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無能は無敵を無能とみなすらしい。

第1話をお読みいただきありがとうございます。第2話もお楽しみください。


騒がしかった広間は、たった一発の銃声で、静かになった。そして。


広間の中央、魔法陣の真ん中。

召喚されたばかりの全身黒い男。そしてその前で体勢を低く保ち、銃を構える王女。そして崩れ落ちた男。


数十秒の間のあと、場は再び大狂乱に満ちた。

王までもが目を見開き、唇を震わせている。


「シ、シルヴィア!?なにをしておる!」


王が叫ぶ。

シルヴィアと呼ばれた王女はその場に立ち上がった。


「お父様!ご安心ください。私は一つ、試しただけです。」


王の顔に明らかにホッとしたという表情が浮かぶ。


「そうか。殺してはいないのだな。」


「いえ、場合によっては死んでいる可能性があります。」


「なに!?どういうことだ、シルヴィア!状況を説明してくれ!」


床に倒れ伏した男を一瞥し、彼女は口を開いた。

「御覧ください。私が今撃ったのは、こちらの銃です。」


そう言って高々と掲げられた銃は、シャンデリアの輝きを受けて、煌めいた。


銀製の銃。銃身の塗装から、装飾までも純銀で作られた王家代々の武具。王女はそれを手にしていた。


「お父様。この銃の使い方はご存知であられますか?」


「う、うむ。それは特別な場合……吸血鬼と呼ばれるものを殺すときに使う道具じゃ。人間に打っても当たらないという……。だが、なぜそれを?」


「お父様。もう一度状況の整理をお願い致します。私はこの銃を、いま、この男に向かって撃ちました。そしてこの男は倒れた。これがどういった状況か、おわかりでしょうか。」


寸分考え込む王。その表情は、すぐに恐怖へと変わった。


「吸血鬼……なのか……その男が……。あのいむべき存在……太古の時代にこの世を一度、終わらせたという……」


「おそらくそうでしょう。何らかの間違いで、勇者召喚の魔術が、強い力を持つもののもとへ引き寄せられたのでしょう。」


「そういうことか……。しかし、あまり強そうには見えんな。体型は……子供といっても納得するレベルに見える。こんなやつに、魔術が引き寄せられたのか?」


「……たしかにそうですが……個人の強さとは関係なく、強い種族に向かった…ということかもしれません。」


「うむ。そうも考えられる。ということは、あれは死んでいるのだな?」


王が聞いたのは、玉座の横に立つ男。


「はい、おそらくは。先程からピクリとも動きません。衛兵に確認させましょうか?」


「いや、死んでいるならいい。死体の周りに魔法をばらまいているかもしれん。吸血鬼のやることだからな。兵を無駄にするわけにはいかぬ。」


「了解いたしました。あの死体はどうしますか?」


「まだ放っておけ。動き出すかもしれん。」


「はっ!」


「ところでシルヴィア。あの者が吸血鬼であること、なぜわかったのだ。ここにきて魔法をつかっているところを見たわけでもないのに、迷いなく撃っていたではないか。


「勘です。」


「え?」


「いえ、勘と、見た目です。赤く虚ろな目。黒いローブ。コケた頬。言い伝えに残る吸血鬼の特徴と一致していました。吸血鬼であれば、ここにいる者全員の命が危ない。だから人間には効果のない、この銀でできた銃弾を、彼に撃ったのです。」





「なるほど。じゃあ僕は人間ってことでいい?」




軽く、幼さのある声が、もともとそこにあったかのように響いた。

全員がぎょっとして声のした方向を向く。そこには平然と、さっき銃弾に倒れたはずの男が座っていた。


「ひっ……、あ、あああああッ!」


王や王女を含め、全員が目の前の光景を疑う。男は不敵な笑みを浮かべていた。








あっっぶねーーーーー!!!僕が吸血鬼って、バレたかと思った。なんだ、試しで撃ったのか。野蛮な王女様だな。シルヴィアとか言ってたっけ。シルバーだけに。


「あ、あなた、なぜ生きているのですか!?」


王女がこちらをみて叫ぶ。なんでって。


「その答えはあんたがさっき言ってたじゃないか。吸血鬼だったら、死ぬんだろ?僕がそうじゃなかったから、じゃないの?」


「で、でも!いちど倒れたはず!」


「ああ、あれはちょっとつまずいただけだよ。微妙な位置関係をキープしててね。君が飛び込んで来たもんだから、グラグラしてしょうがなかった。ほら。」


足の下に小さめの石を2つ、おいて見せてやる。放心したような顔の王女をみて、心のなかで楽しんでいた。僕はなんて性格がいいのだろう。


「そ、そんな訳は……確かに手応えを感じたのに……」

それにしても危なかった。魔法で逸らさなきゃ、痛い思いをするところだった。まあ、銀の弾丸程度で死にはしないが。とんだ狂乱令嬢だな。


「で?人間である僕に、あんたたちは何を求める?」


「え?あ、えと……あなたは、じゃあ、勇者、なの?」


うん?勇者?そういや王もそんなこといってたっけ。なんだそれ。


「その、勇者?て、なんのことだ。」


純粋に疑問に思ったので、きいてみた。ヒョエッという効果音が口から聞こえてきそうなくらいビクッとした王女は、自分を落ち着かせるように深呼吸したあと、口を開く。


「勇者というのは、古くから伝わる伝説にまつわる存在です。かつて何人もの勇者がこの勇者召喚でこの世界に呼ばれ、悪を討ち滅ぼしてきました。」


「悪を討ち滅ぼす?あんたを滅ぼせばいいのか?」


「わ、私は悪ではありません!確かにあなたに無礼なことはしましたが……。」


「じゃあ何を倒してきたんだ?これまでの、その、勇者?どもは。」


「魔王です!」


そう聞いてくるのを待っていた!みたいな顔で言われても。僕は話を聞いてあげている側なのになあ。あらての決め台詞か?「魔王です!」って。いやなんか自己紹介みたいだな。


「わかった。んじゃ面白そうだから、その魔王ってやつ倒してきてやるよ。どこにいんの?」


「え?あ、いえ、その、魔王は、まだ誕生していないんです。」


「は?じゃあどうやって倒すのさ。」


「あ、いや、その。魔王は、ここから10年のうちに現れ、世界を蹂躙するとされています。歴史的に見ても、信用できる数字です。」


は…??10年?いや、まだいない?


「ところで勇者様。勇者様はどのようなお力をお持ちなのでしょうか……。もしかして先程のこの亀裂も、勇者様が……。」


しめた!バレてないぞ!誰がやったか解んなくなってるんだな!


「亀裂?あれは知らん。召喚の魔法でいたんだだろ。魔王倒す?冗談冗談。僕にそんな力があるわけもないでしょう。ムリムリ。」


「そ、そんな!でもきっと、何かの力が……」


「あるように見える?」


言葉に詰まる王女。


ちょうどいい。この状況を利用させてもらおう。僕としてはこんなところ、居たくないのだ。


「そーゆーことで、僕は人間。つまるところ弱い人間。簡単にゆーと、僕という弱い人間。わかりましたかあ?てなわけでさいなら。」


最後の方は聞き取れるかどうかというレベルでの早口でいって、すぐに動き出した。

早く逃げよ、こんなとこ。僕は僕で悠々自適に暮らしたいのだ。

呆然とした人間たちの間を縫って、堂々と広間を出た。


「二度と顔を見せるな。」


そんな衛兵の言葉は気にしない。

それにしてもあの王女様の血の匂いは素晴らしかった。いつか味あわせてもらおう。


そんなことを心に決めた。


広間を出ると、どこまでも続く長い廊下がある。長いローブを引きずりながら歩くその後には、柔らかな絨毯の上に独特の模様を残していった。


城内を通る人がみな、彼を不審がり、距離を取って歩く。衛兵ですら、近づこうともしなかった。

不意に吹いた風が彼の被っていたフードを脱がす。


「子供…!?」


出てきた顔はあまりにも幼かった。

あどけなさが残る顔。大きな目。大きなマントをはためかせるその姿は、まるで子供のヒーローごっこのような空気感を出している。


彼もそれに気が付き、再びフードを被った。そして俯いて歩き出す。



これはまだ彼が子供の時のお話。

彼が成長したとき、もう一度。もう一度、彼はここに呼び出されることとなる。



第2話までお読みくださり、ありがとうございます。

「続きが気になる!」「王女をいつか味わってほしい!」と少しでも思っていただけたら、モチベーションに直結しますので、 **【ブックマーク】や、下にある【☆☆☆☆☆】**での評価をいただけると、執筆スピードが吸血鬼並みに上がります!


次回更新も、ぜひ楽しみにお待ちください!

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