日は午前中で学校を後にした。


前回と今回のタイトルは逆なような気がしますが「わざと」です。年内中に完走できる目処が立ちましたので期待していてくださいー^^

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