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そのゲームは、切り離すことのできない序曲に過ぎない  作者: 珂珂


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第一卷 第五章 千年の追尋-8

王国おうこく神殿しんでんもどる)

わたし緹雅(ティア)は、とした蚩尤シユウくびを神々(かみがみ)のまえはこんだ。

その光景こうけいものたちは、みな一様いちようしんじられないという表情ひょうじょうかべた。

「この程度ていどやつだったのね。」

緹雅(ティア)かたをすくめながらった。

「我々(われわれ)を水火すいかくるしみからすくってくれるとは……

どう感謝かんしゃすればよいのかわからぬ。」

盤古バンコウがり、ゆっくりとわたしたちのほうあるると、

かるあたまげて感謝かんしゃしめした。

「それなら、約束やくそくまもってもらえるんだな。」

「もちろん! きたいことがあるなら、なんでもいて。」

わたし緹雅(ティア)は、ちかくの椅子いすふたつけてこしろした。


きたいことがおおすぎるんだ。まず――

じつわたしたちは聖王国せいおうこく人間にんげんではないし、六島之國ろくとうのくににもぞくしていない。

六大国ろくだいこくは、いったいどのようにしてまれたくになんだ?」

かくしても仕方しかたがないとおもい、私は率直そっちょくにそうげた。

この言葉ことばに、神々(かみがみ)は一様いちようおどろきの表情ひょうじょうせた。

「申しもうしわけありませんが、あなたがた質問しつもんこたえるまえに、

わたしたちからもひとつおうかがいしてもよろしいでしょうか?

――あなたがたは、どこからたのですか?」

「それは……。」

私はすぐにはこたえられなかった。

とお場所ばしょから。」

緹雅(ティア)自然しぜんながれでわたしかわりにこたえた。

「そのようなこたえでは、すこしんじがたいですね。」

たしかに、わたし自身じしんもそのこたえがあまりに曖昧あいまいで、

のがれのようにこえるとおもった。

だが、ここの世界せかいにもわたしたちのように“転移者てんいしゃ”――

いわゆる“プレイヤー”が存在そんざいするのかは、確証かくしょうがなかった。

「では、こうこう。――“プレイヤー”にったことはあるか?」

わたしの問いに、神々(かみがみ)はみなくびをかしげ、不思議ふしぎそうな表情ひょうじょうかべた。

どうやら、わたしたちがこの世界せかい最初さいしょものたちらしい。

すくなくとも、このくにではそうなのだろう。

「それなら、わたしたちはべつ世界せかいからものおもってくれ。」

この問いに、どうこたえていいかわからなかったが、

かれらはそれ以上いじょうおようことはせず、しずかにうなずいた。

ただ――私はづいた。

かれらのかおには、どこか失望しつぼういろかんでいた。


「もしあなたがたがこの世界せかいものではないのなら、

この世界せかい歴史れきしについてもくわしくはらないのでしょうね。

だから六大国ろくだいこくのことをたずねたのも無理むりはありません。

このけんについてはなすとながくなりますが……

時間じかんさかのぼ必要ひつようがあります。

いまからおよそ三千年前さんぜんねんまえ

この世界せかいは“黒暗期こくあんき”――やみ時代じだいむかえていました。」

盤古バンコウはそういながら、自身じしん魔法まほう使つかって空間くうかん映像えいぞう投影とうえいした。

やみ時代じだい?」

「そうです。

当時とうじ外界がいかいから一柱ひとはしら強大きょうだい魔神ましん降臨こうりんし、

その配下はいかたちをひきいてこの世界せかい蹂躙じゅうりんしました。

各種族かくしゅぞくたがいのちがいをえ、

十年じゅうねんにわたってともたたかいました。

しかし、その魔神ましんちからはあまりにも強大きょうだいで、

おおくの種族しゅぞくいのちとし、

世界せかい絶望ぜつぼうふちたされていたのです。」

「ですが、そののち――このからそうとおくない場所ばしょ

龍霧山りゅうむさんうえに、きゅうにん至高しこう存在そんざい突然とつぜん降臨こうりんしました。


かれらは見事みごとにその魔神ましん封印ふういんし、

わたしたちはようやく平和へいわもどすことができたのです。」


ここまでいて、わたしなかにはむしろあらた疑問ぎもんまれていた。

というのも、迪路嘉(ディルジャ)調査ちょうさでは龍霧山りゅうむさん周辺しゅうへん不審ふしん魔物まもの確認かくにんされていなかったからだ。

それなのに「きゅうにん強者きょうしゃ」というはなしてきて、

私はますます状況じょうきょうつかめなくなっていた。

「その魔神ましんは、いまどこに封印ふういんされているんですか?」

具体的ぐたいてき場所ばしょものはいません。

そのきゅうにん大人おとなだけが、封印ふういんしん位置いちっているのです。

おそらく、だれかが封印ふういんやぶこうとしたときそなえてのことなのでしょう。」

「では、そのきゅうにんいまどこに?」

「それもまた、だれにもわかりません。

きゅうにん大人おとなたちは、当時とうじのこった部族ぶぞくなかから数名すうめい強者きょうしゃえらび、

かれらに“かみ権能けんのう”をさずけたのです。」

「“かみ権能けんのう”とは……?」

「はい、わたしたちがいまっている特別とくべつちからのことです。

かみ権能けんのう”は、ものむかえたとき

みずかつぎ継承者けいしょうしゃさがします。

つまり、わたしたちのちから前代ぜんだいからがれたものなのです。」

女媧ジョカしずかにそう補足ほそくした。


権能けんのうさずけられたあときゅうにん至高しこう大人おとなたちは各種族かくしゅぞくみちびき、

六大国ろくだいこくげました。

そして建国けんこくさいに、やぶることのできない誓約せいやくわし、

そののちきゅうにん姿すがたしました。

誓約せいやく内容ないよういまでも各国かっこく法文ほうぶんとしてのこされています。」

「そのものたちがえるまえに、ほかになにのこしたものは?」

わたしたちの宿やど権能けんのうのぞけば、

きゅうにん大人おとなたちはなにのこしませんでした。

龍霧山りゅうむさんでも、もはやかれらの気配けはいかんじることはできません。

まるでったかのようです。

ですが、誓約せいやく末尾まつびにはこうしるされています――

この世界せかいしん危機きき直面ちょくめんしたとき

きゅうにん大人おとなたちはふたた姿すがたあらわし、救済きゅうさいのぞむだろうと。」

「そのきゅうにんについて、ほかにっていることは?」

私はそのきゅうにんかんする情報じょうほうすこしでもおおようとたずねた。

「いいえ、あまりにときちすぎて、具体的ぐたいてきなことはわたしたちにもわかりません。

ですが……六島之國ろくとうのくにの神々(かみがみ)なら、もうすこくわしいかもしれません。」と盤古バンコウこたえた。

「そうだな。かれらはちょうど二代目にだいめ継承者けいしょうしゃあらわれたばかりだ。」

伏羲フクキしずかにった。

神々(かみがみ)のはなしいて、

わたしたちはつぎかうべき場所ばしょを――六島之國ろくとうのくにへと、こころなかめた。


わたしたちはすこ休憩きゅうけいった。

亞拉斯アラースひとつかわし、いくつかの菓子かしはこんできた。

中華風ちゅうかふう点心てんしんのようだった。

女媧ジョカれた手付てつきでちゃれはじめた。

遠慮えんりょせず、どうぞがって。」

わたしつね警戒けいかいおこたらないため、

はこばれたしょくもの慎重しんちょう鑑定かんていしたが、

とく異常いじょうられなかった。

誓約せいやくについて、すこいたことがある。

その条文じょうぶんなかひとになるものがあるんだ。

龍霧山りゅうむさんは“禁忌きんき”とばれているそうだが、

本当ほんとうなにおそろしい魔物まものがいるのか?」

私はちゃくちふくみながらたずねた。

「そのてんについては……。

かつて龍霧山りゅうむさん地形ちけいけわしく、

ながあいだだれちかづこうとはしませんでした。

きゅうにん至高しこう大人おとなたちがそこに降臨こうりんしたさい

あのには我々(われわれ)では対処たいしょできない“なにか”がひそんでいると警告けいこくけたのです。

ですが、初代しょだいの神々(かみがみ)がのこした言葉ことばには、

それは“安全あんぜん考慮こうりょしたうえでのいましめ”にぎないともしるされていました。」

安全あんぜん考慮こうりょ……か。」

「ええ。実際じっさいには、忠告ちゅうこく無視むししてかう冒険者ぼうけんしゃおおいのです。

しかし、龍霧山りゅうむさん非常ひじょう広大こうだいで、

ゆきもる環境かんきょうくわえ、

長年ながねんにわたりきりおおわれています。

魔法まほうでもそのきりはらうことができず、

結果けっかとしてだれもその真実しんじつ姿すがたたしかめることができていないのです。」


経験けいけんあさ冒険者ぼうけんしゃにとって、

あのはいることは自殺行為じさつこういおなじです。

ですから、安全性あんぜんせい考慮こうりょして警告けいこくしたのです。

それでも忠告ちゅうこくかずにかうもののちたず、

かなしい結果けっかまねくことになったのです。」

たしかに、最初さいしょ龍霧山りゅうむさん濃霧のうむたときは、

わたしもかなり厄介やっかいだとかんじた。

わたしたちの魔法まほうでもきりはらえなかったが、

実際じっさいにはおおきな支障ししょうはなかったため、

ふかかんがえることもなかった。

だが、いまはなしでようやく理由りゆうがわかったがする。

「ところで、誓約せいやく最後さいごに――

もし誓約せいやくやぶれば滅亡めつぼうまねくとしるされているが、

そんな内容ないよう同意どういするものなどいるのだろうか?」

私はさらに質問しつもんかさねた。

「それは、“かみ権能けんのう”を使つかうえでの制約せいやくだからです。」

盤古バンコウしずかに説明せつめいした。

きゅうにん大人おとなたちはちからさずけるさいに、

その濫用らんよう戦争せんそうがねとなることをふせぐため、

厳格げんかく制約せいやくもうけました。

誓約せいやく重大じゅうだいやぶれば、

権能けんのううしない、神位しんいうしなうだけでなく、

懲罰ちょうばつさえくだるのです。」

「やはり、そうか……。」

私はちいさくつぶやいた。

これまでのはなしは、ほぼわたし予想よそうどおりだった。

「もし誓約せいやく興味きょうみがあるのなら、

のちほど手写てうつしの写本しゃほん用意よういさせましょう。」

「それはたすかりますね!」


どうやら、わたしたちがまだ把握はあくしていない情報じょうほうおお存在そんざいしているようだ。

この場所ばしょには、あまりにもおおくのなぞかくされている。

「その魔神ましん蚩尤シユウについてですが、

わたしたちはかれからだからすうおおくの強力きょうりょく装備そうび発見はっけんしました。

ただ、かれ能力のうりょくわたしたちにとって相性あいしょうわるく、

そのおかげでたおすことができたのです。

この装備そうびはいったいどこからたものなのですか?」

このてんわたし非常ひじょうになっていた。

もし本当ほんとうわたしたちが最初さいしょの“転移者てんいしゃ”だとしたら、

なぜこの世界せかいに“DARKNESSFLOWダークネスフロー”の武器ぶき装備そうび数多かずおお存在そんざいするのだろうか。

「それをわれると……こたえるのはむずかしいですね。

わたしたちはずっと、それらは“世界せかい意志いし”によってつくられたものだとかんがえてきました。

わたしたちはそれ以上いじょうふか調しらべたことはありません。

むしろ――あのきゅうにん大人おとなたちも、

この世界せかい意志いしによってまれた存在そんざいなのではないかとさえおもったことがあります。」

「はははっ! そんなわけないでしょ!」

緹雅ティアわらいながらった。

たしかに、そのようなことをくちにすれば、

あの方々(かたがた)にたいしてあまりにも失礼しつれいですな。」

神農氏しんのうし苦笑くしょうしながら同意どういした。

会話かいわながれからも、

神々(かみがみ)がいかにそのきゅうにん尊敬そんけいし、

ふか敬愛けいあいしているかがつたわってきた。


「では……黒棺神こくかんしんについては、どの程度ていどぞんじなのですか?

あれは三千年前さんぜんねんまえの、あの強大きょうだい魔神ましんみずか名乗なのった称号しょうごうなのですか?」

「いいえ。

その魔神ましん自分じぶんのこしてはいません。

わたしたちにもすべなどありません。」

盤古バンコウこたえをいて、私はすこ落胆らくたんした。

まさか、そのふたつが同一どういつ存在そんざいではないとはおもわなかった。

だが――無関係むかんけいであるはずもない。

「ですが、黒棺神こくかんしんかんしてなら、すこしわかっていることがあります。」

伏羲フクキがそうった。

「おお?」

その言葉ことばいた瞬間しゅんかん、私はおもわずかがやかせた。

黒棺神こくかんしんは、だれもそのしん姿すがたたことがありません。

ですが、かれ配下はいかたちのはなしによれば――

黒棺神こくかんしん手下てしたたちを世界せかい各地かくちらし、

なにかをさがしているようなのです。

その影響えいきょうで、おおくのくに混乱こんらんおちいっているともきます。」


二十五年前にじゅうごねんまえ出来事できごとは、おそらくその“黒棺神こくかんしん”と名乗なのやつ仕業しわざだろう。」

神農氏しんのうしいかりをかくせぬ様子ようすった。

「ほう? どうしてそんなに確信かくしんしているんです?」

私は興味深きょうみぶかたずねた。

「“猰貐ヤツユウ”とばれるあのものは、黒棺神こくかんしん配下はいかからちからさずかったらしい。

あの蚩尤シユウおなじことだ。

だから両者りょうしゃかんわっているのはあきらかだ。」

神農氏しんのうしわたしにそうあかかした。

「なるほど……。

だが、そのものたちにかんする手掛てがかりはなにもないのですか?」

「いいえ。

あの連中れんちゅう非常ひじょう用心深ようじんぶかく、

けっして軽々(かるがる)しく尻尾しっぽすようなことはしません。」

神農氏しんのうししずかに、しかしくやしげにこたえた。


「しかしいま、ようやく勝利しょうり曙光しょこうえてきたのです。」

わたし緹雅ティアくわわったことで、伏羲フクキこえにはたしかな自信じしんちていた。

「でもね、わたしたちをあのきゅうにんおなじだなんておもわないでくださいよ!

わたしはあのきゅうにんのことなんてなにりませんから。」

どうやら、わたしたちのちから想像そうぞう以上いじょうつよかったせいで、

かれらはわたしたちを“きゅうにん再臨さいりん”だと勘違かんちがいしたらしい。

私はあわててそうくぎした。

最初さいしょたしかに、きゅうにん大人おとなたちがふたたくだったのかとおもいました。」

盤古バンコウ微笑ほほえみながらった。

――ほら、やっぱりそうか。

「けれど、もし本当ほんとうにそうなら、

わたしたちの宿やどる“かみ権能けんのう”があなたがた反応はんのうしているはずです。」

女媧ジョカおだやかに補足ほそくした。

誤解ごかいでなくてよかった!」

私はむねろした。

もし本気ほんきあやまって“きゅうにんあつかいされていたら、

それこそ大変たいへん事態じたいになるところだった。


ひとうかがいたいのですが――

聖王国せいおうこく歴史れきしなかに、“石板せきばん封印ふういん”にかんする伝説でんせつ存在そんざいしますか?」

この質問しつもんげかけたのは、

以前いぜんれた石板せきばんが神々(かみがみ)とどのような関係かんけいつのかをたしかめるためだった。

「?」

神々(かみがみ)は一斉いっせいくびをかしげ、

たがいに視線しせんわした。

その表情ひょうじょうにはあきらかに困惑こんわくかんでいた。

そしてかえってきたこたえは、わたし予想よそうおおきく裏切うらぎるものだった。

「いいえ。

わたしたちは石板せきばんのことなどなにりません。

あなたがたは、そのはなしをどこでいたのですか?」

「いえ……。

すこたしかめたいことがあっただけです。

こたえてくださって、ありがとうございます。」

私はしずかにあたまげた。

むねおくにわずかな失望しつぼうひろがるのをかんじながら。


「では、こちらからもひと質問しつもんしてよろしいですか?」

盤古バンコウくちひらいた。

「どうぞ。」

「あなたがた聖王国せいおうこく目的もくてきなんですか?」

その問い(とい)に、私は返答へんとうまよった。

本来ほんらい目的もくてきは“仲間なかまさがすこと”だが、

仲間なかまたちの情報じょうほうをあまりあきかしたくはなかった。

われた仲間なかまさがしている――それ以上いじょうえません。」

それが、わたしおもいつくさい無難ぶなんこたえだった。


「それなら……わたしちからが、あなたがたたすけになるかもしれません。

報酬ほうしゅうとして、せめてそのくらいはさせてください。」

神農氏しんのうしがそうこたえた。

神農氏しんのうし言葉ことばいて、わたしもそれがあんだとおもった。

「そううのなら、お願いしよう。

具体的ぐたいてきには、どうすればいい?」

私はたずねた。

わたし権能けんのうは“大地だいちこえちから”です。

過去かこ大地だいちこった出来事できごとることができます。

ただし、この魔法まほう魔力まりょく消耗しょうもうはげしく、られる情報じょうほうにも限界げんかいがあります。」

「ですが、ひとさが程度ていどなら問題もんだいありません。

さらに、あなたがたくわしい情報じょうほうあたえてくれれば、

わたし正確せいかく場所ばしょ特定とくていすることもできるでしょう。」

――さすがは“かみ権能けんのう”。

まさか、これほどのちからっているとは。

わたしがその提案ていあん同意どういすると、

神農氏しんのうしにしたつえたかかかげた。

神農氏しんのうし神器じんぎは“朱砂権杖しゅしゃけんじょう”。

それは感知かんちけい魔法まほう強化きょうかし、魔力まりょく消費しょうひおさえる効果こうかっている。

過去かこにもおおくの情報じょうほうが、

この神農氏しんのうしちからによって未然みぜんふせがれてきたという。

神農氏しんのうし魔力まりょく集中しゅうちゅうさせると、

瞬間しゅんかん巨大きょだい魔法陣まほうじん展開てんかいされた。

その規模きぼ魔力波動まりょくはどうからさっするに、

この魔法まほう九階級きゅうかいきゅう魔法まほうにも匹敵ひってきするほどのちからっているのがわかった。


神々(かみがみ)のちからりて仲間なかまさがせるのはたしかに便利べんりだが、

わたしとしてもあまりおおくの情報じょうほうあきかすわけにはいかなかった。

情報じょうほう……。

どのような内容ないようつたえればいいですか?」

さがしている仲間なかま何人なんにんです?

どこではなばなれになったのです?

そして、それはいつの出来事できごとですか?」

われた仲間なかま七人しちにんです。

この世界せかいてからはなばなれになったので、

正確せいかく場所ばしょはわかりません。

時期じきは……おそらくげつほどまえだったとおもいます。」

神農氏しんのうしかるうなずくと、

すぐに九階きゅうかい魔法まほう――「大地之霊だいちのれい」を発動はつどうした。

この魔法まほうは、大地だいちのこ過去かここえき取り、

そのときこった出来事できごとることができる。

しかし、られる情報じょうほうかぎられており、

けっして万能ばんのうではなかった。


「なるほど……。

大地だいちこえによれば、たしかにげつまえ時空じくう波動はどう痕跡こんせきのこっていたようです。

ですが、その魔力波動まりょくはどう大地だいちながれには沿っておらず、

正確せいかく位置いち特定とくていすることはできませんね……。」

神農氏しんのうしちいさくつぶやいた。

わたし把握はあくできた範囲はんいでは、

あなたがたさがしているものたちは聖王国せいおうこくなかにはいないかもしれません。

魔力まりょくながれが聖王国せいおうこくかっていないのです……。」

言葉ことばえるまえに、神農氏しんのうしからだきゅうちからうしない、

はげしくみはじめた。

「どうやら……魔力まりょくきたようですな。」

神農氏しんのうしくるしげにった。

仕方しかたありませんわ。

この魔法まほうはもともと魔力まりょく消費しょうひはげしいうえに、

過去かこさかのぼるほど消耗しょうもうおおきくなります。

つえがなければ、とてもここまではたなかったでしょう。」

女媧ジョカがそっとかれ気遣きづかった。

神農氏しんのうしはもともと魔力量まりょくりょうたかくないため、

この魔法まほう長時間ちょうじかん維持いじするのは困難こんなんだった。

「ですが、これ以上いじょう情報じょうほうられそうにありません。

申しもうしわけない。」

「いえいえ、これだけの情報じょうほうられただけでも十分じゅうぶんです。」

私はってしめした。

先程さきほどはなしつづきですが――

魔力まりょく波動はどう非常ひじょう微弱びじゃくかつ不明瞭ふめいりょうでした。

ですので、確実かくじつえるのはつぎふたつです。

あなたがた仲間なかま聖王国せいおうこくにはおらず、

べつくにか、あるいは未踏みとう地域ちいきにいる可能性かのうせいたかい。

そして――すくなくともひとつの魔力まりょくながれが、

六島之國ろくとうのくに方角ほうがくかっていることだけはたしかです。

この情報じょうほうが、あなたがた探索たんさく参考さんこうになればさいわいです。」

神農氏しんのうしは、られた情報じょうほう丁寧ていねい整理せいりしながら説明せつめいした。


この魔法まほうには本当ほんとう感服かんぷくするしかなかった。

わたしたちのなかにも、これほど高階こうかい探知魔法たんちまほう使つかえるものはいない。

先程さきほど鑑定かんてい結果けっかからもわかるように、

たとえ九階級きゅうかいきゅう魔法まほうであっても、

種族しゅぞく職業しょくぎょう制限せいげんきびしく、

だれにでもあつかえるものではない。

それに、魔力まりょく消費量しょうひりょうかぎり、

わたし予想よそう以上いじょう負担ふたんおおきいことも理解りかいできた。

「ここまでわたしたちをたすけてくださって、本当ほんとう感謝かんしゃします。」

私はあらためて感謝かんしゃつたえた。

「ですが……ひとつ、お願いを追加ついかしてもよろしいでしょうか。」

私はつづけてった。

「?」

「もし可能かのうであれば、わたしたち二人ふたり情報じょうほうせておいてほしいのです。

聖王国せいおうこくないわたしたちのことをひろめないでください。」

「しかし、お二人ふたりはすでに“混沌級こんとんきゅう冒険者ぼうけんしゃ”として知られています。

それはすこむずかしいのでは?」

わたしいたいのは、

わたしたちがあなたがたたすけたけんも、

いまここでかわしたすべての会話かいわも、

けっして他言たごんしないでほしいということです。

あなたがた部下ぶかたちにたいしてもおなじです。」

「なるほど……了解りょうかいしました。それなら問題もんだいありません。」

神々(かみがみ)から約束やくそく言葉ことばて、

私はようやく安堵あんどし、緹雅ティアともにそのあとにした。

聖王国せいおうこくの神々(かみがみ)との対話たいわて、

わたし緹雅ティアはこの世界せかいについて大筋おおすじ把握はあくした。

だが、なおおおくのなぞのこされている。

わたしたちは――そのこたえをもとめ、

ふたた旅路たびじへとあしした。


わたしたちがったあと王国おうこく神殿しんでんにて)

「なんとおそろしい若者わかものたちだ……。

まさか、あれほどつよ気配けはいはなつとはおもわなかった。」

伏羲フクキしずかにった。

かれらがわたしたちのてきでなくて本当ほんとうによかったわ。」

女媧ジョカ安堵あんどしたようにいきいた。

そのとき亞拉斯アラース神殿しんでんはいってきて報告ほうこくした。

神明かみさま、使者ししゃ到着とうちゃくしました。」

「おお? どのくにからの使者ししゃだ?」

伏羲フクキたずねた。

「……」

「どうした、亞拉斯アラース?」


くろ祭壇さいだんなか陰鬱いんうつ空気くうき周囲しゅういおおっていた。

祭壇さいだん中央ちゅうおうには、数多かずおおくの魔法器具まほうきぐならべられ、

壁面へきめんにはかすかにひか符文ふもん不気味ぶきみかがやいている。

まるでここが、この世界せかいぞくさない異界いかいであるかのようだった。)

第十八だいじゅうはち魔神宝珠ましんほうじゅひかりが……えた。」

ひくつめたいこえやみおくからひびわたり、

だれもいない祭壇さいだん全体ぜんたい反響はんきょうした。

そのこえにはあきらかな苛立いらだちと怒気どきふくまれていた。

「どうやら……あの蚩尤シユウやぶれたようだな。」

「我々(われわれ)が長年ながねんかけてそだげた兵器へいきひとつだったというのに……。」

もう一人ひとりこえしずかに、だがいかりをころしたようにひびく。

その口調くちょうには驚愕きょうがくともに、たしかな憤怒ふんぬいろじっていた。

聖王国せいおうこくごときのちからで、どうしてたおせる……?

我々(われわれ)が綿密めんみつ仕掛しかけた計画けいかくが、

こんなにも容易よういくつがえされるとはな……。」


やみなかひとつのかげがぼんやりと姿すがたあらわした。

くろ長袍ちょうほうまとい、その体躯たいくたかく、

おくには言葉ことばではあらわせないほどのつめたさと深淵しんえん宿やどっていた。

かれ祭壇さいだんかれた、いままさにひかりうしなった宝珠ほうじゅ見下みおろし、

まゆをわずかにせる。

その表情ひょうじょうには、この結果けっかへの理解りかいできぬ不満ふまんにじんでいた。

「……どうやら、我々(われわれ)はあの連中れんちゅうあまていたようだな。」

第三だいさんこえ突如とつじょとしてひびく。

そのこえ沈着ちんちゃくで、すでに状況じょうきょう見据みすえたものひびきをっていた。

「だが、いずれにせよ、これはあくまで一手いってぎん。

すべてがわったわけではない。」

黒衣こくいおとこ一瞬いっしゅん思考しこうめ、

つぎ熟考じゅっこうするようにしずかにいきととのえる。

そして、ふたたくちひらいた。

「……つぎ魔神ましんうごかすときだ。

かれなら、よりおおくの変数へんすうをもたらし、この局面きょくめんえることができるだろう。」

その言葉ことばともに、おとこ眼差まなざしは一層いっそうつめたくするどくなっていく。

ひとみおくでは、暴虐ぼうぎゃくちからしずかにうごめはじめていた。

かれ指先ゆびさき祭壇さいだんきざまれた古代こだい符文ふもんをそっとでると、

その瞬間しゅんかんおく暗黒あんこくひかりひらめいた。


「だが、そのまえに……我々(われわれ)はまだ“かぎ”をあつつづけねばならぬ。」

もうひとつのかげが、ゆっくりとがった。

そのかおやみかくれてえなかったが、

こえおくにじ焦燥しょうそうだけはかくしきれなかった。

「……あの至高無上しこうむじょうの御方々(おんかたがた)は、解放かいほうされねばならぬ。

それこそが、我々(われわれ)の最終さいしゅう目的もくてきだ。」

おとこひくつぶやく。

その声音こわねにはいのりにも敬虔けいけんさがただよっていたが、

同時どうじに、ときいそあせりもかくされていた。

かれ両手りょうてつよにぎられ、指先ゆびさきなにかをこするようにふるえている。

こころなかでは、無数むすう計算けいさん推測すいそくからい、

如何いかにして障壁しょうへきやぶるかを思案しあんしていた。

今度こんどこそ……聖王国せいおうこくは、完全かんぜんほろびるのだろうな?」

周囲しゅうい空気くうきが徐々(じょじょ)におもしずんでいく。

祭壇さいだんうえでは、一顆いっか宝珠ほうじゅまばゆひかりはなはじめた。

やみなかちからひそかにあつまり、

深淵しんえん陰影いんえいひそものたちは、

つぎ運命うんめい回転かいてんしずかにかまえていた。




第五章の内容はここで一区切りとさせていただきます。

お読みいただき、本当にありがとうございました。


来週からは第六章の内容を投稿していく予定です。


物語全体の大まかな構成はすでに考えてありますが、細部の描写についてはまだ強化の必要を感じています。

また、序盤に多くの伏線を仕込んでいるため、新しい内容を創作するだけでなく、これまでの内容を見直すのにもかなりの時間を費やしました。

とはいえ、第ニ巻ではいくつかの謎の答えを明かす予定です。


最近は研究の仕事があまりうまくいかず、やらなければならないことも多く、

何度か投稿の延期を考えましたが、最終的にはどうにかして予定通りに投稿することができました。


ただ、ほぼ一ヶ月ほど、物語の後半部分の創作で少し行き詰まってしまい、

今月はいろいろなことが重なったせいで、正直なところ、続けられるかどうか不安になることもありました。


第一巻の内容がすべて完成したら、少しの間休息を取ろうと考えています。

一つは自分自身を落ち着かせるため、もう一つは、今後の展開をより丁寧に描きたいという思いがあるからです。


自分の作品が、読者の皆さんに自分の伝えたいことをどこまで届けられているのかは、正直まだ分かりません。

どんなフィードバックでも、私にとってはとても大切で、皆さんと交流できることを嬉しく思っています。


「傍観者はよく見える」という言葉があるように、

自分では気づけなかった点も、他の方からのご意見を通して発見できることがあると思っています。

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