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そのゲームは、切り離すことのできない序曲に過ぎない  作者: 珂珂


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第一卷 第六章 約束を果たす-6

「な、なんだって……あいつ、まさか……!」

私はおもわず見開みひらいた。

緹雅ティアおなじようにひとみおおきく見開みひらき、しんじられないといった表情ひょうじょうさけんだ。

「これは……めずらしいわね!」

私たちは、扶桑ふそうはなった攻擊こうげきおもわずおどろきをかくせなかった。

「さっきの攻擊こうげきって、もしかして……?」

みっにん姉妹しまいも次々(つぎつぎ)にくちひらき、そのこえにはあきらかな困惑こんわくにじんでいた。

彼女かのじょたちには、扶桑ふそう攻擊こうげきがどんな術式じゅつしきによるものなのか理解りかいできなかった。

だが、あの一擊いちげきたしかに――神農氏しんのうしの「混沌元素屏障こんとんげんそへいしょう」を易々(やすやす)とつらぬいた。

それだけに、みっにん胸中きょうちゅうには、言葉ことばにできぬ不安ふあん疑念ぎねんうずいていた。


「おおっ! あなたたち、これを見るのははじめてでしょ?」

そのとき緹雅ティアかるわらいながら說明せつめいした。

いまのは、すべての元素攻擊げんそこうげきなかでもっとも厄介やっかいなもの――さん元素げんそどく元素げんそよ。まさか、あいつがそれを使つかうなんてね。」

そのこえにはどこかあざけるようなひびきがあり、緹雅ティア扶桑ふそう酸性さんせい毒性どくせい元素げんそあやつることに興味きょうみおぼえたようだった。

さん元素げんそどく元素げんそたしかに元素げんそ分類ぶんるいされるが、その性質せいしつ主要しゅようはちだい元素げんそ系統けいとうとは根本的こんぽんてきことなっており、ゆえに「混沌元素屏障こんとんげんそへいしょう」の效果こうかはこれらには通用つうようしない。


「もし低階ていかいさんどくだったら、たいした損傷そんしょうはなかったはず。でも、あの攻擊こうげき混沌元素こんとんげんそ貫通かんつうしたってことは、相當そうとう威力いりょくっているってこと。――厄介やっかいね。」

緹雅ティア表情ひょうじょうめ、冷靜れいせい分析ぶんせきつづけた。

「この攻擊こうげきパターン、使つかかた次第しだいでは、ふせぐのはほとんど不可能ふかのうよ。」

たしかに……おそらく、あのゆみ自體じたい原因げんいんがあるんだろう。」

私はうなずきながらこたえた。

「あるいは技能ぎのう效果こうかかもしれない。あんなに容易ようい防禦ぼうぎょやぶれるなら、おれたちにてる見込み(みこみ)はうすいかもしれないな。」


さきほどの烏鴉からすたちの無秩序むちつじょ攻擊こうげきは、じつ神明かみたちの防禦ぼうぎょのリズムをくずし、扶桑ふそう一撃いちげき成功せいこうさせるための策略さくりゃくだった。

それこそが扶桑ふそう八階戰技はっかいせんぎ――「腐毒之矢ふどくのや」である。

このわざ命中めいちゅうした相手あいて持續的じぞくてき損傷そんしょうあたえる特性とくせいつ。

神農氏しんのうしたおれ、戰鬥力せんとうりょくうしなったことで、戰場せんじょう情勢じょうせい一氣いっきかたむいた。

神農氏しんのうしはもはやほか神明かみたちを支援しえんすることができず、治癒ちゆ手段しゅだんうしなわれた。

その結果けっか神明側しんめいがわ防禦力ぼうぎょりょく持久戰じきゅうせん能力のうりょくいちじるしく低下ていかしてしまう。

この狀況じょうきょうなかで、伏羲フクキ盤古バンコウ背水はいすいじん決意けついかため、まようことなくあらたな攻勢こうせいてんじた。


伏羲フクキは、いまの戰況せんきょう一瞬いっしゅん猶豫ゆうよすらゆるさないことをだれよりも理解りかいしていた。

かれまようことなくり、ふたた高空こうくうへと跳躍ちょうやくし、ななつの太陽たいようからはなたれる攻擊こうげきへと真正面ましょうめんからすすむ。

そのにぎられた雷光牙らいこうがは、はげしい雷電波動らいでんはどうはなち、まるでてん雷鳴らいめいのごとく閃光せんこうはしらせた。

瞬間しゅんかんかれ八階戰技はっかいせんぎ――「雷霆飛燕らいていひえん」を發動はつどうする。

斬撃ざんげき瞬間しゅんかんいかずち奔流ほんりゅう空氣くうきふるわせ、ひかりほとばしりがてんいた。

その雷電らいでん閃光せんこうは、おそ太陽たいよう攻擊こうげきをまっぷたつにき、はげしい風浪ふうろうともしていった。

衝擊しょうげきすさまじく、空氣くうきさえも震動しんどうし、周圍しゅうい空間くうかん波紋はもんのようにゆがむ。

伏羲フクキ身體からだ衝撃波しょうげきはけてふるえながらも、そのあしけっしてくずれなかった。

かれひとみには、確固かっこたる意志いし不屈ふくつひかり宿やどっている。

そして、その雷電らいでん斬擊ざんげきはただ防禦ぼうぎょするだけにとどまらず、ながれるような軌跡きせきみっつの太陽たいようつらぬき、轟音ごうおんともとしたのである。


同時どうじに、盤古バンコウもまた伏羲フクキ攻勢こうせいたくみに利用りようし、ほか太陽たいようたちの防禦死角ぼうぎょしかく見抜みぬいた。

かれ步法ほほうおどろくほど正確せいかくで、無駄むだ動作どうさ一切いっさいなかった。

盤古バンコウ全力ぜんりょく自身じしんちから解放かいほうし、驚異きょういてき速度そくどてき視線しせんをかわすと、おともなくその背後はいごへとせまった。

そして、鋼鐵こうてつのようにきたげられた巨腕きょわんげ、のこよっつの太陽たいようへとこぶしたたむ。

八階戰技はっかいせんぎ―「崩炎拳ほうえんけん」。

それは灼熱しゃくねつ氣息いきまとった一擊いちげきであり、はなたれた瞬間しゅんかんばくぜるような衝擊波しょうげきは空中くうちゅう炸裂さくれつした。

その烈風れっぷう周圍しゅういてき容赦ようしゃなくばし、空間くうかんそのものがきしみ、震動しんどうはっした。

くだかれた太陽たいようたちは、まるで粉碎ふんさいされた玻璃はりのように四散しさんし、その殘滓ざんし奔流ほんりゅうのように四方しほうへと波及はきゅうしていった。

空氣くうきかれ、四顆よっつ太陽たいよう能量のうりょく煙霧けむりとなってそらけ、かれらの肉體にくたいくずちるように地面じめんへとちていった。


だが、扶桑ふそうはその一連いちれん攻擊こうげきにも微動びどうだにせず、むしろつめたくわらみをかべ、素早すばや自身じしん位置いち調整ちょうせいした。

かれはさらに高速こうそくうごきをせ、盤古バンコウ伏羲フクキ防禦ぼうぎょ死角しかくくようにして迂回うかいし、ふたりがまったく警戒けいかいしていない位置いちった。

その刹那せつな盤古バンコウ伏羲フクキ異變いへんづくことすらできなかった。

扶桑ふそうにぎられたゆみはすでに極限きょくげんまでつるしぼられており、はなたれる瞬間しゅんかんには空氣くうきすらふるえるほどの殺氣さっきはらんでいた。

いの瞬間しゅんかん稲妻いなずまのようにひらめき、轟音ごうおんともなって盤古バンコウ伏羲フクキへとおそかった。

その矢速やそく先程さきほどはるかに上回うわまわり、威力いりょく桁違けたちがいで、ふたりにはけるいとますらなかった。


「どうだ?」

扶桑ふそうこえつめたく、じょうを感じさせなかった。

それは、扶桑ふそう八階戰技はっかいせんぎ――「破空箭はくうせん」であった。

その稲妻いなずまのごとき速度そくどはなたれ、盤古バンコウ伏羲フクキ反應はんのうするもなく、ただその閃光せんこう自分じぶんたちのからだつらぬくのをるしかなかった。

いの瞬間しゅんかん二人ふたり激烈げきれついたみがはしる。

容赦ようしゃなくかれらの肉體にくたい貫通かんつうし、その衝撃しょうげきちからすさまじく、ふたりのからだ容易よういばした。

かれらはちからなく地面じめんへとち、おもおととも土煙つちけむりがる。

その光景こうけいは、まるで天地てんちさえも悲鳴ひめいげるかのようだった。


幸運こううんなことに、女媧ジョカ一瞬いっしゅんおくれもなく反應はんのうした。

盤古バンコウ伏羲フクキ地面じめんへとたたきつけられようとしたその刹那せつな彼女かのじょ素早すばやかざし、水球術すいきゅうじゅつ詠唱えいしょうする。

いの瞬間しゅんかん巨大きょだい水球すいきゅう地面じめん出現しゅつげんし、落下らっかする二人ふたり身體からだをやわらかくつつんだ。

水球すいきゅうはその內部ないぶ衝撃しょうげき吸收きゅうしゅうし、衝突しょうとつちから拡散かくさんさせることで、ふたりを安全あんぜんめた。

とはいえ、盤古バンコウ伏羲フクキ扶桑ふそうによってけた激痛げきつうから、すぐにはがることができなかった。

呼吸こきゅうあらく、むねおおきく上下じょうげし、からだはなおもふるつづけていた。


「ふん! この程度ていど攻擊こうげきにもえられないとは……失望しつぼうしたぞ。」

扶桑ふそうこえつめたく、しかしそのおくには露骨ろこつ優越感ゆうえつかん嘲笑ちょうしょうにじんでいた。

盤古バンコウ伏羲フクキ苦痛くつうあえぎながらたおれるのを見下みくだろし、かれはすでにこのたたかいの結末けつまつえたかのように、勝利しょうり確信かくしんしていた。

――だが、その瞬間しゅんかん

扶桑ふそう表情ひょうじょう突如とつじょとしてゆがんだ。

口元くちもとからは鮮血せんけついきおいよくあふし、かれおもわずそのくちさえた。

いで、全身ぜんしんはしるような激痛げきつうおそかり、その身體からだおおきくふるはじめた。

「なっ……なにが、きている……?」

かれ全身ぜんしん制御せいぎょうしなったかのように痙攣けいれんし、まるでなに未知みちちから侵蝕しんしょくされているようだった。


おれたちが――どうやって神明かみいたったとおもう?」

盤古バンコウ苦痛くつうゆがかおげ、れたくちびるからひくく、しかしたしかなこえしぼした。

重傷じゅうしょういながらも、かれはゆっくりとがり、そのこぶしにはふたたちから宿やどる。

微笑ほほえみをかべるかれ表情ひょうじょうには、苦痛くつうよりもつよ氣迫きはくただよっていた。


盤古バンコウは、自身じしん權能けんのう發動はつどう―「傷害反擊しょうがいはんげき」。

その效果こうかきわめて單純たんじゅん――盤古バンコウ攻擊こうげきけたさい、その損傷そんしょう二倍にばい攻擊者こうげきしゃへと反射はんしゃする。

つまり、扶桑ふそうはなつた一擊いちげきごとに、かれ自身じしんばいいたみをあじわうことになるのだ。

この不意ふい反擊はんげきは、たしかに扶桑ふそう深刻しんこく損傷そんしょうあたえた。

だが、その代償だいしょうとして盤古バンコウ伏羲フクキ無傷むきずではまなかった。

二人ふたり身體からだ依然いぜんとして重傷じゅうしょうい、呼吸こきゅうあらく、あゆみはにぶく、地面じめんしたたちていた。

それでも、かれらのひとみには――まだ戦意せんいひかり宿やどっていた。


扶桑ふそう口元くちもとぬぐいながら、わずかにおどろいたようなみをかべた。

「ほう……おどろいたぞ。まさか、そんなかくだまっていたとはな。」

そういながらも、かれこえには余裕よゆうにじみ、いでひく冷笑れいしょうらす。

「だが――所詮しょせん、その程度ていどだ。」


その眼差まなざしはするどく、冷酷れいこくひかり宿やどっていた。

どうやら先程さきほど反擊はんげきも、扶桑ふそうにとって致命傷ちめいしょうにはいたっていないようだった。

いの瞬間しゅんかん扶桑ふそう兩手りょうておおきくげる。

それに呼應こおうするように、とされたはずの太陽たいようたちが、黒煙こくえんまといながらふたたかびがり、まばゆひかりいて扶桑ふそう身體からだへとまれていった。

やがて、太陽たいようすべてがそのむと、扶桑ふそう周圍しゅういがるほのおまたたいきおいをし、そのいろあかからふかくろへと變化へんかしていった。

黒炎こくえん大氣たいきゆがめ、戰場せんじょう一面いちめん灼熱しゃくねつ地獄じごくした。

ひかりゆがみ、空氣くうきらめき、まるで世界せかいそのものが熔岩ようがんうみへとわっていくかのようだった。


かくだまっているのは――おまえたちだけじゃない。」

扶桑ふそうこえつめたく、どこかそこれぬ威圧感いあつかんびていた。


「どうだ? これがおれ最終形態さいしゅうけいたい――“真實太陽しんじつたいよう”だ。」


その言葉ことばちると同時どうじに、天地てんちおおうような火焰かえんのぼり、天空てんくうまたた灼熱しゃくねつうみした。


そのころ扶桑ふそう遠方えんぽう亞拉斯アラース戦線せんせんやった。

四神獸ししんじゅうのうち三體さんたいはすでに撃破げきはされたものの、あの「大人おとな」たちからさずかった秘密兵器ひみつへいき見事みごとにそのちから発揮はっきしていた。

そのおかげで、最強さいきょう神獸しんじゅうである青龍せいりゅうは、常識じょうしきえるちから解放かいほうしていた。

「ははっ、さすがは“あの方々(かたがた)”だ! こいつは最高さいこうだな!」

扶桑ふそう興奮こうふんしたようにわらい、その狂気きょうきにもひかり宿やどしていた。

一方いっぽう亞拉斯アラース強化きょうかされた青龍せいりゅうまえにしてあきらかにされていた。

かれがどんな魔法まほう戦技せんぎしても、青龍せいりゅうはそのすべてを容易よういかわし、まるで戦場せんじょうそのものを支配しはいしているかのようだった。

そのとき青龍せいりゅうふたたてんくような咆哮ほうこうげ、口腔こうくう先程さきほどはるかに上回うわまわ魔力まりょく凝縮ぎょうしゅくさせていく。

――九階魔法きゅうかいまほう幽光漩渦ゆうこうせんか

くろうず魔力球まりょくきゅう青龍せいりゅうくちからはなたれた瞬間しゅんかん大氣たいき震動しんどうし、そらそのものがゆがむ。

その一撃いちげき威力いりょく凄絶せいぜつで、たとえ亞拉斯アラースったとしても――

聖王国せいおうこく全土ぜんど壊滅かいめつてき被害ひがいけることはけられなかった。


扶桑ふそうが振り返ると、神々(かみがみ)もつぎ行動こうどううつ準備じゅんびととのえていた。

「なるほど、つまりいまきみたおせばいいということか。」

うのは簡単かんたんだが……本当ほんとうにできるのか?」

その言葉ことばわるやいなや、扶桑ふそうおどろくほどのはやさで伏羲フクキへとんだ。女媧ジョカ展開てんかいした領域りょういきなかであっても、その威力いりょくはやさも、まるでおとろえをせなかった。

この姿すがたとなった扶桑ふそうちからは、伝説級でんせつきゅうBOSSボス匹敵ひってきするほどであった。神々(かみがみ)の実力じつりょくすくなくとも八級はちきゅう以上いじょうたっしていたが、能力のうりょくふうじられた状態じょうたいでは、まるでたず、一方的いっぽうてき圧倒あっとうされるしかなかった。


扶桑ふそうしん攻撃こうげきは、自身じしんこぶしからされていた。かれちからむと、連続れんぞくしてまることなくドリルのようなこぶしたたみ、そのいきおいはときつごとにすさまじさをしていった。かれ一撃いちげき一撃いちげきが、まさに破壊的はかいてきちから宿やどしていた。

それにくらべれば、先程さきほどまでの攻撃こうげきつよそうにえても、ただの準備運動じゅんびうんどうぎなかった。

扶桑ふそうがあらゆる太陽たいようみずからの体内たいない吸収きゅうしゅうしたその瞬間しゅんかんかれちから完全かんぜん解放かいほうされた。

かれ周囲しゅういがるくろほのおはますますはげしさをし、からだからあふしたエネルギーが圧倒的あっとうてき気流きりゅうとなって戦場せんじょうけた。それは、まるで超新星ちょうしんせい爆発ばくはつしたかのように、灼熱しゃくねつあらしこし、四方しほうはらっていった。

「こ、このちからは……!」

伏羲フクキは、扶桑ふそうからあふ膨大ぼうだいなエネルギーをはだかんじ、おもわずむねおくがざわめいた。かれ見開みひらかれ、しんじがたい光景こうけいまえにしていきむ。

攻撃こうげき仕掛しかけようとするたびに、扶桑ふそうこぶしぎゃくおそいかかり、伏羲フクキはその圧力あつりょくかえされてしまう。もはや反撃はんげきする隙間すきますら、どこにも存在そんざいしなかった。


盤古バンコウもまた、その前代未聞ぜんだいみもん脅威きょうい全身ぜんしんかんっていた。かれ肉体にくたいは、せる強烈きょうれつ圧力あつりょくえきれず、次第しだい異常いじょううったはじめる。扶桑ふそう攻撃こうげきは、かれからだの隅々(すみずみ)まではげしい痙攣けいれんこし、筋肉きんにく一筋ひとすじ一筋ひとすじ悲鳴ひめいげていた。

盤古バンコウ権能けんのうは、本来ほんらいけたきず相手あいて反射はんしゃするものであった。しかし、この瞬間しゅんかんかれ痛感つうかんする――たとえその反撃はんげきちからはなとうとも、扶桑ふそうには一切いっさいとおじない。

その反撃はんげきは、まるでくだけぬかべこぶしたたきつけるようで、衝撃しょうげきむなしくえていくだけだった。

その現実げんじつは、盤古バンコウこころ焦燥しょうそう不安ふあんたし、かれはじめてみずからのちからうたがはじめた。


「なぜだ……?」盤古バンコウこころ疑念ぎねんたされ、脳裏のうりには絶望ぜつぼうかげしていた。

かれ内側うちがわは、えないくさりしばられたかのようで、どれほどもがこうとも、眼前がんぜん窮地きゅうちからせない。

その様子ようす扶桑ふそうは、冷酷れいこく挑発的ちょうはつてきわらごえげた。そのわらいには、勝者しょうしゃ余裕よゆう侮蔑ぶべつじっていた。

かれはゆっくりとあるり、そのひとみにはあざけりと軽蔑けいべつ宿やどる。

「ハハハハハッ! おまえ、なぜ自分じぶん権能けんのうわたしつうじないのか、不思議ふしぎでたまらないんだろう? ならば、まえおしえてやろう!」

扶桑ふそう表情ひょうじょうはますます狂気きょうきび、かれ周囲しゅういさかほのお一段いちだんたかがった。

「これこそが、この世界せかいわたしあたえたちからだ。『真実太陽しんじつたいよう』の形態けいたいにおいてのみ発動はつどうするこの権能けんのう――反傷はんしょう無効むこう! つまり、いくら反撃はんげきしても、きずとおらなければなに意味いみもないのだ!」


その言葉ことばに、盤古バンコウこぶしかたにぎりしめ、ゆび関節かんせつかわいたおとてた。

かれはまだ自分じぶんちからのこされているとしんじていた。だが、そのちからをどうしてもすことができない。

みずからの能力のうりょく完全かんぜんふうじられている現実げんじつなかで、盤古バンコウはじめて――しん意味いみ自分じぶん無力むりょくおもった。


さいわいにも、盤古バンコウ伏羲フクキ懸命けんめい牽制けんせいしていたおかげで、扶桑ふそうはまだ女媧ジョカ攻撃こうげきくわえることができなかった。もしかれ女媧ジョカねらっていれば、その防御ぼうぎょうしなった彼女かのじょ一撃いちげきたおされていたにちがいない。

扶桑ふそう女媧ジョカめることなく、盤古バンコウ伏羲フクキ相手あいてたたかうことを楽し(たの)んでいるようであった。


かれ全身ぜんしんからあふ強大きょうだいなエネルギーは、依然いぜんとして二人ふたりにとって圧倒的あっとうてき脅威きょういであり、あらがうことすらむずかしかった。

たとえ女媧ジョカ防御力ぼうぎょりょくさずかっていたとしても、盤古バンコウ伏羲フクキからだ扶桑ふそうほのおかれつづけ、まるで地獄じごく業火ごうかいているようだった。ける損傷そんしょう大幅おおはば軽減けいげんされてはいたが、それでも二人ふたりえがたい激痛げきつうかおゆがめざるをなかった。


女媧ジョカ防御ぼうぎょ加成かせいも、二人ふたり崩壊ほうかいをほんのわずかにおくらせるだけだった。

やがて伏羲フクキ盤古バンコウからだには、いたるところにげたあとかびがり、皮膚ひふくろすみのようにがれ、血肉けつにくは見るも無残むざんただれていた。

一条いちじょう一条いちじょう傷口きずぐちふか筋肉きんにくまでたっし、いたみとねつ全身ぜんしんむしばんでいく。

全力ぜんりょくさなければ――黄泉よみちるのはおまえたちのほうだぞ!」

扶桑ふそうわらいながら攻勢こうせいつよめ、その一撃いちげき一撃いちげきがまるで宣告せんこくのようにひびいた。




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