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そのゲームは、切り離すことのできない序曲に過ぎない  作者: 珂珂


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第一巻 第一章 思いがけない転生-2

関所せきしょはいった瞬間しゅんかん周囲しゅういはたちまち指先ゆびさきさええない漆黒しっこくやみしずんだ。

転送てんそうわったわたしたちは、まるで完全かんぜんざされた洞窟どうくつめられたかのようで、たがいの姿すがたさえ判別はんべつできなかった。

たしかに広大こうだい天然てんねん岩洞がんどうであることはうす々(うす)感じかんじとれたが、通路つうろがどこにあるのか、方角ほうがくがどちらなのか、まったく見分みわけがつかなかった。

「ん?想像そうぞうしていた以上いじょうくらいな……蒲公英之光たんぽぽのひかり!」とひくつぶやきながら呪文じゅもんとなえると、にした水晶球すいしょうきゅう魔法書まほうしょ同時どうじあわあおひかりはなった。

やわらかな風音かぜおとともに、てのひらから柔和にゅうわひかりはな一輪いちりん蒲公英たんぽぽがり、空中くうちゅう自動的じどうてき数十すうじゅう微光びこう綿毛わたげへとひろがった。それらは星屑ほしくずのように四方しほうり、わたしたちの周囲しゅういただよった。


光点こうてんがゆるやかにひろがるにつれ、もと暗闇くらやみ空間くうかん次第しだいらされ、洞窟どうくつ内部ないぶ輪郭りんかくも徐々(じょじょ)に明確めいかくになってきた。

「ふう〜これでずっとらくになったな。本当ほんとうに、遊戲運営方ゲームうんえいほう一体いったいいくつのわな仕掛しかけてかまえているのやら……」と私はつぶやいた。

まえひろがっていたのは、がりくねった通路つうろだった。洞壁どうへきにはこけえ、したたみずあと無数むすうのこり、空気くうきには湿気しっけあわ腐木ふぼくにおいがただよっていた。地面じめん岩石がんせき湿しめったどろが入りじり、あるさいにはあしすべらせたりわなかぬよう、格別かくべつ注意ちゅうい必要ひつようだった。

地形ちけい高低こうていさまざまで、した尖石せんせきかくされたちいさな水潭すいたんいたところ散在さんざいしていた。あきらかに、ここは普通ふつう洞窟通路どうくつつうろではなく、意図的いとてき設計せっけいされ、玩家プレイヤー安定あんていしてすすむことを困難こんなんにする環境かんきょうだった。


わたしたちはけわしい洞窟どうくつすすつづけ、警戒けいかいおこたらずに、地表ちひょうひそなめらかないしちいさなとしあな慎重しんちょうけていった。

しばらくすすむと、まえ通路つうろ突如とつじょ途切とぎれ、洞窟どうくつ全体ぜんたい横切よこぎ巨大きょだい断崖だんがい姿すがたあらわした。

断崖だんがいした漆黒しっこくやみひろがり、そこえないほどふかかった。そのおくからはひくいうなりごえ風音かぜおと交錯こうさくした不気味ぶきみ反響はんきょうひびき、背筋せすじ冷気れいきはしらせた。

唯一ゆいいつ道筋みちすじは、すうほんふと石柱せきちゅう孤島ことうのように断崖だんがい中央ちゅうおう林立りんりつしているだけだった。かく石柱せきちゅう間隔かんかくすうメートルあり、足場あしばとしてうつることは不可能ふかのうではなさそうにえた。だが、この跳躍ちょうやく安定あんていしてえるのは容易よういではなく、ましてつぎ瞬間しゅんかんなにこるかわからない状況じょうきょうでは一層いっそう危険きけんともなった。


しかし、わたしたちがわたかたはなおうとしたそのとき地底ちていから突如とつじょおも震動しんどうひびき、断崖だんがいふち沿岩石がんせきがわずかにうごいた。

つぎ瞬間しゅんかん崖底がいていから金属きんぞくおとひびわたり、それにつづいて巨大きょだい怪物かいぶつやぶって姿すがたあらわした。

それは、断崖だんがいふちをほとんどおおくすほどの巨躯きょく鋼鉄蜘蛛こうてつぐもだった。銀黒色ぎんこくしょく金属甲殻きんぞくこうかくおおわれ、その表面ひょうめんにはあかあお交錯こうさくする紋様もんようひらめき、眼部がんぶには数十すうじゅうあか感応晶体かんのうしょうたいなく点滅てんめつしていた。

これこそが伝説でんせつ蜘蛛王くもおう查克チャクであり、強力きょうりょく防御ぼうぎょ機械体抗性きかいたいこうせいそなえた九級魔物きゅうきゅうまもの、この路線ろせんにおける最初さいしょ守関魔獣しゅかんまじゅうであった。


最初さいしょから九級きゅうきゅうとはね!」

緹雅ティアほそめ、口元くちもとをわずかにげた。

よう簡単かんたんよ、怪物かいぶつたおせばいいだけ。凝里ギョウリ補助ほじょ部分ぶぶんまかせたわよ!」

問題もんだいない。」とわたしはすぐさま支援しえん展開てんかいした。

技能スキル移動弱化いどうじゃっか地蝕ちしょく!」

わたし素早すばや呪文じゅもん詠唱えいしょうし、水晶球すいしょうきゅう補助ほじょとも魔力まりょく地表ちひょうへとそそんだ。

地面じめんいくつもの魔法陣まほうじん閃光せんこうするとともに、查克チャク足元あしもと地面じめん凹凸おうとつゆがみ、無数むすうちいさなあなつめきずりむかのようにからみついた。そのせいで動作どうさ急激きゅうげきにぶり、うごきは次第しだい緩慢かんまんでぎこちなくなっていった。


技能スキル五感侵蝕ごかんしんしょく!」

亞米アミつづけて行動こうどうた。かれ技能スキル対象たいしょう反応はんのう動作協調どうさきょうちょう麻痺まひさせ、通常つうじょう生物せいぶつたいしてはきわめてつよ干渉効果かんしょうこうか発揮はっきする。

しかし、查克チャクにはほとんど影響えいきょうがなく、その身体しんたい依然いぜんとして強固きょうこのまま。行動こうどうにぶったのも地形ちけいのせいであり、精神系せいしんけい攻撃こうげきまったとおじなかった。

「なにっ?こいつ、機械型きかいがたなのか!精神せいしんへの干渉かんしょうかないなんて……」

亞米アミまゆをひそめてった。

精神系せいしんけい魔法まほう以外いがいにも、べつ耐性たいせいっているはずだ。」

わたし補足ほそくしつつ分析ぶんせきした。

大丈夫だいじょうぶ攻撃こうげきわたしあねまかせて。」

緹雅ティアいたこえった。

「もし攻撃こうげきふせ必要ひつようがあれば、そのときたのむわね。」


つづいて、緹雅ティアき、技能スキル発動はつどうした。

夜龍幻息やりゅうげんそく!」

天地てんちふるわせる龍吼りゅうこう断崖だんがい全体ぜんたいとどろき、黒色こくしょくほのお交錯こうさくする巨龍きょりゅう魔法陣まほうじんからがった。つばさるうたびに、ほのお黒影こくえい空間くうかんまったなかおおくした。

この魔法まほう本来ほんらい召喚魔法しょうかんまほうぞくし、この巨龍きょりゅう緹雅ティア第三神殿だいさんしんでんにおいて環境特性かんきょうとくせい利用りようしてそだげたものだった。

黒龍こくりゅう查克チャクけてやみほのお混合こんごうした烈焰れつえんした。だが、查克チャクはほとんど損傷そんしょうけることなく、それをった。

闇属性やみぞくせい火属性ひぞくせい耐性たいせいふせがれた……」

わたしまゆふかくひそめた。

「ならば老身ろうしんためしてやろう、渦雷神槍からいしんそう斷天式だんてんしき!」

芙莉夏フリシャ呪文じゅもん展開てんかいし、銀白色ぎんぱくしょく雷電らいでんてのひらなかあつまり、すうほん雷槍らいそうへと凝縮ぎょうしゅくした。

それらはみみつんざ破空音はくうおんひびかせながら、查克チャク関節部かんせつぶ正確無比せいかくむひさった。


傷害しょうがいけた查克チャクは、このとき狂暴模式きょうぼうモード突入とつにゅうし、動作どうさ一層いっそう狂気きょうきじみたものとなった。

查克チャク突如とつじょわたしたちにけて銀白色ぎんぱくしょく蜘蛛絲くもし連射れんしゃした。そのいときわめて精緻せいちかつ高速こうそくで、私はいそいで石牆せきしょう召喚しょうかん防御ぼうぎょこころみた。だが、その蜘蛛絲くもし瞬時しゅんじ石牆せきしょう防壁ぼうへき貫通かんつうし、やいばのようにするどわたしたちの眼前がんぜんせまった。

幸運こううんにも、それはわたしたちに十分じゅうぶん回避時間かいひじかんあたえていた。緹雅ティア素早すばやひるがえしてけ、わたし即座そくざ警告けいこくはっした。

「この蜘蛛絲くもし物理防御ぶつりぼうぎょ無視むしして貫通傷害かんつうしょうがいあたえる!亞米アミたのむ!」


了解りょうかい。」

亞米アミはすぐさま神器しんき極光盾きょっこうじゅん」を使用しようした。光芒こうぼうまたたかせる巨大きょだい盾牌じゅんぱいわたしたちの前方ぜんぽう展開てんかいし、強固きょうこ障壁しょうへき形成けいせい蜘蛛絲くもし攻撃こうげき大半たいはんふせった。

芙莉夏フリシャ好機こうきのがさず、すぐに第二波攻勢だいにはこうせい仕掛しかけた。

技能スキル光裁輪弩こうさいりんど瞬零式しゅんれいしき!」

彼女かのじょ法杖ほうじょうから強烈きょうれつ光芒こうぼうはなたれ、空中くうちゅうかぶひかりとなって凝縮ぎょうしゅくした。

わたしつづけて光元素強化術ひかりげんそきょうかじゅつもちい、光弩こうど威力いりょく貫通力かんつうりょくたかめた。

技能スキル分裂幻象ぶんれつげんしょう!」

緹雅ティア攻勢こうせいかさね、攻撃こうげき多重分身たじゅうぶんしんへと変換へんかんした。単一たんいつ一撃いちげきは、多点たてんおよ範囲攻撃はんいこうげきへとわったのだ。威力いりょくはわずかにちたものの、この多点干渉たてんかんしょうこそが大型おおがたBOSSボス関節かんせつねら最適さいてき手段しゅだんだった。


次々(つぎつぎ)と魔法攻撃まほうこうげきそそなか蜘蛛王查克くもおうチャク外殻がいかくにはついに亀裂きれつはしり、赤青せきせい紋路もんろ不安定ふあんてい点滅てんめつはじめた。

攻撃こうげきがその核心部位かくしんぶぶんくだくと、蜘蛛王查克くもおうチャク耳障みみざわりな金属哀鳴きんぞくあいめいげ、巨躯きょく全身ぜんしん轟音ごうおんともくずち、数塊すうかい金属破片きんぞくはへんへと爆散ばくさんした。

蜘蛛王查克くもおうチャク残骸ざんがいなかから、微光びこうはな石板せきばんがゆっくりとかびがった。それこそが通関つうかんかぎとなる道具どうぐであるかのようにえた。

「ふう……はじまったばかりでこの刺激しげきか。不破フハくみだったら、最初さいしょから大技おおわざ使つかわざるをなかったかもしれないな!」

私はわらいながらくびよこった。


なにしろわたしたちのたい魔法まほう火力かりょく中心ちゅうしんだからな。物理ぶつり無効化むこうかするこういう怪物かいぶつにはちょうどいい。」

芙莉夏フリシャわらいながら同意どういした。

最初さいしょ行動制限こうどうせいげん雷属性攻撃かみなりぞくせいこうげき仕掛しかけておいてよかった。もしあの蜘蛛絲くもし全力ぜんりょくはなたれていたら、対処たいしょ相当そうとうむずかしかっただろうな。」

查克チャク九級きゅうきゅうぎないとはいえ、その強度きょうど知能ちのう依然いぜんとしてBOSSボスきゅうであり、なみ怪物かいぶつはるかに凌駕りょうがしていた。これはほんの開幕かいまく第一関門だいいちかんもんぎない——のち挑戦ちょうせんがこれ以上いじょうらくでないことを、わたしたちはみなこころきざんでいた。


断崖だんがいえたあとわたしたちはけわしい洞道どうどうをさらにすすんでいった。

地勢ちせい依然いぜんとして不安定ふあんていで、ときおり地底ちてい奥深おくふかくからかすかなうめごえ岩壁がんぺき震動しんどうひびいてきた。それは、なに巨大きょだい存在そんざいやみなかひそみ、わたしたちの接近せっきんかまえているかのようであった。

ついに、わたしたちはひらけた空間くうかんへと辿たどいた。そこは天井てんじょうきわめてたかく、しかし空気くうき息苦いきぐるしいほどよどんでいた。空間くうかん各所かくしょには大小だいしょうさまざまな洞口どうこう散在さんざいし、まるで巨大きょだい生物せいぶつ巣穴すあなのようであった。

唯一ゆいいつ目立めだった構造物こうぞうぶつは、正面しょうめんにそびえる一枚いちまい小扉こびらであった。それは数条すうじょう重厚じゅうこう鉄鎖てっさふうじられ、表面ひょうめんには奇異きい文様もんよう古代文字こだいもじきざまれており、不安ふあんあお魔力波動まりょくはどうはなっていた。

「このとびら……おそらくつぎ段階だんかいつうじるかぎだろうな。」

わたし小声こごえつぶやいた。

わたしたちがなおもこの空間くうかん構造こうぞうつぎ進路しんろさぐっていたそのとき突如とつじょ底部ていぶのある洞口どうこうから重厚じゅうこう地鳴じなりがとどろわたった。


つぎ瞬間しゅんかん巨大きょだい生物せいぶつ地底ちていから突如とつじょた。その身躯しんく蟠龍ばんりゅうのごとく空間くうかん中央ちゅうおうにうねり盤踞ばんきょし、無数むすう節立ふしだった脚爪きゃくそう岩壁がんぺきさり、のがのない錯覚さっかくを人々(ひとびと)にあたえた。

それは一匹いっぴき巨大きょだい蜈蚣むかでであった。体表たいひょう重厚じゅうこう黒甲こっこうおおわれ、そのうえには赤青せきせい魔紋まもん縦横じゅうおうはしっていた。数十対すうじゅったいにもおよ異常いじょう発達はったつした前肢ぜんしそなえ、口器こうき先端せんたんからはなく深紫色しんししょく腐蝕液体ふしょくえきたいしたたちていた。その威圧感いあつかんだけで群衆ぐんしゅう圧倒あっとうするにりる——これこそがこの関卡かんかBOSSボス萬臂蜈蚣阿札斯ばんぴむかでアザス(Lv.10)であった。


「またこんな厄介やっかい怪物かいぶつか……てろ!」

わたし即座そくざ行動こうどうし、召喚魔法しょうかんまほう発動はつどうした。

召喚しょうかん泥巨人どろきょじん!」

魔法まほう発動はつどうともに、泥水でいすいかたちづくられた巨人きょじん地面じめんからゆっくりとがり、全身ぜんしんから濃厚のうこう魔力まりょくはなった。

「さすが凝里ギョウリ対応たいおうはやいじゃない!」

緹雅ティア茶目ちゃめたっぷりにわらってった。

漩絲斷界せんしだんかい裂水嵐れっすいらん!」

緹雅ティア高声こうせい技能スキルさけび、ほそいとのような水流すいりゅう瞬時しゅんじ凝縮ぎょうしゅくして、無数むすう回転かいてんする水のやいばとなった。

補助増幅ほじょぞうふく集中加速しゅうちゅうかそく防御超破壊ぼうぎょちょうはかい!」

わたしはさらに補助魔法ほじょまほうかさねた。


これはわたし緹雅ティアとも開発かいはつした合撃技能ごうげきスキルであり、超高防御ちょうこうぼうぎょ多重護甲たじゅうごこう魔物まもの相手あいてにするための専用せんようわざだった。

数条すうじょう水鑽すいさんわたし魔力まりょく加護かごによって速度そくど倍増ばいぞうし、まん飛矢ひしのごとく阿札斯アザス多重触鬚防御たじゅうしょくしゅぼうぎょつらぬいた。前列ぜんれつ数本すうほん巨大きょだい肢体したいじか粉砕ふんさいし、阿札斯アザス耳障みみざわりな嘶吼しこうげ、その巨体きょたい激痛げきつうえきれずわずかにった。


こういてる!」

わたし大声おおごえさけんだ。

いかくるった阿札斯アザス瞬時しゅんじ地底ちていもぐり込み(こみ)、空間くうかん全体ぜんたいはげしくうごいた。まるで地震じしんおそったかのようだった。

をつけろ!やつ地底ちていから攻撃こうげきしてくるぞ!」

亞米アミするどさけんだ。

つぎ瞬間しゅんかん無数むすう蜈蚣むかで利爪りそう地底ちていから一斉いっせいて、環状隊形かんじょうたいけいわたしたちへおそいかかった。

これこそがやつ必殺技ひっさつわざひとつ——『萬臂鐵槌ばんぴてっつい』であった。

その利爪りそう一本いっぽん一本いっぽん鋼針こうしんのように鋭利えいりであり、裂傷れっしょうあたえる物理破壊力ぶつりはかいりょくつだけでなく、大地だいち衝撃しょうげきあたえて震波しんぱ発生はっせいさせ、玩家プレイヤー行動こうどう魔法まほう発動はつどう妨害ぼうがいした。


ほかものなら、この密集攻撃みっしゅうこうげきふせれないだろう……だがわすれるな、まだおれがいる!」

亞米アミすこしもあわてずに「極光盾きょっこうじゅん」をたかかかげた。

技能スキル次元結界じげんけっかい!」

亞米アミ魔法まほう発動はつどうすると、極光盾きょっこうじゅん七彩なないろひかりはなち、半透明はんとうめい立体結界りったいけっかい展開てんかいした。それはわたしたち全員ぜんいんつつみ込み、結界けっかい急襲きゅうしゅうしてくる利爪りそうとが金属交撃音きんぞくこうげきおんなくひびかせた。

阿札斯アザス獰猛どうもう咆哮ほうこうした。

無駄むだだ!一度いちどこの包囲ほういらわれれば、貴様きさまらにはない!」

やつ攻撃範囲こうげきはんいは徐々(じょじょ)にせばまり、まるでわたしたちを結界けっかいごとつぶそうとするかのようであった。


「ふん、あなどられたものね。」

緹雅ティアつめたくわらった。

「そうよ〜逆爆咒ぎゃくばくじゅ裂返れっぺん。」

芙莉夏フリシャこえ夜色やしょく鐘声しょうせいのようにひびいた。

これは彼女かのじょ最強さいきょう反撃型技能はんげきがたスキルひとつであり、てき攻撃節点こうげきせってん魔力まりょく注入ちゅうにゅうし、その攻撃力こうげきりょく逆流爆裂ぎゃくりゅうばくれつさせて反撃はんげきすることができた。

結界けっかい内部ないぶ数十すうじゅう光紋こうもん突如とつじょかがやき、つぎ瞬間しゅんかんわたしたちの中心点ちゅうしんてんから強烈きょうれつ反震能量波はんしんのうりょくはひろがった。それは阿札斯アザス脚爪きゃくそう暴風ぼうふうのごとくばし、巨虫きょちゅう全身ぜんしんかべたたけ、みみろうする轟鳴ごうめいひびかせた。


つぎ老身ろうしんせてやろう——天裂旋風牙てんれつせんぷうが!」

芙莉夏フリシャ両腕りょううでひろげ、風元素かぜげんそによって構成こうせいされた無数むすう旋刃せんじん星辰せいしんのようにその周囲しゅういめぐった。これらの風刃ふうじん切断せつだん減速げんそく二重にじゅう効果こうかち、阿札斯アザス関節部位かんせつぶい脚節きゃくせつ正確せいかくいた。

「どうやらこいつは風属性かぜぞくせい水属性みずぞくせい耐性たいせいひくいな!」

わたし即座そくざ突破口とっぱこう見抜みぬいた。


緹雅ティア合撃ごうげきだ!」

芙莉夏フリシャった。

「わかった!」

漩絲斷界せんしだんかい裂水嵐れっすいらん!」

天裂旋風牙てんれつせんぷうが!」

ふたつの技能スキル空中くうちゅう交錯こうさくし、青白あおしろ渦巻うずま巨大きょだい渦動かどうした。それはまるで天災てんさい降臨こうりんのように、旋回せんかいするみずかぜ万千ばんせんやいばし、萬臂蜈蚣阿札斯ばんぴむかでアザス巨体きょたい無数むすう傷痕きずあときざんだ。

これこそ緹雅ティア芙莉夏フリシャ合撃ごうげきによってまれたあらたな技能スキル——『洪流こうりゅう裁罰さいばつ』であった。


無数むすう脚節きゃくせつ断裂だんれつして飛散ひさんし、萬臂蜈蚣阿札斯ばんぴむかでアザス巨体きょたいらぎながらくずちそうになり、ふたた地底ちていもぐってげようとくわだてた。

だが、今度こんどばかりは退路たいろつけることはできなかった。

「やれやれ、おれ泥巨人どろきょじんかざものだとでもおもったか?」

わたしかるわらった。

じつは、戦闘せんとう開始かいしからわたし泥巨人どろきょじんひそかに自身じしん泥漿でいしょうへとかし、戦闘せんとう注意ちゅういれたすきいて周囲しゅういのすべての洞口どうこう浸透しんとうし、それらをふうじていたのだ。

泥巨人どろきょじん攻撃力こうげきりょくこそひくく、うごきもにぶいが、偵察ていさつ潜伏せんぷくかんしては相当そうとうつよいんだ。」

わたしった。


最後さいご一撃いちげき激潮召喚げきちょうしょうかん無盡龍卷むじんりゅうけん!」

わたし両手りょうてらすと、大地だいちけ、数条すうじょう巨大きょだい水龍巻すいりゅうけんがった。それらは阿札斯アザスまるごとつつみ込み、旋回せんかいする水圧すいあつ元素能量げんそのうりょくなくつぶした。威力いりょく先程さきほどの『洪流こうりゅう裁罰さいばつ』にはおよばなかったが、すで重傷じゅうしょう瀕死ひんし阿札斯アザスには十分じゅうぶんすぎる一撃いちげきだった。

阿札斯アザス凄惨せいさん悲鳴ひめいげたのち、水龍巻すいりゅうけんなかで粉々(こなごな)にくだり、蒼藍そうらん光点こうてんとなってせた。

そのもとっていた場所ばしょには、銀光ぎんこうはな石板せきばんと、び付きながらも古代符文こだいふもんきざまれたかぎ地面じめんちていた。


わたし慎重しんちょうかぎひろげ、かえって仲間なかまたちをた。

「このとびらけるためのものだろう……だが、このかん最後さいごかどうかはからないな。」

ほか隊伍たいぐ状況じょうきょうさきたしかめておく?」

緹雅ティアかおげていかけた。

わたしはうなずき、亞米アミほうった。

たのむ、かれらと連絡れんらくってくれ。」

了解りょうかい。」

亞米アミはすぐに通信装置つうしんそうちつうじてほか二隊にたい連絡れんらくり、数秒すうびょうもしないうちに報告ほうこくした。

上出来じょうできだ。狄莫娜ディモナたい納迦貝爾ナガベルたいも、それぞれ石板せきばん無事ぶじ入手にゅうしゅしたそうだ。」

わたしはほっといきき、

「では、出発しゅっぱつしよう!」

った。


わたしたちは封鎖ふうさされた小扉こびらかった。わたし古代こだいかぎ錠穴じょうけつむと、ガチャリという重々(おもおも)しいおととも鉄鎖てっさ自動的じどうてきけ、とびら両側りょうがわへと収縮しゅうしゅくしていった。

とびら内側うちがわひろがっていたのは、わたしたちが予想よそうしていた通路つうろではなく、石材せきざいきずかれた空間くうかんであった。その中央ちゅうおうには古代こだい祭壇さいだんえられており、そここそがしん核心かくしんいた要所ようしょであるのはあきらかだった。

祭壇さいだん古朴こぼくにして歴史れきしかんじさせ、その表面ひょうめんには古代文字こだいもじ浮彫うきぼりきざまれていた。中央ちゅうおうにはふたつの円形えんけい凹槽おうそうがはっきりと存在そんざいし、それが石板せきばんむための場所ばしょであることは明白めいはくだった。

わたしあるり、にした石板せきばんをそれぞれの凹槽おうそうんだ。

最後さいご一枚いちまい石板せきばん凹槽おうそうまりんだ瞬間しゅんかん祭壇さいだん全体ぜんたいはげしい震動しんどうはなち、光紋こうもん地面じめんつたって急速きゅうそくひろがった。直後ちょくご轟鳴ごうめいひびわたり、石板せきばん祭壇さいだん全体ぜんたいごと崩壊ほうかいはじめ、土煙つちけむりがり、ゆかもまたおおきく亀裂きれつした。


そののちわたしたちは次々(つぎつぎ)と深洞しんどうんだ。過程かていなかこえるのは風音かざおと呼嘯こしょう重力じゅうりょく牽引けんいんだけであった。墜落ついらく感覚かんかくは、まるでそこ空間くうかんとおけているかのようで、ときさえも凝滞ぎょうたいしたかのようにかんじられた。

およそ数秒すうびょうわたしたちはついに着地ちゃくちした。両足りょうあし地面じめんみしめた瞬間しゅんかん大地だいちはわずかにふるえ、まるで神殿しんでんそのものがわたしたちの到来とうらいによって目覚めざめたかのようであった。周囲しゅうい漆黒しっこく空間くうかんからは突如とつじょひく嗡嗡音おんおんいんひびわたり、それはささやきのようにわたしたちをかこみ、不気味ぶきみ寒気さむけおぼえさせた。


つぎ瞬間しゅんかん洞窟どうくつ四周ししゅうかべ沿ってならんだ松明たいまつ一斉いっせい自動点火じどうてんかし、あたたかい火光ひかりやみはらった。ほのお水波すいはのように次々(つぎつぎ)とつらなり、空間くうかん全体ぜんたいあかるくらしすと同時どうじに、水晶石すいしょうせききずかれた巨大きょだい地下神殿ちかしんでん姿すがたあらわした。

天井てんじょうたかく、まるでひかり黒洞こくどうのようであった。壁面へきめんには古代こだいにして複雑ふくざつ符文ふもん彫刻ちょうこくされ、淡青色たんせいしょく微光びこうまたたかせていた。


わたしたちが周囲しゅうい見回みまわし、この壮麗そうれい光景こうけいからいまこころもどせぬ刹那せつな前方ぜんぽう黒洞こくどうから突如とつじょ巨大きょだい三首さんしゅへびた。その巨体きょたい視界しかいをほぼ占領せんりょうし、みっつの蛇頭へびがしらはそれぞれ火紅かこう碧緑へきりょく水藍すいらんひかりはなち、瞳孔どうこうには冷厳れいげん殺意さつい宿やどり、言葉ことばもなくただちにわたしたちへ突進とっしんしてきた。

「せっかちなやつめ……熔岩石壁ようがんせきへき!」

わたし素早すばや魔法まほう発動はつどうし、手中しゅちゅう水晶球すいしょうきゅう紅橙色こうとうしょくひかりはなち、わたしたちの目前もくぜん強靭きょうじん弾性石壁だんせいせきへききずげた。

このわざ集中型しゅうちゅうがた物理攻撃ぶつりこうげき想定そうていして設計せっけいされており、弾性だんせい強化きょうかした岩石がんせきによって衝撃力しょうげきりょく分散ぶんさんし、一部いちぶのエネルギーを吸収きゅうしゅうすることで、てき物理衝撃ぶつりしょうげき効果的こうかてき軽減けいげんするものだった。


この石壁せきへき三首さんしゅへび第一波だいいっぱ突撃とつげきめているすきに、わたしたちは素早すばや陣形じんけいととのえ、つぎせま戦闘せんとうそなえた。

巨蛇きょだいかくるい、火紅色かこうしょく蛇頭へびがしら咆哮ほうこうすると同時どうじに、灼熱しゃくねつほのお猛然もうぜんした。それは神殿しんでん全体ぜんたいくし、焦土しょうどさんばかりであった。

しかし、この程度ていどほのおわたしたちにとって脅威きょういではなかった。

緹雅ティアにした神刃しんじんかるるい、ほのおなになくめた。


「こいつが最終さいしゅうボスってわけじゃないだろうな?まえのやつらよりよわかんじるぞ。」

亞米アミがやや気楽きらくそうにった。

「そんなフラグてるな!こういうBOSSボスたんおれたちをためしているだけかもしれないんだ、油断ゆだんするなよ!」

わたし即座そくざかえした。結局けっきょく、このさき相手あいてがどんなわざすかはからないのだから。

あんじょう三首さんしゅへび碧緑色へきりょくしょく蛇頭へびがしら突如とつじょおおきく開口かいこうし、口腔こうくうから大量たいりょう腐蝕性ふしょくせい強酸液体きょうさんえきたいした。その臭気しゅうき瞬時しゅんじ空間くうかん全体ぜんたいへとあふれた。

「なに?強酸きょうさんだと!?くそっ、おれたちにはさん液体えきたいふせ手段しゅだんがほとんどい……亞米アミたのんだぞ!」

わたしあせりながらさけんだ。


亞米アミあわてることなく、一歩いっぽみ、にした極光盾きょっこうたて展開てんかいして円形えんけい結界けっかいった。

次元強化じげんきょうか極光反折きょっこうはんせつ!」

かれ大声おおごえさけぶと、結界けっかい表面ひょうめんには特別とくべつ紋路もんろかび、防御力ぼうぎょりょくはさらに強化きょうかされた。

酸液さんえき極光盾きょっこうたて結界けっかいそそぎ、耳障みみざわりなシューというおとてながら大量たいりょう蒸気じょうきてんへとがった。だが、結界けっかい依然いぜんとしてるぎなく健在けんざいだった。

「ちくしょう、運営方うんえいほうめ……このかん不親切ふしんせつなのはっていたが、まさかここまで卑怯ひきょうとはな。」

亞米アミいしばりながらひくつぶやいた。

姆姆魯ムムルいたら、どうせ『それはおまえ実力不足じつりょくぶそくだからだ』ってわらうだけでしょ。」

緹雅ティア意地悪いじわるみをかべてかれをからかった。


「こういうとき攻撃こうげきかたちえたほうがいいんじゃない?まもってばかりじゃらちかないわ。」

緹雅ティア小声こごえ仲間なかまげたが、その眼差まなざしはまえ三首さんしゅへびから一瞬いっしゅんはなれなかった。

言葉ことばわらぬうちに、みっ蛇頭へびがしら突如とつじょおおきくくちひらき、豪雨ごううのごとくそそ高圧水砲こうあつすいほうした。水砲すいほう地面じめん直撃ちょくげきすると、瞬時しゅんじ破片はへん泥塊でいかいり、轟音ごうおんひびわたり、その迫力はくりょく圧倒的あっとうてきだった。


わたしたちは即座そくざさとった。やつらはことなる属性ぞくせいつだけでなく、たがいに巧妙こうみょう援護えんごい、交互こうご攻撃こうげき仕掛しかけてきているのだと。

「なるほど……みっつのあたまはそれぞれさんみず属性ぞくせいつかさどり、しかも戦術せんじゅつてき連携れんけいまでっているとは……。」

わたし眉間みけんしわせた。

このレベルのAI行動エーアイこうどうは、ほとんどプレイヤーみの精度せいどであり、運営方うんえいほうはやはり、この挑戦ちょうせん簡単かんたんませるつもりなど毛頭もうとうなかったのだ。


「では、ここはわたしさき牽制けんせいする!」

わたし即座そくざ行動こうどうし、詠唱えいしょうする呪文じゅもん呼応こおうして魔力まりょく空気くうきなかながはじめた。

召喚しょうかん——つち守護龍しゅごりゅうかぜ疾行龍しっこうりゅう!」

ふたつの魔法陣まほうじんわたしたちの前方ぜんぽう展開てんかいし、大地だいち震動しんどう空気くうきふるえとともに、ふたとう巨体きょたい召喚龍しょうかんりゅうが次々(つぎつぎ)と姿すがたあらわした。

土龍どりゅう重厚じゅうこう身躯しんくう巨蛇きょだ目前もくぜんちはだかり、不動ふどう城壁じょうへきのごとくてき進撃しんげきはばんだ。

一方いっぽう風龍ふうりゅう空中くうちゅう旋回せんかいし、高速こうそく旋風せんぷうはなっててきうごきをおさえ、反応速度はんのうそくど低下ていかさせた。

牽制けんせい完了かんりょうやつらの攻撃こうげき一時いちじてきにぶったぞ!」

わたし大声おおごえさけんだ。


わたしたちが反撃はんげきうつろうとしたそのとき亞米アミ通信装置つうしんそうちからビーッというおとひびいた。

かれはすぐに応答おうとうし、第二隊だいにたい狄莫娜ディモナこえとどいた。

「こっちは三首さんしゅへび遭遇そうぐうした。みっつのあたまはそれぞれ光属性ひかりぞくせい闇属性やみぞくせい鋼属性はがねぞくせいっている。不破フハがそのひとつをとしたが、十秒じゅうびょうたずに再生さいせいしてしまった!」

狄莫娜ディモナ声色こわいろにはあせりがにじんでいた。

ほぼ同時どうじに、第三隊だいさんたい姆姆魯ムムルからも通信つうしんはいった。

「こっちの三首さんしゅへび雷属性かみなりぞくせい岩属性いわぞくせい風属性かぜぞくせいだ。おれたちの編成へんせいはそれなりに相性あいしょうがいいから進展しんてん順調じゅんちょうだが……みっつのあたま全部ぜんぶとしても、極短時間ごくたんじかん再生さいせいする。これは火力かりょくだけで解決かいけつできるBOSSボスじゃないぞ。」


わたし頭脳ずのうなか目前もくぜん状況じょうきょう高速こうそく分析ぶんせきした。

かった……。」

わたしかおげ、確信かくしんめてった。

「この戦闘せんとう肝心かんじんてんは、単独たんどく隊伍たいぐ解決かいけつできるものじゃない。三隊さんたい同時どうじここのつのあたまとしてこそ、通関条件つうかんじょうけんになるんだ。一隊いったいでもおくれをれば、その隙間すきま蛇頭へびがしら再生さいせいしてしまう――これはまさに、プレイヤー同士どうし協力きょうりょく極限きょくげんまでいる設計せっけいだ!」

「ちくしょう~こんな設計せっけいだれ想像そうぞうできるんだ?なるほど、だから運営方うんえいほう隊伍たいぐけたのか。」

芙莉夏フリシャつめたくはならし、魔杖まじょうつよにぎりしめ、その杖端じょうたんには魔力まりょくはげしくひらめれていた。

「それで、いまはどうする?つぎ正確せいかく同期どうきらなきゃだめよ!」

緹雅ティアいかけた。


亞米アミ両方りょうほう隊伍たいぐ通信つうしんれた。

「おい!全員ぜんいん、よくけ!三隊さんたい同時どうじに、それぞれみっつの蛇頭へびがしらとさなければならない。そうでなければやつらは延々(えんえん)と再生さいせいし、わりがなくなるぞ!」

亞米アミわたし言葉ことば通信装置つうしんそうちつうじて即座そくざほか二隊にたいつたえた。そのわたしたちは亞米アミ防御ぼうぎょ庇護ひごもとつぎそなえる戦術せんじゅつはじめた。


問題もんだい核心かくしんは、こっちのみっつの蛇頭へびがしら属性ぞくせいわせよ――強酸きょうさんみず三種さんしゅ属性ぞくせい完璧かんぺき連鎖抑圧れんさよくあつかたちづくり、わたしたちにはほとんど隙間すきまがない。ただ防御ぼうぎょしているだけでも限界げんかいたっしているわ。」

芙莉夏フリシャまゆをひそめてった。

「そろそろわたしたちのふだ使つかときね。」

緹雅ティアった。

全員ぜんいん同時どうじうごき、ここのつの蛇頭へびがしら一気いっきとすのよ。絶対ぜったい一瞬いっしゅんおくれもゆるされないわ。」

そううと、緹雅ティア一切いっさい躊躇ちゅうちょなく、自身じしん職業技能しょくぎょうスキル発動はつどうした。

スキル――流星墜落りゅうせいついらく

このスキルは生命力せいめいりょく魔力まりょく同時どうじ燃焼ねんしょうさせることを代価だいかとし、すべての元素粒子げんそりゅうし強制融合きょうせいゆうごうさせる。そのうえ大規模だいきぼちから蓄積ちくせきし、瞬間的しゅんかんてき爆発的ばくはつてき混沌衝撃波こんとんしょうげきは解放かいほうするのだ。


同時どうじに、芙莉夏フリシャ自身じしんのスキル――混元界輪こんげんかいりん砲陣ほうじん起動きどうした。

このわざ通常つうじょう魔法攻撃まほうこうげきとはことなり、混沌元素こんとんげんそ媒介ばいかいとして、圧縮あっしゅくされたエネルギーを極限きょくげんまで凝縮ぎょうしゅくし、特殊とくしゅ魔法陣まほうじん充填じゅうてんする。そしてそれを砲弾ほうだんのように次々(つぎつぎ)とはなつのだ。

一発一発いっぱついっぱつてき物理ぶつり魔法防御まほうぼうぎょ無視むしし、さらには特定とくてい抗性こうせいすら強制的きょうせいてき破壊はかいすることができる。酸性さんせい攻撃こうげきでさえ脅威きょういとはならなかった。

ふたつの強力きょうりょくなスキルが交差こうさ融合ゆうごうし、最終的さいしゅうてき双人絶技そうにんぜつぎ――殞界終導ぎんかいしゅうどう混元衝撃こんげんしょうげきへと昇華しょうかした。


火光かこう雷鳴らいめい震動しんどうなか混沌こんとんのエネルギーがあらしのごとく神殿しんでん全体ぜんたいおおくした。

みっつの蛇頭へびがしら無音むおんのうちにまれ、巨体きょたい必死ひっしにのたうちまわったが、あらがうことはかなわなかった。

通信つうしんチャンネルしに、わたしたちはほか二隊にたい報告ほうこくをはっきりといた。

蛇頭へびがしらとした!復原ふくげん兆候ちょうこうはな――し!」


通信つうしんチャンネルしに、わたしたちはほか二隊にたい報告ほうこくをはっきりといた。

蛇頭へびがしらとした!復原ふくげん兆候ちょうこうはな――し!」

はたして、ここのつの蛇頭へびがしら同時どうじ消滅しょうめつした瞬間しゅんかん、あの執拗しつよう再生能力さいせいのうりょくはついにまった。

神殿しんでんなか空気くうきこごいたようにしずまりかえり、それはまるで、わたしたちの勝利しょうりもくしてみとめているかのようであった。


すべての蛇頭へびがしらとされると同時どうじに、水晶体すいしょうたいかべはげしく崩壊ほうかいはじめた。

轟音ごうおんとも破片はへん四方しほうり、そのひろがりとともに、突如とつじょ空間くうかん異様いようなほど広大こうだいとなり、まるであらたな世界せかい眼前がんぜんあらわれたかのようであった。

さらなる巨大きょだい水晶洞窟すいしょうどうくつ眼前がんぜん姿すがたあらわし、その壮観そうかんうばわれた。水晶すいしょう光沢こうたく無数むすうまばゆ光芒こうぼう反射はんしゃし、視界しかいさえ眩惑げんわくさせた。

わたしはそのときになってはじめてづいた。先程さきほどまで自分じぶんたちがっていた「神殿しんでん」とは、じつはこの水晶世界すいしょうせかいなかひとつのちいさな区画くかくぎず、わたしたちが隣接りんせつしていたのはたんなる空間くうかん連続れんぞくであって、けっしてわたしたちがおもえがいていたものではなかったのだ。

洞窟どうくつ規模きぼのあまりのおおきさは想像そうぞうし、まるできることのない地下王国ちかおうこくれたかのようであった。


そのときわたしむねにはれぬ圧迫感あっぱくかんが込みこみあがった。すべてがわたしたちの予想よそうはるかにえているようにおもえた。

水晶すいしょうかべくずちるなかわたしづいた。とされたはずの蛇身へびみ予想よそうはんしてえることなく、水晶塵土すいしょうじんどなかうごめはじめたのだ。やがてその一片一片いっぺんいっぺん蛇身へびみ突如とつじょとして一斉いっせい後方こうほうへとちぢみ、まるで本来ほんらい形態けいたい回帰かいきするかのようであった。

蛇身へびみたちはたがいにからい、まるでなに強大きょうだいちからせられるかのように、徐々(じょじょ)に一体いったいとなっていった。


わたしたち全員ぜんいんいきんだその瞬間しゅんかん蛇身へびみたちはかたからい、やがてひとつの巨大きょだい怪物かいぶつへと変貌へんぼうした。洪流こうりゅうのごとき巨大きょだい蛇身へびみがうねりをえがいて成型せいけいし、その体躯たいく先程さきほどのどのへびよりもはるかにおおきかった。

これこそが「献祭召喚けんさいしょうかん」によってされた最終BOSSさいしゅうボス――耶夢加得イェモンガドであった。

その外観がいかん古代的こだいてきかつ邪悪じゃあく神獣しんじゅうのごとく、巨蛇きょだ硬質こうしつ鱗片りんぺんおおわれていた。その一枚一枚いちまいいちまい鱗片りんぺん銀白色ぎんぱくしょく光輝こうきはなち、双眼そうがんきた炭火すみびのように灼熱しゃくねつ紅光こうこう放射ほうしゃし、その視線しせんびたものだれもが背筋せすじ寒気さむけおぼえた。

そのおおきなくちがゆっくりとひらかれ、無数むすうするどきばしになった。そして、その陰冷いんれい気息きそく空間くうかん全体ぜんたい温度おんど瞬時しゅんじげ、息苦いきぐるしいほどの圧迫感あっぱくかんした。


さらに衝撃的しょうげきてきだったのは、耶夢加得イェモンガドのレベルがゲーム本来ほんらい上限じょうげん突破とっぱし、すで第十一級だいじゅういっきゅう到達とうたつしていたことだ。この事実じじつだけでも、その恐怖きょうふ十分じゅうぶんしめしていた。

それはたんにプレイヤーにたいしてレベルの圧制あっせいつだけでなく、特殊とくしゅなフィールド効果こうかまでゆうしていた。その効果こうかはプレイヤーの魔法まほう物理攻撃ぶつりこうげき効力こうりょく全体的ぜんたいてき五割ごわり低下ていかさせるのだ。

このような状況じょうきょうわたしたち一人一人ひとりひとり言葉ことばくせぬ圧力あつりょくかんじた。うたがいようもなく、これは未曾有みぞう挑戦ちょうせんであった。

「くそっ、これが最終BOSSさいしゅうボスなのか?なるほど、だれてなかったわけだ。まえ九頭蛇ヒュドラだけでも十分じゅうぶんかされたのに、今度こんどはこの姿すがた……九合一きゅうごういち攻撃こうげきなど、とてもふせれるものじゃない。」

姆姆魯ムムルのこの言葉ことばは、むしろ感嘆かんたんちかかった。


「でも、わたしたちはおおきな一歩いっぽしたとえるだろう!結局けっきょく、ここまで攻略こうりゃく成功せいこうしたものだれもいないし、大半たいはん前段階ぜんだんかい全滅ぜんめつしてしまったんだ。ここにっているということは、すくなくともおおくのてんわたしたちがただしい行動こうどうってきた証拠しょうこだ。」

「まったく……まえ戦闘せんとう消耗しょうもうした魔力まりょく予想よそう以上いじょうだった。これから吾等われらはどうまわればよいのだろうか?」

この状況じょうきょうまえにして、芙莉夏フリシャすこなからず不安ふあんいだいていた。


ちょうどそのとき耶夢加得イェモンガドがついに攻撃こうげき仕掛しかけてきた。

そのおおきなくちひらき、雷鳴らいめいのごとき咆哮ほうこうはなつと同時どうじに、強烈きょうれつ水弾すいだんわたしたちへとはなたれた。

それらの水弾すいだん強力きょうりょく腐食性ふしょくせいびているだけでなく、破裂はれつするさい濃厚のうこう酸性さんせい気体きたい放出ほうしゅつし、瞬時しゅんじ空気くうき拡散かくさんして持続的じぞくてき毒霧どくむ形成けいせいし、わたしたちの生命値ライフ長時間ちょうじかんにわたってけずつづけた。

洞窟どうくつまたたにこの腐食性ふしょくせい気体きたいたされ、空気くうきはな酸臭さんしゅうおおわれ、呼吸困難こきゅうこんなんおちいりそうになった。

たしかに脅威きょういぶべき攻撃こうげきではあったが、わたしたちはけっしてあわてはしなかった。


亞米アミ素早すばや神器しんき極光盾きょっこうじゅん」を展開てんかいし、小隊全体しょうたいぜんたい防護結界ぼうごけっかいなかつつんだ。

それは水弾すいだん直接攻撃ちょくせつこうげきふせぐだけでなく、酸性気体さんせいきたい侵蝕効果しんしょくこうかすらも遮断しゃだんし、わたしたちに一時的いちじてき猶予ゆうよあたえてくれた。

率直そっちょくえば、亞米アミ極光盾きょっこうじゅんはまるでチートのようであり、まさに防御ぼうぎょ最強保障さいきょうほしょうぶにふさわしかった。

防御状態ぼうぎょじょうたいでは亞米アミ自身じしん素早すばやうごくことはできなかったが、その堅固けんごさは突破口とっぱこう見出みいだすことすら困難こんなんで、いまだかつてだれ正面しょうめんからやぶったものはいなかった。

手元てもと情報じょうほうきわめてかぎられている以上いじょうわたしたちは受動的じゅどうてき亞米アミ防御ぼうぎょたよるしかなかった。


「くそっ!情報不足じょうほうぶそく本当ほんとう頭痛ずつうたねだ!」

狄莫娜ディモナぎしりしながらひくうなり、そのかおにはいかりがあふれていた。彼女かのじょ怒気どき爆発ばくはつすると同時どうじに、体内たいないから強大きょうだいちからがり、周囲しゅうい空気くうきすら震動しんどうしているかのようであった。

十階鬼魅召喚じっかいきみしょうかん!」

彼女かのじょ突如とつじょとして大声おおごえさけび、直後ちょくご黒色こくしょくのエネルギーが周囲しゅうい凝縮ぎょうしゅくし、瞬時しゅんじにその姿すがたつつんだ。そのやみはまるで深淵しんえんのごとくすべてのひかりみ込み、周囲しゅうい空間くうかんすら無限むげん虚無きょむへときずりんでいくかのようであった。


正直しょうじきえば、狄莫娜ディモナおこったとき姿すがたは、じつはかなり可愛かわいらしかった。

彼女かのじょ深淵しんえんのような双眸そうぼう怒気どきによってあかまり、その感情かんじょう無比むひちからまし、だれもがその能力のうりょく畏敬いけいねんいだかずにはいられなかった。


彼女かのじょのスキルが発動はつどうすると、やみなかに徐々(じょじょ)にひとつのかげ姿すがたあらわし、またたかたちした。そこからあゆたのは、華麗かれいなスーツをまとい、端正たんせいくす一人ひとりおとこ

その外見がいけんはきわめて冷酷れいこくで、表情ひょうじょうもまた冷淡れいたん、まるで人間界にんげんかいとは無縁むえん存在そんざいのようであった。これこそが伝説でんせつ鬼王きおう――貝利爾ベリアルである。

貝利爾ベリアルからは濃厚のうこう気配けはいはなたれ、その双眼そうがん無情むじょうかつ冷酷れいこくひかり宿やどしていた。それをものだれもが、深淵しんえんからせまるような圧迫感あっぱくかんただちにおぼえた。


十階鬼魅召喚じっかいきみしょうかんによってされ最強さいきょう存在そんざい一柱ひとはしらとして、貝利爾ベリアル能力のうりょく異常いじょうなまでに強大きょうだいであった。

正面しょうめんからの対抗たいこうであれ、間接的かんせつてき影響えいきょうであれ、相手あいてふか恐怖きょうふあたえるには十分じゅうぶんだった。

貝利爾ベリアル召喚しょうかんは、耶夢加得イェモンガド威嚇いかくする効果こうかつだけでなく、かれにはもうひと決定的けっていてき優位性ゆういせいがあった。すなわち、それは属性抗性ぞくせいこうせいである。

この能力のうりょくによって、かれはいかなる属性攻撃ぞくせいこうげきおそれることなく、とりわけ強力きょうりょく酸霧さんむたいしてもほとんど影響えいきょうけなかった。

これこそが、狄莫娜ディモナがこの時期じき貝利爾ベリアル召喚しょうかんすることをえらんだ理由りゆうであった。


貝利爾ベリアル姿すがたあらわすやいなや、かれ一切いっさい躊躇ちゅうちょなく鋭利えいりつめばし、耶夢加得イェモンガドへと一直線いっちょくせん突進とっしんした。

たしかに、貝利爾ベリアル攻撃威力こうげきいりょくほか高階こうかいスキルほど強大きょうだいではなかったが、そのするど爪撃そうげき迅速じんそくどうきは耶夢加得イェモンガド十分じゅうぶん攪乱かくらんするちからっていた。

貝利爾ベリアル爪撃そうげき強烈きょうれつ破壊力はかいりょくびており、速度そくどにおいても、ちからにおいても、耶夢加得イェモンガド注意ちゅういせるには十分じゅうぶんであった。その結果けっか耶夢加得イェモンガド攻撃こうげき集中力しゅうちゅうりょくき、わたしたちほかものにとって貴重きちょう時間じかんされた。


しかし、貝利爾ベリアル一人ひとりちからだけでは、この強大きょうだいBOSSボスたおすには到底とうていりなかった。

そこで、わたし自身じしんのスキル――十階元素召喚じっかいげんそしょうかん発動はつどうした。

わたし両手りょうて燦然さんぜんたるひかり凝縮ぎょうしゅくし、呪文じゅもん詠唱えいしょうとも空気中くうきちゅう元素げんそ急速きゅうそくあつまっていった。

そして瞬時しゅんじはちつの元素使げんそつか姿すがたわたし周囲しゅういあらわれた。

かれらの気配けはい自然界しぜんかいにおける最強さいきょうちからのようであり、ほのお雷電らいでん風暴ふうぼう――どの元素使げんそつかひと驚嘆きょうたんさせるエネルギーをはなっていた。

それぞれの元素使げんそつか固有こゆう属性能力ぞくせいのうりょくち、自在じざいわせを発揮はっきすることができた。

それだけでなく、元素使げんそつかたちは耶夢加得イェモンガド攻撃こうげきおうじて効果的こうかてき防御ぼうぎょひろげることも可能かのうであった。


同時どうじに、札爾迪克ザルディク元素使げんそつかたちのちからをさらに強化きょうかし、自身じしんのスキル――魔方之光まほうのひかり召喚融合しょうかんゆうごう発動はつどうした。

かれがこのスキルをはなつと同時どうじに、空気中くうきちゅう元素力げんそりょく瞬時しゅんじ変化へんかし、八人はちにん元素使げんそつかたちのちから交錯こうさく融合ゆうごうはじめた。

それはまるで魔方ルービックキューブ各面かくめん密着みっちゃくしてわさるかのごとく、最終的さいしゅうてきわたしたちが召喚しょうかん最強さいきょう存在そんざい――混沌元素使こんとんげんそつか仳舍羅ピシャラ誕生たんじょうした。


仳舍羅ピシャラ姿すがた流動りゅうどうするひかりかげのごとく、その出現しゅつげんとも周囲しゅうい気場きじょうさえも変容へんようはじめた。かれ無限むげんの元素エネルギーは空間くうかんの隅々(すみずみ)まで充満じゅうまんした。

その一部一部いちぶいちぶからはことなる元素げんそちから放射ほうしゃされ、そのちから海洋かいようのごとくてしなくひろがり、ものすべてを圧倒あっとうした。


仳舍羅ピシャラ出現しゅつげんともに、空気中くうきちゅう酸霧さんむもまた影響えいきょうはじめた。

仳舍羅ピシャラ身体しんたいまばゆひかりはなち、両手りょうてるうと、魔法まほう周囲しゅうい酸霧さんむ一挙いっきょばした。

その瞬間しゅんかん空間くうかん視界しかい一気いっき鮮明せんめいになった。

かれ即座そくざ十階魔法じっかいまほう――混元波こんげんは発動はつどうした。

混元波こんげんはのエネルギーが解放かいほうされると同時どうじに、強力きょうりょく真空波しんくうは奔流ほんりゅうのごとくひろがり、空気中くうきちゅう酸霧さんむ完全かんぜん中和ちゅうわした。

さらに一層いっそうのエネルギー障壁しょうへき形成けいせいされ、耶夢加得イェモンガド攻撃こうげき外側そとがわへと遮断しゃだんした。


その瞬間しゅんかん戦場全体せんじょうぜんたい雰囲気ふんいき微妙びみょう変化へんかした。

混元波こんげんは効果こうか発揮はっきされると、酸霧さんむ消散しょうさんし、空気中くうきちゅうのエネルギーは再調整さいちょうせいされ、場全体ばぜんたいはまるであらたにつくなおされたかのようであった。


酸霧さんむはらわれたあと戦場せんじょう空気くうき一層いっそう鮮明せんめいになり、全員ぜんいん視線しせん耶夢加得イェモンガド集中しゅうちゅうしていた。

このとき奧斯蒙オスモンはもはや躊躇ちゅうちょせず、さき攻撃こうげき仕掛しかけた。

奧斯蒙オスモン急速きゅうそく空中くうちゅうへとがり、その姿すがたはまるで一本いっぽんてんへとられたかのようであった。

その動作どうさきわめて迅速じんそくで、移動いどう軌跡きせきはほとんどえなかった。

位置いち安定あんていすると同時どうじに、奧斯蒙オスモン背後はいごから神器しんき神弩しんど――伊雷達斯イレダスいた。

その弩身どしん冷徹れいてつひかりはなち、まるで万鈞ばんきん宿やどしているかのようであった。

十階戦技じっかいせんぎ――暴嵐靈矢ぼうらんれいし!」

奧斯蒙オスモン弓弦ゆみづるはじいた瞬間しゅんかんげんはげしく振動しんどうし、すべてをはなたれた。

そのするど気流きりゅうまとい、まるで暴風ぼうふうごとく、耶夢加得イェモンガドへと一直線いっちょくせんすすんだ。


しかし、耶夢加得イェモンガド巨体きょたい命中めいちゅうしたとき予想よそうしたような深手ふかであたえることはできなかった。

耶夢加得イェモンガド皮膚ひふ鋼鉄こうてつのごとくかたく、暴風矢ぼうふうや強烈きょうれつ衝撃力しょうげきりょくですら、その巨躯きょくまえではほとんどとおじず、先端せんたんあさ傷痕きずあとのこすにとどまり、ふかさることはなかった。

奧斯蒙オスモンまゆをひそめ、あきらかにさとった。もしこの程度ていど攻撃こうげきですらてき防御ぼうぎょけずれないのなら、これからの戦闘せんとう異常いじょうなまでに困難こんなんになるだろうと。

だが、かれ即座そくざ反応はんのうし、神器しんき神弩しんど伊雷達斯イレダスもどし、わりに背後はいごからもうひとつの武器ぶき――神器しんき神弓しんきゅう伊雷希斯イレシスはなった。


「スキル――眼之技がんのわざ混元貫刺こんげんかんし!」

弓弦ゆみづる震動しんどうするおとともに、奧斯蒙オスモン先程さきほど上回うわまわ一矢いっしはなった。

その暴風矢ぼうふうやのように範囲はんいひろがる攻撃こうげきではなく、奧斯蒙オスモン自身じしんちから一点いってん凝縮ぎょうしゅくし、驚異的きょういてき攻撃力こうげきりょく爆発ばくはつてき解放かいほうするものだった。

この攻撃こうげき範囲はんい相対的そうたいてきせまかったが、その威力いりょく絶大ぜつだいであった。


耶夢加得イェモンガド巨体きょたいゆえに、このような精密せいみつ攻撃こうげき容易よういけることはできなかった。

奧斯蒙オスモン職業特性しょくぎょうとくせいにより、かれ急所きゅうしょねら精度せいど異常いじょうたかく、この一矢いっしねらいは耶夢加得イェモンガドもっと脆弱ぜいじゃく頭部とうぶであった。

しかし、耶夢加得イェモンガドあらかじ察知さっちしていたかのように素早すばや反応はんのうし、巨大きょだいはらって頭部とうぶ急所きゅうしょまもった。

それでも、この強大きょうだい威圧いあつ完全かんぜんけることはできず、貫通かんつうし、比類ひるいなきちからけていった。

その強烈きょうれつ貫通力かんつうりょくにより、耶夢加得イェモンガドはまるで雷霆らいていたれたかのようにはげしくふるえ、苦痛くつううなごえげた。

だが、この一撃いちげき急所きゅうしょ直撃ちょくげきしたわけではなかった。耶夢加得イェモンガドたしかにきずったが、その代償だいしょうとしてかれ致命的ちめいてき攻撃こうげき回避かいひするためのわずかな時間じかんいだのだった。

奧斯蒙オスモンはその様子ようすて、ふたた攻撃こうげきうつろうとしたが、おもいもよらぬ危機ききしずかにせまってきていた。


奧斯蒙オスモンふたた攻撃こうげき仕掛しかけようとしたその瞬間しゅんかん突如とつじょかれ背後はいごかげから無音むおんのまま無数むすう触手しょくしゅした。

それらはまるでやみつるのようにうごめき、瞬時しゅんじ奧斯蒙オスモンへとおそいかかり、その標的ひょうてきかれ背中せなかだった。

その暗影あんえい触手しょくしゅ疾速しっそくかつ密集みっしゅうし、まるでかげひそ死神しにがみのようで、奧斯蒙オスモン一瞬いっしゅんにして極度きょくど危機ききへとんだ。

しかし、奧斯蒙オスモン反応はんのう素早すばやく、即座そくざ回避行動かいひこうどうった。

その身形みなり流光りゅうこうごとひらめき、一瞬いっしゅんよこへと退いた。

だが、これらの触手しょくしゅ攻撃速度こうげきそくどはあまりにもはやく、奧斯蒙オスモン回避かいひこそできたものの、その対処たいしょにはおおきな労力ろうりょくいられた。

遠距離戦闘えんきょりせんとう得意とくいとするかれにとって、これは間違まちがいなくおおきな障害しょうがいであった。


そのとき突如とつじょ雷鳴らいめいのごとき斬撃ざんげき空気くうきき、鋭利えいり光芒こうぼう瞬時しゅんじにその触手しょくしゅへとりかかった。

その光芒こうぼう素早すばや触手しょくしゅ延伸えんしんり、一部いちぶ攻撃こうげき退しりぞけ、奧斯蒙オスモン窮地きゅうちから一時的いちじてきすくしたのだった。

じつはこのとき不破フハ九階きゅうかい戦技せんぎ——神御三式しんぎょさんしき太極乱舞斬たいきょくらんぶざんはなっていたのだ。

太極乱舞斬たいきょくらんぶざんちから精密せいみつそなえた斬撃技法ざんげきぎほうであり、てき攻撃こうげき効果的こうかてきふせぐだけでなく、斬撃ざんげき灼熱しゃくねつ効果こうか付与ふよすることができる。

一閃いっせん、また一閃いっせんるわれる剣撃けんげきほのお閃光せんこう交錯こうさくさせ、華麗かれい弧線こせんえがきながら暗影触手あんえいしょくしゅ撃退げきたいしていった。

斬撃ざんげき灼熱しゃくねつ効果こうか宿やどっていたため、一部いちぶ触手しょくしゅられた瞬間しゅんかん炎上えんじょうした。

しかし、太極乱舞斬たいきょくらんぶざん触手しょくしゅ攻撃こうげきふせぎ、耶夢加得イェモンガド灼熱しゃくねつ追加ついかダメージをあたえはしたものの、その効果こうかけっして顕著けんちょではなかった。

灼熱しゃくねつのダメージは持続的じぞくてきであったが、耶夢加得イェモンガドのような強大きょうだい存在そんざいにとってはるにらぬものにぎない。

その防御力ぼうぎょりょくきわめて堅固けんごであり、その巨体きょたいもまた、この程度ていど傷害しょうがい致命的ちめいてきにはしなかったのである。



傷害しょうがいけた耶夢加得イェモンガド激怒げきどし、その巨体きょたいはげしくふるわせ、まるで周囲しゅういのすべてをほろぼしくそうとしているかのようであった。

その咆哮ほうこう空気くうきひびわたると、大地だいちかすかにふるえ、周囲しゅうい空気くうき重苦おもくるしくわっていった。

耶夢加得イェモンガドくちおくには絶大ぜつだいなエネルギーが次第しだいあつまり、そのちからはまるでこの空間くうかんそのものをこうとしているかのようであった。

その腹部ふくぶはわずかにふくらみはじめ、いで、絶対的ぜったいてき破壊力はかいりょくがそのくちから爆発的ばくはつてきはなたれた。

無数むすう豪雨ごううのごとくはなたれ、その形状けいじょう異常いじょうなまでに鋭利えいりで、まるで鋼鉄こうてつやいば鍛造たんぞうされたかのようであった。

それらは火属性ひぞくせい闇属性やみぞくせい二重にじゅうちから宿やどし、一本一本いっぽんいっぽん比類ひるいなきエネルギー波動はどうはなっていた。

空気くうきけるたびに、まるで周囲しゅうい空間くうかんそのものがけていくかのような錯覚さっかくあたえた。


この混合元素こんごうげんそ強大きょうだい貫通力かんつうりょくゆうするだけでなく、爆発時ばくはつじには激烈げきれつ火炎かえん闇元素やみげんそ衝撃波しょうげきはみ、接触せっしょくしたあらゆる対象たいしょう確実かくじつ損害そんがいあたえた。

この豪雨ごううのような連続攻撃れんぞくこうげき災厄さいやくのごとくせ、一本一本いっぽんいっぽん速度そくど威力いりょくも我々(われわれ)の予想よそうはるかにえていた。

亞米アーミ極光盾きょっこうじゅん正面しょうめんからの攻撃こうげき容易よういふせぐことができたが、その攻撃範囲こうげきはんいはあまりにも広大こうだいであり、亞米アーミといえども全員ぜんいんを軽々(かるがる)とまもることはできず、防御ぼうぎょ次第しだい疲弊ひへいしていった。

狄莫娜ディモナはその光景こうけいて、亞米アーミ防御負担ぼうぎょふたん軽減けいげんするため、ひとみするどひからせ、両手りょうて素早すばやみ合わせた。

口中こうちゅうからは流暢りゅうちょうかつ迅速じんそく呪文じゅもんひびわたった。


彼女かのじょはすぐさま神器じんぎ聚魂丸じゅこんがんかかげ、瞬時しゅんじ強大きょうだい引力いんりょくしょうじさせた。

その引力いんりょく宿やど火炎かえん暗影あんえいちからをすべて吸収きゅうしゅうし、をただの純粋じゅんすいへとえた。

さらに、札爾迪克ザルディクもまた自身じしん神器じんぎ——天空之光てんくうのひかり発動はつどうした。

すると周囲しゅうい空気くうきしょうじたかのようにらぎ、直後ちょくご透明とうめい障壁しょうへきが我々(われわれ)の眼前がんぜんあらわれた。

その障壁しょうへき飛行軌道ひこうきどうえ、本来ほんらい標的ひょうてきかららした。

狄莫娜ディモナ札爾迪克ザルディク守護しゅごもと素早すばや位置いちととのえ、ちからたくわえて職業技能しょくぎょうぎのう——惡魔之怒あくまのいかり龍哮りゅうこう発動はつどうしようとした。

その発動はつどうともに、巨大きょだい紅黒色こうこくしょく龍頭りゅうとう耶夢加得イェモンガド眼前がんぜんあらわれた。

空気中くうきちゅうのエネルギーは瞬時しゅんじ爆発ばくはつさせられ、円形えんけい震動波しんどうは四方しほう拡散かくさんした。


この強烈きょうれつ範囲攻撃はんいこうげき震動効果しんどうこうかともなうだけでなく、強大きょうだい属性ぞくせいダメージをゆうし、まるで万物ばんぶつ破壊はかいくすかのようであった。

おそはすべて一瞬いっしゅんにして粉砕ふんさいされ、その破片はへん花火はなびのように四散しさんし、やがて跡形あとかたもなくった。

耶夢加得イェモンガド巨体きょたい震動しんどうなかはげしくのたうち、苦痛くつううなごえげた。

それはあきらかに甚大じんだい損傷そんしょうけたあかしであった。


この一撃いちげききわめて有効ゆうこうであり、とく耶夢加得イェモンガド生命力せいめいりょくが徐々(じょじょ)にけずられている状況じょうきょうでは絶大ぜつだい効果こうか発揮はっきした。

狄莫娜ディモナ攻撃こうげき耶夢加得イェモンガド急所きゅうしょ直撃ちょくげきしただけでなく、その防御ぼうぎょをも無視むししたのだった。

しかし、耶夢加得イェモンガドはそれでもたおれず、その巨体きょたい震動しんどうのちふたた安定あんていもどした。

その表情ひょうじょうには苦痛くつうかんでいたが、容易よういくつする気配けはいはまったくえなかった。


このとき納迦貝爾ナガベルもまたのがさず魔法まほう発動はつどうした。

——天道てんどう萬相如意ばんそうにょい

納迦貝爾ナガベルなかには、まるでちから凝縮ぎょうしゅくされていくかのような気配けはいただよった。

そのちからは徐々(じょじょ)にかたまり、やがて巨大きょだい掌印しょういん形作かたちづくった。

それはまるで古代こだい神祇しんぎのようであり、やがててんよりくだたって、万物ばんぶつほろぼさんとする威勢いせいびていた。


その掌印しょういん耶夢加得イェモンガド巨体きょたい激突げきとつした瞬間しゅんかん莫大ばくだい塵埃じんあいがり、戦場せんじょう全体ぜんたいぷたつにかれたかのようであった。

衆人しゅうじん驚愕きょうがくさせたのは、煙塵えんじんが徐々(じょじょ)にれていくなか正面しょうめんから直撃ちょくげきけたはずの耶夢加得イェモンガド姿すがた忽然こつぜんせ、そこにはやぶちた一枚いちまい蛇皮へびがわだけがのこされていたことだった。

この光景こうけいに我々(われわれ)はみなおもわずいきんだ。

じつ耶夢加得イェモンガド致命的ちめいてき一撃いちげきけたのではなく、脱皮だっぴという手段しゅだんによってなんのがれていたのだ。

そのおおきな損傷そんしょうけたのち急速きゅうそく変化へんかげ、外殻がいかく蛇皮へびがわて、あらたな甲冑かっちゅうまとったかのようであった。


納迦貝爾ナガベルはその様子ようすて、ただちにあらたな攻撃こうげきそうとした。

しかし、彼女かのじょふたた攻撃こうげきはなったとき耶夢加得イェモンガド肉体にくたいはさらにとらがたいものへと変貌へんぼうしていた。

その液状化えきじょうかし、みずのように流動りゅうどうして、いかなる物理攻撃ぶつりこうげきももはや有効打ゆうこうだあたえることはできなかった。

これこそが耶夢加得イェモンガド特殊能力とくしゅのうりょく——演化えんかであった。


耶夢加得イェモンガド攻撃こうげき一度いちどごとに自己進化じこしんかげ、攻撃こうげきけるたび状況じょうきょうおうじて自動的じどうてき対抗たいこうできる防御機構ぼうぎょきこうしょうじることができた。

そのため、肉体にくたい一層いっそう堅牢けんろうになるばかりか、攻撃こうげきけたさいには形態けいたい変化へんかさせ、おおくの損害そんがい回避かいひすることさえ可能かのうとなった。

この演化えんか能力のうりょくによって、我々(われわれ)の攻撃こうげききわめて無力化むりょくかされ、物理攻撃ぶつりこうげきであれ属性攻撃ぞくせいこうげきであれ、実質的じっしつてき影響えいきょうあたえるのは困難こんなんとなった。


しかし、耶夢加得イェモンガド防御ぼうぎょがさらに強化きょうかされたとはいえ、そののこ体力たいりょくはもはやおおくはなかった。

一撃いちげきごとの重傷じゅうしょうが徐々(じょじょ)にその生命力せいめいりょくむしばみ、肉体にくたい多様たよう攻撃こうげき適応てきおうできるとはいえ、我々(われわれ)の連携攻撃れんけいこうげき確実かくじつにそのちからけずっていった。

戦闘せんとうつづくにつれ、耶夢加得イェモンガド反応はんのう次第しだいにぶくなり、その疲労ひろうだれにも明白めいはくであった。

我々(われわれ)は全力ぜんりょく一撃いちげき勝負しょうぶすることを決断けつだんした。

だが同時どうじおおきな危険きけんはらんでいた——もしその一撃いちげきたおれなければ、二度にどたおすことはできないかもしれないのだ。


我々(われわれ)が耶夢加得イェモンガド徹底的てっていてき討伐とうばつするために、姆姆魯ムムルはしばし沈黙ちんもくしたのちひくこえった。

「やはり、この方法ほうほうしかのこされていないようだな。」

その言葉ことばいた瞬間しゅんかんみな視線しせん姆姆魯ムムルそそがれた。

まるで、かれかなら問題もんだい解決かいけつする手段しゅだんっていることを、すでに予感よかんしていたかのようであった。

「さすがは我々(われわれ)の戦術大師せんじゅつたいし一体いったいどうすればいいのだ?」

わたしたまらず問いといかけ、そのこえにはおおきな期待きたいめられていた。


姆姆魯ムムルかおには自信じしんちた微笑びしょうかび、素早すばや戦術指令せんじゅつしれいくだした。

その直後ちょくごかれまようことなく神器しんき――神槍しんそう艾斯雷爾エスレル召喚しょうかんした。

そのやりきわめて華麗かれい外観がいかんち、金属光沢きんぞくこうたくきらめかせ、圧倒的あっとうてき気迫きはくはなっていた。

神槍しんそうした姆姆魯ムムルは、ためらうことなくみずからの技能ぎのう――神槍しんそう世界樹型態せかいじゅけいたい殲滅之光せんめつのひかり発動はつどうした。

かれ魔力まりょく解放かいほうされると同時どうじに、神槍しんそうはまるで意思いし宿やどしたかのように変貌へんぼうし、巨大きょだい樹木じゅもくへと幻化げんかした。

その樹木じゅもくまばゆ黄金光おうごんこうはなち、一瞬いっしゅんのうちに膨大ぼうだいなエネルギーを蓄積ちくせきし、耶夢加得イェモンガドめがけて一条いちじょうかがやひかり放射ほうしゃした。


そのひかり光属性ひかりぞくせい火属性ひぞくせい風属性かぜぞくせいちから融合ゆうごうした混合攻撃こんごうこうげきであり、まるで太陽たいようかがやきが大地だいちらすかのようであった。

灼熱しゃくねつのエネルギーは瞬時しゅんじ巨大きょだい光輪こうりん形成けいせいし、轟音ごうおんとも爆裂ばくれつしてすべてをんだ。

この攻撃こうげき威力いりょくはまさに無敵むてきであり、強烈きょうれつ灼傷効果しゃくしょうこうかによって耶夢加得イェモンガド鱗肌うろこはだ瞬時しゅんじがされ、耳障みみざわりな悲鳴ひめいげた。

広範囲こうはんいへの甚大じんだい損傷そんしょう耶夢加得イェモンガド巨体きょたいふるわせ、あきらかに致命的ちめいてき一撃いちげきとなった。


しかし、この一撃いちげき瞬時しゅんじ広範囲こうはんい損傷そんしょうあたえたにもかかわらず、なお一撃いちげき仕留しとめることはできなかった。

耶夢加得イェモンガド執拗しつようつづけ、その巨体きょたい表面ひょうめんには不気味ぶきみ波動はどうはしり、眼光がんこうはさらに凶悪きょうあくさをしていた。

その瞬間しゅんかん姆姆魯ムムルかおには、まるで最初さいしょから予想よそうしていたかのような表情ひょうじょうかんだ。

かれひくこえつぶやいた。

「ふむ……やはり血量固定けつりょうこてい成功せいこうしたか……」

それこそが、耶夢加得イェモンガドのもう一つの特殊能力とくしゅのうりょく――垂死掙扎すいしもがきであった。

この能力のうりょくにより、耶夢加得イェモンガド体力たいりょくが10%以下いかになっても一撃必殺いちげきひっさつまぬがれ、防御力ぼうぎょりょく元素耐性げんそたいせい大幅おおはば強化きょうかされる。

さらに、10秒間びょうかん無敵時間むてきじかん発生はっせいし、そのあいだ、我々(われわれ)はかれ一切いっさい損傷そんしょうあたえることができなくなるのだ。


耶夢加得イェモンガド状態じょうたい変化へんかすると同時どうじに、ふたたびそのくちから強大きょうだいなエネルギーがはなたれた。

今度こんどすべての元素力げんそりょく一挙いっきょ凝縮ぎょうしゅくし、巨大きょだい混沌波動こんとんはどうとして解放かいほう強力きょうりょく技能ぎのう――裂核炮れっかくほうはなった。

その莫大ばくだいなエネルギーが我々(われわれ)にかっておそかってきた。

攻撃範囲こうげきはんいきわめて広大こうだいで、ほとんど空間全体くうかんぜんたいおおくすほどであった。

札爾迪克ザルディク技能ぎのうとはことなり、この一撃いちげき混沌こんとん元素力げんそりょくふくむだけでなく、さらに単一たんいつ属性ぞくせいへと分裂ぶんれつして攻撃こうげきすることができた。

そのため、我々(われわれ)は容易ようい予測よそく防御ぼうぎょもできなかった。

亞米アミ最前線さいぜんせん即座そくざ極光盾きょっこうじゅん展開てんかいし、攻撃こうげき直撃ちょくげきふせごうとした。

そのあいだほかものたちも素早すばや協力防御態勢きょうりょくぼうぎょたいせいはいった。

狄莫娜ディモナ不破フハ奧斯蒙オスモンらは、攻撃こうげきがすでに耶夢加得イェモンガド無効化むこうかされているため、かれらのおも任務にんむ防御支援ぼうぎょしえんまわり、ほか仲間なかまによりおおくの時間じかんぐことだった。


亞米アミ極光盾きょっこうじゅん裂核炮れっかくほう正面攻撃しょうめんこうげきふせぐことに成功せいこうしたが、その莫大ばくだい波動はどうはなおも防御ぼうぎょ貫通かんつうし、ほか仲間なかまたちの身体からだはじばした。

狄莫娜ディモナたちがかべたたけられそうになったその瞬間しゅんかん――

突如とつじょ無数むすう史萊姆水球スライムすいきゅうあらわれ、はじばされた仲間なかま一人ひとりのこらずめ、かた壁面へきめんへの直撃ちょくげきふせいだ。


史萊姆水球スライムすいきゅう柔軟性じゅうなんせい衝撃力しょうげきりょく大部分だいぶぶん見事みごと吸収きゅうしゅうし、仲間なかまたちはだれ一人ひとりとしてきずうことはなかった。


「ここからさきは我々(われわれ)にまかせろ!」


耶夢加得イェモンガド攻撃こうげきわったその瞬間しゅんかん芙莉夏フリシャもすでにちから凝縮ぎょうしゅくえていた。

耶夢加得イェモンガド反応はんのうするすきあたえず、芙莉夏フリシャ宿やど魔法まほうのエネルギーは瞬時しゅんじ収束しゅうそくし、まるでその限界げんかい突破とっぱしたかのようにかがやきをはなった。

その身影しんえいはまさに光輝こうきつつまれ、芙莉夏フリシャいきおいよくき、おのれ技能ぎのう――禁錮結界きんここうかい零時檻れいじかん発動はつどうした。

それは彼女かのじょほこ最強さいきょう制御術せいぎょじゅつの一つであり、きわめてみじか時間じかんあいだ指定していされた範囲はんい時空じくう完全かんぜん禁錮きんこし、てきうごきを一切いっさいふうじることができるのだ。

芙莉夏フリシャ魔法まほう完成かんせいすると同時どうじに、耶夢加得イェモンガド巨体きょたい瞬時しゅんじしばられ、いかにはげしく足掻あがこうとも、一分いっぷんうごきすらゆるされなかった。


しかし、この強大きょうだい禁錮きんこちから無限むげんではない。

芙莉夏フリシャのこの一招いちげきには、わずか十秒間じゅうびょうかん制限せいげん存在そんざいする。

そしてその僅少きんしょう時間じかんこそが、我々(われわれ)が耶夢加得イェモンガドたおし、この戦闘せんとう終止符しゅうしふてるかいなかをするのだ。

耶夢加得イェモンガド禁錮きんこされたその刹那せつなわたしはその巨体きょたい正面しょうめんふさがり、疲労ひろういろかくせぬ姿すがたするど見据みすえた。

胸中きょうちゅうではのこされた時間じかんしずかにかぞつづけていた。


わたし自身じしん職業特性しょくぎょうとくせい――絶対優位ぜったいゆうい駆使くしし、わずかな刹那せつな攻撃力こうげきりょく極限きょくげんまでげることができる。

この職業特性しょくぎょうとくせい一定時間いっていじかん攻撃こうげき特定とくてい加成かせいあたえるもので、その効果こうかてき能力のうりょくおうじて変動へんどうする。だが、いかなる場合ばあいであっても、わたし攻撃力こうげきりょくかなら相手あいて凌駕りょうがする。

この特性とくせいわたしほかとはことなる戦闘優位性せんとうゆういせいあたえる一方いっぽう同時どうじ一定いっていのリスクも背負せおわせる。

攻撃こうげき加成効果かせいこうかつね変動へんどうしており、ときには破滅的はめつてき一撃いちげきはなつこともあれば、ときには史萊姆スライム相手あいてにさえ微弱びじゃくおもえる程度ていど攻撃こうげきしかせないこともあるのだ。


ゆえに、わたし最終的さいしゅうてき召喚系魔法しょうかんけいまほう補助魔法ほじょまほう修行しゅぎょうえらんだのも、まさにこの理由りゆうの一つである。

この職業特性しょくぎょうとくせい単独たんどく世界せかい探索たんさくするさいきわめて不便ふべんであった。おおくの場面ばめん攻撃能力こうげきのうりょく安定あんていして発揮はっきすることができなかったからだ。

しかし、BOSSボスとの戦闘せんとうにおいては、この特性とくせいこそがわたしきわめて重要じゅうよう役割やくわりあたえる。

とりわけ決定的瞬間けっていてきしゅんかんにおいて、致命的一撃ちめいてきいちげきちからあたえてくれるのだ。


同時どうじに、姆姆魯ムムルもまた、この瞬間しゅんかんわたし自身じしんのもう一つの職業技能しょくぎょうぎのう――神槍しんそう妖皇型態ようこうけいたい即死穿刺そくしせんしほどこした。

それはかれゆうする最強さいきょう技能ぎのうの一つであり、すべてのちから一点いってん集中しゅうちゅうさせ、てき防御ぼうぎょつらぬき、致命的ちめいてき穿透損傷せんとうそんしょうあたえるのだ。

姆姆魯ムムル技能ぎのう発動はつどうすると同時どうじに、空気くうき全体ぜんたいのエネルギーがはげしく波動はどうし、その莫大ばくだいちから本質ほんしつを、わたし自身じしんでさえ明確めいかくかんることができた。

わたし姆姆魯ムムル技能ぎのうるのと同時どうじに、緹雅ティアもまた、おのれのもう一つの技能ぎのう――分身幻象ぶんしんげんしょうわたしほどこした。

この技能ぎのうは、わずかな刹那せつな複数ふくすう分身ぶんしん創造そうぞうするだけではない。

それらの分身ぶんしん攻撃こうげき圧力あつりょく分散ぶんさんするだけでなく、短時間たんじかんあいだてきまどわせ、本物ほんものわたしがどこにいるのかを判断はんだんできなくするのだ。


わたし仲間なかまたちからたくされたすべての技能ぎのうひとつに集約しゅうやくし、強力きょうりょく広範囲攻撃こうはんいこうげきとしてはなった。

その一撃いちげきちょくちに耶夢加得イェモンガドへとかってはなたれた。


しかし、意外いがいなことに、耶夢加得イェモンガドはこの状況じょうきょうにおいてなお反抗はんこう余地よちのこしていた。

芙莉夏フリシャ技能ぎのう効果時間こうかじかんきるその刹那せつな耶夢加得イェモンガドあらたな技能ぎのう発動はつどうしたのだ。

未知みち魔法まほう――血祭障壁けっさいしょうへき

この魔法まほう自身じしん体力たいりょく消耗しょうもうすればするほど、その障壁しょうへき強固きょうこさをすという。

わたし攻撃こうげきはその障壁しょうへきはげしく衝突しょうとつし、姆姆魯ムムルですらこの光景こうけい驚愕きょうがくせざるを得なかった。

耶夢加得イェモンガドが、この土壇場どたんばにおいてなお、かくも強大きょうだいちからかくしていたとは――その事実じじつこそがかれ震撼しんかんさせたのだろうか。


しかし、この障壁しょうへきわたし想像そうぞうしていたほど堅固けんごではなかった。

わたしなくちからそそぎ込みつづけると、障壁しょうへきまたた亀裂きれつしょうじ、やがておとてて粉砕ふんさいした。

そして耶夢加得イェモンガドは、その瞬間しゅんかんわたし攻撃こうげきをまともにけてしまったのだ。

攻撃こうげき命中めいちゅうした瞬間しゅんかん莫大ばくだい損傷そんしょうはまるで戦場せんじょう空気くうきそのものをいたかのようであった。

耶夢加得イェモンガド苦痛くつうちた震耳欲聾しんじよくろう咆哮ほうこうはなち、そのこえ雷鳴らいめいのごとく全員ぜんいん耳朶じだひびかせた。

そして、その巨体きょたい圧倒的あっとうてき攻撃こうげきちからによって崩壊ほうかいはじめ、ついには完全かんぜんほろぼされたのである。


耶夢加得イェモンガド消滅しょうめつすると、戦場せんじょう一瞬いっしゅんにして静寂せいじゃくつつまれ、そののち仲間なかまたち全員ぜんいん歓喜かんき喝采かっさいひびわたった。

この戦闘せんとうは、わたしたち一人一人ひとりひとり努力どりょくだけでなく、全員ぜんいん知恵ちえちから結晶けっしょうであった。

たおした耶夢加得イェモンガド見下みおろしたとき、わたしむね比類ひるいなき達成感たっせいかんたされていた。

これはわたしたちの勝利しょうりであり、ほかのどのギルドにもなかった偉業いぎょうである。

この瞬間しゅんかんわたしたちはふたた証明しょうめいした――こころひとつにしちからわせれば、不可能ふかのうおもえる挑戦ちょうせんですら成就じょうじゅできるのだと。


戦闘せんとうわったあと、仲間なかまたちのかおにはみな笑顔えがおかんでいた。

しかし、姆姆魯ムムル納迦貝爾ナガベルあきらかに疲労ひろうえていた。戦闘時間せんとうじかん予想よそう以上いじょう長引ながびいたのだから当然とうぜんだろう。

正直しょうじきなところ、なぜか最後さいご攻撃こうげきのとき、わたし自身じしんみょう感覚かんかくおぼえた。おそらくつかれているのだろう。まあ、わったらすぐによう。

まあ、明日あしたやすみだし、好き(す)きなだけてやればいい。


耶夢加得イェモンガド討伐とうばつされたあと、元々(もともと)洞窟どうくつ入口いりぐちにいた老爺爺ろうじいじNPCがふたたあらわれた。

老爺爺ろうじいじ意味深長いみしんちょう口調くちょう数人すうにんかってった。

挑戦ちょうせん成功せいこうしたことをおめでとう。きみたちはついに試練しれん達成たっせいし、よりたか挑戦ちょうせんへとすすむのだ!」

耶夢加得イェモンガド討伐とうばつしたあとられる報酬ほうしゅう一部いちぶには、耶夢加得イェモンガド限定げんていドロップの超量ちょうりょう武器装備ぶきそうび技能ぎのうスクロール、薬水やくすいスクロール、二十億にじゅうおく金貨きんか蛇鱗じゃりん欠片かけらがあった。

さらに、初回しょかいクリアではあたらしい公会神器こうかいしんき全自動追撃手ぜんじどうついげきしゅ」を獲得かくとくできる。

本当ほんとうによかったね!みんながこころひとつにして協力きょうりょくしてくれたおかげだ。」

私はうれしそうにった。

装備品そうびひんをすべて確認かくにんしたあと一同いちどうはフセレス(弗瑟勒斯)へ転送てんそうして報酬品ほうしゅうひん宝物庫ほうもつこおさめる準備じゅんびをした。

全員ぜんいんたがいにうなずきったのち転送装置てんそうそうちうえち、公会基地こうかいきち直接ちょくせつ転送てんそうする準備じゅんびととのえた。


しかし、

このとき異様いよう出来事できごとこった。


転送てんそう過程かていで、たしかにからだ転送てんそうされているのはかんじられたが、同時どうじ普段ふだんとはちが奇妙きみょう感覚かんかくともなっていた。

この異常いじょう感覚かんかくに、わたしこころにはひとつの疑念ぎねんまれた。

ちょうどそのとき転送てんそう途中とちゅう脳内のうないひく機械音声きかいおんせいひびいた。

転送信号てんそうしんごう受信確認じゅしんかくにん……次元転送システム(じげんてんそうしすてむ)起動きどう。」

「?」一同いちどう突然とつぜん疑問ぎもんおもった。

「次元転送ゲート(じげんてんそうげーと)開放中かいほうちゅう……開放かいほう確認かくにん完了かんりょう。」

転送先てんそうさき確認かくにん……王家神殿おうけしんでん。」

情報子じょうほうしリンク開始かいし……成功せいこう。」

情報子異常じょうほうしいじょう検出けんしゅつ修正しゅうせい……成功せいこう。」

そのときの私はまだ困惑こんわくしていた……

「え?これまでの転送てんそうにこんな音声おんせいあったっけ?」


はや脱出だっしゅつしないと!」

率先そっせんして反応はんのうしたのは 姆姆魯ムムル だった。

しかし、かれはすでに転送門てんそうもん封鎖ふうさされていることにづいた。

霊魂回廊れいこんかいろう構築こうちく開始かいし……成功せいこう。」

次元突破じげんとっぱ開始かいし。」

「もうわない!」

納迦貝爾ナガベルさけんだ。

次元突破じげんとっぱ……完了かんりょう。」

次元転送じげんてんそう開始かいし。」

わたしがまだ疑問ぎもんおもっていたそのとき――

警告けいこく転送てんそう干渉かんしょう発生はっせい警告けいこく!転送システム(てんそうしすてむ)に干渉かんしょう発生はっせい警告けいこく!転送システム(てんそうしすてむ)が……干渉かんしょう……!」

その瞬間しゅんかん転送装置てんそうそうちはげしくうごき、わたし眼前がんぜんのすべてが混乱こんらんつつまれた。

同時どうじに、大量たいりょう雑多ざった無秩序むちつじょなメッセージがわたし脳内のうないながんできた。


わたし意識いしき瞬間しゅんかん曖昧あいまいになり、身体からだ転送装置てんそうそうちはげしいれに合わせてっていられなくなった。

いまにも意識いしきうしないそうになったそのときひとつの瞬時しゅんじわたしつかんだ。

それは 緹雅ティア のようにおもえたが、結局けっきょく私はそのまま気絶きぜつしてしまった。

次元転送じげんてんそう……完了かんりょう。」

しろひかりわたし脳内のうないとおけた瞬間しゅんかんなにきたのか理解りかいするもなく、すでに転送てんそう完了かんりょうしていた。


わたしましたとき自分じぶん王家神殿おうけしんでん皇座廳こうざのまたおれていた。

わたしひたいさえ、先程さきほど奇妙きみょう影響えいきょうによるいたみをなんとかやわらげようとしていた。

――てよ……なぜゲームのなかでこれほど現実げんじつちか感覚かんかくがあるんだ?

わたし周囲しゅうい見渡みわたした。ここはたしかにギルド内部ないぶ王家神殿おうけしんでん皇座廳こうざのまであった。

しかし、緹雅ティア芙莉夏フリシャゆかたおれている以外いがいほか仲間なかますべえていた。

このような予期よきせぬ事態じたい直面ちょくめんして、どうすればよいかからなかった。

とにかく、まず 緹雅ティア芙莉夏フリシャこすことにした。

わたし二人ふたりかるさぶったところ、二人ふたりはすぐにました。

「え……凝里ギョウリなにきたの? さっき、なんだかへんじゃなかった?」

緹雅ティアすこねむたげな表情ひょうじょうたずねた。

老身ろうしんにもからぬ。先程さきほど転送装置てんそうそうち一体いったいどうなっておったのじゃ?」

芙莉夏フリシャこたえた。


「どういうことだ? ほかひとたちはどうしてえなくなった?」

転送てんそう問題もんだいきたのかもしれないな。運営方うんえいほう連絡れんらくしてみようか。」

「あっ!」

「どうした?」

「どういうことだ? カスタマーサポートへの連絡欄れんらくらんえているぞ! おまえたちもはやためしてみろ!」

全員ぜんいんがカスタマーサポートに連絡れんらくしようとしたが、おなじく信号しんごうがなかった。

「これはシステムの不具合ふぐあいなのか?」

「みんな、まずはこう。一度いちどログインしなおしてみよう。もしかすると解決かいけつできるかもしれない。」

「だめだ! さっきかったんだが、おれたちはログアウトできない! これはゲームのなかめられているということか?」


ちょうどわたしたち三人さんにん議論ぎろんしているときだれかが皇座廳こうざのまんできた。たのは 德斯デス弦月團げんげつだん で、かれらはそろって片膝かたひざをついた。

皆様みなさまなにかあったのでしょうか? 先程さきほど、おびのこえき、すぐにけつけました。」

執事服しつじふくけ、最前列さいぜんれつひざまずいているのは、王家神殿おうけしんでん専属せんぞく執事しつじ 德斯デス だった。

「たぶんわたしがさっきりんあやまってさわってしまったから、かれらがうごいたんだろうけど……これってゲームないNPCエヌピーシー に元々(もともと)ある設定せっていなのか?」

私は小声こごえいかけた。

「いや、ちがう。」 緹雅ティヤこたえた。

わたしがまだ戸惑とまどっているとき德斯デスわたし瞬間しゅんかん突然とつぜんおどろいてさけんだ。

芙莉夏フリシャ さま……」

德斯デス言葉ことばえるまえに、芙莉夏フリシャ がすぐにった。

德斯デスなんじらはがっておれ!」

「はっ、そとでいつでもおちしております。」

德斯デス たちが退しりぞいたあと芙莉夏フリシャおおきくためいきをついた。


「どうやら先程さきほど転送てんそうは……」

芙莉夏フリシャ、まさかいまべつ世界せかいだとうつもりか?」

わたしおもわずいかけた。

いま吾等われらがまず確認かくにんすべき事柄ことがらみっつある。

第一だいいちに、吾等われらすで公会基地こうかいきちもどっているはずであり、さきほど討伐とうばつしたBOSSボス報酬品ほうしゅうひんのこっている。ゆえに、まずは公会内部こうかいないぶ諸状況しょじょうきょう確認かくにんせねばならぬ。

第二だいにに、外周がいしゅう状況じょうきょうたしかめること。

第三だいさんに、もし通信装置つうしんそうち使つかえぬのであれば、吾等われらたがいに連絡れんらくれる手段しゅだん確保かくほし、さらにほかものとも接触せっしょくこころみる。そのうえで、今後こんごどうすべきかを議論ぎろんするのだ!」






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