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One more chance 

 

 情報部隊 シエル・ウララ



 私の人生には、何の意味もない。

 生きてる価値がない…

 親に言われたのは、ただその一言

 物心がついた頃から、ずっと決心した


 母様も、父様も私を馬鹿にしてきた人を、ギャフンと言わせてやる

 そして、いつか言ってやる。

 大っ嫌いだと、笑顔で言ってやる。


 そう思って、間違った道に進んだ。

 人を殺せばどんな悪事にも染まることができると思った。

 そしたら、なんとなくあの人たちとは存在価値が変わってくると思った。

 それに、人を殺せば褒められる、そういう世界に私は足を踏み入れた。

 どうなってもいい、死んでもいい、そんな思いから入ったのに


 行動と思考はいつもついてくる

 初めて、ガラムのアジトに行った時。


 私は怖かった。 人を殺す、誰かの幸せを奪うことは私にはできない。

 でも、居場所がない、犯罪に加担する人達は、精神的苦痛を味わった人たちなのだろうか?

 私には、わからない


 人はみな命は一つ

 それは悪人でも同じことだ。

 クロ、君は正しいと思うよ、

 でもここでは誰も称賛しないだろう

 そんな世界なのだから。 


「シエルは何でここに来たの?」

「え?」


 初めての任務は、生きた心地がしなかった


 情報収集といって被害者に話を聞いていた。

 子供の親たちは泣きながら、話してくれた。 

「私がもっと…」「俺がもう少し」そればかりが

 私の耳に聞こえてくる。 


「なんで、被害者が謝るんですか、どうして悪いことはしてないのに」

 クレアとの昼食の時にわたしは思わず聞いた。

 この世界は思ったよりも残酷だ。


 被害者たちは、口をそろえて「あの時」と言っていた

 私は、一応世界から恐れられているマフィア組織の一人だ

 犯罪者が犯罪者を倒すなんておかしな話だ。


「シエルは何でここに来たの?」

「え?」

 クレアさんから出た言葉はこれだった


 何しに?

 人を殺して私は何になる


「何で、こんなところに来たの?」


 確かに何で私は、こんなところに来たのだろうか。


 今日は、色んな経験を知ってしまった。

 初めて生でみた、ギャングはなんとも怖かった

 あいつらは、何が目的でこんな事をしているのだろうか


 私は、ここに入って何をしたいのか?

 この問いだけが、今後の課題となるだろう



 ーー洞窟の中ーー


 ジェオラは、素早く敵たちに向かって走っていった。

 まるで、獲物を捕らえる。トラのように


「おい、やべ敵襲だ!」


 ギャングたちが、銃を乱射する。

 子供たちにも、当たりそうになっている。

 ジェオラは、流れてくる銃弾のほとんどを切る


 俺は何をすればよいのか、わからなかった。


「クロ!人質の救出が先だ!」

 ジェオラは、敵を何人か斬りながら、俺のほうを見て言う


(救出って俺には何もできねぇよ。)


「ぎゃあ」

 何人かの子供や女性たちが、斬られてしまう。


「クソ!クロ!動け」


 物陰からしか俺は、見ることができない。

 あぁ、二人できたのが駄目だったんだ、コロンやガルバが来ればよかったんだ

 俺ではない!


 自分を否定することしか、僕はできなかった。


 しばらくして、最後の敵が悲鳴を上げ、静かになった。


 沢山の子供たちが殺されてしまった。

 子供は、酷くまだ生まれて間もない赤ん坊も殺されてしまった。

 周りが血で真っ赤に染まる。


 ジェオラは、見慣れてるかもしれないが俺は怖くてたまらなかった。

 何名かの子供や女性は生き残った。


 ギャングの敵たちは、全部倒したみたいだった。


「おじちゃんありがとう」

「ありがとうございます。」

 残った女性と子供たちがジェオラに感謝する。


 俺は、ずっと隠れていた


「ジェ…ジェオラさん…?」


 恐る恐るジェオラに目をやると、ジェオラは子供を抱いていた。

 ジェオラだけではなく、女性や子供たちも死んだ人たちを抱いていた。


「なんで…」

 ジェオラが、怒号を俺に浴びせた

 俺は、下を向いてしまった


「なんで、動かなかった?」

「…ごめんなさい」


 俺だってつらいよ、逃げれば早い話だけどほかに行く当てもない

 どうせなら、死のうと考えていたが戦わないから危険も降りかからない


「人質の救出をなぜしなかった」


 ジェオラの顔がみれないでいる。

 俺は何をしているんだろう


「お前、人を殺せないだけじゃなくて、人を守ることもできないのか?」


 人を守る…

 強い者にしかできない事だろそれは

 ジェオラのように、人斬りを楽しくやっていただけならこんな仕事簡単だろう。

 でも、俺は人の生命を途絶えさすようなことや、自分がいつでも死んでもいい勇気なんて何もない


 死ぬためにここ《マフィア》に入ったのに死ぬ勇気がないって1秒で矛盾してるな。

 人を殺すのが仕事だったら、俺には向いてないのかもしれないな


「おい」

 気が付くとジェオラが目の前にいた。

 怖いが恐る恐る顔を上げたら、ジェオラは悲しそうな顔をしていた。


「ごめんなさい」

 偽りの言葉が俺の口から出た


「お前は、何のためにここに来たんだ」

 何のため?  知らねぇよ俺が聞きてえよ

 存在意義も教えてくれよ。


「いいか、何度も言うここは殺しが仕事だ。一般市民に手を出さない、守るのがここの掟だ。

 この仕事をするなら、手を汚す覚悟と命を張る勇気が必要だ!」

「はい…」

 俺の声は、洞窟では反響しないほど小さな声量だった


「お前は、知らないと思うが人を殺せば殺しただけ褒められる国もあるし、人を道具としか思ってない奴らもいるんだぞ。」


 ジェオラの考えは正しいとは完全には言えない

 でも、そういう奴らがいることは知っている

 沢山の人が同じ意見を持つわけがないのだから。

戦争は、自国を守るためにある。

攻めてきたら、対抗しないと滅んでしまう。

人を殺せば褒められる、そんなのは間違っているけど、1人の意見では変わりはしない



「生と死は相対だぞ!生きるのすぐ後ろには死がある。死にたいと思っても感情のどこかにに生きたいがわいてくる。お前は、今つらいだろうけど、もっと外を見れば見える世界も変わる」


ジェオラは、怒鳴りながら俺に言う


 確かに、俺はなにも知らなかったのかもしれない。

 レインといた時の平和と

 今目の前に、広がる現実は、同じ時代と世界で起きている


 ジェオラの言っていることは正しいのかもしれないでも、信じたくない。


「ルーナがいない」


 ジェオラは子供の死体を見ながら言った。

 母譲りのきれいな金髪の女の子がいない

 残念ながら、生きてる方々のほうにもいない


「これで、全員ではないな…」

 でもほかに部屋のようなものは見当たらない。

売られてしまったのだろうか。

来るのが遅かった

そんな事を考えてしまう。



 その時

「きゃあ!」

 子供の叫び声が奥から聞こえた

「おら、静かにしろ」

 ジェオラはもうスピードで声がしたほうへ走った。


 奥には隠し通路があり、ギャングのボスと下っ端が何人かの子供を連れて行く所だった

 三人の子供に、ルーナもいた。


「その子達を放せ!」

 ジェオラは刀を構え、威嚇する


 ギャングたちは、顔を見合わすと一人に指示をする。


 そして、ルーナを人質にした。


「おい、その子を放せ」

「いやだね、これ以上邪魔をするな」

 次の瞬間、ギャングの一人が手を刀に変えルーナの首元に刀を近づけた。


「有能力者だったのか」

 ジェオラは無能力、俺はなにをすればいいんだ

 俺は、俺は、何をすればいいんだ。


 何もできずに、ただの足手まといには、なりたくない。

 何が何でも役に立とうと思ったが、足をくじいて立てなくなってしまった。


 もっと、足手まといになってしまった。


 ジェオラも動けず、俺は物理的に動けない。

 そんな時、


「ジェオラ!」

 なんとクレアが走ってきたのだ。

 後ろには、シエルもいる。

 シエルは、被害者たちの傷を処置していた。


「ちッ、邪魔がまた一人増えた!これが見えないのかこいつの喉切っちゃうぞ」

 君の悪い声と顔で、俺達を挑発してくる。


「ジェオラ合わせてね」

「一回で終わらすぞ」

 二人は何か結託しはじめた

 すると、ジェオラがクレアめがけて刀を振り下ろした。


「ジェオラさん!」

「クレアさん」

 俺とシエルが叫んだ

 仲良くしてたのに急に切りかかったのだ


 パンッ

 クレアが指パッチンをして手を刀にしていたギャングの手下と位置を入れ替わった。


「「「「「え?」」」」」


 俺とシエル、ギャングにルーナまで、皆が一斉に口を開き見事にハモった。


 ザシュ

 ギャングの一人をジェオラが斬りつけ、クレアが自分とジェオラの位置を変えるためまた、指パッチンをした。


 便利な能力だなぁ

 と俺は思ったね


 他のギャングたちもあっさり倒し、子供の安全を守った。

 さすが、ジェオラまさに男の中の漢と褒めたいところだがそいう場合じゃないだろう


「お前は、不合格だ」

「はい…」

 ジェオラにいきなり結果を言われた

 それはそうだろうあの時も何もできなかった


「でも、今度ある合同任務に行くといい」

「合同?」


 聞くと内容はこうだった。

 今回の結果が悪ければ、俺とコロン、ガルバ、シエル、ウィルスにもう一人の同期 カナデルとで、洞窟の探索に行くらしい。

 どうやら、そこが問題がなかったら、研究室にするらしい。


「お前は、そこにいる害虫やら迷惑動物やらを倒せばいいから、わかったな」


 害虫やら、動物やらって何がいるんだよ

 てか、なんか難易度低くね?

 まあ、何とか泣きのもう一回のチャンスを無駄にしてはならない今回の任務は先陣を切るか。


「そのーさっきはごめんな?お前があまりに無能でついカッとなってしまった」


 謝ってくれてるけど、どこも表情一つ変わってないな。

 今回の件で俺はよくわかった。

 うじうじしてたら、俺のせいで何人もの命が消えた

 周りをよく見て行動しなくてはならないと


 ーーー


「クロ、ドンマイ」


 シエルはこんな俺を励ましてくれる。

 帰りの電車に揺られ俺たちはガラムに向かって帰っていた。


「クロ君、大丈夫かしら?」

「あいつが撒いた種だ、このままでいい」

「でも…可哀そうよ」

「今は可哀想だが、動かなかったあいつが悪い、ちょっとは俺にも否はあるが」


 クレアは、ため息をつく、


「お前のとこの新人さん、すぐに手当てに回ってたよな?」

「えぇ、それがどうしたの」

「お前が教えたのか?」

「いえ、勝手に始めたわよ」


 ジェオラが珍しく笑顔になった。


「あいつ見込みがあるな大事にしな」

「はいはい」

「なんで、怒るんだよ?」

「何でも…はぁ~」


 隣では二人が喧嘩を始めた。

 仲がよろしくて


 亡くなってしまった、人たちの家族は悔しがっていた。

 死体に泣きつく人や、おかえりと帰ってきたことに感激してる人たちもいた

 皆、俺を責めなかった。責められてもおかしいと思った。


 でも、生き残った人たちはジェオラやクレア、シエルに感謝をしていた。

 当たり前だろう、俺は何もせずただ隠れていただけだった


 俺は、人を殺す勇気でもなく、自分の命を天秤にかける勇気でもなく

 戦う勇気と誰かを守る勇気がなかっただけだった。


「クロ、大丈夫だよ」

「ありがとう、シエル、優しいね」


 この一日だけで、シエルとはとても仲良くなったと思う

 コロンにガルバにシエルと、友達も増えてきた

 シエルは向こうが友達と認めてくれたら、嬉しいが


 電車に揺られ、俺たちはガラムに着いた。

 久しぶりの我が家に帰ってきた


 コロンとガルバにまずは謝らないといけない。

 せっかく練習に付き合ってくれたのに、無駄だった

 時間と思いやりを仇で返してしまった。


「おーい」

 声がした

 振り向くと、コロンとガルバ、ケルスさんにルナさんが手を振っていた。


「「クロー」」

 二人が坂を全速力で思いっきり走ってきた


 二人がブレーキをかけなかったから俺たちは坂を転がった

 巻き添えだ~


「何やってんだ、あいつら」

「お疲れ、ジェオラ、そして一年間ご苦労クレア」

「えぇ、なんともありませんわ」


 ケルスがジェオラとクレアにねぎらいの言葉をかける。


 ケルスも上の人間として、部下には恩を示す素晴らしい人だ

 ガラムの副ボスとして、仕事を全うしているのだろう


「クロ、入隊試験の結果どうなったの?」

 二人が目を輝かせながら、聞いてくる

 言いたくないな、「不合格」なんて言ったら二人は物凄く気を使うだろうな


「ごめん、二人とも僕不合格になっちゃって…ジェオラさんが戦っているのに物陰で隠れてしまって人質の子供と女性の多くの命守れなかった。協力してくれたのにごめん!」


 物凄く大きな声で謝った。

 これ以上にないほどに謝った。

 任務中に隠れて怯えている、愚図、誰も励ましや慰めもないだろう。

 

コロンには、剣技のすべてを教わったし、戦闘以外でも語学も教わった

 それは、ガルバも同じで、人体の急所や血管の流れ、色んな事を教わった

 なのに、俺は何もできず、ただ、隠れて待ってるだけだった。


「ごめんなさい」


この、言葉はとても便利だがもう使わないようにしようと心の中で誓った。


「クロ、大丈夫だよ」

コロンは優しく俺の背中を撫でた。


「クロ、僕には君が敵を殺してくることができないってわかってたよ」

ガルバは優しく手を差し出してきた。


「でも、」


励ましてくれるのかと、思ったがガルバはそう甘くはなかった。


「殺すことができなくても、能力を使って人を守ることはできたんじゃない」


疑問形でもなく、終止形、完全に怒っている。

分かっていた。人を目の前で見殺しにしといて、

「頑張った」はありえない。

一瞬だけ、そんなことを言わないでと思ったでも、確かに俺は殺した、子供たちを見殺しにした。


俺はもう、普通の人ではなく犯罪者なのだろうか

言葉で人を殺すように、見殺しも立派な犯罪なのだろう

こればかりは、ガルバの言う通りだ


ダメだな、俺は目の前にある小さな命すら守れないんだ

今度、今度って何度もその言葉を頭の中で連呼している

ミスばっかりしている。


実際に、消えた命を前にただただ怖いということしか出てこなかった。


「ご《・》()()

また、この言葉が出てしまう


ここに、帰ってきてから謝ってばっかりだ


「で?君は誰?」


二人は、俺と一緒に帰ってきたシエルのほうを向く


「え?覚えてないの?」


シエルはびっくりしながら質問した

コロンとガルバは、首を横に振る

あの時はみんな初めて会ったばっかりだった、おまけに口を開いていないのだから


「怖くて、情報部隊のほうに行ったんですよ」

「やめようとは思わなかったの?」


コロンが聞く、躊躇なしに


「行く所ないので」


質問の答えが暗かったのか、同情する答えだったのか

すぐに、コロンは謝った。


行く所ないは、俺も同じだろうか?

結局、命を張る勇気がないのにここにいる

さっさとやめて次に行けばいいのに


「それで?クロの働きはどうだった、試験は合格かな?」

「…」

「…」


二人は黙っている


「不合格かな?」


ジェオラはうなずく

自分の口からは言いたくないのだろう

結果ではない、不合格の理由を言いたくないのだろう

切なくなるから


四人は(ケルス、ルナ、ジェオラ、クレア)、場所を変えた

これからの、話をするのだろう


「よう、()()()()()()()()!」


後ろから、声がし振り向くとウィルスが立っていた。

その後ろには、小さな女の子がいる 

 この子が、カナデルなんだろう


「ウィルス…」

「おっ、逃げた奴もいるじゃねえか」


ガルバの声を遮って、シエルのほうを見る


「クロ、なんだこいつ」

「ウィルス!、二人に謝って」


コロンが怒ってウィルスに注意する

ウィルスは懲りずに話を続ける


「俺、今新人部隊のリーダ任せられてるから、お前ら俺の部下だ!分かったか」


リーダ?そんなの決められてるのか

誰からだ?と考えていた


「リーダではないでしょう、あなたは」


ため息をつき、カナデルが呆れながら自己紹介を始めた


「こんにちは、クロ君、シエルさん、私はカナデルと申す、三部隊に所属している」


三部隊ってことは、遠距離系の能力なのだろう

部隊に入ってるってことは、ルークさんから一本取ったんだろう。

凄い事だ。


「それより、私たちは次に何しに行くのでしょう?私はただここに来いと言われただけで」


言われただけ、ジェオラが提案したのだろうか?

でも、僕たちは連絡できる物を持ってないし、電話ボックスから電話もしていない。

知らないだけで、どこかで電話していたのかもしれない


俺達は、ケルスさん達のほうを見る


ーー ジェオラ ーー


「はぁ?戦闘に参加せずおまけに、救助にも参加しなかった?」

「落ち着けよ」

俺から、試験の結果と洞窟でのクロの行動を聞いたケルスは驚いた


「亡くなった人たちは?」

「全員、家族の元に返しました」

「そっか」


ルナが珍しく考え事をしていた。

仕事では、冷徹なルナが何を考えてるんだ

いや、人間だから考えるのは当たり前か。


「ところで、ルナ」

俺は、二人の話を裂くように聞いた


「クロをなんでここに連れてきたんだ?」


あんな、勇気がない奴を連れてきた理由が気になったのだ。

命をかけて戦えない奴、人を殺すことができないマフィア いる意味がない


まあ、それはルナも同じだろうな一般市民に危害を加えず、犯罪者などを処罰する

俺が知ってるのは、こことあのジジイの組織くらいだろう


「クロの実力は見てないんだ」

「実力?」


ルナは笑いながら、答える


「うん、クロの大切な人がね、()()()()()()

「殺された?」


クロの大切な人?の名前はレイン・スター、ラースという最恐と言われた男の家族だったそうだ

最も、クロもレイン自身も自分がどれだけ命が狙われ、懸賞金をかけられているというのも知らないそうだ

これとクロの因果関係がなんなのかわからんがとりあえず、わかることはクロがルナの目にはできる奴と映ったのだろう。


結局、それを言うばかりでルナは自室に戻っていった。

それにしても、クロ《あいつ》を新人たちだけで、仕事に向かわせていいのか。


どうなっても知らんぞ


ーーー


あの後、任務の内容を詳しく聞いた


北のほうに、小さな村があったそうだが、ここ数日で人が消えた

そして昨日、最後の住民が消えたそうだ


任務の内容は


村と近くの洞窟の散策と生存者の確保このふたつだけらしい

簡単とは、もう思わないようにした、どの仕事にも簡単はない

そう思うようにした


話が終わって、ケルさんは帰っていった。

僕たち、六人はテーブルに座って話をしていた 


「なんで、俺がこんな奴らのリーダーやらないといけないけないんだよ」

膝をつきながら、俺を見てウィルスが開口一番に切り出した


「赤子の子守は大変だ」

「君はリーダーじゃないでしょ」

「あぁ?」


壁にもたれかかっていたガルバが訂正した


「コロンと僕がリーダーね」

「あと、リーダーとかどうでもいいの」


コロンとガルバが一斉に口を開く

今にも怒りそうなウィルスがコロンたちを睨む


「とりあえず、明日の早朝には集合でいいですか」


カナデルがこの場の指揮を取る

(完全にカナデルがリーダーだな)

明日の任務は絶対成功させる、そう決めた





ーーボスの部屋 ケルス・ヴェルディ ーー


俺はルナと夕食を食べていた。

皆と食べればいいのに、ルナが断るのだ

きっと静かに食べたいのだろう


「なあ、ルナ?」


食事中にしゃべるなと言われて育ったがルナやルークなどと食事を初めてしたとき、すぐ破ってやった

食事くらい、楽しく食わせろなんて親には言えないが。


「ジェオラには話してあげてもよかったんじゃないか」

「…」


ルナは食事の動きを止める


「良かったんだよこれで」


そう言って、嬉しそうにグラスを持ちながら遠くを眺めた  

あまり、過度に人の思ってることを聞くのも気が引ける


「これ、食べていい?」

「うん、食べな」


このままでいい、この距離がなんとも言えないけど心地よい




ーーー 自室  クロ  ーーー


今日は、色々疲れた

自分の弱さやダメなところを今日でたくさん知ることができた

自分の能力がごみなのは自分がよく分かってる

そこをどう変えるかが次のステップにつながるんだ


沢山の命を目の前で見過ごした。

もう、蹲る《うずくま》のはやめよう。

能力があるなら、人を助けるそう決めた


明日は絶対に合格をする

そのためにも、早く寝よう


レインや子供達のように、目の前の人を助けるそのためにまず

 

ーーー人を助ける力を身につけようーーー



ーー 出発 ーー


色んな人が見送ってくれる

コロンとガルバは、ルークさん達、1,2部隊のメンバーが

3、4の部隊は、ケルスさんが、ウィルスとカナデルと応援やら話をしていた


シエルには、キルエさんとクレアさんが見送りに来ていた。


皆、合格してるんだから一員だよな

ジェオラさんは俺を見送りには来なかった


「来てほしかったなぁ」


情けなく小っちゃい声は地面に吸収された


「じゃあ、みんな気を付けてね」


最後にルナさんに見送られると俺たちは歩き出した

結局、ジェオラは来てくれなかった

数多くいる教え子の中で俺は一番出来が悪いんだろう。


「クロ!」


シエルに呼び戻された


「また、考えてるね」

「ご…あ、うん」


謝るのは、ミスを起こした時と人を泣かせるようなことをしたとき、そう決めたんだった

危ない、危ない


「僕のせいで消えちゃったからね」

「私も何もできなかったから同じだよ」


シエルはいつも優しい子だ。

励ましてくれる


「まず、着いたらの事を話します」

「いやいや、まだ歩き始めたばっかだよ、カナデル」


コロンとカナデル、ガルバは三人で笑いあっている

一方、ウィルスは、


「なんで俺がこんな奴らとだよ、ルークさんの何で俺を行かせるんだよ、戦力落ちるだろうがそれに…」


ブツブツと文句を言いながら、先頭を歩いている。


「クロは、何でここに来たの?」

「なんで?」


何の前ぶりもなく、シエルが聞いてきた


何で、理由、目的も何もない

死にたいだけで来たけど、いざ戦闘になれば勇気が出なかった

自分の命を張る勇気もないから…

たしかに、俺は何のためにこの世界に入ったんだろう


「分からん」


笑顔で答えた

さあ、反応はいかに?


「そう…」


露骨に元気をなくした、こういう時にあるんだろうこの言葉が

  ごめんなさい、シエルさん



俺達は北に向かって歩いた

何日もかけて、ようやく目的地に着いた

長かったー


途中ウィルスが喧嘩を売るような態度をとるけどそれを綺麗にスルーするガルバ

それを見て、ニコニコしているコロンとあきれるカナデル

興味なさそうな、シエル


この構図だけで、なんとなく性格がわかるのは気のせいだろうか


「村は崩壊してたよ、生存者らしい人もいないよ」

コロンとカナデルが戻ってきた


「こっちもダメだったぜ、なんの情報もねえ」

「近くの町の人達とは、交流があったらしいけど」


となりの町の人達は交流が途切れた理由を知らなかったらしい

となると、何故だ


疑問ばかりが湧いてくる


その時


「よう、人間ども」


外から声がし俺たちはテントを出た。


見ると洞窟の上に人影が霧で覆われて何も見えない

謎の人影は、洞窟の奥へと姿を消した。


「待て」

ウィルスの叫びと同時に俺たちは洞窟に向かって走った

あいつが村を消した犯人なのだろうか?

そもそも何のために、村人を消したのだろうか


謎の人影を追って俺たちは洞窟の奥へとやってきた。


「お前が村人たちを消したのか?」

「正直に答えれば痛いようにはしねぇよ」


ガルバとウィルスが問う

さらに問う


「お前の名はなんだ」

しばらく、謎の人影は黙りあたりはシーンとなった


「私の名は…」










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