入隊試験 其の二
朝起きると、タクミはいなくなっていた
荷物もなく、ただ手紙が置いてあった。
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ジル、ジェオラへ
急に、いなくなることをどうか、許してほしい
いつまでも、この仕事を続けるのはさすがに嫌になってきた。
人を斬って斬っての繰り返しはもううんざりなんだ。
僕らが、もっと違う場所で会ってたら、世界の見方は変わったのかもしれない
君たちと、過ごした時間はとても楽しかった。
何をするも一緒だった
時には喧嘩したり、時には笑ったり
手を伸ばせばいつも君たちがいてくれた。
でもね、人生には永遠なんて物は存在しない。
「ずっと」とか「永遠」なんてものは存在しないから、どこで僕らが離れても同じなだけさ、それが今日ってだけ。
今から行くところは、有能力者集団で構成された場所だ、無能力者の君たちには危険すぎる。
上官たちが、僕らを消すために無茶な事をさせてるんだ。
ジェオラは、怒っているかな?
許してなんて、虫が良すぎるよね。
ジルは、僕には期待してたみたいだけど、ごめんね。
僕には、才能なんてものはない。
ジルや、ジェオラがいてくれたから、今日があるんだ、この任務は僕に任せて君らは飛ぶといい。
日本から、離れて遠くの国に逃げて。
そしたら、大人になって三人で酒でも飲もう。
いいか、僕の事は気にしないで二人は生きることだけを考えて。
また、会う日まで
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「どこにもいないよ、ジェオラ」
あたりを探していた、ジルが戻ってきた。
「どうする、ジェオラ」
「向かおう」
「え?」
俺は、急いで荷物をまとめる。
俺は、走った、これ以上にないくらいに走った。
「ジェオラ、待って」
ジルが後ろから追いかけてくるが、止まらない。
三日かかるところを俺たちは一日でついた。
途中の休憩で何度も
ジルは、イチノセの事を口にしていた。
俺はただ、馬鹿なことをしたのに怒っている
目的地に着いた時には、血の匂いがすさまじかった。
それもそのはず、100人くらいの人が血を流していたから、血の匂いも酷かった。
敵アジトの中は、酷かった。
あたりには、死体だらけであたり一面血の海だった。
「タクミは?」
「…」
「ジェオラ、早くタクミを探さないと」
(うるせえ、こいつの無神経さも嫌になる、)
敵共は、城を縄張りとしていた。
イチノセ、イチノセ、と頭の中は馬鹿な野郎でいっぱいだった
死んだら、どうするんだよ。
先陣切ってて死ぬとか笑えねえよ
会ったらぶん殴るそう決めていた。
最上階に行くと、死体の数も多くなっていた。
だんだんと、ボスの所に近づいている
そう、確信していた。
最後の扉の前に来た。
ここまで、たくさんの血痕があった。
ボスはここだ、そして、イチノセはこの先にいるだろうか?
ドアに手をかけようとしたとき
「なぜ…なぜ、おまえはわしの命を狙う」
ボスの声だろうか。
震える声が、部屋に響いている。
「なぜ?…」
若い青年の声が続けて聞こえてきた。
イチノセの声だ。
「わしは迷惑をかけてないだろう、」
「迷惑かけてない?お前はほかの人の平和を脅かしてるだろ」
ドアが開かねえ、イチノセ中で何をしてるんだ。
頼むから、開けてくれ。
「何か、開けれそうなのを探してくる」
「イチノセ!!開けろ」
俺は叫ぶ、反響する環境で叫んだから俺の声にエコーが生じる。
「地位があるなら、平和を目指さないのか?能力を持っているなら、平和にしようと思わないのか?」
「はぁ…はぁ…」
「能力があるから、偉いのか?立場が上だから自分がしたいようにしていいのか?」
敵のボスは、手首を切り落とされていた。
隅に追いやられ、タクミは刀を向ける。
「お主だって、たくさんの人を殺したじゃないか…随分、説得力がないじゃないか」
「お前はただの傲慢だろ、僕は命令で人を斬る。どっちも変わらない悪行だ。説得力もクソもあるわけないだろ。」
もう片方の手首も切り落とし、敵のボスは悲鳴を上げる。
赤ん坊が、分娩室で産声を上げるくらいに。
「地獄で会おう」
喉元を斬ると血が飛び散りタクミにも血が付く。
ドンドンとドアをたたく音が激しくなる。
「イチノセ、ドアを開けろ」
「タクミ!ドアを開けて」
二人の声は、反響して聞こえる。
ドア越しに、聞こえるのは何かが物凄い勢いで飛び散っている音だけだ
「イチノセいるのか」
「タクミ、ドアを開けて」
頼む開けてくれ、イチノセ
「ジル、ジェオラ…」
「タクミ!」
「ドアを開けろ、イチノセ」
何をしても、ドアは開かない。
破壊できるほどの能力があれば…
無能に生まれたものはみんなこうなのか…
「ごめんね、ジル、ジェオラ勝手にいなくなって」
「そんなのは後からでいいから、ドアを開けて」
しばらく、沈黙に包まれた。
「ここから、北東に300キロ歩いていくと港がある。船でも乗って君たちは逃げるといい。上官たちには僕から、殉職したって伝えておくよ。どうせ確認しない人たちだから、バレないよ」
タクミが笑いながら、ジェオラとジルに言う
「タクミは、どうするの?」
「僕は、残って人斬りをやるよ。売られた僕は仕事をしないと存在意義がないからね」
「三人で酒を飲むんじゃないのか?イチノセ!!」
ジェオラの怒鳴り声が響く
「お前にまだ俺は勝ててねえ、勝ち逃げなんて許さねえ、逃げるなら三人で逃げようぜ、イチノセ!」
「うん、酒はいつか飲もう、それにジェオラは僕よりずっと強いよ」
ジェオラは、黙り込んだ。
「僕は、君たちよりずっと弱いよ、僕には生まれた時から、能力が与えられて生まれてきた。」
(何でこいつは、才能があるのに俺達ばかりほめるんだ)
今まで、会ってきた能力者は無能を馬鹿にしてきた。
「タク…」
「いい?ジル…ジェオラ…」
ジルの話を遮って、タクミは話す
「有能よりも、無能が一番可能性を秘めてるんだよ」
そう言って、音が聞こえなくなった。
重いドアを開け中に入ったが、タクミの姿はない。
「タクミ?」
「イチノセ…お前は何がしたいんだよ」
ーー任務報告ーー ジェオラ・ピエロ
結局、逃げようとしたが無理だった。
運悪く、俺らは新選組の仲間?に捕まった。
「ほう、それでタクミ?ってやつが死んだのかい?」
「はい、死体は燃やして埋めました」
「まあ、タクミがどの顔だったのかは知らんがお前らは生きてて良かったな」
(顔を知らない?4年間近くで働いてたのに)
「処遇は、そうだな、お前ら処刑だ。」
「まってください、上官!」
ジルが叫ぶ
「処刑は、二人でしょうか?」
「お前らと聞こえなかったのか」
ジルは立ち上がり、俺の前に立つ
「ジェオラは見逃してもらえませんか…」
「ジル、お前余計なことを…」
「いいんだ、ジェオラ」
急に何を言ってるんだこいつは、チッ、手足を縛られ動けない
「そうか、どちらも命には価値がないが、まあいいかお前らは所詮いらない命だからな」
気色の悪い声を上げ、気味の悪い笑い声で俺たちを見つめる。
ーー処刑 前夜ーー
俺とジルは、最後のご飯を食べていた。
ご飯といっても処刑人に食べさせるのは、質素なものだけだ
豪華ではないし、食べられるだけありがたいもんだ
「…」
「…」
沈黙だけが、流れる最後の晩餐
悲しいなんてものでは片づけられないだろう。
目の前の小さい命が消えるのだ。
「なあ、ジェオラ」
「なんだ?」
今日が終わって欲しくないそう思えた。
「もし、ぼくら三人、人斬り《ここ》で会わなかったら何してたんだろうね」
「しらないよ、そんなこと」
考えたくない、考えたくない
そんなことばかりが頭をよぎる
「もし…グスッ」
見上げると、ジルは泣いていた。
「ジル…」
「もし…グスッ…僕たちがまた会え…たらさ、酒で酔いつぶれて、朝まで…飲んでたいな」
「そうだな…」
それしか言えない、ジルが俺の処刑を取り消すように申し出た時でさえ、俺は何もできなかった。
死ぬのが怖かったからだ。
そして、いまも何もできずにいる。
「ジェオラ、死にたくないよ、死にたくないよ、ジェオラ、タクミにも会いたいよ。」
そいって俺に抱き着いてひたすら泣いていた。
神様なんて、幻だろうな、月の光が俺たちを照らす。
(いまさら、光を当てるなよ。ずっと日陰を歩いてきたんだ…)
ホントに永遠の幸せなんてないんだ
そう思いながら、夜は明けてった。
他の手下に拘束されながら、俺はジルの処刑を見ていた。
処刑台にジルが上がってきた。
「ジル!」
ジルは、手を縄で縛られ座り込んだ。
「最後に何か言わなくていいのか?」
上官がジルに言う
「ジェオラ、いままでありが…」
話の途中でジルは斬られ、死んでしまった。
周りから、聞こえるのは笑い声と血が飛んできて汚いという声ばかり
悲しみや同情の声は一切聞こえない。
どうして、俺は何もできないんだ。
ジルを庇えなかった、自分を恨んだ。
死にたい何度もそう思った。
でも死ぬのが怖いだから、考えを変えた
イチノセ タクミ 俺はお前が憎い、だから…
お前を殺す、この手でいつか
「ジェオラさん」
「あ、すまん考え事をしていた」
ジェオラに怒られ、あの後ジェオラはずっと黙ていた。
触れてはいけないところに触れてしまったみたいだった
「ごめんなさい、ちょっと言い過ぎました」
「いいんだ…」
また、落ち込んでしまった。
人にはそれぞれ葛藤がある。
つらい事を掘り返さないように気を付けなくては
今後、むやみに人の事を言うのはやめよう
そう心に誓った。
「降りるか」
一時間くらい電車に揺られていると、ジェオラが呟いた
バーレー駅、俺らがいた場所よりは田舎だな。
「いまから、なにをするんですか」
「誘拐された子供を助け出す、犯人を倒す、かんたんだ」
「簡単…」
もう、ジェオラは殺すなどは言わなかった。
多分、言ったらめんどいと思ったのだろう。
また、喧嘩なんてしたくないから、
「場所は分かっているんですか?」
「分からないから、待ち合わせだ。」
誰と待ち合わせをするのだろうか。
二人で近くのレストランに入った。
メニュー表には文字が書いてあったが、ガルバとコロンと語学の勉強をしといた甲斐があり何とか読める
後から、二人にはお礼を言おう。
そういえば今、二人は何をしているのだろう…
「何か、飲むか?」
考え事をしていたら、いつの間にか店員さんをジェオラが呼んでいた
「サンドイッチとアイスカフェラテを一つずつお願いします」
「コーヒーを2つで」
「かしこまりました、ご注文を繰り返します、サンド…」
改めてみるとジェオラは男前だと思う、口は荒いが…
女性には、モテるだろう、俺には優しくないが…
商品が出てきたときに、二人の夫婦がやってきた。
「ヒィアとサムといいます」
「初めまして、ジェオラと見習いのクロと申します」
「はじめまして」
紹介されたので挨拶をしておく、なるほどガラムとは名乗っていないのか。
道理で怖がれないわけだな。
「依頼内容が、このあたりに二年前から来たギャングに娘を誘拐されまして」
「二年前にきた?」
母親が泣きながら、話を続ける。
「急に来たんです。それから、町はアイツらに脅かされました」
男の方がなみだ混じりに答える。
娘を失う悲しさは良く分かる。
大切な人がいなくなったら悲しいの他なにもない。
「とりあえず、娘さんの名前は?」
「ルーナです、三つ編みで、母と同じに綺麗な金髪の髪の毛です。
学校から帰ってるさいに誘拐されたのではといわれている
理由は、途中まで友達と帰っていたからだ
「なんで、ギャングだって分かったんだ?」
「周りの証言と防犯カメラに映ってたんです。犯行が」
情報を聞き終えると俺達は店をでた。
どうやら、情報部隊の人達に会うようだ。
情報部隊、索敵や策士に優れた能力を持つ者が集まる部門。
キルエさんが一応代表? みたいな立ち回りだ。
あの人は、気さくで優しいのだが仕事はそっちのけですぐにどこかに行くらしい。
それでも、情報収集の腕なら右に出るものはいない。
「結構、大変な仕事かもな」
「分かるんですか?」
どこに向かってるのかは、わからない
暑い街を歩いている
ジェオラに聞いても答えてくれない。
少しは、ジェオラと仲良くなったと思う
いまだに、口は荒いが、それでも喧嘩した仲だ。
信頼こそないが、少しは関係も縮まっただろう。
数分歩いて、ジェオラは止まった。
廃墟にやってきた俺たちは、中に入ると二人の女性がいた。
「待たせたな、クレア」
「おう今、来たところだ、そっちは例の?」
赤髪の女性が俺を見る
ジェオラ、友達いたんだ。
まずは、そう思った。
「クロです。よろしくお願いします」
「クレアだ、よろしく頼む」
ペコっと会釈する。
律儀な人だ。ジェオラは最初に会った時は挨拶してくれなかったからな
「こっちは、情報部隊に入ったばっかの、 シエルだ。暑さに負けてバテたんだ」
入ったばっかりってことは、俺の同期か。
一人情報部隊に入ったって言ってたがこの子だったのか。
「ところで、何かつかんだか?」
「つかんだは、つかんだんだけどー」
「なんだ?」
クレアはジェオラと仕事の話をしている。
俺は目の前の女性に目を向ける
バテたのは、見ればわかる。
白目向いてるもんな。泡も吹いてる。
この子が俺と一緒の同期だったのか。
初めて会った時は、一言もしゃべらなかったもんな
まあ、色々びっくりすること多かったからな。
目の前でイチャつくし、人を殺すトリック見せたりするから
にしても、きれいな髪色だ。
太陽に照らされた髪は、きれいなライム色の髪
白目向いてるから目の色がわからんが、きっときれいな人に違いない。
「任務に向かおう」
そろそろ、向かうようだ。
「シエルちゃん、仕事行くよ」
クレアがシエルに水をぶっかける
「冷た!」
シエルが飛び起きる
「クレアさん、何するんですか!」
俺らに気が付いたのか、動きが止まる
「シエルちゃん、今日から仕事を一緒にする、ジェオラ君とクロ君、」
「こんにちは」
俺は、元気な挨拶をする。
さあ、最初の挨拶が肝心だがどうなる
「ちょっと、クレアさんなんで私がこんな人たちと」
「こんなだと」
ジェオラが怒って一歩を踏み出す。
「まあまあ、ジェオラさん、落ち着きましょう」
「おまけにそこのチビとも」
おいおい、俺をチビだと?
これでも170㎝だぞ。男子にしては小さいか。
帰って、牛乳でも飲むとよう。
「コラ、シエルちゃん、そんな事言っちゃダメでしょう」
「…」
優しくクレアが怒鳴った。
「これだから、新人は、」
「ごめんね、ジェオラ」
ジェオラが、ため息交じりに愚痴を言った後すぐにクレアが謝る。
「時間がない、そろそろ行くぞ」
「えぇ」
俺達は廃墟を後にする。
ジェオラとクレアは仲が良い。
目的地に着くまでずっと二人でしゃべっていた。
「ホントに久しぶりじゃない?」
「一年ぶりだな、全然アジトに顔を出しやしないな」
「ボスも、キルエも元気にしてる?」
「いやーそれがな…」
あそこまで楽しく話す、ジェオラは見たことがなかった。
でも、ジェオラと知り合ってからそこまで時間もたってないから俺が見てなかっただけかもしれないな
「あんた、」
隣を歩いていた、シエルが俺に言ってきた。
「あんた、名前は?」
「クロ…」
困惑しながら俺は自己紹介をする
「よく、戦うほうに残れたわね」
「戦うほう?」
「第五部隊の事よ」
そういえば、シエルは戦闘が嫌で、情報部隊に入ったんだっけ。
(情報部隊に入れば、人を殺めなくていい逃げるのは簡単だ)
ずっと逃げてきたんだから、同じことをすればいいだけ。
今回も同じ、選択肢はいつもひとつ
逃げるって簡単だ。
「クロは、その…」
「ん?」
急に声色が変わった。
「人を殺すのに抵抗はないの?」
ここにきて、殺すというワードなんとなく忘れかけていた。
ジェオラには、あきれられているだろう
勇気のない奴が、同じ仕事を一緒にしていたらいつ死ぬか分からない。
ためらえば、自分が殺される。
そんな、世界なのだから。
「俺は、人殺しなんて絶対にしないよ」
そう、何があっても
「だって、そうゆう場所でしょ、そこは」
「同期の人達は、任務を遂行してるよ…俺はこれが初の任務?だから」
ウィルスは、楽しんで殺してるそうだが、悪い奴らにもいのちがある
俺は絶対に手を汚したくない。
「そうか、良かった」
シエルは笑った。それはもう太陽みたいなえがおで
最初に会った時とは違う
白目も向いてないし、泡も吹いてない
てか、バテたって、いまの温度25度だぞ。
走ったりしたら、暑いけど、何したらバテるんだ?
俺達は色んな話をした。
どうして、ここに来たのか出身とか好きな物とか
それはそれは、くだらない事ばかりを聞いたり答えたりした。
アジトに帰ったら、二人にも紹介しようそう思えた。
しばらく、歩いて俺たちは町はずれの洞窟に着いた
「ここが、ギャングのアジトです。情報が正しければこの中に誘拐された子達がいるはずだ」
子達だと、誘拐されたのは、ルーナちゃんだけじゃないのか?
「クレア、どういうことだ?誘拐されたのは今回が初めてじゃないのか?」
ジェオラは珍しく焦っていた。
「実は、この集団、子供たちを誘拐して闇業者に奴隷として売ってるそうです」
「奴隷売りだと」
ジェオラの怒鳴りにシエルはびっくりした
クレアの話によると、今回のギャング集団は、色んな町で子供や女を攫って、闇市場で売りさばいてるらしい。
また、売れなかったら殺して遺体はそこらへんに捨てるそうだ。
いままで、300人くらいの子供たちや女性が被害にあっている。
沢山被害が出ていたから、クレアがひとりで一年以上調査していたらしい。
今回の任務内容は二つ
・人質を救出する。
・ギャングを殺す
いつも、殺す、殺す、ってもう少し平和にはできないのだろうか。
俺達は、洞窟の入口付近にやってきた。
近くの大岩の前で隠れてると、数名の話し声が聞こえてきた
「それで、この前の獅子色の女はよく売れるな」
「まあ、色が珍しいから、その分高価なんだとよ」
男たちは、笑いながら洞窟に入っていく。
「そろそろ、行かないと人質が心配だ」
「そうね、クロ君準備はいい?」
「はい」
子供や女性が被害にあってるんだ、こんな奴らは許せない。
これ以上の被害を出さないために。
「殺しちゃダメだよ、クロ!」
「当たり前だろ」
シエルが念押ししてきたが、大丈夫。
俺には、勇気なんてない
死ぬ勇気も、人を殺す勇気も
誰かに、命を取られるなんてそんなのは嫌だ
ジェオラは不服そうに舌打ちをする。
「ジェオラ、大丈夫?」
「あぁ、クロ行くぞ」
ジェオラの事を心配した、クレアはジェオラを見つめる
「じゃあまたあとでね、クロ」
「また。後で」
俺とジェオラ洞窟の奥へと進んでいった。
周りが暗く、何せ狭い
洞窟はどこも同じだが、俺とジェオラの息遣いや足音が反響して響く
鍾乳洞があるのだろうか、水が滴る音や虫などの羽音
普段は耳を澄ましても聞こえない音などが聞こえてくる。
それほど、慎重に洞窟を探索している
しばらく、中に入っていくと、また声がする。
「で、結局はどうするんだ?」
「今回は、結構な大金が手に入るだろう」
子供や、女性が手足を縛られ、馬車に乗せられている。
「おらぁ、さっさと乗れ」
一人の男が、子供に手をあげた。
「おい、商品だぞ、大事にしろよ」
「すいません」
人権なんてないみたいに、人をナチュラルに商品呼び
ジェオラは任務にきてから怒ってばっかりだ
それもそうだろう。子供が大人の勝手で売られてるんだ。
人の自由を奪っているんだ。許されないことだろう
「行くぞ!」
ジェオラは、走って敵に切りかかった。
俺は何もせずにただ、ジェオラがギャングたちに切りかかっているのをただ、ただ見ている
それしかできなかった。