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不思議な体験

作者: マイボトル

仕事が終わりスマホを確認した。

「今月ももう28日か。月末だ。1ヶ月お疲れ様〜。」


非通知電話がかかってくるようになって1年半くらいたつ。かかってくる時間は毎月違う。

朝9時のときもあれば、昼12時、夕方4時、夜9時。

日付が変わる直前の23時58分の時もあった。

「忘れられてなかったんだ!」と理由もわからない安堵感を覚えたこともある。


最初は気味が悪かった。誰?いたずら?目的は何?

誰かに恨みを買われるようなことをしただろうか?

それとも知らぬ間に非通知設定になっているだけで、伝えたい用事があるのかもしれない。


非通知だからかけ直すことが出来ないし、なかなか電話に出れるタイミングでかかってこない。

電話がきてから数日間は「誰かから連絡が来るかもしれない」とソワソワして過ごすが、それも徐々に忘れてまた月末に非通知電話がかかってくる。


着信履歴をまじまじと確認すると、毎月28日にかかってきている。

28日と関連があるものと言えば…自分の誕生日だ。

だからなんだと言われたらそれまでだが、今結婚を前提にしている人がいる。

非通知の電話がかかってくる半年くらい前に、大学時代にお付き合いしていた人から電話がかかってきていた。


「元気にしてる?久しぶりに食事でもどう?」と誘われた。当時と変わらない声色に、一気にその時代に引き戻された感覚に陥った。しかしすぐに、懐かしいなぁという感覚になった。「今お付き合いしている人がいるから遠慮しておく。」手短に言うと、相手は「そういう事情を知らないまま連絡をした。本当?本当ならもう連絡はしない。この電話番号は削除しておいてほしい。」と言い、了承をして電話を切った。電話を切ってすぐに消去した。


まさかその人が毎月28日に非通知で電話をかけてきているのか?何のために?サッパリ分からん。


職場の先輩にそれとなく話してみた。

「絶対その人じゃん。誕生日覚えてるよのメッセージじゃん。」「そんな意味のないことします?何のために…連絡先消してくれとまで言われたんですよ?」「今は相手がいるからだよ。誕生日覚えてるよこっちのこと忘れないでのメッセージだよ。」と面白がって茶化される。


そしてまた28日が訪れる。

今日こそ電話に出てみたい。頻繁にスマホを確認するのは疲れるが真相を明らかにしたかった。


「もう今日はかかってこないのかなぁ〜。ガソリン入れるか。セルフにしよう。」ドアを開けて外の空気を吸う。

冬の夜の空気が鼻から入ってきてひんやりと冷たい。「寒すぎて手がかじかむなぁ」と独り言を言いながらふと助手席のスマホに目をやると「非通知」の文字が飛び込んできた。「きた。」急いでドアを開けてスマホを持ち上げた瞬間に切れた。

何とも言えない悔しさや、やるせなさ、自分の間の悪さ、しばらく現実を受け入れることが出来なかった。

スタッフの人に「大丈夫ですか?」と声をかけられるくらい、スマホを持ったまま立ちすくしていた。


また1ヶ月後か…

非通知電話に振り回されるのもしんどくなってきた。

仮に大学時代の人なら直接連絡して確認したいところだが、削除してしまったから…どうしようもない。

電話をかけて「それは自分じゃないよ。」の一言が聞きたかった。

かけていたとしても「毎月28日に非通知で電話かけてます!」と白状する奴はいないだろう。


次の日職場の先輩に言われた。

「それは惜しかったね!う〜ん…今付き合ってる人がいるのは分かってるから、結婚したら電話止まるんじゃない?それまでは諦めなさそう。」今月も意気揚々と面白がっている。


しかし先輩が言うこと以外に理由が思い浮かばない。予想すら出来ない。


でもどうやって知るんだ?

SNSもやってないし、元恋人と共通の大学時代の友人は全員県外に住んでいるし、密に連絡をとることもない。自分の近況を相手が知る術がない…と思うんだけど。


そんな中、仕事もプライベートも順調で、いよいよ結婚することになった。

お互いの両親に挨拶をし、両家顔合わせ、婚姻届を

提出、バタバタと忙しくしていてふと気付く。


「あれ?非通知の電話きてないな。」


履歴を確認すると、もう3ヶ月もきていない。

ちょうど結婚が決まった頃だ。


先輩の言う通りになった。

誰だったのか

何のために28日に非通知電話をかけてきたのか

全く分からないままだ。


不思議な体験のお話。

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