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救済を呼んだら厄災が来た。

聖光歴1204年。人類は、滅びの淵に立たされていた。


いずれ襲いかかる厄災と、今目の前にいる厄災、その両方に。


「お、おい……。これが、救済の勇者……なのか……?」


「そ、そそそ……そんなわけないじゃない……っ!」


「な、なに、あれ!?」


それまで静かだった召喚の間が、急に騒がしくなる。

その場に駆けつけた人々すべてが、驚きや、絶望の表情を浮かべている。


「見て……あの目、真っ赤よ……」

「勇者様が、あんなバケモノのはずがない……!」




「それが勇者か。」




ひときわ鋭く、威厳をもった声が空気を貫いた。宝石の散りばめられた王座に座っていた人物がゆっくりと腰を上げる。


横に細い目。長く伸びたひげ。きらびやかな装束。光を纏う、国家の最高権威。


「王様!いえ、違うのです。きっと、これはなにかの間違いでしょう!勇者が、勇者様がこんな者あるはずがないのです。」


側近の男が慌てたように、眼の前の状況を弁解する。


「黙れ。」

「ひ、ひゃい!」


低く押しつぶすような声に、男は小さくなる。


「こたびの勇者召喚の儀をおこなった者を呼べ。」

「はっ!」


呼ばれたのは数人の女性。聖女と呼ばれる、協会で働く者たちが王の前に召し出される。


「聖女よ。あれは何だ。」


王の問いに、震える声で一人が答える。


「こたびの儀式に手違いはありませんでした。また、特別なく、訓練を受けたもののみがこの儀式にあたっています。つまり、あの者は」


横目でちらりと、後ろを見る。先程召喚されたばかりの、その、醜い姿を。


「勇者様にございます。」


宮殿の中に設けられた広間。大きく描かれた魔法陣の中心に立っている男がゆっくりと、静かに目を開いた。





いや、なんだ、これ。どうして僕はこんなところにいるんだ?ついさっきまでベッドの上で寝ていたはずでは……。

そもそもなんだ、この周りの奴らは。なんだかおぞましいものを見るような目つきでこちらを見ている。誰か状況を説明してはくれないものだろうか。


腕を首に添えて背筋を伸ばす。その途端、周りにいた人々が後退りするのがわかる。

なんなんだ、こいつら。うるさいな。さっきからドクドクと、奴らの脈打つ音が耳に障る。喉が焼けるように熱い。これは――渇きか?


「勇者よ。」


突如空気を切るような声が響く。勇者?誰のことだ?


「聞こえているか?勇者よ。貴様のことだ。そこの黒いの。」

「え、僕?」


そこのくろいのという呼び方はなんとも失礼ではないだろうか。いやまあ、確かに僕は全身黒なんだが。

いやそれよりも。いま僕は、勇者という名で呼ばれなかったか?

声がした方を見る。老人……?やけにきらびやかな……。


「僕になにか用か?そこの老いぼれ。」


ざわわわわわわあ。途端に、周りにいた民衆が青ざめた。なんだ?


「貴様、今なんといった!!」


老いぼれが怒った。すごい威厳も感じる。一体何だってんだ。


「なにか用かといったんだ。老いぼれ。」


「おい、貴様!この方をどなただと心得る!我が国の国王陛下であるぞ!」


国王陛下?このシワでできてそうな老人が?


「そうかそうか。あんたが国王か。ならあんたがここの責任者だな。おい。この状況は何だ。どうして僕はここにいる。」


「黙れ。そのへらない口を閉じろ。」


あ、僕こいつ嫌いだ。


「貴様は、我が国が召喚した勇者だ。」


「勇者、だと?」


「そのとおりだ。」


僕が、勇者?こいつは何を言っている?


「だが、一つ確認したいのだ。我々には、どうしても貴様が勇者には見えん。いや、違う。力を持っているようには見えないのだ。貴様は。」


王が近づいてくる。


「本当に勇者か?」


彼の目に写っているのは僕だ。薄汚れた真っ黒なローブに包まれた、小さな体。真っ赤な目。コケた頬。


少し思い知らせておくか。


右足を少し上げる。そして一歩先の地面に向かって振り下ろした。



――ドォォォォォォォン!!


「キャアアアアア!」

ものすごい音と衝撃とともに、王宮の床に大きな亀裂が広がった。


逃げ惑う人々。必死に王を守ろうとする衛兵たち。




ズダーーン。




突如そこに、一発の銃声が轟いた。たちまち人々は静になる。その中を、細い煙が立ち上る。

一体誰が、なんの目的で打ったのか。


「姫様!」


衛兵の何人かが僕の方に向かってくる。姫様?僕は目線を下に向ける。そこにいたのは、小さな少女だった。大きくて丸い目に金色でふわふわした髪。そしてその小さい手に握られているのは銀色の銃。


そしてそこにこめられているのは。大量の火薬と、銀でできた銃弾。


「吸血鬼を殺す、武器。」


見破ったというのか、この少女は。この僕の正体を。


吸血鬼である、僕を。


フフ。不思議と笑みが浮かぶ。


そうか。君はその大きな目で、どんな世界を見ているのだろう。君が見ている僕は、どんな僕なんだろう。


カラン。


僕の心臓を撃ち抜いた銃弾が壁にあたり、床に落ちる。同時に、僕はその場に崩れ落ちた。





お読みいただきありがとうございます。


救世主として呼ばれたはずが、正体を見破られ(?)いきなり撃ち抜かれてしまった主人公。 伝説の吸血鬼である彼にとって、銀の弾丸は致命傷だったのか……。


次回、『無能に無敵は無能に思えるらしい』。


王様たちの「勘違い」が加速し、物語が大きく動き出します。 本日、21時頃に第2話を更新予定ですので、ぜひまた覗きに来てください!


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