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アル中アフロ斎藤が視野狭窄を起こした目でビールを刮目している。
オラつき極真タロウはアル中アフロ斎藤がプルタブを引くのを待っている。
卑怯者め!!と絶叫したい気持ちを抑えながら
「待ちましょうよ」
と声をかけた。
先に始めたらパワハラ遺産の崎津が面倒に決まっている。テーブルに広がった粗品は全て奴のポケットマネーだ。
何人かが止めに入ったものの、アル中アフロ斎藤は止まらなかった。
勢いよくプルタブを引くとビールを煽り、目をドロリと弛緩させて微笑んだ。
クソが!
オラつき極真タロウはそれを見るや「じゃあおれも」などと言って責任転嫁の準備オーライ!!の笑顔でビールのプルタブを引いた。
続けて情緒忘却プッツン松井も缶ビールを開けて飲み始めた。
会議室を何とも言えない空気が満たす。
誰もが「おれは知らん」と言う感じだ。
そこへ満を持して昭和遺産型パワハラ鬼チーフである崎津・3フレ切って・健一がやってきた。
ひとの編集した映像を見て「そこ3フレーム切って」と言ったオヤジだ。目の前で3フレーム切ってやったが、放送前に戻してやったら気づかなかった。
そのパワハラ遺産the崎津が神の怒りにも似た笑顔で言った。
「何をしとんのや」
京都人特有の厭味すらないストレートな怒りは会議室を緊張感で埋め尽くした。
レガシー崎津が笑顔のままで怒り散らかしている。やり口が星野仙一と似ている。
「こう言うのは普通みなが揃うまで待つもんやろ。蹴るぞ。ホームパーティでもしとるのか?俺が来るのも待てんのか?蹴るぞ。え、社会人やって何年?初めての忘年会?蹴るぞ。しょーもない、犬でも言わんで待てるわ。蹴るぞ。ほんまに。アホか。蹴るぞ。蹴るぞ。蹴るぞ」
全自動蹴撃マシンと化したパワハラ昭和遺産の崎津チーフは段々とボルテージをあげた。
アル中アフロ斎藤とオラつき極真タロウがさっさと謝ってくれりゃあ面倒くさくないのに、止めきれなかったこちらまで怒られを喰らっている。
クソだ。帰りたい。
すると唐突に
「すみません!俺にやり直しをさせて下さい!」
プッツン松井が今朝の打ち合わせに続いて本日2度目の土下座を披露した。
しかし誰もその意味を理解していない。
やり直し?この忘年会を?
ぽかんとするスタッフを尻目に、プッツン松井は額を硬いフロアカーペットに押し付けながら
「日中戦争になったら俺はどこに逃げればいいんですか!」
などと情緒を喪失した絶叫を続けている。
さすがMr.プッツン、脈略も無い!!だから黙ってろ!!声帯を切れ!!
事の発端は先に飲み始めたアル中アフロ斎藤だが、奴はそんなプッツン松井を尻目に、蹴撃のチーフ崎津の言葉を聞いていたのかいないのか黙々とビールを舐め続けている。
たぶん本人にビールを舐めている自覚は無い。全て自動だ。
イッツオートマチック!!
アル中アフロ斎藤の顔だけはしょんぼりしているが、髭とアフロにはビールの泡がついている。
追随型の卑怯者オラつき極真タロウ堀辺マンは、アル中アフロ斎藤が飲んだビールの空き缶を上腕に挟んで潰してはレーズン福島に無言のアッピールをしているが全く相手にされない。
だかはお前は友だちが居ないんだ。
世界はクソだ!時よ進め!パーティよ終われ!
いまだ怒り散らかすパワハラ遺産チーフ崎津を他所に、唐揚げは堅揚げ原理主義の望月が卓上のナゲットを見つめて「衣がシナシナの唐揚げなんて気持ち悪くて食えない」とブツブツ言っていた。
なら食うなよ!!
通帳△加藤は400万のそれがバレて嫁から号泣電話がかかってきていた。
本人はスピーカー通話にして大笑いしながら聴いている。精神が強い。借金くらいしないと男は生きていけないらしい。
所在なく立ち尽くしているおれの肩を、カラ出張不倫の服部が優しく叩いた。
「大変なことになったね」
「えぇ、まぁ」
「こんなパーティー、抜けだして寿司でも食べに行こうか」
「その金もカラ出張で着服したやつですよね」
カラ出張が苦笑いする。
繰り返したカラ出張不倫で居場所を無くした服部が持つこの厚いツラの皮は、氷河期世代としてひとの顔色を見ながら生きてきたおれとして見習うべきかも知らない。
とにかく忘年会パーティが始まった。
いつ始まったのか、それは分からない。眠りにも似ている。つまり、終わりだって曖昧なんだ。
腐った柘榴の周りを飛翔する蜜蜂の羽音にも似た悪夢的な混沌を極めた宇多川動物園会議室のドアが開く。
狂気の欠勤キング高橋が降臨した。
「な、何故お前がここに……」
髙橋は凄い。
歯痛で休み、検診と抜歯で休み、その麻酔の効き過ぎによる体調不良で休み、それが終わると釘を踏む怪我で休み、その怪我の化膿で休み、関係する手術で休み、そして再び麻酔の効き過ぎによる体調不良で休んだ。
更にそれらの結果として出た不眠で休み、なんと合わせること八週間の休み!!
もはや年内に会う事は無いだろうと思っていた。誰もがそう考えていた。
そのキング髙橋が、忘年会にやってきた。
とっさにパワハラ遺産チーフ崎津を見た。
崎津は怒りのあまり、目や鼻、口といった身体中の穴と言う穴から怪しい光を発すると徐に顔を巨大化させている。
「蹴るぞ、蹴るぞ、蹴るぞ、蹴るぞ」
そう呟きながら肥大していく顔は、やがて会議室にいる動物たちをゆっくりと飲み込むと勢いよく爆発した。
そして事務所の瓦礫から唯一生き残ったおれが立ち上がり、最初に発した言葉がロックンロールなのさ。
それが波打ち際ブンガクなんだよ。




