Re:スタート!
まさかの第2部スタートです。よろしくお願いします^^
季節は7月の後半、セミがおおきな声で鳴き始め潮風が夏の薫りをつれてくる。今日はしおさい高校一学期修了式だ。
斉藤サイトは他の生徒達と一緒に体育館に集められ、校長先生の長々とした話を立ったまま聞かされていた。
サイトは隣の列に並んだ1年2組の松野良風に話しかけた。
「なぁついに明日だな。」
「うん。そうだね。明日からだね。」
サイトの前に並んでいた大和健もうんうんと頷いた。
「明日から合宿だな。そしてその後は全道大会。どんな感じになるか楽しみだな。」
松野の後ろに並んでいた高城条一郎が言った。その様子を見ていた3組の高木秀院が冷やかした。
「おい、お前らほんと仲良いよな。夏休みなんだから外に出てあそべっつーの。男連中だけでシコシコやってたってつまんねーだろ。」
高木はサイトが自己紹介の時に盲腸の件を馬鹿にしたチャラチャラグループのひとりだ。大和はこの生徒が嫌いらしく、
「うぜぇ...手淫のくせに...」と近くのサイトに聞こえるかどうかの小さな声で文句を言った。...全国の秀院さんにあやまれっての。
「この前の発表会では負けちゃったけど、今度は負けないよサイト。毎日部活にでて絵を描いてるからね。」
松野が鼻からふー、と息を噴き出しながら今回の大会に向けての意気込みを語った。松野は発表会の後少し落ち込んでいたが
最近は気持ちを入れ替え新しい絵の描き方にトライしているようだ。サイトも言い返した。
「こないだの発表会はデモンストレーションだからな。全道大会で入賞したヤツが一番上手いんだよ。とりあえず今回も優勝してやっかな。」
サイトの大口に美術部員が「おお〜言うねぇ〜」と仰け反り返った。サイトは本当は自信がまったく無かった。発表会で優勝できたのは
まったくのマグレだったし、発表会が終わってから美術部には「練習は自由参加」というような空気が流れ始め、発表会で苦汁をなめた
松野以外は放課後の部活にあまり参加しなくなっていた。やはり明確な目標がないと人間という生き物は頑張れないのだと、廊下で
会った時条一郎が言っていた。いつの間にか松野の隣にやってきた1組の美術部員の神崎智紀が言った。
「まぁ俺達の目標はとりあえず道南大会で入賞して全道大会に行くことじゃね?まぁサイトと自称天才の松野クンは
もっと上にいくんでしょうけどね〜」
普段は真面目な神崎がサイトと松野を冷やかしたので美術部員以外の生徒にも笑いが起きた。見かねて3組の担当の寺田先生が
「えー、そこ、静かにしないか。」と注意した。神崎はそそくさと自分の1組の列に戻った。ステージの上で話していた校長先生が
話を締めくくるようにこう言った。
「それでは皆さん、夏休みの間、健康で真っ当な高校生らしい毎日を送ってください。私の話は以上とさせてもらいます。」
校長先生が頭をぺこりと下げると生徒達からまばらに拍手が起こった。つづいて放送部の生徒のアナウンスが響いた。
「校長先生、ありがとうございました。これからしおさい高校校歌を歌います。」
吹奏楽部と思われる生徒がピアノで校歌の伴奏を演奏し始めた。サイトは胸のポケットから出した生徒手帳に書かれている歌詞を見ながら
他の生徒と同じように校歌を歌い始めた。
朝焼け差し込む中庭と 眼下に広がる白い浜
友と並びて 歌謳う
文化の営み たおやかに
あふるる希望は わが母校
ピアノのアウトロが終わると「これで修了式を終わります。1年1組の生徒から教室へ戻ってください。」とアナウンスが流れたので
神崎が「じゃ、後で部室でな」と言いながら体育館の入り口から出て行った。合宿か。なんか充実した高校生活になってきたな。
サイトは自分が入学してきた時と今の自分を比べて明らかに気持ちが明るくなったきているのがわかった。
玄関先で詠進先輩の絵に出会えてよかった。サイトは美術との出会いに感謝しながら廊下を渡った。
しおさい高校の校歌は3番まであります。合宿もあるようなのでご期待ください^^