東狐 弐
「北狐ってなんだよ!お前は東狐だろ!」
どういうことだ?!次期組長?意味わかんねぇ!
「なんだよって、そのままやで。自分、考えても分からん?偽名や、偽名。俺ヤクザ、北狐家長男 次期組長や。」
「俺の知っている東狐は自分語りをしないけれども、俺らと仲良くしてくれている良い奴だろ!」
「演じてたんやろ。もう、ええ?さいなら」
回れ右をして闇に消えようとする。
「よくない!まて東狐!東狐!」
東狐は止まることなく闇に消えた。
俺の声だけが静かな闇に響き渡る。俺はメンバーを担いで、動けず何も出来なかった。
あの夜以降、東狐は一度も顔を見せなかった。家に行ってみたが、そこはもぬけの殻だった。
「電話、通じないねぇ。新MVどうしようか。」
「俺たちが酔っ払ってたせいで全く覚えてない。」
「・・・。」
「今日は一旦解散!問題は明日から話していこう!ファンの人には体調不良ということで通しとくから。帰った帰った。」
マネさんに促され、各自家に帰宅する。
「なんだよ、東狐のやつ!」
偽名を使ってた?元から素が見えなくて苦手だったけど、あんな態度とられたらムカつくわ!
「ふー。帰って宿題でもするか・・・。」
道路を歩いている後ろに黒い車が止まる。
気がつくと捕らえられていた。声を出そうにも口を塞がれて出せない。
「依頼達成。簡単だったなぁ。にしても、こいつがあの冷酷な北狐のダチか?」
「ひょろすぎんだろ。」
いかにもヤクザって感じの面構えだな。・・・俺は東狐の友達じゃねーよ。
「着いたぞ。立て!」
縛られた腕を強く引っ張られる。
「いてぇーんだよ。丁重に扱えや!」
そう叫びたくても、口まで布で縛られてるので出せない。
「ボス、お連れしました。」
「こいつがあのダチ・・・。」
「はい、間違いないっす。道路ひとりで歩いてたんで、捕まえるの簡単でした!」
「ひょろすぎんだろwwwwww」
下っ端どもが笑うが、ボスらしき人は真顔だぞ?
ボスと思われる、前に座った男が立ち上がる。
笑っている部下の一人に近づき、肩に手をかける。
「ボスも思いますよね!」
その瞬間、ドンッと鈍い音が響いた。部下のみぞおちに膝が入り込む。部下たちはさっきまでの騒がしさが嘘のように静かに、凍りついた。
唾を吐き出し床に転がる部下を見下ろし、男はこの世の終わりのような低い声を出した。
「じゃかあしい。自分、用済みや。失せろ。」
「は、はい・・・!」
床に転がっていた部下は、よろつきながら走り去る。
あー、いわんこっちゃない。まあ、言ってないけど。空気を読む力が欠けているからそうなるんんだよ。
「自分、人質や。北狐が来るまで大人しゅうしとき。あぁ、外したれ。」
部下が布を外す。
「・・ぷはっ。・・・東狐は来ないよ。」
「・・・みな外せ。」
部下たちが席を外していき、ボスが部屋に鍵をかける。
「・・・自分、女やろ。」




