ぼくから見たメルトさん
エルネさんからの依頼も解決して、たくさんお金をもらった。けど、メルトさん的にはフラレスにもう少し滞在したいというのと、一応もう少し稼いでおきたいって言うから、まだしばらくフラレスにいることになった。
今はエルネさんの家で、エルネさんが絵を描いているのを見ながらメルトさんが町の依頼をするのを待っている。分身は家のまわりの森にいるって言ってた。
メルトさんが全部じゃないけど、秘密を話してくれたのはうれしかった。前から、どこか嘘をつかれているような、ほんとうのメルトさんを隠しているような感じがしてたから、メルトさんが大変な状況にあることとか、まだ話せないけどいつか秘密を話してくれるって言ってくれたのが、ぼくのことを信じてくれてると思った。
でも、気になるのはずっと変わらない。
カヴァロでは、方向音痴みたいだったのに、フラレスではさくさく地図を読んでたし、吸血鬼狩りが危ないなら、なんであんなに明るくてふらふらした感じなのかもわからない。
なんでぼくを気にかけてくれるのかもわからない。
最初は興味だって言ってたけど、メルトさんとはすぐに仲良くなった。メルトさんがそういう性格だからかもと思ってたけど、ほかの人には思ったより冷たいとこがある。
グラムさんにも、ハンスさんにも、レクスさんにも……すぐに軽口を言うのは同じだ。でも、それはぼくにはない。
ぼくの何がメルトさんに引っかかるのだろう。
「どうした? なにか考え事?」
エルネさんが水を飲みながら話しかけてきた。
「うん、でも、今はわからないことだから、どうしようって」
「答えを見つけるにはまだ早い問いってことか。そうだな……絵でも描く?」
「絵を?」
ぼくが聞くと、エルネさんは首を縦にふり、白いキャンバスと絵を描くものを持ってきた。
「気晴らしさ。頭の中でどうこう考えるのもいいけど、手とか体を動かすのも大切だよ。まあ、私はほとんど動かないけどね」
「……わかった。やってみる」
いろんな色を筆につけて、線を描いてみる。あの魔物を描こうと思ったけど、難しい。
「お、いいんじゃない。これはオクトライトか。特徴をつかめてる。記憶力と出力がいいんだね」
「そうなの。エルネさんみたいに上手に描けないよ」
「上手とかはいいんだ。絵に正解はないんだから好きに描きな」
正解はない。そう聞いてまた絵を描く。
確かに、絵に集中してたら、メルトさんの秘密について考えることはなくなってた。
描いてるときは……。
その後戻ってきたメルトさんが楽しそうな様子を見て、また、秘密について深く考えないように、心の隅にしまうように、絵を描いているときのことを考え続けた。
ユンデネ編、また時間かかります。かなり。断章は1個出すつもりです。首をキリンにして待っていてくださいまし。




