ぼーいずとーく
息抜き回です。
次の日の朝、サイトが洗面所で顔を洗っていると右隣に条一郎が眠たそうに目をこすりながらやってきた。
「昨日、なんか知らないけど大清水先輩がずっとすすり泣いててよ。全然眠れなかったんだ。」
サイトは昨日の波止場でのイベントを思い出して少しだけ可笑しくなりふふん、と鼻で笑った。あの大清水とかいう先輩、いつから
ノマ部長のことが好きだったんだろう。そしてこれからどうやって美術部員としてやっていくんだろう。サイトがぼんやりと
顔をタオルで拭きながら左隣で歯を磨いていた神崎に聞いた。
「ねぇ、ともちゃん。いま好きな女の子っている?」
サイトの問いかけに神崎は口から歯磨き粉を噴出した。条一郎がおい、おまえそんなシュミが…とおののいた。別に神崎に告白するわけ
じゃないって。サイトがぼやくように言った。
「俺らもさー、高校生活始まってもう4ヶ月目じゃん?いくら文化部とはいえひとりくらいカノジョが出来たやつが出てきても
おかしくないと思うんだ。男だけでつるんでるのも楽しいけどその、なんつうか、もてあますじゃん、欲求をさ。」
サイトが言わんとすることを条一郎が理解し、にやりと笑った。神崎も口をゆすぎながらそんなモンかね、と言った。
「その欲求を絵を描くエネルギーに替えるんだ。そうすれば僕達1年生だって全国大会にいける。」
後ろの方から松野の声がした。お前は根っからのアーティストだよと、サイトが冷やかすと神崎も無言でうなづいた。トイレから出てきた
大和がそろそろ朝ご飯ができる時間だ。と言ったので1年生部員達は食堂へ向かった。今日は午前中は大路地先生のクロッキー講座が
あるらしい。そして午後は再び外での写生があるので、今日も雨宮さんの家を描かせてもらおう、とサイトは思っていた。
雨宮という子は出来たらその絵を見せて欲しいと言っていた。彼女ももしかしたら美術部員なのだろうか。昨日は少ししか話せなかった
けど今日はもっと話が出来たらいいな。そんなことを考えながらサイトは朝食の玉子焼きを口に運んだ。