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うちよ、奔放たれ

 今日もみんなで祭りを見て回った。

 ハンスはこかげのほうで仕事し始めちゃったから自由時間が減ったけど、ルノくんと二人でまわる祭りはとても楽しい。


 少し風にあたりたくなったけど、窓の外はもう夜だというのに明るかった。窓を開けたら大きな音でルノくんが起きてしまう。分身体だけ置いて丘のほうで風にあたろう。





 丘につくと、程よい風とかすかに聞こえる人の声が心地いい。横になって目を閉じる。

 久しぶりに一人だな。そう自覚すると、無性に自分の悪いところが見えてくる。静かな風はそんな思考を無駄に加速させた。


 今日もなんとか、うちは生きている。しかし、ルノくんと出会ってからというもの、うかつな行動が増えてしまった。

 もともと自分に計画性があったとはいわないけど、アーカスでの能力使用やグラムを巻き込んだ大きな騒動に首を突っ込む行為、トレビオでは、いままで出会ったものと雰囲気が違ったとはいえ、ユミアちゃんが吸血鬼狩りであることに気付くのが遅れたなど、あまりにも危機感がない行動をしてしまった。


 レクスによる吸血鬼狩りの情報、この時点では組織だって動き出すほどの隠れ里でも見つけたのかと考えていた。

 でも、ユミアの持っていたブローチ、あれは通信魔道具だ。限られた人間しか持たないはずだが、吸血鬼狩りが持っているということがわかった。となると、自分の行動パターンがすぐさま共有されてしまう、というかされたのだろう。吸血鬼狩りが単独行動だと思い込んでいた自分がバカバカしい。


 これまで感情のままに旅をしてきた。あの目的のためでもあるが、旅はきままにしたかった。時折出会う吸血鬼狩りを撒いて、戦って、たまにピンチになる、そのスリルを楽しんでもいた。


 ルノくんと出会ってからは特におかしい。あの子を見ていると、一緒にいると、どこかほっとするのだ。ルノくんが悪いわけではない。あの子は想像以上に聡明だ。うちが道を示すことなんて必要ないくらい。


 きっかけがあれば、うちがいなくてもあの子は成長して、もっといろんなことを学んでいくだろう。結局こっちが依存しかけているのだ。あの子の成長のためにさまざまな人間と関わったのも事実だが、根本は違うのだ。


「だめだなーうちって……」


 最近のなかでも一番の失敗はお酒だ。弱いところを見せてしまった。周りに人が多くいたのに。


 でも、ルノくんといる限り、自分はちゃらけたメルトさんでいるのだろう。

 そうしないと、そうすれば、ルノくんが、みんながうちを見てくれるのだから。


 このままではいけない。ルノくんは確実に成長し、自分の生きる目的をさがしている。初めて会ったときは、殺してといってきたというのに、こんな短期間でよく笑うようになった。

 うちなんかがこのままでいいのだろうか。秘密を打ち明けられるだろうか。


「よし、次はユンデネに行こう。あそこなら吸血鬼狩りでも簡単に武力行使できないでしょ」


 ユンデネは、周囲を山で囲まれた小さな町とどこかで聞いた。さらに、今いるルズニアという国の中でも特殊な立ち位置で、宗教的な権威が強く、異界の英雄を祀った宗教が幅を利かせていることで、町内での武力を禁じられているのだ。


「予定外のことさえなければいいなー……」


 もしユンデネに行くことが無理だった場合はどうするか……思いつかないな。

 最悪その時はルノくんに色々な候補から選んでもらうしかない。

 何があってもあの子は守り抜く。そのためのリスクはかけたくなけど、うちはそんなことで挫けるような、ルノくんにとってのメルトさんではない。


「よし、うちは大丈夫……!」


 気を引き締めろ!元気ハツラツだ!


 ほら、綺麗な朝焼け……って!やばいやばい!


「燃えはしないけどくたびれ死んじゃうーーー!」


 全力疾走しなきゃ……!

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