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そのゲームは、切り離すことのできない序曲に過ぎない  作者: 珂珂


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第一巻 第一章 思いがけない転生-1

(わたし)()悠木(ゆうき)(さとし)二十七歳(にじゅうななさい)である。

(わたし)(じん)(せい)(じつ)波乱(はらん)万丈(ばんじょう)であった。

幼少期(ようしょうき)記憶(きおく)はほとんど朧気(おぼろげ)で、(おぼ)えているのは孤児院(こじいん)(そだ)ったという(こと)だけだ。

そう、(わたし)()てられた子供(こども)だったのだ。

(じつ)両親(りょうしん)(だれ)なのかも、なぜ()()りにされたのかも()からない。だが、(とき)()つにつれて、()()めるのをやめる(すべ)(おぼ)えた。

過去(かこ)哀愁(あいしゅう)(しず)むよりも、(いま)(つか)()(ほう)がよいのだ!

(てん)(わず)かな(つぐな)いか、成長(せいちょう)してからの(うん)(わる)くなかった。

(ぼん)ではない頭脳(ずのう)(ささ)えられ、理想(りそう)学園(がくえん)へと(すす)み、卒業(そつぎょう)()無事(ぶじ)研究(けんきゅう)(しょく)()ることができた。

それは(おさな)(ころ)から(ゆめ)()ていた(みち)であり、(みずか)らの()理論(りろん)検証(けんしょう)し、未知(みち)(いど)むことができる。この仕事(しごと)によって、人生(じんせい)にはようやく実質的(じっしつてき)意義(いぎ)宿(やど)ったのだと(かん)じられた。


研究(けんきゅう)(しょく)従事(じゅうじ)する(うえ)特別(とくべつ)(てん)(ひと)つある――それは時間(じかん)柔軟性(じゅうなんせい)非常(ひじょう)(たか)いということだ。期限(きげん)(ない)進捗(しんちょく)仕上(しあ)げられるなら、いつ研究室(けんきゅうしつ)(はい)り、いつ()ても(だれ)にも干渉(かんしょう)されない。

打刻機(だこくき)もなければ、()まった始業(しぎょう)終業(しゅうぎょう)時間(じかん)存在(そんざい)しない。理論上(りろんじょう)自分(じぶん)のリズムに()わせて仕事(しごと)調整(ちょうせい)できる。この制度(せいど)(わたし)にとって一種(いっしゅ)自由(じゆう)なのだ。

しかし、この自由(じゆう)には(うら)側面(そくめん)もある。表面(ひょうめん)(じょう)(だれ)干渉(かんしょう)しないが、研究(けんきゅう)進捗(しんちょく)そのものが(もっと)(きび)しい上司(じょうし)なのだ。期日(きじつ)(どお)りに仕上(しあ)げるためには、全力(ぜんりょく)時間(じかん)(そそ)がねばならない。

(とき)には研究室(けんきゅうしつ)十数時間(じゅうすうじかん)()もり(つづ)け、休日(きゅうじつ)さえ例外(れいがい)ではないこともある。

残業(ざんぎょう)(もと)められているわけではない。ただ、(わたし)自発的(じはつてき)(すす)めなければ、実験(じっけん)そのものが(まえ)(すす)まないのだ。

だからこそ、「自由(じゆう)時間(じかん)配分(はいぶん)している」というよりも、「自発的(じはつてき)一分一秒(いっぷんいちびょう)(とう)じている」と()うべきだろう。


私は実験(じっけん)()きであり、未知(みち)(なか)から(こた)えを(さが)()感覚(かんかく)(あい)している。

(ひと)つのデータが予想(よそう)合致(がっち)したとき、(ひと)つの仮説(かせつ)検証(けんしょう)成功(せいこう)したとき――(こころ)奥底(おくそこ)から()()がる(よろこ)びは、一日(いちにち)疲労(ひろう)(わす)れさせてくれるほどだ。

だが、その(すべ)ての代償(だいしょう)時間(じかん)投資(とうし)(ほか)ならない。

自由(じゆう)は、(けっ)して安易(あんい)さを意味(いみ)するものではない。

すべての成果(せいか)背後(はいご)には、(かず)()れぬ徹夜(てつや)失敗(しっぱい)(ひそ)んでいる――だが、私は一度(いちど)後悔(こうかい)したことがない。なぜなら、これこそが(わたし)(えら)んだ(みち)であり、(わたし)(そん)(ざい)価値(かち)だからだ。


そのため、実際(じっさい)には彼女(かのじょ)(つく)時間(じかん)などほとんどなかった。

正直(しょうじき)()えば、それは仕事(しごと)(いそが)しいからというだけではなく、(ほか)にも数多(かずおお)くの理由(りゆう)……あるいは()(わけ)があった。

顔立(かおだ)ちが平凡(へいぼん)」、「身長(しんちょう)普通(ふつう)」、「性格(せいかく)(とく)際立(きわだ)っていない」――そんな言葉(ことば)は、結局(けっきょく)すべて自分(じぶん)自分(じぶん)限界(げんかい)(もう)けているだけのように(おも)えた。


もちろん、(わたし)もそれを()えたいと(おも)った。いわゆる「欠点(けってん)」を(おぎな)うために、実験(じっけん)合間(あいま)(きん)トレをし、(はし)り、(ほん)()み、自分(じぶん)(すこ)しでも中身(なかみ)のある、魅力的(みりょくてき)人間(にんげん)にしようと(つと)めた。

周囲(しゅうい)友人(ゆうじん)たちは「お(まえ)頑張(がんば)()ぎだ、(すこ)しやり()ぎだ」と()った。だが、(わたし)自身(じしん)はよく()かっていた。自分(じぶん)充実(じゅうじつ)させる行為(こうい)一部(いちぶ)は、(まな)びと挑戦(ちょうせん)(こころ)から(あい)しているからだ。しかし、もう一部(いちぶ)は……おそらく「(わたし)だって(あい)されるに(あたい)する人間(にんげん)だ」と証明(しょうめい)したかったのだろう。

それでも、(わたし)には女性(じょせい)との(えん)はほとんどなかった。会話(かいわ)をしても話題(わだい)(つづ)かず、時折(ときおり)(だれ)かに好意(こうい)(いだ)いても、相手(あいて)があまりに(まぶ)しく()えて、自分(じぶん)があまりに凡庸(ぼんよう)(おも)えてしまうのだ。

もしかすると、これこそが劣等感(れっとうかん)具現(ぐげん)なのだろう。孤児院(こじいん)での過去(かこ)経験(けいけん)が、(はや)(ころ)から(ひと)りで()ごすことに()れ、期待(きたい)(いだ)かないことに()れ、(ひと)本当(ほんとう)(した)しくなる方法(ほうほう)をあまり()らずに(そだ)ててしまったのだ。


(おお)くの友人(ゆうじん)(わら)いながら「(えん)なんてものは、時期(じき)()れば自然(しぜん)(おとず)れるさ」と()った。最初(さいしょ)(ころ)苦笑(くしょう)しながら同意(どうい)していたが、(とき)()ち……本当(ほんとう)(なが)(とき)()った(ころ)自分(じぶん)次第(しだい)に、もはやそれほど()にしなくなっていることに()づいた。

(あい)期待(きたい)しなくなったわけではない。ただ、その期待(きたい)(とき)(とも)(すこ)しずつ(かど)(けず)られ、(まる)くなっていったのだ。その結果(けっか)現状(げんじょう)()れ、(ひと)りで()きる(すべ)をより()につけてしまった。

結局(けっきょく)のところ、(だれ)かに()()ってほしくないわけではない。ただ、いつからか私は確信(かくしん)()てなくなっていた――その「いつか」が、本当(ほんとう)(おとず)れる()()るのかどうかを。


日々(ひび)山積(さんせき)する疲労(ひろう)(いや)すために、私は仕事(しごと)()わった(あと)、いつも研究室(けんきゅうしつ)(ちか)くにある、午前四時(ごぜんよじ)まで(いとな)深夜(しんや)居酒屋(いざかや)――「清居(きよい)」へ(あし)(はこ)ぶのが()きだった。

長年(ながねん)(ひと)()らしで、社交(しゃこう)()(とぼ)しい独身(どくしん)(おとこ)にとって、ここは(ちい)さな避難所(ひなんじょ)のような()(しょ)だった。華麗(かれい)(にぎ)やかな(みせ)ではなく、本当(ほんとう)(ひと)()()かせ、(かた)(ちから)()かせてくれる場所(ばしょ)なのだ。


清居(きよい)」は、(わたし)がこの()(うつ)()んで(はたら)(はじ)めた(ころ)から(いとな)まれており、ほとんど最初(さいしょ)(きゃく)一人(ひとり)()っていい。長年(ながねん)(かよ)(つづ)けたおかげで、ここの店主(てんしゅ)とはすでに半分(はんぶん)()()いのような関係(かんけい)になっていた。

店主(てんしゅ)はとても(はな)し好き(ず)で、笑顔(えがお)(じつ)穏和(おんわ)だ。(はじ)めて()ったとき、私は(かれ)自分(じぶん)より(すこ)(わか)いのではと(おも)ったが、実際(じっさい)には七歳(ななさい)年上(としうえ)だと(のち)()いて、(おも)わず愕然(がくぜん)とした。


(うそ)だろ?どう()ても二十歳(はたち)そこそこにしか()えないぞ!」と(わたし)()ったとき、(かれ)(わら)って(くび)()り、「ここらの空気(くうき)のおかげで(わか)(たも)てるんだよ」と(こた)えた。

その言葉(ことば)()いたときは(わら)って()(なが)したが、(いま)(おも)(かえ)せば、(かれ)()うことは案外(あんがい)(ただ)しかったのかもしれない。

清居(きよい)には(たし)かに(ひと)(やす)らがせる空気(くうき)(ただよ)っていた。内装(ないそう)現代的(げんだいてき)なものではなく、むしろ()懐古(かいこ)趣味(しゅみ)――木製(もくせい)()()()みがかった(あか)り、(かべ)()られた手書(てが)きの献立(こんだて)、隅々(すみずみ)に(ぬく)もりと人情味(にんじょうみ)宿(やど)っていた。


東京(とうきょう)のような(あわ)ただしい大都市(だいとし)において、このような存在(そんざい)はまるで異世界(いせかい)のようだった。

居酒屋(いざかや)といえば、当然(とうぜん)店主(てんしゅ)(つく)(さけ)(かた)らずにはいられない。(わたし)一流(いちりゅう)のソムリエでもなく、繊細(せんさい)(あじ)(ちが)いを見分(みわ)けられるわけではないが、店主(てんしゅ)()調(ととの)えられた一杯一杯(いっぱいいっぱい)には、言葉(ことば)にできない(やさ)しさを(かん)じた。

一口(ひとくち)()めば、全身(ぜんしん)(ほね)(ずい)から()(はな)たれるように(ゆる)んでいく。それはアルコール度数(どすう)(たよ)るものではなく、雰囲気(ふんいき)心情(しんじょう)によって()()される酩酊(めいてい)だった。

もっとも、店主(てんしゅ)自分(じぶん)秘伝(ひでん)調合(ちょうごう)(けっ)して(あき)らかにはしない。だが私は(とく)()にしなかった。美味(おい)しければそれでよいのだ。何度(なんど)()()わしても、その(たび)疲労(ひろう)(ぬぐ)()ってくれる――それこそが(もっと)大事(だいじ)なのだから。


疲労(ひろう)(いや)方法(ほうほう)といえば、(じつ)はもう(ひと)つ、(わたし)(こころ)解放(かいほう)し、気分(きぶん)()らしてくれるものがある――それは、ゲームだ!

『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』は、近年(きんねん)爆発的(ばくはつてき)流行(りゅうこう)したMMORPGである。この大規模(だいきぼ)多人数(たにんずう)オンラインRPGが隆盛(りゅうせい)(きわ)める時代(じだい)において、その魅力(みりょく)戦闘(せんとう)システムの逼真(ひつじん)さや打撃感(だげきかん)爽快(そうかい)さだけではなく、壮大(そうだい)かつ精緻(せいち)世界観(せかいかん)にこそある。

()(いき)ごとに(こと)なる種族(しゅぞく)文化(ぶんか)宗教(しゅうきょう)言語(げんご)存在(そんざい)し、さらには(かく)された任務(にんむ)探索(たんさく)手掛(てが)かりが片隅(かたすみ)(ひそ)んでいる。それは、まるで(わたし)研究室(けんきゅうしつ)(こた)えを(さが)過程(かてい)酷似(こくじ)していた――不確実(ふかくじつ)で、時間(じかん)(よう)しながらも、中毒性(ちゅうどくせい)がある。


最初(さいしょ)にこのゲームに()れたのは、ある意味(いみ)偶然(ぐうぜん)だった。

あるとき「清居(きよい)」の店主(てんしゅ)(はな)していた(さい)(かれ)はふと「『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』の運営(うんえい)先行(せんこう)体験(たいけん)イベントを(ひら)いている」と(くち)にした。

(かれ)(ふる)知人(ちじん)がその会社(かいしゃ)(つと)めていて、偶然(ぐうぜん)にも内部(ないぶ)テスト(よう)体験券(たいけんけん)数枚(すうまい)()()れたのだという。

店主(てんしゅ)普段(ふだん)あまりゲームを(あそ)習慣(しゅうかん)がなく、仕事(しごと)(いそが)しいため、(けん)(わたし)(ゆず)ってくれた。「お(まえ)みたいな研究(けんきゅう)オタクは、こういうのが()きだろう」と(わら)いながら()って。

当時(とうじ)の私は「どうせ無料(むりょう)だし、やらないのは(そん)だろう」と(かる)気持(きも)ちで(ため)してみただけだった。だが――ひとたび()れたその瞬間(しゅんかん)、私は完全(かんぜん)にその世界(せかい)へと没入(ぼつにゅう)してしまった。

それは現実(げんじつ)以上(いじょう)自由(じゆう)で、より純粋(じゅんすい)()(かた)だった。ゲームの(なか)(わたし)を、(だれ)過去(かこ)経歴(けいれき)(はか)ることはなく、孤独(こどく)かどうかを()にする(もの)もいない。ただ、(つよ)く、(かしこ)ければ、それだけで尊敬(そんけい)注目(ちゅうもく)()られるのだ。


だが、まさか自分(じぶん)(じん)(せい)までもが、それによって()わってしまうとは(おも)いもしなかった。


『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』において(わたし)(もっと)魅了(みりょう)したのは、華麗(かれい)(なめ)らかな戦闘(せんとう)システムや、仲間(なかま)(かた)(なら)べて妖怪(ようかい)()り、()(はら)達成感(たっせいかん)だけではなく、世界観(せかいかん)文化(ぶんか)細部(さいぶ)にまで徹底(てってい)して追求(ついきゅう)されたこだわりだった。

このゲームの最大(さいだい)(とく)(ちょう)(ひと)つは、(こと)なる文明(ぶんめい)神話(しんわ)風土(ふうど)民情(みんじょう)体験(たいけん)できることにある。製作(せいさく)チームはこの(てん)徹底的(てっていてき)(ちから)(そそ)いだ。ただ(かざ)りの()(まえ)()るだけではなく、建築様式(けんちくようしき)料理(りょうり)音楽(おんがく)旋律(せんりつ)衣装(いしょう)のデザイン、さらには神話(しんわ)物語(ものがたり)宗教(しゅうきょう)儀式(ぎしき)(いた)るまで、精緻(せいち)(つく)()まれていた。

まるで本当(ほんとう)(ひと)つの仮想世界(かそうせかい)文明(ぶんめい)(あし)()()れ、そこの生活(せいかつ)(おく)っているかのようだった。一歩(いっぽ)(すす)むごとに、その文化(ぶんか)(ぬく)もりと物語(ものがたり)(あつ)みを(かん)()ることができた。


プレイヤーがキャラクターを作成(さくせい)する(さい)、まず「起始(きし)(くに)」を選択(せんたく)しなければならない。この(くに)最初(さいしょ)探索(たんさく)拠点(きょてん)となるのだ。各国(かっこく)はそれぞれ固有(こゆう)歴史(れきし)(てき)脈絡(みゃくらく)発展(はってん)背景(はいけい)()ち、世界観(せかいかん)信仰(しんこう)種族(しゅぞく)体系(たいけい)(こと)なる。(はじ)めからプレイヤーを(ふか)異文化(いぶんか)横断(おうだん)(たび)へと()()んでいくのだ。

(げん)(ざい)のゲームには(おも)(ろく)つの国家(こっか)設計(せっけい)されている:

伊達(イダ)――中国(ちゅうごく)古典(こてん)文化(ぶんか)融合(ゆうごう)し、道術(どうじゅつ)風水(ふうすい)()けている。

禾朔(ホショク)――濃厚(のうこう)日本(にほん)神道(しんとう)武士(ぶし)精神(せいしん)(そな)えている。

艾忨(アイシャン)――古代(こだい)エジプトの神祇(しんぎ)とピラミッド文明(ぶんめい)(かく)としている。

瓊塔(キョウタ)――まるでインドの神話(しんわ)(あし)()()れたかのような千手(せんじゅ)輪廻(りんね)世界(せかい)

瑞丹(ズイタン)――北欧(ほくおう)厳寒(げんかん)神域(しんいき)(いくさ)()()ぐ。

そして達希(ダシ)――ギリシャの神々(かみがみ)と哲学(てつがく)伝説(でんせつ)基盤(きばん)構築(こうちく)された(くに)


開発(かいはつ)チームは、現実(げんじつ)国家名(こっかめい)とは(こと)なる名称(めいしょう)意図的(いとてき)(もち)いると(つた)えられている。これは文化(ぶんか)盗用(とうよう)歴史(れきし)(てき)論争(ろんそう)()()こす不要(ふよう)抗議(こうぎ)批判(ひはん)()けるためであり、より自由(じゆう)(かたち)各文化(かくぶんか)精髄(せいずい)表現(ひょうげん)しようとしたのだという。

この手法(しゅほう)賢明(けんめい)であるだけでなく、プレイヤーがより開放的(かいほうてき)視点(してん)から異国(いこく)文明(ぶんめい)鑑賞(かんしょう)し、(まな)ぶことを可能(かのう)にしている。

さらに、『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』はすでに世界(せかい)各地(かくち)へと展開(てんかい)しており、強力(きょうりょく)AI(エーアイ)音声(おんせい)および言語(げんご)認識(にんしき)システムのおかげで、出身(しゅっしん)()わないプレイヤー同士(どうし)容易(ようい)交流(こうりゅう)し、協力(きょうりょく)して障壁(しょうへき)なく探索(たんさく)冒険(ぼうけん)(おこな)える。言語(げんご)文化(ぶんか)()えたこの(しゅ)交流(こうりゅう)により、私はゲーム(ない)知識(ちしき)()ただけでなく、世界(せかい)各地(かくち)から()仲間(なかま)たちとも出会(であ)った。

率直(そっちょく)()えば、このゲームはある意味(いみ)現実(げんじつ)世界(せかい)よりもなお「開放(かいほう)(てき)」で「包容(ほうよう)(りょく)」があるといえる。そして私はここで、これまでに経験(けいけん)したことのない帰属感(きぞくかん)()つけたのだ。


『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』のキャラクター設定(せってい)における最大(さいだい)(とく)(ちょう)は、「種族(しゅぞく)職業(しょくぎょう)」の多様(たよう)()()わせにある。キャラクター作成(さくせい)(さい)、プレイヤーは起始(きし)(くに)(えら)ぶだけでなく、(いつ)つの(おお)きな種族(しゅぞく)から(ひと)つを(えら)び、自分(じぶん)血統(けっとう)起源(きげん)としなければならない。

この五大(ごだい)種族(しゅぞく)は、人族(じんぞく)天使族(てんしぞく)竜族(りゅうぞく)悪魔族(あくまぞく)精霊族(せいれいぞく)()かれる。それぞれの種族(しゅぞく)外見(がいけん)風格(ふうかく)(おお)きく(こと)なり、文化的(ぶんかてき)背景(はいけい)音声(おんせい)デザインも独自(どくじ)特色(とくしょく)()つ。さらには、ゲーム(ない)言語(げんご)システムにも対応(たいおう)する種族語(しゅぞくご)用意(ようい)されている。


さらなる重要点(じゅうようてん)として、種族(しゅぞく)ごとに習得(しゅうとく)できる職業(しょくぎょう)種類(しゅるい)には明確(めいかく)制限(せいげん)がある。

(たと)えば、天使族(てんしぞく)(ひかり)(けい)治癒(ちゆ)(けい)職業(しょくぎょう)()けているが、(やみ)属性(ぞくせい)魔法(まほう)はほとんど修練(しゅうれん)できない。

(ぎゃく)悪魔族(あくまぞく)強力(きょうりょく)(やみ)属性(ぞくせい)爆発力(ばくはつりょく)()つが、(せい)(けい)職業(しょくぎょう)とは(えん)がない。

竜族(りゅうぞく)(たか)耐久力(たいきゅうりょく)高火力(こうかりょく)(ほこ)り、近接戦闘(きんせつせんとう)(この)むプレイヤーに人気(にんき)である。

人族(じんぞく)(もっと)もバランスの()れた職業(しょくぎょう)選択(せんたく)可能(かのう)で、新規(しんき)プレイヤーに(やさ)しい一方(いっぽう)成長(せいちょう)潜在力(せんざいりょく)(ひく)めである。

精霊族(せいれいぞく)弓術(きゅうじゅつ)自然(しぜん)(けい)魔法(まほう)得意(とくい)とし、素早(すばや)いが耐久力(たいきゅうりょく)(とぼ)しい。


これらの設計(せっけい)により、職業(しょくぎょう)()()わせは種族(しゅぞく)制約(せいやく)()けるだけでなく、初期(しょき)国家(こっか)文化(ぶんか)影響(えいきょう)()ける。

(たと)えば、瑞丹(ズイタン)北欧文化(ほくおうぶんか))を起始地(きしち)(えら)んだプレイヤーは、職業(しょくぎょう)システムで符文魔法(ふもんまほう)氷戦士(ひょうせんし)(かん)するスキルツリーが優先的(ゆうせんてき)解放(かいほう)される。

一方(いっぽう)瓊塔(キョウタ)(インド文化(ぶんか))を(えら)んだプレイヤーは、精神系(せいしんけい)幻術系(げんじゅつけい)職業(しょくぎょう)()れることになる。この設計(せっけい)により、(かく)プレイヤーのキャラクターは成長曲線(せいちょうきょくせん)やスキル構成(こうせい)において明確(めいかく)(ちが)いを(しめ)すのだ。


このような差異(さい)は、ゲーム体験(たいけん)一層(いっそう)(ゆた)かにするだけでなく、PVP(ピーブイピー)競技(きょうぎ)場面(ばめん)でも(おお)きな価値(かち)発揮(はっき)する。(まった)同一(どういつ)のキャラクター構成(こうせい)()まれることは(まれ)であるため、対戦(たいせん)(ちゅう)単純(たんじゅん)職業(しょくぎょう)相性(あいしょう)数値(すうち)比較(ひかく)ではなく、戦略(せんりゃく)臨場(りんじょう)反応(はんのう)(おお)きく依存(いぞん)することになるのだ。

運営(うんえい)(がわ)(つね)種族(しゅぞく)職業(しょくぎょう)(あいだ)均衡(きんこう)(たも)つよう(つと)めているが、(いな)めないことに、やはり「相対的(そうたいてき)(つよ)い」あるいは「相対的(そうたいてき)不人気(ふにんき)」とされる組合(くみあ)わせが登場(とうじょう)し、コミュニティ(ない)(はげ)しい議論(ぎろん)改版(かいはん)要望(ようぼう)()()こすこともある。


しかし、ゲーム(ない)(もっと)神秘的(しんぴてき)で、(あい)されながらも(にく)まれる存在(そんざい)といえば、間違(まちが)いなく「血統(けっとう)システム」である。

血統(けっとう)とは、プレイヤーがゲーム(ない)特定(とくてい)希少(きしょう)アイテムを(あつ)めることで、一定(いってい)確率(かくりつ)(ほか)種族(しゅぞく)血統(けっとう)能力(のうりょく)解放(かいほう)できるという仕組(しく)みだ。

このシステムによって、本来(ほんらい)単一(たんいつ)種族(しゅぞく)であったキャラクターが、(ほか)種族(しゅぞく)特性(とくせい)職業(しょくぎょう)解放権限(かいほうけんげん)()ることが可能(かのう)となる。

(たと)えば、人族(じんぞく)のプレイヤーが血統(けっとう)システムを(とお)じて竜族(りゅうぞく)血統(けっとう)獲得(かくとく)すれば、竜族(りゅうぞく)専用(せんよう)の「竜言術(りゅうげんじゅつ)」を習得(しゅうとく)でき、竜鱗系(りゅうりんけい)武器(ぶき)装備(そうび)することも、さらには外見(がいけん)変化(へんか)させ、竜族(りゅうぞく)特徵(とくちょう)一部(いちぶ)獲得(かくとく)することさえも可能(かのう)なのだ。


しかし、血統(けっとう)システムは夢幻(むげん)(てき)()こえるものの、実際(じっさい)には(きわ)めて困難(こんなん)である。ひとつの血統(けっとう)解放(かいほう)するには、世界級(せかいきゅう)あるいは神話級(しんわきゅう)のボス討伐戦(とうばつせん)参戦(さんせん)するだけでなく、(かく)しイベントでの限定(げんてい)アイテムを収集(しゅうしゅう)しなければならない。

さらに厄介(やっかい)なのは、血統(けっとう)選択(せんたく)にはランダム(せい)不可逆性(ふかぎゃくせい)(ともな)(てん)だ。ひとたび起動(きどう)すれば変更(へんこう)不可能(ふかのう)であり、不運(ふうん)にも「(あやま)って血統(けっとう)(えら)んだ」プレイヤーは(ふか)()やむことになる。こうして血統(けっとう)は、コミュニティ(ない)でもっとも(おお)(なげ)かれ、皮肉(ひにく)られる話題(わだい)(ひと)つとなっているのだ。


『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』という広大(こうだい)仮想(かそう)世界(せかい)では、プレイヤー同士(どうし)地理的(ちりてき)領域(りょういき)制限(せいげん)されることなく、自由(じゆう)任意(にんい)(くに)(おもむ)くことができる。この設計(せっけい)により、探索(たんさく)冒険(ぼうけん)一層(いっそう)自由(じゆう)かつ(なめ)らかになり、ゲームは文化(ぶんか)探求(たんきゅう)雰囲気(ふんいき)()(あふ)れるのだ。世界(せかい)文化(ぶんか)神秘(しんぴ)伝説(でんせつ)(つよ)情熱(じょうねつ)(いだ)(わたし)のような人間(にんげん)にとって、これこそが本作(ほんさく)(もっと)(あい)する最大(さいだい)理由(りゆう)である。

(おさな)(ころ)から私は多様(たよう)神話(しんわ)異文化(いぶんか)背景(はいけい)魅了(みりょう)されてきた。『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』の(なか)で、各国(かっこく)専用(せんよう)建築(けんちく)様式(ようしき)言語(げんご)音楽(おんがく)衣装(いしょう)存在(そんざい)するだけでなく、現地(げんち)神話(しんわ)改編(かいへん)して()()された怪物(かいぶつ)事件(じけん)まで登場(とうじょう)することを()ったとき、私はほとんど即座(そくざ)にその没入型(ぼつにゅうがた)設計(せっけい)(こころ)(うば)われた。

ゲーム(ない)各国(かっこく)には、唯一無二(ゆいいつむに)の「専属(せんぞく)モンスター」(ユニークモンスター)が存在(そんざい)する。これらの怪物(かいぶつ)(おお)くが当該(とうがい)文化(ぶんか)神話(しんわ)要素(ようそ)自然環境(しぜんかんきょう)融合(ゆうごう)したものであり、瓊塔(キョウタ)密林(みつりん)(ひそ)六臂(ろっぴ)梵霊(ぼんれい)であろうと、艾忨(アイシャン)砂漠(さばく)奥深(おくふか)くに()()()黒炎蛇神(こくえんじゃしん)であろうと、遭遇(そうぐう)(たび)(ふる)伝説(でんせつ)(ページ)(ひら)くような感覚(かんかく)(あた)えるのだ。

ゲームの探索(たんさく)方法(ほうほう)(きわ)めて柔軟(じゅうなん)だ。プレイヤーは単独(たんどく)未知(みち)領域(りょういき)(ひそ)み、自身(じしん)判断(はんだん)技巧(ぎこう)によって財宝(ざいほう)やイベントを()つけ()すこともできるし、(とも)()んで協力(きょうりょく)戦闘(せんとう)(いど)み、高難度(こうなんど)のダンジョンや世界(せかい)ボスに挑戦(ちょうせん)することも可能(かのう)だ。さらに、公会(こうかい)創設(そうせつ)または加入(かにゅう)することで、より大規模(だいきぼ)組織(そしき)結成(けっせい)し、目標(もくひょう)個人(こじん)栄光(えいこう)から集団(しゅうだん)影響力(えいきょうりょく)へと拡大(かくだい)させることもできる。


『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』は五年前(ごねんまえ)正式(せいしき)にサービスを開始(かいし)して以来(いらい)全世界(ぜんせかい)のプレイヤー(すう)はすでに数百万(すうひゃくまん)(にん)突破(とっぱ)し、サーバー全体(ぜんたい)では合計(ごうけい)二万三千七百四十二(にまんさんぜんななひゃくよんじゅうに)以上(いじょう)のギルドが登録(とうろく)されている。

これらのギルドは規模(きぼ)性格(せいかく)多様(たよう)で、探検(たんけん)主軸(しゅじく)とするものもあれば、PVP対戦(たいせん)特化(とっか)したもの、希少(きしょう)アイテムの収集(しゅうしゅう)世界観(せかいかん)研究(けんきゅう)専念(せんねん)するものもある。

拠点(きょてん)大陸全土(たいりくぜんど)(ひろ)がり、極北(きょくほく)氷原(ひょうげん)から熱帯雨林(ねったいうりん)まで、ほとんどあらゆる場所(ばしょ)にギルドの足跡(そくせき)(のこ)されている。


こうしたギルドシステムに競争性(きょうそうせい)名誉感(めいよかん)(あた)えるために、運営(うんえい)(がわ)特別(とくべつ)完備(かんび)されたギルドランキング制度(せいど)設計(せっけい)した。

このランキング機構(きこう)は、ギルドメンバーが世界級(せかいきゅう)神話級(しんわきゅう)ボスを討伐(とうばつ)した回数(かいすう)領地(りょうち)管理(かんり)防衛記録(ぼうえいきろく)、さらにギルドPVPポイントなどを総合的(そうごうてき)評価(ひょうか)する仕組(しく)みとなっている。

(かく)シーズンの総合得点(そうごうとくてん)(もと)づいて、上位十(じょういじゅう)のギルドは「十大(じゅうだい)ギルド」の栄誉称号(えいよしょうごう)(かん)される。


弗瑟勒斯(フセレス)巴赫バッハ」――それが(わたし)所属(しょぞく)するギルドであり、『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』の(なか)無数(むすう)のプレイヤーを(ふる)()がらせる超強力(ちょうきょうりょく)戦力(せんりょく)ギルドである。

壮大(そうだい)()こえるだろう?だが実際(じっさい)には、(わたした)ちのギルドの(そう)メンバー(すう)はわずか十人(じゅうにん)()ぎない。

そう、見間違(みまちが)いではない――最大(さいだい)百人(ひゃくにん)まで収容(しゅうよう)できる制度(せいど)(もと)(わたした)ちはあえて十人(じゅうにん)規模(きぼ)維持(いじ)しているのだ。

これは、人数(にんずう)百人(ひゃくにん)()え、分業(ぶんぎょう)細密(さいみつ)主流(しゅりゅう)ギルドの(なか)では、まさに稀少(きしょう)存在(そんざい)といえる。

だが、(わたした)十人(じゅうにん)実力(じつりょく)連携(れんけい)()(そな)えた精鋭(せいえい)である。操作(そうさ)戦略(せんりゃく)において無敵(むてき)であるだけでなく、(かく)メンバーは二種(にしゅ)以上(いじょう)血統(けっとう)(ゆう)している。


なぜ人数(にんずう)がそれほど(すく)ないのか?それこそが(じつ)(わたした)ちの戦略(せんりゃく)一部(いちぶ)なのだ。

小規模(しょうきぼ)体制(たいせい)維持(いじ)する最大(さいだい)利点(りてん)は――(たか)機動性(きどうせい)行動(こうどう)一致(いっち)である。

(ひと)(おお)ければ(おお)いほど、意思疎通(いしそつう)内部(ないぶ)摩擦(まさつ)()える。ひとたび戦闘(せんとう)失敗(しっぱい)(しょう)じれば、その結果(けっか)()(かえ)しのつかないものとなり、メンバー(かん)対立(たいりつ)はギルドの運営(うんえい)困難(こんなん)にするのだ。

高難度(こうなんど)のギルドダンジョンや神話級(しんわきゅう)任務(にんむ)、さらにはギルド(せん)(つね)参戦(さんせん)する(わたした)ちにとって、この精鋭(せいえい)編成(へんせい)こそが効率(こうりつ)信頼(しんらい)象徴(しょうちょう)なのだ。


さて、()がギルドの順位(じゅんい)はどうかって?へへ、それを()けば(おお)くのプレイヤーが(おどろ)いて(くち)()けたままになるだろう――なんと、(わたした)ちは(ぜん)サーバーで堂々(どうどう)の第二位(だいにい)なのだ!

しかも、この順位(じゅんい)(わたした)ちのギルドが世界級(せかいきゅう)ボスの討伐(とうばつ)回数(かいすう)をほとんど意図的(いとてき)(かせ)いでいない状況(じょうきょう)達成(たっせい)したものだ。

(わたし)個人(こじん)見解(けんかい)では、もしランキングに討伐(とうばつ)(すう)累積(るいせき)(ふく)まれていなければ、(わたした)ちはすでに第一位(だいいちい)()確実(かくじつ)()にしていたはずだ。

(なに)しろ、歴代(れきだい)の「ギルド大戦(たいせん)」イベントにおいて、弗瑟勒斯(フセレス)はほとんど攻略(こうりゃく)されたことがないのだ。(わたした)ちが万全(ばんぜん)態勢(たいせい)()けば、どのギルドも容易(ようい)(わたした)ちの防衛線(ぼうえいせん)突破(とっぱ)することはできない。


正直(しょうじき)なところ、このゲームを(じん)(せい)目標(もくひょう)として本気(ほんき)()()んでいるのは、ギルド(ない)では(わたし)(ほか)の二、三人(にさんにん)ほどだろう。

(ほか)のメンバーは、基本的(きほんてき)にはいわゆる「ゆるふわ(けい)プレイヤー」であり、時折(ときおり)ログインしてイベントに(さん)()したり、(しろ)(まも)ったり、任務(にんむ)手伝(てつだ)ったりする程度(ていど)だ。

だが、まさにその(てん)こそが、(わたした)ちの小規模(しょうきぼ)ギルドを特別(とくべつ)存在(そんざい)にしているのだ。(わたした)ちは人数(にんずう)による圧倒(あっとう)でもなければ、必死(ひっし)にダンジョンを周回(しゅうかい)してポイントを(かせ)ぐわけでもない。絶対的(ぜったいてき)実力(じつりょく)とチームの連携(れんけい)によってこそ、ランキングの頂点(ちょうてん)()(つづ)けているのである。


ギルドの(なか)で、(わたし)身分(みぶん)はギルド(ちょう)統括(とうかつ)指導(しどう)任務(にんむ)(にな)中心(ちゅうしん)(てき)役割(やくわり)である。

ゲーム(ない)で、(わたし)のキャラクター(めい)は「凝里ギョウリ」、職業(しょくぎょう)()は「原初(げんしょ)」である。

私はこのギルドの創設者(そうせつしゃ)ではなく、むしろ最後(さいご)加入(かにゅう)した成員(せいん)であった。

(わたし)がギルド(ちょう)となった理由(りゆう)は、仲間(なかま)たちが(わたし)のギルド事務(じむ)(たい)する安定感(あんていかん)(こま)やかさを(みと)めてくれたからだ。

高難度(こうなんど)のギルド専用(せんよう)任務(にんむ)受注(じゅちゅう)や、大規模(だいきぼ)なギルド(せん)指揮(しき)、あるいは成員(せいん)同士(どうし)資源(しげん)配分(はいぶん)調整(ちょうせい)においても、私は(つね)迅速(じんそく)決断(けつだん)(くだ)し、危険(きけん)混乱(こんらん)最小限(さいしょうげん)(おさ)えてきた。

やがて仲間(なかま)たちは自然(しぜん)に、この指導(しどう)()(わたし)(たく)すようになったのだ。


(わたし)のキャラクターは現在(げんざい)、ゲーム(ない)での最高(さいこう)レベル――レベル10に到達(とうたつ)している。

『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』において、レベルアップ制度(せいど)二段階(にだんかい)()かれている。

最初(さいしょ)の5レベルまでは経験値(けいけんち)蓄積(ちくせき)するだけで上昇(じょうしょう)できる。だが5レベル以降(いこう)は、レベルが()がるごとに昇級(しょうきゅう)チャレンジ任務(にんむ)付随(ふずい)し、その挑戦(ちょうせん)探索(たんさく)戦闘(せんとう)戦略(せんりゃく)など多岐(たき)にわたり、(とき)には複数人(ふくすうにん)協力(きょうりょく)必要(ひつよう)とする。

そして、9レベルから10レベルへと昇格(しょうかく)する過程(かてい)は、さらに過酷(かこく)(きわ)める。莫大(ばくだい)経験値(けいけんち)挑戦(ちょうせん)条件(じょうけん)(くわ)え、自分(じぶん)同等(どうとう)レベルのプレイヤーを二十人(にじゅうにん)連続(れんぞく)撃破(げきは)しなければならないのだ。その過程(かてい)一度(いちど)たりとも中断(ちゅうだん)失敗(しっぱい)(ゆる)されず、精神力(せいしんりょく)戦術的(せんじゅつてき)即応力(そくおうりょく)(たい)する極大(きょくだい)試練(しれん)となる。

ゆえに、10レベルに到達(とうたつ)したプレイヤーは(ぜん)サーバーを見渡(みわた)しても(かず)えるほどしか存在(そんざい)しない。にもかかわらず、()がギルドの成員(せいん)例外(れいがい)なく全員(ぜんいん)が10レベルなのだ。これこそ、(わたした)ちの戦力(せんりょく)実力(じつりょく)(けっ)して偶然(ぐうぜん)()()げられたものではないことの証明(しょうめい)である。


ゲーム(ない)におけるキャラクターの能力値(のうりょくち)(おお)きく(ふた)つに()かれる:戦士値(せんしち)魔法使(まほうつか)()である。これら(ふた)つの数値(すうち)は、それぞれ(こと)なる属性(ぞくせい)成長(せいちょう)やスキル系統(けいとう)対応(たいおう)している。戦士値(せんしち)(ちから)防御(ぼうぎょ)敏捷(びんしょう)生命(せいめい)(つかさど)り、魔法使(まほうつか)()知力(ちりょく)魔力(まりょく)耐性(たいせい)幸運(こううん)(ふく)む。

9レベル以降(いこう)、プレイヤーが()()ることのできる総合(そうごう)ポイントは千点(せんてん)(たっ)する。私はそれを均等(きんとう)配分(はいぶん)し、戦士値(せんしち)五百(ごひゃく)魔法使(まほうつか)()五百(ごひゃく)とした。こうして、攻防(こうぼう)(すぐ)れ、状況(じょうきょう)(おう)じて柔軟(じゅうなん)()(まわ)れる万能型(ばんのうがた)のキャラクターを(かたち)()したのだ。


このような能力(のうりょく)配分(はいぶん)は、極限流派(きょくげんりゅうは)のように単一(たんいつ)項目(こうもく)極致(きょくち)爆発力(ばくはつりょく)()つわけではないが、あらゆる戦闘(せんとう)任務(にんむ)柔軟(じゅうなん)対処(たいしょ)することを可能(かのう)にする。

ゲーム(ない)で私はすべての元素(げんそ)属性(ぞくせい)――(みず)()(つち)(かぜ)(かみなり)()(ひかり)(やみ)――を使(つか)いこなし、全属性(ぜんぞくせい)精通(せいつう)している。

(わたし)(ゆう)する種族(しゅぞく)は、天使族(てんしぞく)精霊族(せいれいぞく)人族(じんぞく)三種(さんしゅ)血統(けっとう)混合(こんごう)であり、これによってスキル選択(せんたく)種族(しゅぞく)固有(こゆう)才能(さいのう)において(きわ)めて(たか)自由度(じゆうど)多様性(たようせい)()つに(いた)っている。

(わたし)所持(しょじ)する武器(ぶき)は、ゲーム(ない)伝説(でんせつ)(てき)存在(そんざい)である「十二(じゅうに)至宝(しほう)」のうち(ふた)つ――七彩(しちさい)水晶球(すいしょうきゅう)魔法(まほう)(しょ)である。

十二(じゅうに)至宝(しほう)最大(さいだい)特長(とくちょう)は、種族(しゅぞく)職業(しょくぎょう)制限(せいげん)されず、使用(しよう)柔軟性(じゅうなんせい)非常(ひじょう)(たか)(てん)にある。適切(てきせつ)(あつか)えば神器級(しんききゅう)装備(そうび)にも匹敵(ひってき)しうる性能(せいのう)発揮(はっき)する。七彩(しちさい)水晶球(すいしょうきゅう)は、(わたし)補助(ほじょ)召喚魔法(しょうかんまほう)(おこな)(さい)核心(かくしん)(てき)媒介(ばいかい)であり、魔法(まほう)(しょ)(わたし)使(つか)えるスキルを記録(きろく)したものだ。


職業(しょくぎょう)特性(とくせい)影響(えいきょう)()け、(わたし)支援(しえん)(がた)魔法(まほう)召喚(しょうかん)(けい)魔法(まほう)専門(せんもん)(えら)んだ。仲間(なかま)支援(しえん)するにせよ、防御(ぼうぎょ)強化(きょうか)するにせよ、あるいは元素(げんそ)生物(せいぶつ)召喚(しょうかん)して戦術(せんじゅつ)(てき)牽制(けんせい)するにせよ、私は(つね)局面(きょくめん)()える(かぎ)となる。

攻撃(こうげき)(けい)防御(ぼうぎょ)(けい)魔法(まほう)特別(とくべつ)(すぐ)れているわけではないが、召喚獣(しょうかんじゅう)とチームの連携(れんけい)(たよ)ることで、私は(けっ)して単独(たんどく)(たたか)必要(ひつよう)がない。(くわ)えて、私はゲーム全体(ぜんたい)(もっと)(たか)魔力量(まりょくりょく)(ほこ)っている。

総合的(そうごうてき)()れば、(わたし)のキャラクターは典型的(てんけいてき)な「万能(ばんのう)支援(しえん)コア」に(ぞく)する。極端(きょくたん)強攻(きょうこう)鉄壁(てっぺき)タンクの路線(ろせん)(あゆ)むわけではないが、(もっと)安定(あんてい)した火力(かりょく)(もっと)包括的(ほうかつてき)支援(しえん)によって、チーム全体(ぜんたい)堅実(けんじつ)なリズムと要所(ようしょ)(きず)くことができる。

このような(わたし)は、もしかすると(もっと)(かがや)かしい存在(そんざい)ではないかもしれない。だが、間違(まちが)いなくチームにとって(もっと)()かすことのできない支柱(しちゅう)なのだ。


副会長(ふくかいちょう)一人(ひとり)――「幻象(げんしょう)緹雅(ティア)貝魯德ベルード」、普段(ふだん)単純(たんじゅん)緹雅(ティア)()んでいる。彼女(かのじょ)(わたし)がゲーム(ない)(もっと)(はや)()()った仲間(なかま)一人(ひとり)であり、『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』に(きわ)めて熱中(ねっちゅう)している数少(かずすく)ない女性(じょせい)プレイヤーの一人(ひとり)でもある。

(わたし)とは(こと)なり、緹雅(ティア)はより積極的(せっきょくてき)攻撃型(こうげきがた)戦法(せんぽう)(この)む。(わたした)ちがゲーム(ない)(つちか)ってきた連携(れんけい)は、長年(ながねん)にわたる協力(きょうりょく)(なか)鍛錬(たんれん)されてきたものだ。

彼女(かのじょ)戦士値(せんしち)魔法使(まほうつか)()もまた(わたし)(おな)じく、均等(きんとう)五百点(ごひゃくてん)ずつ配分(はいぶん)されている。その結果(けっか)(おな)万能型(ばんのうがた)でありながら、まったく(こと)なるスタイルを()つキャラクターが(かたち)(づく)られている。

(くわ)えて、ティアはゲーム(ない)五大(ごだい)種族(しゅぞく)すべての混血(こんけつ)血統(けっとう)――人族(じんぞく)天使族(てんしぞく)悪魔族(あくまぞく)竜族(りゅうぞく)精霊族(せいれいぞく)――を(ゆう)しており、現時点(げんじてん)(ぜん)サーバーにおいてこの偉業(いぎょう)()()げた数少(かずすく)ないプレイヤーの一人(ひとり)である。

彼女(かのじょ)八大(はちだい)元素(げんそ)属性(ぞくせい)すべてを(きわ)めており、さらに一対一(いったいいち)総合的(そうごうてき)実力(じつりょく)()えば、()がギルドの(なか)(うたが)いようのない最強(さいきょう)存在(そんざい)である。


緹雅(ティア)(おも)使(つか)武器(ぶき)神器(しんき)――「神刃(しんじん)塔瑞克斯(タレックス)」である。

神器(しんき)はゲーム(ない)(もっと)高位(こうい)装備(そうび)種別(しゅべつ)であり、その入手(にゅうしゅ)方法(ほうほう)(きわ)めて困難(こんなん)である。各々(おのおの)の神器(しんき)には専用(せんよう)条件(じょうけん)使用(しよう)制限(せいげん)(もう)けられている。

緹雅(ティア)特化型(とっかがた)近接(きんせつ)魔法使(まほうつか)いであり、元素(げんそ)魔法(まほう)戦士(せんし)技能(ぎのう)完璧(かんぺき)融合(ゆうごう)させている。彼女(かのじょ)戦闘(せんとう)スタイルは華麗(かれい)にして(こう)爆発力(ばくはつりょく)(ほこ)り、とりわけ瞬間移動(しゅんかんいどう)魔力(まりょく)干渉(かんしょう)駆使(くし)して敵方(てきほう)のリズムを(みだ)し、正確無比(せいかくむひ)連撃(れんげき)戦闘(せんとう)()めくくることに()けている。

(しん)恐怖(きょうふ)すべきは、緹雅(ティア)(いま)公開(こうかい)されていない一連(いちれん)(かく)(わざ)(ゆう)している(てん)である。それらは実際(じっさい)対戦(たいせん)した(もの)だけが(かん)()ることのできる圧迫(あっぱく)変化(へんか)であり、(いま)もなお無数(むすう)強者(きょうしゃ)たちを(ふる)()がらせているのだ。


副会長(ふくかいちょう)二人目(ふたりめ)――「賢祖(けんそ)姆姆魯(ムムル)」は、()がギルドにおけるもう一人(ひとり)(きわ)めて象徴的(しょうちょうてき)核心(かくしん)人物(じんぶつ)であり、(わたし)個人的(こじんてき)にも(ふか)(えん)()古参(こさん)プレイヤーである。

(かれ)(いま)長時間(ちょうじかん)オンラインに滞在(たいざい)する数少(かずすく)ない古参(こさん)メンバーの一人(ひとり)であり、かつての初代(しょだい)ギルド(ちょう)でもあった。(わたし)がこのギルドに(くわ)わった当初(とうしょ)姆姆魯(ムムル)()(かえ)(わたし)会長(かいちょう)()(ゆず)ろうと説得(せっとく)してきた。その理由(りゆう)は、管理(かんり)意思疎通(いしそつう)において(わたし)(ほう)(かれ)よりも(すぐ)れているからだという。

正直(しょうじき)()えば、(わたし)最終的(さいしゅうてき)承諾(しょうだく)したのは、八割方(はちわりかた)(かれ)熱心(ねっしん)説得(せっとく)()るぎない態度(たいど)のためであった。

そして(いま)(かれ)全体(ぜんたい)戦術(せんじゅつ)設計(せっけい)、サーバー(かん)(また)いだ情報(じょうほう)収集(しゅうしゅう)、さらには一部(いちぶ)特殊(とくしゅ)素材(そざい)獲得(かくとく)などの任務(にんむ)(にな)っている。

これらの業務(ぎょうむ)非常(ひじょう)煩雑(はんざつ)であり、私は(かれ)にこれ以上(いじょう)ギルド内部(ないぶ)雑務(ざつむ)まで()()けるのは本当(ほんとう)()()けるのだ。


姆姆魯(ムムル)戦士値(せんしち)魔法使(まほうつか)()は、同様(どうよう)均等(きんとう)五百点(ごひゃくてん)ずつ配分(はいぶん)されている。

(かれ)精霊族(せいれいぞく)人族(じんぞく)混血(こんけつ)血統(けっとう)(ゆう)し、(みず)()(かぜ)(つち)四種(よんしゅ)元素(げんそ)精通(せいつう)している。

姆姆魯(ムムル)殲滅型(せんめつがた)魔法使(まほうつか)いに(ぞく)し、(たか)火力(かりょく)広範囲(こうはんい)攻撃(こうげき)重視(じゅうし)するだけでなく、戦闘(せんとう)効率(こうりつ)追求(ついきゅう)している。(かれ)はチームの(なか)(もっと)掃討力(そうとうりょく)(すぐ)れた存在(そんざい)だ。

(かれ)武器(ぶき)神器(しんき)――「神槍(しんそう)艾斯雷爾(エズレル)」であり、これはゲーム(ない)の「十大神器(じゅうだいしんき)」の一つ(ひとつ)である。通常(つうじょう)神器(しんき)(くら)べ、十大神器(じゅうだいしんき)(きわ)めて強力(きょうりょく)潜在力(せんざいりょく)特殊(とくしゅ)効果(こうか)()つが、その代償(だいしょう)使用(しよう)条件(じょうけん)非常(ひじょう)(きび)しい。姆姆魯(ムムル)以外(いがい)には、その神器(しんき)(しん)(ちから)()(もの)はなく、その神秘性(しんぴせい)一層(いっそう)(たか)めている。


圧倒的(あっとうてき)戦力(せんりょく)(くわ)え、姆姆魯(ムムル)(しん)敬服(けいふく)すべき(てん)は、その常人(じょうじん)()えた戦術(せんじゅつ)的頭脳(ずのう)である。第一回(だいいっかい)世界級(せかいきゅう)PVP大会(たいかい)において、(かれ)(きわ)めて冷静(れいせい)判断(はんだん)精緻(せいち)布陣(ふじん)により、緹雅(ティア)()(やぶ)り、一挙(いっきょ)世界(せかい)王者(おうじゃ)()獲得(かくとく)した。

この勝利(しょうり)は、(かれ)PVP分野(ぶんや)における伝説的(でんせつてき)地位(ちい)確立(かくりつ)しただけでなく、『DARKNESSFLOW(ダークネスフロー)』の核心(かくしん)精神(せいしん)(あらた)めて(かんが)えさせるものとなった。すなわち、本当(ほんとう)強者(きょうしゃ)とは能力(のうりょく)多寡(たか)ではなく、戦略(せんりゃく)相性(あいしょう)、そしてスタイルを精密(せいみつ)活用(かつよう)する(もの)なのだ。

まさにこのようなプレイヤーこそが、このゲームをかくも深遠(しんえん)かつ魅力的(みりょくてき)なものにしているのである。


副会長(ふくかいちょう)三人目(さんにんめ)――「守護(しゅご)芙莉夏(フリシャ)」は、()がギルドにおいて(もっと)沈穏(ちんおん)で、安心感(あんしんかん)(あた)える存在(そんざい)である。

彼女(かのじょ)緹雅(ティア)(じつ)姉妹(しまい)であるが、二人(ふたり)性格(せいかく)(まった)(こと)なる。

緹雅(ティア)()まれつき人目(ひとめ)()き、活力(かつりょく)()ちた存在(そんざい)であるのに(たい)し、芙莉夏(フリシャ)古代(こだい)山脈(さんみゃく)のごとく、(つね)重厚(じゅうこう)にして隊伍(たいご)(なか)()ち、不動(ふどう)(ごと)く、そしてその声調(せいちょう)(つね)(ひと)(こころ)(やす)んじさせる沈着(ちんちゃく)冷静(れいせい)()びている。

芙莉夏(フリシャ)は、()がギルド全体(ぜんたい)(なか)唯一(ゆいいつ)魔法使(まほうつか)()満値(まんち)(せん)到達(とうたつ)させ、戦士値(せんしち)(れい)設定(せってい)した極端型(きょくたんがた)キャラクターである。

このような能力(のうりょく)配分(はいぶん)はPVPにおいて(きわ)めて(たか)危険(きけん)(ともな)配置(はいち)()なされるが、芙莉夏(フリシャ)()にかかれば、驚異的(きょういてき)安定性(あんていせい)威嚇力(いかくりょく)発揮(はっき)するのである。


緹雅(ティア)同様(どうよう)に、彼女(かのじょ)五大(ごだい)種族(しゅぞく)混血(こんけつ)血統(けっとう)(ゆう)し、八大(はちだい)元素(げんそ)属性(ぞくせい)すべてに精通(せいつう)している。同時(どうじ)(すべ)ての元素(げんそ)魔法(まほう)(あやつ)ることのできる反撃型(はんげきがた)魔法使(まほうつか)いは、(きわ)めて稀少(きしょう)である。

彼女(かのじょ)(おも)武器(ぶき)神器(しんき)神滅(しんめつ)(つえ)匹茲威瑟(ピズウィザー)」である。

これは神器(しんき)等級(とうきゅう)(くらい)し、その能力(のうりょく)十大神器(じゅうだいしんき)()高位(こうい)魔法杖(まほうじょう)である。この武器(ぶき)強力(きょうりょく)属性(ぞくせい)連結(れんけつ)()つだけでなく、弱化(じゃっか)魔法(まほう)反撃(はんげき)魔法(まほう)効果(こうか)大幅(おおはば)(たか)めることができ、芙莉夏(フリシャ)のために(つく)られたかのような完璧(かんぺき)()()わせである。


直接的(ちょくせつてき)攻撃(こうげき)能力(のうりょく)は我々(われわれ)十人(じゅうにん)(なか)では際立(きわだ)っていないものの、彼女(かのじょ)(もっと)対処(たいしょ)(むずか)しい存在(そんざい)である。

複雑(ふくざつ)結界(けっかい)防御(ぼうぎょ)魔法(まほう)弱化(じゃっか)魔法(まほう)駆使(くし)し、(てき)攻勢(こうせい)(みずか)らの資源(しげん)へと転化(てんか)することに()けている。

(とく)驚愕(きょうがく)すべきは、自身(じしん)のHPをMPへと転換(てんかん)する特殊(とくしゅ)スキルを(ゆう)しており、持久戦(じきゅうせん)において魔力(まりょく)枯渇(こかつ)させることがほぼ不可能(ふかのう)で、継続的(けいぞくてき)火力(かりょく)反撃力(はんげきりょく)(かぎ)りなく発揮(はっき)できる(てん)である。


彼女(かのじょ)()がギルド拠点(きょてん)である艾爾薩瑞(エルサライ)存在(そんざい)する十大神殿(じゅうだいしんでん)(ひと)つ――第九(だいきゅう)神殿(しんでん)絶死神祇(ぜっししんぎ)」を守護(しゅご)している。

そこでは、彼女(かのじょ)(すべ)ての仕掛(しか)けを熟知(じゅくち)し、環境(かんきょう)利点(りてん)極限(きょくげん)まで発揮(はっき)することができる。

第九(だいきゅう)神殿(しんでん)特定(とくてい)環境(かんきょう)設定(せってい)においては、()がギルドの(なか)芙莉夏(フリシャ)たちに()てる(もの)(だれ)もいない。


副会長(ふくかいちょう)四人目(よにんめ)――「六感(ろっかん)亞米(アミ)貝克森(ベクソン)」は、このゲームで(わたし)(もっと)(はや)()()った友人(ゆうじん)である。

()ってみれば、(かれ)がいなければ、(いま)の私はこのギルドに所属(しょぞく)していなかっただろう。

(かれ)こそが最初(さいしょ)(わたし)をギルドへ招待(しょうたい)してくれた人物(じんぶつ)である。

公会(こうかい)雑務(ざつむ)山積(やまづ)みになるたびに、私はよく冗談(じょうだん)(まじ)りに「最初(さいしょ)にうっかり(ちょう)(だい)()とし(あな)(あし)()()んじゃったんじゃないのか?」と愚痴(ぐち)をこぼすが、結局(けっきょく)のところ、(わたし)(こころ)(かれ)への感謝(かんしゃ)()ちているのだ。

亞米(アミ)戦士値(せんしち)魔法使(まほうつか)()(とも)五百(ごひゃく)である。(かれ)天使族(てんしぞく)精霊族(せいれいぞく)混血(こんけつ)血統(けっとう)()ち、()()(ひかり)三系統(さんけいとう)元素(げんそ)精通(せいつう)している。また、感知(かんち)精神(せいしん)系列(けいれつ)次元(じげん)系統(けいとう)魔法(まほう)専門(せんもん)とし、防御型(ぼうぎょがた)戦士(せんし)としても修行(しゅぎょう)()んでいるため、HPと防御力(ぼうぎょりょく)非常(ひじょう)(たか)い。


(かれ)所持(しょじ)する神器(しんき)は「極光盾(きょっこうじゅん)」であり、防御型(ぼうぎょがた)職業(しょくぎょう)のために特別(とくべつ)設計(せっけい)された神器(しんき)(ひと)つである。攻撃(こうげき)吸収(きゅうしゅう)し、その一部(いちぶ)反射(はんしゃ)するだけでなく、短時間(たんじかん)空間(くうかん)干渉(かんしょう)遮断(しゃだん)する能力(のうりょく)(そな)え、要所(ようしょ)部隊(ぶたい)全体(ぜんたい)(まも)ることができる。

亞米(アミ)(てき)行動(こうどう)軌跡(きせき)精確(せいかく)予測(よそく)し、一歩(いっぽ)(はや)くその進攻(しんこう)経路(けいろ)封鎖(ふうさ)することができる。あるいは精神(せいしん)干渉(かんしょう)(とお)じて(てき)戦意(せんい)()()とすことも可能(かのう)である。たとえ十大神器(じゅうだいしんき)による正面(しょうめん)攻撃(こうげき)であっても、亞米(アミ)(つね)極光盾(きょっこうじゅん)をもって(ふせ)()ってみせる。

数値(すうち)(じょう)では亞米(アミ)火力(かりょく)は我々(われわれ)の(なか)(もっと)(ひく)い。しかし(かれ)精神(せいしん)衝撃(しょうげき)弱点(じゃくてん)感知(かんち)技術(ぎじゅつ)によって、(てき)に「防御(ぼうぎょ)無視(むし)」の(じつ)ダメージを(あた)えることができる。この手法(しゅほう)(きわ)めて稀少(きしょう)で、防御(ぼうぎょ)(むずか)しい。(たか)耐久(たいきゅう)性能(せいのう)(ゆう)することから、亞米(アミ)()がギルドで最強(さいきょう)のタンクとして公認(こうにん)され、「移動(いどう)要塞(ようさい)」の異名(いみょう)さえ()つ。

これまで一度(いちど)も、亞米(アミ)防衛線(ぼうえいせん)(しん)突破(とっぱ)できた(もの)()たことがない。(かれ)こそが我々(われわれ)の前線(ぜんせん)における(もっと)堅固(けんご)要塞(ようさい)であり、戦線(せんせん)安定(あんてい)左右(さゆう)する(かぎ)となる人物(じんぶつ)なのである。


成員(せいん)一人(ひとり)――「悪魔(あくま)(つばさ)狄莫娜(ディモナ)」は、生来(せいらい)威圧感(いあつかん)()ち、戦闘(せんとう)()気迫(きはく)(つね)(てき)(こころ)畏怖(いふ)(いだ)かせる。

狄莫娜(ディモナ)戦士値(せんしち)魔法使(まほうつか)()均等(きんとう)五百点(ごひゃくてん)であるが、実戦(じっせん)における彼女(かのじょ)戦法(せんぽう)極端(きょくたん)近接(きんせつ)破壊力(はかいりょく)(かたむ)き、その数値(すうち)配分(はいぶん)とは(まった)(こと)なる狂野(きょうや)戦意(せんい)(しめ)している。

狄莫娜(ディモナ)竜族(りゅうぞく)悪魔族(あくまぞく)混血(こんけつ)血統(けっとう)(ゆう)し、肉体(にくたい)精神(せいしん)両面(りょうめん)において卓越(たくえつ)した適応力(てきおうりょく)攻撃性(こうげきせい)(そな)えている。彼女(かのじょ)(やみ)属性(ぞくせい)()属性(ぞくせい)精通(せいつう)しており、この(ふた)つの元素(げんそ)結合(けつごう)本来(ほんらい)破滅的(はめつてき)特質(とくしつ)()つが、彼女(かのじょ)はそれを極限(きょくげん)まで()()している。


彼女(かのじょ)使(つか)武器(ぶき)神器(しんき)――「聚魂丸(しゅこんがん)」である。これは無数(むすう)亡霊(ぼうれい)(たましい)鍛造(たんぞう)して(つく)られた凝核型(ぎょうかくがた)武器(ぶき)であり、外見(がいけん)(ひか)えめながら、その内部(ないぶ)には強大(きょうだい)(ちから)封印(ふういん)されている。

狄莫娜(ディモナ)核心(かくしん)職業(しょくぎょう)死霊系(しりょうけい)召喚師(しょうかんし)である。しかし伝統的(でんとうてき)死霊系(しりょうけい)プレイヤーと(こと)なり、彼女(かのじょ)召喚物(しょうかんぶつ)だけに依存(いぞん)して(たたか)うのではない。

悪魔族(あくまぞく)竜族(りゅうぞく)天賦(てんぷ)融合(ゆうごう)させ、侵略的(しんりゃくてき)近接(きんせつ)戦闘(せんとう)技術(ぎじゅつ)修行(しゅぎょう)し、(たか)機動性(きどうせい)持続的(じぞくてき)火力(かりょく)強調(きょうちょう)している。そして「振動(しんどう)」と()ばれる特殊(とくしゅ)戦闘(せんとう)モードを駆使(くし)する。

このモード()では、彼女(かのじょ)攻撃(こうげき)高周波(こうしゅうは)振動(しんどう)(しょう)じ、攻撃(こうげき)貫通力(かんつうりょく)命中(めいちゅう)精度(せいど)向上(こうじょう)させる。それによって近接(きんせつ)戦闘(せんとう)能力(のうりょく)大幅(おおはば)上昇(じょうしょう)し、一部(いちぶ)防御(ぼうぎょ)(たて)効果(こうか)さえ無視(むし)することが可能(かのう)となる。


(くわ)えて、彼女(かのじょ)(きわ)めて危険(きけん)なスキルを(ゆう)しており、自身(じしん)生命力(せいめいりょく)物理(ぶつり)(てき)攻撃力(こうげきりょく)へと転化(てんか)することができる。その爆発力(ばくはつりょく)驚異的(きょういてき)であり、自身(じしん)反動(はんどう)(およ)ぼすものの、緊急(きんきゅう)局面(きょくめん)においては戦局(せんきょく)一変(いっぺん)させることができる。

彼女(かのじょ)魔法(まほう)能力(のうりょく)比較的(ひかくてき)(よわ)いものの、我々(われわれ)の戦術(せんじゅつ)配置(はいち)において、狄莫娜(ディモナ)(つね)最前線(さいぜんせん)突撃(とつげき)し、混沌(こんとん)()敵陣(てきじん)()()破壊者(はかいしゃ)である。彼女(かのじょ)姿(すがた)(あらわ)せば、(てき)はほとんど彼女(かのじょ)存在(そんざい)無視(むし)することができない。


成員(せいん)二人目(ふたりめ)――「天使(てんし)(つばさ)札爾迪克(ザルディク)」は、()がギルドにおいて(もっと)神秘的(しんぴてき)で、かつ人々(ひとびと)の好奇心(こうきしん)()()てる存在(そんざい)である。

(かれ)狄莫娜(ディモナ)(じつ)姉弟(してい)であるが、その性格(せいかく)(まった)(こと)なる。狄莫娜(ディモナ)快活(かいかつ)(あい)らしい性格(せいかく)(たい)し、札爾迪克(ザルディク)寡黙(かもく)で、氷像(ひょうぞう)のごとき冷厳(れいげん)さを(ただよ)わせる存在(そんざい)である。

しかし(かれ)はまた、端麗(たんれい)にして際立(きわだ)容姿(ようし)と、紳士的(しんしてき)気質(きしつ)()(そな)えている。


札爾迪克(ザルディク)戦士値(せんしち)魔法使(まほうつか)()はいずれも五百(ごひゃく)であり、竜族(りゅうぞく)天使族(てんしぞく)混血(こんけつ)血統(けっとう)()つ。(かれ)八大(はちだい)元素(げんそ)すべてに精通(せいつう)し、全属性(ぜんぞくせい)魔法(まほう)自在(じざい)(あやつ)れる数少(かずすく)ないプレイヤーの一人(ひとり)である。

(かれ)所持(しょじ)する神器(しんき)は「天空(てんくう)(ひかり)」と()ばれ、純粋(じゅんすい)天使(てんし)晶体(しょうたい)鋳造(ちゅうぞう)され、竜族(りゅうぞく)(ちから)融合(ゆうごう)した古代(こだい)神器(しんき)である。

この神器(しんき)特性(とくせい)により、(かれ)複数(ふくすう)属性(ぞくせい)エネルギーを同時(どうじ)(あやつ)り、素早(すばや)元素(げんそ)調整(ちょうせい)(おこな)うことができるため、チームの(なか)調和(ちょうわ)爆発力(ばくはつりょく)()(そな)えた役割(やくわり)()たすことが(おお)い。


札爾迪克(ザルディク)元素(げんそ)強化(きょうか)元素(げんそ)召喚(しょうかん)元素(げんそ)融合(ゆうごう)特化(とっか)しており、これら(みっ)つは(きわ)めて(たか)元素(げんそ)制御(せいぎょ)能力(のうりょく)必要(ひつよう)とする。そして(かれ)はさらに一歩(いっぽ)(すす)み、ゲーム(ない)でもごく少数(しょうすう)しか習得(しゅうとく)していない「混沌(こんとん)元素(げんそ)運用(うんよう)技巧(ぎこう)をも掌握(しょうあく)している。混沌(こんとん)元素(げんそ)とは、すべての元素(げんそ)特定(とくてい)比率(ひりつ)融合(ゆうごう)させる高等(こうとう)魔法(まほう)であり、その効果(こうか)単純(たんじゅん)加算(かさん)ではなく、融合(ゆうごう)比率(ひりつ)(おう)じて(まった)(こと)なる特性(とくせい)変化(へんか)(しょう)じる。

(たと)えば、(かぜ)+()+(やみ)(こう)貫通性(かんつうせい)()黒炎(こくえん)風刃(ふうじん)(しょう)じる可能性(かのうせい)があり、(みず)+()+(ひかり)自己(じこ)治癒(ちゆ)被害(ひがい)反射(はんしゃ)()(そな)えた生命(せいめい)(たて)生成(せいせい)することもある。

普段(ふだん)寡黙(かもく)口数(くちかず)(すく)ないが、ひとたび戦術(せんじゅつ)実行(じっこう)するとなれば、(けっ)して失敗(しっぱい)することはない。


成員(せいん)三人目(さんにんめ)――「六道輪廻(ろくどうりんね)納迦貝爾(ナガベル)」は、()がギルドにおいて(もっと)爆発力(ばくはつりょく)創意性(そういせい)()んだ成員(せいん)一人(ひとり)である。

彼女(かのじょ)天使族(てんしぞく)悪魔族(あくまぞく)混血(こんけつ)血統(けっとう)()ち、戦士値(せんしち)魔法使(まほうつか)()はいずれも五百(ごひゃく)である。

納迦貝爾(ナガベル)(ひかり)属性(ぞくせい)(やみ)属性(ぞくせい)魔法(まほう)精通(せいつう)している。彼女(かのじょ)所持(しょじ)する神器(しんき)は「輪廻(りんね)(つめ)」と()ばれる。これは極光鉱(きょっこうこう)冥鉄(めいてつ)(きた)えられた爪刃型(そうじんがた)武器(ぶき)であり、近距離(きんきょり)戦闘(せんとう)において貫通性(かんつうせい)のエネルギー()(はな)つことができる。

納迦貝爾(ナガベル)精神系(せいしんけい)魔法(まほう)特殊(とくしゅ)近接(きんせつ)遠隔(えんかく)攻撃(こうげき)スキルを()()わせることに()けており、()がチームにおいて戦闘(せんとう)のリズムを柔軟(じゅうなん)()()えることのできる数少(かずすく)ない万能手(ばんのうしゅ)一人(ひとり)である。

特化(とっか)された近接(きんせつ)破壊力(はかいりょく)命中率(めいちゅうりつ)によって、彼女(かのじょ)攻撃力(こうげきりょく)()十人(じゅうにん)(なか)三本(さんぼん)(ゆび)(はい)る。しかし一方(いっぽう)で、防御(ぼうぎょ)能力(のうりょく)持久力(じきゅうりょく)(ひく)く、そのため彼女(かのじょ)戦闘(せんとう)スタイルは(こう)爆発力(ばくはつりょく)先手(せんて)圧制(あっせい)重視(じゅうし)し、「先発制人(せんぱつせいじん)瞬間殲滅(しゅんかんせんめつ)」という戦闘(せんとう)哲学(てつがく)追求(ついきゅう)している。


納迦貝爾(ナガベル)驚異的(きょういてき)戦力(せんりょく)(ほこ)るだけでなく、頭脳(ずのう)非常(ひじょう)柔軟(じゅうなん)達人(たつじん)である。現実(げんじつ)では大規模(だいきぼ)なハイテク企業(きぎょう)(つと)めるベテランの程序設計師(プログラマー)であり、人工知能(じんこうちのう)論理演算(ろんりえんざん)得意(とくい)としていると()われている。

彼女(かのじょ)現実(げんじつ)(つちか)ったデータ構造(こうぞう)算法(アルゴリズム)理解(りかい)をしばしばゲーム戦術(せんじゅつ)応用(おうよう)し、人々(ひとびと)を困惑(こんわく)させながらも(きわ)めて効果的(こうかてき)戦闘(せんとう)手法(しゅほう)数多(かずおお)()()してきた。

ただし彼女(かのじょ)には(ひと)習慣(しゅうかん)があり、それは発想(はっそう)(みょう)な、(とき)には悪趣味(あくしゅみ)とさえ()える方向(ほうこう)使(つか)うことだ。例えば、公会戦(こうかいせん)において感情(かんじょう)変化(へんか)(おう)じて戦術(せんじゅつ)調整(ちょうせい)するシステムを設計(せっけい)したり……。

(たし)かに周囲(しゅうい)(あき)れさせ(わら)わせることもあるが、まさにその独特(どくとく)思考(しこう)こそが、彼女(かのじょ)(もっと)予測(よそく)(がた)く、かつ(もっと)興味深(きょうみぶか)戦力(せんりょく)一人(ひとり)たらしめている。


成員(せいん)四人目(よにんめ)――「神皇騎士(しんこうきし)不破(フハ)達司(タツシ)」は、()がギルドにおいて唯一(ゆいいつ)戦士値(せんしち)(せん)まで()()り、魔法使(まほうつか)()(れい)にした極端(きょくたん)物理型(ぶつりがた)キャラクターである。

不破(フハ)徹頭徹尾(てっとうてつび)物理型(ぶつりがた)破壊者(はかいしゃ)であり、その外見(がいけん)から戦闘(せんとう)スタイルに(いた)るまで、強烈(きょうれつ)威圧感(いあつかん)力強(ちからづよ)さを(はな)っている。

(かれ)悪魔(あくま)天使(てんし)人族(じんぞく)三族(さんぞく)混血(こんけつ)血統(けっとう)(ゆう)し、八種(はっしゅ)すべての属性(ぞくせい)精通(せいつう)している。

(かれ)魔力(まりょく)依存(いぞん)して魔法(まほう)(はな)つことはないが、物理的(ぶつりてき)手段(しゅだん)によって元素(げんそ)(ちから)(みちび)き、爆発(ばくはつ)させることができる。


(かれ)武器(ぶき)神皇剣(しんこうけん)萊茵赫雷特(ラインヘルト)」は十大神器(じゅうだいしんき)(ひと)つであり、(もっと)純粋(じゅんすい)かつ極致(きょくち)物理(ぶつり)攻撃(こうげき)(みち)象徴(しょうちょう)している。

この(けん)非常(ひじょう)(たか)破壊力(はかいりょく)元素(げんそ)親和性(しんわせい)(ゆう)し、使用者(しようしゃ)斬撃(ざんげき)多様(たよう)元素(げんそ)融合(ゆうごう)させることを可能(かのう)にする。さらに魔力量(まりょくりょう)消費(しょうひ)せずに元素衝撃(げんそしょうげき)(はな)つことができ、その一撃(いちげき)ごとに(てき)震撼(しんかん)させる効果(こうか)()つ。


不破(フハ)物理(ぶつり)元素(げんそ)融合(ゆうごう)(けい)スキルに特化(とっか)しており、短時間(たんじかん)多種(たしゅ)元素(げんそ)(みちび)重複(ちょうふく)強化(きょうか)し、独自(どくじ)元素(げんそ)斬撃(ざんげき)形成(けいせい)することができる。

しかし、(かれ)弱点(じゃくてん)もまた明白(めいはく)である。魔法使(まほうつか)()(れい)であるため、ほとんど魔法(まほう)使(つか)うことができず、魔法攻撃(まほうこうげき)への耐性(たいせい)()けている。強力(きょうりょく)魔法(まほう)()さえ()まれれば、容易(ようい)受動(じゅどう)(てき)局面(きょくめん)(おちい)りやすい。そのため、(かれ)通常(つうじょう)防御型(ぼうぎょがた)支援型(しえんがた)成員(せいん)()()わせることで、最強(さいきょう)物理(ぶつり)火力(かりょく)発揮(はっき)する。


外見(がいけん)()()きと内向(ないこう)さを()(そな)えた「大叔(おじさん)」のように()え、(つね)重厚(じゅうこう)鎧甲(がいこう)()()け、表情(ひょうじょう)厳格(げんかく)である。しかし実際(じっさい)には、不破(フハ)快活(かいかつ)でユーモアに()んだ性格(せいかく)()(ぬし)であり、隊伍(たいご)のムードメーカーの一人(ひとり)である。

(かれ)誇張(こちょう)した口調(くちょう)他人(たにん)真似(まね)るのを(この)み、戦闘(せんとう)()には大声(おおごえ)(わら)いながら先程(さきほど)名場面(めいばめん)再現(さいげん)することもしばしばある。そのため、ギルドの雰囲気(ふんいき)(おお)くの軽快(けいかい)さと楽しさ(たのしさ)をもたらしている。(かれ)存在(そんざい)は、戦場(せんじょう)における攻堅力(こうけんりょく)であると同時(どうじ)に、団体(だんたい)雰囲気(ふんいき)()()げる推進者(すいしんしゃ)でもある。


成員(せいん)五人目(ごにんめ)――「天眼(てんがん)奧斯蒙オスモン」は、()がギルドにおける遠距離(えんきょり)戦力(せんりょく)絶対(ぜったい)(てき)核心(かくしん)であり、高空(こうくう)地上(ちじょう)極限距離(きょくげんきょり)のいずれにおいても精密(せいみつ)狙撃(そげき)発揮(はっき)できる万能(ばんのう)スナイパーである。

奧斯蒙オスモン戦士値(せんしち)魔法使(まほうつか)()はいずれも五百(ごひゃく)であり、悪魔族(あくまぞく)精霊族(せいれいぞく)混血(こんけつ)血統(けっとう)()ち、(やみ)(かみなり)(かぜ)(みず)元素(げんそ)精通(せいつう)している。

奧斯蒙オスモン使用(しよう)する武器(ぶき)神器(しんき)神弓(しんきゅう)伊雷希斯(イレシス)」および「神弩(しんど)伊雷達斯(イレダス)」であり、戦況(せんきょう)(おう)じて随時(ずいじ)火力(かりょく)のリズムを()()えることができる。

神弓(しんきゅう)高速(こうそく)多発(たはつ)連射(れんしゃ)元素(げんそ)付加(ふか)得意(とくい)とし、神弩(しんど)()()(がた)単発(たんぱつ)爆発(ばくはつ)(かたよ)り、その一撃(いちげき)ごとに敵方(てきほう)防御(ぼうぎょ)()()くに()りる威力(いりょく)()つ。(かれ)(おも)職業(しょくぎょう)ルートは遠距離(えんきょり)物理(ぶつり)攻撃(こうげき)魔法(まほう)射撃(しゃげき)基軸(きじく)とし、精神系(せいしんけい)魔法(まほう)高機動性(こうきどうせい)回避(かいひ)スキルを補助(ほじょ)(そな)える、(きわ)めて稀少(きしょう)機動型(きどうがた)遠距離(えんきょり)アタッカーである。


戦闘(せんとう)において、奧斯蒙オスモン極遠距離(ごくえんきょり)から戦場(せんじょう)観察(かんさつ)し、(てき)位置(いち)特定(とくてい)することができる。そして同時(どうじ)に、広範囲(こうはんい)爆発(ばくはつ)攻撃(こうげき)精密(せいみつ)一点(いってん)(ねら)いの急襲(きゅうしゅう)(はな)つことも可能(かのう)である。

しかし、(かれ)弱点(じゃくてん)明白(めいはく)である――HPは全員(ぜんいん)(なか)(もっと)(ひく)く、堅固(けんご)防御手段(ぼうぎょしゅだん)にも()けている。そのため、不注意(ふちゅうい)接近(せっきん)(ゆる)したり、強力(きょうりょく)魔法(まほう)直面(ちょくめん)すれば、容易(ようい)危機(きき)(おちい)危険性(きけんせい)(たか)い。ただし、(かれ)回避(かいひ)閃避(せんぴ)技術(ぎじゅつ)はほとんど常軌(じょうき)(いっ)しており、実戦(じっせん)において命中(めいちゅう)させるのは(きわ)めて(むずか)しい。


外見(がいけん)において、奧斯蒙オスモン札爾迪克(ザルディク)(おな)じく美男(びなん)であるが、その雰囲気(ふんいき)(こと)なる。札爾迪克(ザルディク)冷静沈着(れいせいちんちゃく)(しず)かな印象(いんしょう)(あた)えるのに(たい)し、奧斯蒙オスモンは「クール(けい)格好良(かっこよ)さ」を(まと)い、(つね)余裕(よゆう)(ただよ)わせつつ、わずかに神秘感(しんぴかん)(あた)える存在(そんざい)である。しかし、その外見(がいけん)とは裏腹(うらはら)に、奧斯蒙オスモン(じつ)健談(けんだん)で、社交能力(しゃこうのうりょく)非常(ひじょう)(すぐ)れており、(おも)わず(うらや)ましくなるほどである。


我々(われわれ)のギルド基地(きち)(きわ)めて()めやかな異空間(いくうかん)存在(そんざい)しており、ここは通常(つうじょう)のプレイヤーが容易(ようい)()()れる場所(ばしょ)ではない。「弗瑟勒斯(フセレス)·巴赫(バッハ)」の核心(かくしん)領域(りょういき)侵入(しんにゅう)するためには、まず防衛(ぼうえい)最前線(さいぜんせん)――海特姆塔(ヘトムタワー)突破(とっぱ)せねばならない。それは高性能(こうせいのう)AI守衛(しゅえい)迷宮(めいきゅう)のような構造(こうぞう)(ゆう)する試練塔(しれんとう)であり、各層(かくそう)心智(しんち)戦力(せんりょく)(ため)挑戦(ちょうせん)となっている。

しかし、たとえ海特姆塔(ヘトムタワー)突破(とっぱ)したとしても、それは我々(われわれ)の領地(りょうち)辺縁(へんえん)(あし)()()れたに()ぎない。

(しん)核心(かくしん)防衛線(ぼうえいせん)は、伝説(でんせつ)の「艾爾薩瑞(エルサライ)十大神殿(じゅうだいしんでん)」である。

これら(じゅう)神殿(しんでん)はそれぞれ(こと)なる試練(しれん)法則(ほうそく)元素(げんそ)(ちから)象徴(しょうちょう)している。(かく)神殿(しんでん)には、我々(われわれ)が(みずか)(えら)()いた守護者(しゅごしゃ)(すく)なくとも一人(ひとり)存在(そんざい)し、強大(きょうだい)実力(じつりょく)独立(どくりつ)した戦闘(せんとう)機構(きこう)(そな)えている。それらが幾重(いくえ)にも(かさ)なり、最終(さいしゅう)要塞(ようさい)(きず)()げている。


(わたし)がこのギルドに(くわ)わった当初(とうしょ)、この基地(きち)設計(せっけい)はまだ(はじ)まったばかりであった。それは驚異的(きょういてき)戦略的(せんりゃくてき)価値(かち)()つだけでなく、この領域(りょういき)(たい)する我々(われわれ)の帰属(きぞく)意識(いしき)(ほこ)りをも()めていた。

たとえ(だれ)かが十大神殿(じゅうだいしんでん)試練(しれん)突破(とっぱ)したとしても、最終的(さいしゅうてき)には「王家神殿(おうけしんでん)」で我々(われわれ)と相対(あいたい)せねばならない。

この神殿(しんでん)改造(かいぞう)され、超高級(ちょうこうきゅう)宮殿(きゅうでん)建築(けんちく)となった。(ほか)神殿(しんでん)冷厳(れいげん)さや殺伐(さつばつ)さとは(こと)なり、王家神殿(おうけしんでん)古典的(こてんてき)かつ権威的(けんいてき)雰囲気(ふんいき)(ただよ)わせている。そこは我々(われわれ)の会議(かいぎ)賓客(ひんきゃく)(むか)える()であるだけでなく、内部(ないぶ)には成員(せいん)専用(せんよう)寝室(しんしつ)温泉(おんせん)資料室(しりょうしつ)会議(かいぎ)ホール、豪華(ごうか)食堂(しょくどう)まで(そな)わっており、随所(ずいしょ)に我々(われわれ)自身(じしん)(ほどこ)した設計(せっけい)趣向(しゅこう)()()れる。

我々(われわれ)にとって、それは(たん)なる拠点(きょてん)ではなく、仮想世界(かそうせかい)における精神的(せいしんてき)故郷(こきょう)のような存在(そんざい)である。


王家神殿(おうけしんでん)(しゅ)ホールは「晋見廳(しんけんちょう)」と()ばれる。そこには十脚(じゅっきゃく)高背(こうはい)王座(おうざ)(もう)けられ、大広間(おおひろま)最奥(さいおう)高台(こうだい)(なら)べられている。

(おのおの)王座(おうざ)は我々(われわれ)十人(じゅうにん)(みずか)設計(せっけい)し、それぞれの専用(せんよう)紋章(もんしょう)(きざ)まれている。それは(たが)いの個性(こせい)象徴的(しょうちょうてき)意志(いし)(あらわ)している。

晋見者(しんけんしゃ)がこの()(あし)()()れる(とき)(かなら)(あお)()なければ我々(われわれ)の姿(すがた)()にすることはできない。さらに、大広間(おおひろま)特有(とくゆう)光影(こうえい)魔法効果(まほうこうか)によって我々(われわれ)の容貌(ようぼう)自動的(じどうてき)曖昧(あいまい)にされ、我々(われわれ)に(みと)められた(もの)のみが真実(しんじつ)姿(すがた)を見ることを(ゆる)される。

その視覚的(しかくてき)かつ心理的(しんりてき)圧迫感(あっぱくかん)は、まるで神祇(しんぎ)晋見(しんけん)するかのようである。そしてそれこそが我々(われわれ)がこの神殿(しんでん)(きず)いた最初(さいしょ)理念(りねん)――すべての侵入者(しんにゅうしゃ)(ふか)(さと)らせるため、この場所(ばしょ)こそ神々(かみがみ)の最終(さいしゅう)審判(しんぱん)()である、ということである。


このギルド(ない)大小(だいしょう)さまざまな事柄(ことがら)について、(わたし)はほとんど把握(はあく)しており、すでにそれをもう(ひと)つの(いえ)のように(かん)じている。しかし実際(じっさい)には、我々(われわれ)十人(じゅうにん)(あいだ)現実世界(げんじつせかい)において直接(ちょくせつ)(かお)()わせたことはない。

(なに)しろ(みな)世界各地(せかいかくち)()り、それぞれ所属(しょぞく)する(くに)都市(とし)生活(せいかつ)背景(はいけい)(まった)(こと)なるため、現実(げんじつ)()機会(きかい)はほとんど皆無(かいむ)(ひと)しい。

我々(われわれ)は普段(ふだん)、ゲーム(ない)時折(ときおり)近況(きんきょう)雑談(ざつだん)する程度(ていど)である。「最近(さいきん)(なに)(いそが)しくしているのか」「体調(たいちょう)大丈夫(だいじょうぶ)か」「生活(せいかつ)順調(じゅんちょう)か」といった話題(わだい)だが、(おお)くの場合(ばあい)深入(しんにゅう)せず、(かる)()れるだけに(とど)める。

それは(たが)いに疎遠(そえん)だからではなく、むしろ(たが)いを尊重(そんちょう)しているからこそ、相手(あいて)のプライバシーに(ぞく)する領域(りょういき)()けているのである。


現実(げんじつ)においても社会人(しゃかいじん)である(わたし)には、()()ぎたり、()()()ぎたりすると、(ひと)不快(ふかい)にさせやすいことがよく()かっている。

ちょうど(わたし)自身(じしん)も、(けっ)して(みずか)過去(かこ)()()すことはないのと(おな)じである。

(わたし)はかつてあまり(くち)にしたくない出来事(できごと)()てきたし、(かれ)らの(なか)にも(すく)なからず、(むね)(おく)()(ことば)にできない物語(ものがたり)()めている(もの)がいると(しん)じている。

このような距離感(きょりかん)が、かえって我々(われわれ)の(あいだ)特別(とくべつ)暗黙(あんもく)了解(りょうかい)()()している。(おお)くを(かた)必要(ひつよう)はなく、ただ(かた)(なら)


(わたし)はかつてあまり(かた)りたくない出来事(できごと)()たことがあり、(かれ)らの(なか)にも、(こころ)(おく)言葉(ことば)にできない物語(ものがたり)(かか)えている(もの)(すく)なからずいると(しん)じている。

このような距離感(きょりかん)こそが、我々(われわれ)の(あいだ)特別(とくべつ)暗黙(あんもく)了解(りょうかい)()()している――(おお)くを(かた)必要(ひつよう)はなく、ただ(とも)(たたか)い、信頼(しんらい)(たく)すことさえできれば、それで十分(じゅうぶん)なのだ。

人間(にんげん)()まれながらに社会性(しゃかいせい)(つつ)まれてはいるが、(こころ)奥底(おくそこ)では、結局(けっきょく)自我(じが)」という枠組(わくぐ)みから完全(かんぜん)()()すのは(むずか)しい。

たとえ我々(われわれ)が仮想世界(かそうせかい)家族(かぞく)のように親密(しんみつ)であっても、現実(げんじつ)(へだ)たりは依然(いぜん)として無形(むけい)距離(きょり)(しょう)じさせる。


(わたし)(ほか)九人(きゅうにん)と、この休日(きゅうじつ)にゲーム運営(うんえい)(あら)たに実装(じっそう)した世界級(せかいきゅう)BOSS(ボス)瑞丹(ズイダン)地域(ちいき)存在(そんざい)する「耶夢加得イェモンガド」を(とも)挑戦(ちょうせん)する約束(やくそく)()わした。

そう、まさしく北欧(ほくおう)神話(しんわ)登場(とうじょう)する終末(しゅうまつ)巨蛇(きょだ)

今回(こんかい)挑戦(ちょうせん)(みな)格別(かくべつ)興奮(こうふん)している。(なに)しろ、この(しゅ)BOSS(ボス)実装(じっそう)されると、いつもゲームコミュニティ全体(ぜんたい)焦点(しょうてん)となるからだ。

そして公式(こうしき)公開(こうかい)した情報(じょうほう)によれば、現時点(げんじてん)では()(だれ)もそれを撃破(げきは)していない。

頂点(ちょうてん)()つギルドの隊伍(たいご)でさえも次々(つぎつぎ)に敗北(はいぼく)(きっ)し、その難易度(なんいど)従来(じゅうらい)世界級(せかいきゅう)任務(にんむ)(はる)かに()えていることが(あき)らかになっている。


ゲーム運営(うんえい)(がわ)は、この(しゅ)BOSS(ボス)挑戦(ちょうせん)(ひと)つのギルドに独占(どくせん)されるのを(ふせ)ぐため、(たか)参入(さんにゅう)条件(じょうけん)(もう)けるのが(つね)である。

全員(ぜんいん)がすでにレベル10に到達(とうたつ)している我々(われわれ)のような精鋭(せいえい)チームでさえ、(けっ)して油断(ゆだん)はできない。

今回(こんかい)()(さん)(げつ)ぶりに全員(ぜんいん)(ふたた)一堂(いちどう)(かい)する機会(きかい)でもある。前回(ぜんかい)伊達(イダ)地域(ちいき)()伝説(でんせつ)魔神(ましん)蚩尤(シユウ)」を討伐(とうばつ)するためであった。

このように貴重(きちょう)(かた)(なら)べて(たたか)時間(じかん)は、単純(たんじゅん)BOSS(ボス)(いど)むだけではなく、むしろ我々(われわれ)にとって一種(いっしゅ)儀式(ぎしき)であり、久方(ひさかた)ぶりの(つど)いでもあるのだ。


この(とき)王家(おうけ)神殿(しんでん)晋見廳(しんけんのま)には、広大(こうだい)空間(くうかん)(なか)(わたし)緹雅(ティア)、そして亞米(アミ)三人(さんにん)しかおらず、(ほか)成員(せいいん)はまだ到着(とうちゃく)していなかった。

今日(きょう)こそついに耶夢加得(イェモンガド)討伐(とうばつ)できるな!」と、(わたし)(うで)()ばしながら、やや大袈裟(おおげさ)溜息(ためいき)をついた。「素材(そざい)(あつ)めるのに本当(ほんとう)(おお)くの時間(じかん)(つい)やした。(みな)交代(こうたい)手伝(てつだ)ってくれなければ、(わたし)はさらに(さん)(げつ)必死(ひっし)にやり()まなければならなかっただろうな。」

今回(こんかい)挑戦(ちょうせん)(そな)えて、前日(ぜんじつ)私は特別(とくべつ)宝物庫(ほうもつこ)(あし)(はこ)び、装備(そうび)細部(さいぶ)まですべて最適(さいてき)状態(じょうたい)(ととの)えた。


今日(きょう)の私は戦闘用(せんとうよう)純白(じゅんぱく)法師袍(ほうしほう)(まと)い、(すそ)袖口(そでぐち)には銀糸(ぎんし)縁取(ふちど)られている。背中(せなか)には(わたし)個人(こじん)徽章(きしょう)――七彩(しちさい)水晶(すいしょう)古代(こだい)呪文(じゅもん)()()ざった紋様(もんよう)刺繍(ししゅう)されていた。

(わたし)水晶球(すいしょうきゅう)魔法書(まほうしょ)左右(さゆう)()かび、(わたし)魔力(まりょく)安定(あんてい)した連結(れんけつ)()(かたち)づくりながら(しず)かに回転(かいてん)していた。まるで(いま)にも(ちから)解放(かいほう)しようと()(かま)えているかのように。


「ふん!すべてはあのゲーム運営(うんえい)のせいだ、わざわざあんな(むずか)しい素材(そざい)条件(じょうけん)(もう)けやがって!」亞米(アミ)不満(ふまん)げな(こえ)(ひろ)空間(くうかん)にひときわ(ひび)いた。

(かれ)両手(りょうて)符文(ふもん)(ひかり)(はな)白金(はっきん)(たて)(にぎ)りしめ、()には(あか)蜥蜴(とかげ)(よろい)(まと)い、(あたま)には(おな)意匠(いしょう)蜥蜴(とかげ)(かぶと)()せていた。その姿(すがた)はまるで龍族(りゅうぞく)神殿(しんでん)から(あらわ)れた守衛(しゅえい)のようであった。

達希(ダシ)(ほう)百臂巨人(ひゃくひきょじん)()ちに()くだけでも、あの素材(そざい)(ねら)って周回(しゅうかい)するうちに、(おれ)神器(しんき)のエネルギーも巻物(まきもの)もほとんど枯渇(こかつ)しかけたんだぞ!」と、(かれ)文句(もんく)()いながら大袈裟(おおげさ)(あたま)()った。

亞米(アミ)(むかし)からこの爬虫類(はちゅうるい)(ふう)装束(しょうぞく)(この)み、(わたし)(かれ)()って以来(いらい)一度(いちど)もその姿(すがた)()えたことがなかった。

私は(かれ)素顔(すがお)一度(いちど)()たことがない。だが、その(ひく)(ひび)(こえ)()()いた(はな)(かた)から推測(すいそく)すると、現実(げんじつ)では三十歳(さんじゅっさい)前後(ぜんご)年齢(ねんれい)で、おそらく性格(せいかく)(おだ)やかな「兄貴(あにき)(ぶん)」のような人物(じんぶつ)なのだろう。

もっとも、この装束(しょうぞく)はあまりにも特徴的(とくちょうてき)で、すでに(かれ)が我々(われわれ)のギルドで(もっと)鮮明(せんめい)象徴(しょうちょう)(ひと)つとなっていた。


「そんなこと()わないで~。これらの巻物(まきもの)はまだ(つく)(なお)せるし、達希(タシ)素材(そざい)はもともと(あつ)めにくいんだから、(きみ)一人(ひとり)でこれだけ手伝(てつだ)ってくれたのは本当(ほんとう)立派(りっぱ)だよ!」

(わたし)(となり)()緹雅(ティア)が、(やさ)しく亞米(アミ)(かば)うように()った。

そう()いながら、彼女(かのじょ)亞米(アミ)(かた)(かる)(たた)き、その(こえ)(やわ)らかく、ほのかな()みを(ふく)んでいた。

緹雅(ティア)(ひとみ)(あわ)(あお)で、晴空(せいくう)(もと)湖面(こめん)のように()()っていた。金色(きんいろ)長髪(ちょうはつ)片側(かたがわ)無造作(むぞうさ)(つか)ねて(かた)()らし、外套(がいとう)(した)()れるその姿(すがた)は、彼女(かのじょ)(あか)るく(した)しみやすい気質(きしつ)見事(みごと)調和(ちょうわ)していた。

彼女(かのじょ)今日(きょう)(しろ)長袖(ながそで)のシャツに(みじか)いスカートを()()わせた戦闘服(せんとうふく)()()け、その(うえ)僧侶(そうりょ)(よう)淡紫色(あわむらさきいろ)のフード()きマントを羽織(はお)り、両手(りょうて)には漆黒(しっこく)(よろい)手袋(てぶくろ)装着(そうちゃく)していた。

マントはゆったりとしていたが、それでも彼女(かのじょ)均整(きんせい)()れた優美(ゆうび)体躯(たいく)(かく)しきれるものではなかった。


彼女(かのじょ)のマントの胸元(むなもと)には、我々(われわれ)のギルド専用(せんよう)徽章(きしょう)()められていた――十人(じゅうにん)成員(せいいん)個性(こせい)武器(ぶき)のトーテムを象徴(しょうちょう)する(じゅう)紋章(もんしょう)構成(こうせい)された円環(えんかん)、その中央(ちゅうおう)一本(いっぽん)双刃(そうじん)(けん)(つらぬ)き、(つか)末端(まったん)には我々(われわれ)十人(じゅうにん)(かお)(きざ)んだ(しるし)があった。

この徽章(きしょう)は、我々(われわれ)が数週(すうしゅう)(つい)やして(とも)(つく)()げた成果(せいか)であり、ギルドの結束力(けっそくりょく)象徴(しょうちょう)するものである。

緹雅(ティア)(とく)にこの神秘感(しんぴかん)儀式性(ぎしきせい)()ちた意匠(いしょう)()()っており、それは彼女(かのじょ)服飾(ふくしょく)美学(びがく)戦闘(せんとう)スタイルへのこだわりにも合致(がっち)していた。

「いやいや、ちょっと愚痴(ぐち)()いたかっただけさ!それでも(おれ)はやっぱり(きみ)凝里(ギョウリ)(うらや)ましいんだよ。」

亞米(アミ)言葉(ことば)には()れくささが(にじ)んでいた。(なに)しろ緹雅(ティア)(おお)きな美人(びじん)であり、(あか)るく(した)しみやすい性格(せいかく)もまた、人々(ひとびと)を()きつける魅力(みりょく)(ひと)つだからだ。


「ふん、()()いてすぐに(すいしょうきゅう)()げて()()らせるつもりでしょ?」と私は苦笑(にがわら)いを()かべつつ()ったが、やはり笑顔(えがお)()やさなかった。

「いや~またそんなお世辞(おせじ)()って……(きみ)たちがいなければ本当(ほんとう)に私は途方(とほう)()れていただろうし、もしかしたらゲームを()めていたかもしれないよ!」と(わたし)はからかうように(つづ)けた。

「それはダメでしょ!」と緹雅(ティア)突然(とつぜん)とんがった(くち)をして、(すこ)不満(ふまん)げな口調(くちょう)()せ、一瞬(いっしゅん)にして(やさ)しい(あね)(ふう)から可愛(かわい)らしい少女(しょうじょ)へと()わった。

その瞬間(しゅんかん)のギャップに、私は心臓(しんぞう)一拍(いっぱく)()けるほどドキリとした。


「そういえば、(わたし)にはまだ未解放(みかいほう)状態(じょうたい)にあるスキルが(ひと)(のこ)っているんだ。本当(ほんとう)にその解放(かいほう)役立(やくだ)手掛(てが)かりは(なに)もないのか?」

私は(あわ)てて話題(わだい)()()えた。さっきの場面(ばめん)には本当(ほんとう)対処(たいしょ)苦手(にがて)だったからだ。

(わる)いな、こればかりは(おれ)たちにもどうにもできない。職業(しょくぎょう)ごとに(かく)されたスキルは(かず)()れず、それぞれ解放(かいほう)条件(じょうけん)(ちが)うから、(おれ)たちも手掛(てが)かりがないんだ。」

亞米(アミ)(くび)(よこ)()りながら()った。

姆姆魯(ムムル)(おな)じことを()っていたな~。どうやら(かれ)(なに)()()められなかったようだ。」

本当(ほんとう)残念(ざんねん)だ。このスキルを解放(かいほう)できれば、BOSS(ボス)攻略(こうりゃく)にもっと役立(やくだ)つかもしれないのにな。」

大丈夫(だいじょうぶ)!みんなが(そろ)っていれば、(わたし)たちが(たお)せないBOSS(ボス)なんて絶対(ぜったい)にないよ!」

緹雅(ティア)満面(まんめん)笑顔(えがお)()かべながらそう()った。


その(とき)晋見廳(しんけんのま)大扉(おおとびら)(ふたた)()(ひら)かれ、納迦貝爾(ナーガベル)(のぞ)成員(せいいん)たちが続々(ぞくぞく)と(あつ)まり、広間(ひろま)次第(しだい)(にぎ)やかさを()していった。

「おおっ!一番(いちばん)(つか)まえにくい芙莉夏(フリシャ)まで()たぞ!」

この朗々(ろうろう)とした元気(げんき)いっぱいの歓声(かんせい)は、(うたが)余地(よち)もなく不破(フハ)のものだった。

不破(フハ)魁偉(かいい)体躯(たいく)鉄塔(てっとう)のように堂々(どうどう)と広間(ひろま)()()り、全身(ぜんしん)(おお)武装(ぶそう)金属(きんぞく)符文(ふもん)(ひかり)交錯(こうさく)させながら(かがや)いていた。今日(きょう)もまた、(かれ)栄光(えいこう)象徴(しょうちょう)する青黒色(あおくろいろ)戦鎧(せんがい)(まと)い、威勢(いせい)()ちつつも(した)しみやすさを(うしな)わない雰囲気(ふんいき)(はな)っていた。

()()厳格(げんかく)中年(ちゅうねん)武人(ぶじん)のようだが、実際(じっさい)には(かれ)は我々(われわれ)のギルドで(もっと)健談(けんだん)かつ情熱的(じょうねつてき)一員(いちいん)であり、(つね)にユーモアと豪快(ごうかい)口調(くちょう)仲間(なかま)たちの緊張(きんちょう)(やわ)らげてくれる。

今回(こんかい)は、普段(ふだん)あまり(かお)()さない芙莉夏(フリシャ)までもが姿(すがた)(あらわ)したため、(かれ)(おも)わず大声(おおごえ)(おどろ)きの(こえ)()げるのも無理(むり)はなかった。


「これも凝里(ギョウリ)がずっと老身(ろうしん)(たの)()んできたから仕方(しかた)なく()ただけだよ。そうでなきゃ老身(ろうしん)はまだ自分(じぶん)神殿(しんでん)()ていたかったんだからね!」

芙莉夏(フリシャ)気怠(けだる)そうに(こた)え、語尾(ごび)(すこ)(たわむ)れを(ふく)ませながらも、その(おく)にこの(たたか)いへ(のぞ)真剣(しんけん)さを(にじ)ませていた。


芙莉夏(フリシャ)今日(きょう)()わらず、高貴(こうき)漆黒(しっこく)法師袍(ほうしほう)()にまとい、その全体(ぜんたい)には星空(ほしぞら)(もと)(なが)れる魔法回路(まほうかいろ)のような複雑(ふくざつ)銀色(ぎんいろ)紋様(もんよう)刺繍(ししゅう)されていた。

彼女(かのじょ)()(にぎ)られた法杖(ほうじょう)は、まるで氷晶(ひょうしょう)鋳造(ちゅうぞう)されたかのように()ややかで(まぶ)しく、その出現(しゅつげん)(とも)周囲(しゅうい)空気(くうき)()りつき、晋見廳(しんけんのま)全体(ぜんたい)瞬時(しゅんじ)()()んだ。

それは錯覚(さっかく)ではなく、芙莉夏(フリシャ)強大(きょうだい)魔力(まりょく)自然(しぜん)放散(ほうさん)された結果(けっか)であった。


彼女(かのじょ)()みは(はや)くはなく、むしろ悠然(ゆうぜん)としていた。だが、それで彼女(かのじょ)(あなど)(もの)(だれ)もいない。

芙莉夏(フリシャ)はもともと速度(そくど)追求(ついきゅう)せず、戦闘(せんとう)様式(ようしき)(つね)安定(あんてい)重視(じゅうし)し、(てき)圧迫(あっぱく)(なか)自滅(じめつ)させることを(この)むのだ。

(くわ)えて彼女(かのじょ)自身(じしん)性格(せいかく)もまた沈着(ちんちゃく)かつ老練(ろうれん)であり、その一挙手(いっきょしゅ)一投足(いっとうそく)には(つね)無視(むし)できぬ威厳(いげん)叡智(えいち)(ただよ)っていた。まるで我々(われわれ)の(だん)(みちび)精神的(せいしんてき)支柱(しちゅう)一人(ひとり)のように。

ただそこに()っているだけで、彼女(かのじょ)自然(しぜん)と人々(ひとびと)の視線(しせん)(あつ)め、言葉(ことば)(よう)さずとも、その気迫(きはく)がすでに(すべ)てを物語(ものがた)っていた。

彼女(かのじょ)(なか)(ほそ)められた(ひとみ)と、口元(くちもと)()かぶ微笑(びしょう)は、(つね)(つか)みどころがなく、それでいて不思議(ふしぎ)安堵感(あんどかん)(あた)えてくれるのだった。


「じゃあ(のこ)りは納迦貝爾(ナーガベル)がまだ()てないのか?あの(やつ)寝坊(ねぼう)してるんじゃないだろうな?まだログインしてないみたいだぞ!」

そう()ったのは、竜族(りゅうぞく)(みみ)一本(いっぽん)敏捷(びんしょう)悪魔(あくま)()()狄莫娜(ディモナ)だった。

彼女(かのじょ)()んで(あい)らしい(こえ)は、まるで無邪気(むじゃき)少女(しょうじょ)のように()こえ、第一印象(だいいちいんしょう)未成年(みせいねん)少女(しょうじょ)誤解(ごかい)されやすい。

だが、ここで(つよ)()っておく——狄莫娜(ディモナ)はれっきとした大人(おとな)であり、()まれつき童顔(どうがん)特質(とくしつ)()ち、さらに明朗快活(めいろうかいかつ)性格(せいかく)(くわ)わり、(おも)わず世話(せわ)()きたくなる存在(そんざい)なのだ。

その(とき)彼女(かのじょ)はまるでマスコットのような髑髏頭(どくろがしら)道具(どうぐ)()きかかえ、()()らしながらぴょんぴょん()ねて近寄(ちかよ)ってきて、(じつ)に楽し(たの)しそうな様子(ようす)だった。


彼女(かのじょ)数日(すうじつ)(まえ)に、()(ごと)都合(つごう)今日(きょう)(すこ)(おく)れるかもしれないって()ってたから、(みんな)にはわざわざ一時間(いちじかん)(おく)らせて集合(しゅうごう)って(つた)えたんだよ。心配(しんぱい)するな。」

(ぼく)(いそ)いで(こえ)をかけ、納迦貝爾(ナーガベル)弁護(べんご)をし、(みんな)彼女(かのじょ)戦闘直前(せんとうちょくぜん)()げたと誤解(ごかい)されないようにした。

「この時間(じかん)使(つか)って、今日(きょう)のパーティ編成(へんせい)戦術(せんじゅつ)確認(かくにん)しよう。耶夢加得(イェモンガド)はそんなに(あま)相手(あいて)じゃない。事前(じぜん)準備(じゅんび)してこそ万全(ばんぜん)だ。」

熟練(じゅくれん)の我々(われわれ)であっても、まだ(だれ)攻略(こうりゃく)したことのないBOSSを相手(あいて)にするときは、(けっ)して油断(ゆだん)(ゆる)されないのだ。


戦術(せんじゅつ)やパーティ編成(へんせい)については、昨日(きのう)すでに整理(せいり)して(みんな)(おく)ってあるよ!(ほか)意見(いけん)調整(ちょうせい)必要(ひつよう)だと(おも)うところはないかい?」

(こえ)()げたのは、我々(われわれ)のギルドの戦術(せんじゅつ)マスター、姆姆魯(ムムル)だった。

(かれ)体格(たいかく)特別(とくべつ)(おお)きいわけではなく、普通(ふつう)成人男性(せいじんだんせい)(おな)じくらいだ。だが、(やま)のような体格(たいかく)()不破(フハ)(となり)()つと、どうしても(ちい)さく()えてしまう。


それでも、(だれ)(かれ)軽視(けいし)することはない。なぜなら、姆姆魯(ムムル)頭脳(ずのう)こそが(しん)戦術(せんじゅつ)要塞(ようさい)だからだ。

特殊(とくしゅ)素材(そざい)収集(しゅうしゅう)手伝(てつだ)うだけでなく、BOSSに(かん)する手掛(てが)かりを一人(ひとり)(さが)しに()き、ときには(だれ)()()れたことのない古代遺跡(こだいいせき)のエリアにまで(しず)んで、わずかな情報(じょうほう)(あつ)めようとする。そのゲームへの理解(りかい)情熱(じょうねつ)は、ほとんど狂信的(きょうしんてき)といってよいほどだ。

戦術(せんじゅつ)(かん)して姆姆魯(ムムル)より上手(うま)(ひと)なんていないよ!」

緹雅(ティア)笑顔(えがお)(かれ)(かた)(かる)(たた)き、その(こえ)には敬意(けいい)()ちていた。

(つぎ)対戦(たいせん)機会(きかい)があったら、()()けるんだな~緹雅(ティア)。」

「ふふっ、(わたし)(たの)しみにしてるわ!」


「さて、本題(ほんだい)(もど)るが──」

姆姆魯(ムムル)(ふたた)(きび)しい口調(くちょう)()()えた。

現時点(げんじてん)把握(はあく)できているBOSSの情報(じょうほう)は、(じつ)非常(ひじょう)(かぎ)られている。瑞丹(ズイダン)周辺(しゅうへん)(むら)から()情報(じょうほう)によれば、今回(こんかい)耶夢加得(イェモンガド)(すく)なくとも九種類(きゅうしゅるい)属性(ぞくせい)()っているらしい。ただし、具体的(ぐたいてき)にどの属性(ぞくせい)かは確認(かくにん)できていない。それに(くわ)えて、(やつ)身体(からだ)複数(ふくすう)部位(ぶい)()かれており、同時(どうじ)分隊(ぶんたい)()んで撃破(げきは)する必要(ひつよう)があるようだ。」

「なんだか面白(おもしろ)そうな挑戦(ちょうせん)じゃねえか!」

不破(フハ)口元(くちもと)(おお)きく(ゆる)め、(となり)(だま)っている白翼(はくよく)(おとこ)(かお)()けた。

「そう(おも)わないか?札爾迪克(ザルディク)(おとうと)くん~」

札爾迪克(ザルディク)今日(きょう)(しろ)燕尾服(えんびふく)銀色(ぎんいろ)装飾(そうしょく)(ほどこ)した姿(すがた)(あらわ)れていた。その背中(せなか)(ひろ)がる純白無垢(じゅんぱくむく)(つばさ)は、まるで本物(ほんもの)天使(てんし)()()りたかのように神々(こうごう)しい。

(かれ)端正(たんせい)顔立(かおだ)ちと冷静沈着(れいせいちんちゃく)表情(ひょうじょう)は、まるで絵画(かいが)から()()した貴族(きぞく)のようであった。

しかし、(かれ)相変(あいか)わらず冷淡(れいたん)態度(たいど)(くず)すことはなかった。


「……うん。」

それが、不破(フハ)熱烈(ねつれつ)()びかけに(たい)する札爾迪克(ザルディク)唯一(ゆいいつ)返答(へんとう)だった。

その(みじか)一言(ひとこと)は、まるで冷水(れいすい)()びせられたかのように、不破(フハ)笑顔(えがお)一瞬(いっしゅん)(くず)()させた。

不破(フハ)(あに)さん、さすがにそれは札爾迪克(ザルディク)(こく)じゃないか?ははは!」

(よこ)様子(ようす)()ていた奧斯蒙(オスモン)が、(おも)わず(こえ)()げて(わら)った。(かれ)深緑色(ふかみどりいろ)のレンジャー装束(しょうぞく)()(つつ)み、(こし)には(ゆみ)矢筒(やづつ)(たずさ)えていた。(あか)いスカーフで両目(りょうめ)(おお)い、その神秘的(しんぴてき)雰囲気(ふんいき)は、まるで人心(じんしん)見透(みす)かす静寂(せいじゃく)狩人(かりゅうど)のようだった。

狄莫娜(ディモナ)(いもうと)よ~、お(まえ)んとこの(おとうと)本当(ほんとう)(むかし)から(まった)()わらんな!」

不破(フハ)(たす)けを(もと)めるように狄莫娜(ディモナ)視線(しせん)(おく)った。

狄莫娜(ディモナ)両手(りょうて)(こし)()て、()(かる)()りながらフンと(はな)()らした。

「それがどうしたの?札爾迪克(ザルディク)はずっとこのままでいいの。」

その声色(こわいろ)には(ほこ)らしさが(にじ)()ており、(おとうと)無口(むくち)性格(せいかく)をすっかり()()れ、むしろ()()っている様子(ようす)だった。

やり()りが(つづ)くうちに()雰囲気(ふんいき)次第(しだい)(なご)やかになり、やがて(おとず)れる大決戦(だいけっせん)(まえ)にした緊張感(きんちょうかん)は、仲間(なかま)同士(どうし)(かる)冗談(じょうだん)(わら)(ごえ)()()み、強固(きょうこ)(きずな)信頼(しんらい)へと()わっていった。


その(とき)、システムから提示音(ていじおん)()り、納迦貝爾(ナガベル)がログインしたとの通知(つうち)(とど)いた。

(おく)れてしまって本当(ほんとう)にごめんなさい、仕事(しごと)都合(つごう)(すこ)時間(じかん)がかかってしまって……。」

納迦貝爾(ナガベル)姿(すがた)晉見廳(しんけんちょう)(あらわ)れる。彼女(かのじょ)(いき)(はず)ませながらも、(わたし)たちに(かる)会釈(えしゃく)し、わずかな謝意(しゃい)(にじ)ませていた。現実(げんじつ)での多忙(たぼう)片付(かたづ)けて、(いそ)いで()けつけてきたのだろう。

大丈夫(だいじょうぶ)大丈夫(だいじょうぶ)(おれ)たちも、まだこのBOSSの攻略(こうりゃく)について(はな)()っていたところだから。」

私は(あわ)てて(こえ)をかけ、()(なご)ませようとした。

納迦貝爾(ナガベル)登場(とうじょう)は、いつだって(みな)視線(しせん)()()ける。深紫色(しんししょく)戦闘服(せんとうふく)は、忍者(にんじゃ)(ふう)意匠(いしょう)現代的(げんだいてき)(するど)裁断(さいだん)融合(ゆうごう)したデザインで、彼女(かのじょ)神秘的(しんぴてき)かつ爆発力(ばくはつりょく)()ちた存在(そんざい)()せていた。

()()まった曲線美(きょくせんび)軽快(けいかい)戦闘装備(せんとうそうび)相俟(あいま)って、まさしく暗夜(あんや)(ひそ)狩人(かりゅうど)のような致命的(ちめいてき)魅力(みりょく)(はな)つ。(こし)には手裏剣(しゅりけん)煙玉(えんだま)、様々(さまざま)な小型武器(こがたぶき)携帯(けいたい)されており、その細部(さいぶ)(いた)るまで戦闘(せんとう)への徹底的(てっていてき)(そな)えが()()れた。

そして胸元(むなもと)(ほどこ)された(うす)いレースの装飾(そうしょく)は、絶妙(ぜつみょう)視線(しせん)()らし、()居合(いあ)わせた(おとこ)たちの眼差(まなざ)しを(ちゅう)彷徨(さまよ)わせたのだった。


「コホン……それじゃあ、全員(ぜんいん)(そろ)ったことだし、早速(さっそく)転送(てんそう)しようか!」

私は咳払(せきばら)いしつつ話題(わだい)()()え、()雰囲気(ふんいき)(ふたた)(ただ)しい方向(ほうこう)へと(もど)した。

運営方(うんえいほう)もこの(てん)では(すこ)しは良心的(りょうしんてき)だな。(さいわ)いにも、以前(いぜん)(おれ)たちが瑞丹(ズイダン)山麓(さんろく)付近(ふきん)転送地点(てんそうちてん)設置(せっち)しておいたから、時間(じかん)無駄(むだ)(ある)かずに()む。」

姆姆魯(ムムル)補足(ほそく)しながら、すでに用意(ようい)していた転送装置(てんそうそうち)起動(きどう)させていた。


転送装置(てんそうそうち)起動(きどう)同時(どうじ)に、青白(あおしろ)光芒(こうぼう)(うず)()くように(ひろ)がり、(わたし)たち全員(ぜんいん)身体(からだ)一瞬(いっしゅん)(つつ)()んだ。空気(くうき)(ふる)わせる(みじか)(うな)(おと)(ひび)き──(つぎ)瞬間(しゅんかん)(わたし)たちはすでに王家神殿(おうけしんでん)晉見廳(しんけんちょう)から(はる)北方(ほっぽう)瑞丹(ズイダン)国境内(こっきょうない)札哈拉山(ザハラさん)山麓(さんろく)へと転移(てんい)していた。

足元(あしもと)には凍土(とうど)岩盤(がんばん)が入り()じる(けわ)しい地面(じめん)(ひろ)がり、周囲(しゅうい)白雪(はくせつ)(おお)われていた。山脈(さんみゃく)谷間(たにま)からは、氷霜(ひょうそう)(ふく)んだ冷風(れいふう)(うな)りを()げて()()れ、(わたし)たちに極地(きょくち)()()まれたかのような錯覚(さっかく)(あた)える。

頭上(ずじょう)(おお)(そら)暗雲(あんうん)()ざされ、低空(ていくう)旋回(せんかい)する(くろ)(かげ)時折(ときおり)雲間(くもま)横切(よこぎ)った。その不穏(ふおん)気配(けはい)が、これから(いど)任務(にんむ)(おも)圧迫感(あっぱくかん)()えていた。


「えぇ~!?BOSS(ボス)(いえ)()(まえ)直接(ちょくせつ)転送(てんそう)されると(おも)ってたのに……また(ある)かないといけないのかよ?」

不破(フハ)不満(ふまん)そうに(こえ)()()げ、失望(しつぼう)嫌悪(けんお)()じった(かお)()せた。

「そんな都合(つごう)のいい(はなし)あるわけないだろ!」

姆姆魯(ムムル)(あき)れたように()(かえ)すと、(つづ)けて説明(せつめい)した。

今回(こんかい)(あたら)しく実装(じっそう)された世界級(せかいきゅう)BOSS(ボス)には特別(とくべつ)発動条件(はつどうじょうけん)設定(せってい)されている。挑戦(ちょうせん)(せい)(たか)めるために、まず前提任務(ぜんていにんむ)完了(かんりょう)し、いくつかの重要(じゅうよう)素材(そざい)指定(してい)された場所(ばしょ)に届けなければ、本当(ほんとう)転送地点(てんそうちてん)解放(かいほう)されないんだ。」

そう()いながら、姆姆魯(ムムル)携帯(けいたい)している道具欄(どうぐらん)から(あわ)(ひかり)(はな)古代(こだい)地図(ちず)()()し、(つぎ)目指(めざ)すべき地点(ちてん)(しる)()(はじ)めた。


(わたし)たちは姆姆魯(ムムル)先導(せんどう)(したが)い、札哈拉山(ザハラさん)山麓(さんろく)()うように(つづ)(ほそ)小径(こみち)(ゆる)やかに(すす)んでいった。

一見(いっけん)すると静寂(せいじゃく)(つつ)まれた道筋(みちすじ)だが、その(じつ)には様々(さまざま)な危険(きけん)(ひそ)んでいる。

(やま)から()()ろす寒風(かんぷう)細雪(ささめゆき)()()み、(あゆ)みを(すす)めるたびに全身(ぜんしん)へと圧力(あつりょく)(くわ)えてくる。

たとえ(わたし)たちがレベル10の頂点的(ちょうてんてき)プレイヤーであろうとも、(けっ)して油断(ゆだん)(ゆる)されなかった。


最初(さいしょ)()えなければならなかったのは、濃霧(のうむ)(おお)われた一帯(いったい)(もり)──通称(つうしょう)蜥蜴森林(とかげしんりん)」であった。

ここに()()める濃霧(のうむ)は、まるで意志(いし)()つかのように、プレイヤーの移動(いどう)のリズムに(おう)じて濃淡(のうたん)()え、視界(しかい)(つね)曖昧(あいまい)()さぶってくる。

時折(ときおり)巨体(きょたい)紅蜥(こうとかげ)藍蜥(らんとかげ)(しげ)みの(あいだ)から()()し、孤立(こりつ)した仲間(なかま)(ねら)って猛然(もうぜん)突撃(とつげき)してくる。

(かれ)蜥蜴(とかげ)はレベルこそ7(きゅう)()ぎないが、環境(かんきょう)(たく)みに利用(りよう)する狡猾(こうかつ)さを()ち、濃霧(のうむ)高速移動(こうそくいどう)()()わせた奇襲(きしゅう)は、(おお)くの中堅(ちゅうけん)から高階層(こうかいそう)のプレイヤーにとって悪夢(あくむ)となってきた。

外皮(がいひ)岩盤(がんばん)のように(かた)く、物理(ぶつり)魔法攻撃(まほうこうげき)一部(いちぶ)無効化(むこうか)するうえ、短距離(たんきょり)跳躍(ちょうやく)腐蝕液(ふしょくえき)吐息(といき)駆使(くし)し、とりわけ妨害系(ぼうがいけい)攻撃(こうげき)への対応(たいおう)苦手(にがて)なプレイヤーを容赦(ようしゃ)なく()()める。たとえレベル8以上(いじょう)(もの)であっても、油断(ゆだん)すれば苦戦(くせん)(まぬが)れない。


不破(フハ)納迦貝爾(ナガベル)交代(こうたい)(ひそ)蜥蜴(とかげ)掃討(そうとう)していく。不破(フハ)圧倒的(あっとうてき)(ちから)装甲(そうこう)(くだ)き、納迦貝爾(ナガベル)正確無比(せいかくむひ)一撃(いちげき)()めを()す。その連携(れんけい)により、周囲(しゅうい)脅威(きょうい)(またた)()払拭(ふっしょく)された。

私はといえば、群体視野補助魔法(ぐんたいしやほじょまほう)展開(てんかい)し、仲間(なかま)たちが周囲(しゅうい)多少(たしょう)見渡(みわた)せるようにして、奇襲(きしゅう)()ける危険性(きけんせい)最小限(さいしょうげん)(おさ)えた。


(つづ)いて、(わたし)たちは(もり)(はし)(たたず)古代(こだい)石造(いしづくり)祭壇(さいだん)へと辿(たど)()いた。

祭壇(さいだん)表面(ひょうめん)には無数(むすう)古代符文(こだいふもん)(きざ)まれており、事前(じぜん)用意(ようい)した五種類(ごしゅるい)素材(そざい)(ささ)げなければ、前方(ぜんぽう)(みち)(ふう)じる仕掛(しか)けを解除(かいじょ)することはできない。素材(そざい)(おさ)めぬ(かぎ)り、進路(しんろ)生命体(せいめいたい)のごとく(うごめ)巨大(きょだい)(つる)(から)()られ、完全(かんぜん)()ざされてしまうのだ。

姆姆魯(ムムル)はすでに(あつ)めた素材(そざい)順序(じゅんじょ)(どお)りに祭壇(さいだん)へと(おさ)めていった。すると、(ひく)(ひび)共鳴音(きょうめいおん)(もり)全体(ぜんたい)(ひろ)がり、祭壇(さいだん)中心(ちゅうしん)から緑色(みどりいろ)光柱(こうちゅう)がゆっくりと()(のぼ)った。

その(ひかり)周囲(しゅうい)樹藤(じゅとう)(つつ)み込み、(またた)()()()てさせ、(ちり)へと()えていく。

()ざされていた前路(ぜんろ)が、(ふたた)(わたし)たちの眼前(がんぜん)姿(すがた)(あらわ)した。


蜥蜴森林(とかげしんりん)()けた(さき)(ひろ)がっていたのは、(あや)しい紫光(しこう)(はな)毒気沼地(どっきしょうち)だった。

(はな)()濃厚(のうこう)腐敗臭(ふはいしゅう)(ただよ)い、地面(じめん)沸騰(ふっとう)しているかのように()()なく気泡(きほう)()()していた。

沼地(ぬまち)地形(ちけい)(けわ)しく、足場(あしば)(とぼ)しく(ある)みも困難(こんなん)(きわ)める。一歩(いっぽ)でも()(はず)せば、たちまち泥濘(でいねい)()らわれ、(どう)きが(にぶ)ってしまう。

(くわ)えて、空気(くうき)には生命値(せいめいち)()えず(けず)毒気(どっき)()ちており、いかに(たか)防御力(ぼうぎょりょく)(ほこ)ろうとも完全(かんぜん)(ふせ)ぐことはできない。この環境(かんきょう)()では、プレイヤーの許容(きょよう)できる失敗(しっぱい)余地(よち)大幅(おおはば)(けず)られるのだ。

さらに厄介(やっかい)なのは、この()巣食(すく)うレベル9の魔物(まもの)たちである。巨大蠍(きょだいさそり)毒蜈蚣(どくむかで)など、どれも巨体(きょたい)似合(にあ)わぬ俊敏(しゅんびん)さを(ほこ)り、広範囲(こうはんいき)毒液(どくえき)()()らす攻撃(こうげき)仕掛(しか)けてくる。

一度(いちど)その縄張(なわば)りに()()めば、たとえレベル()優位(ゆうい)()とうとも、一時的(いちじてき)混戦(こんせん)()けられないだろう。

──だが、(わたし)たちにとっては、これしきのこと小手調(こてしら)えに()ぎなかった。


(なに)しろ、(わたし)たち一人(ひとり)ひとりは幾多(いくた)戦歴(せんれき)()み、最上級(さいじょうきゅう)装備(そうび)技量(ぎりょう)()(そな)えたプレイヤーである。(くわ)えて、(たが)いの連携(れんけい)にもすでに熟練(じゅくれん)しており、魔物(まもの)たちに()()(すき)一切(いっさい)(あた)えなかった。

札爾迪克(ザルディク)(てん)()()がり、雷鳴(らいめい)閃光(せんこう)()()こして接近(せっきん)する毒蠍(どくさそり)黒焦(くろこ)げに()()くす。

一方(いっぽう)奧斯蒙(オスモン)遠方(えんぽう)弓弩(きゅうど)(かま)え、沼地(ぬまち)(ふち)(ひそ)毒蜈蚣(どくむかで)容易(ようい)射抜(いぬ)いた。

しかし、それでも毒気(どっき)脅威(きょうい)依然(いぜん)として厄介(やっかい)であった。

装備(そうび)による防御(ぼうぎょ)無視(むし)して蓄積(ちくせき)される継続的(けいぞくてき)なダメージは、容赦(ようしゃ)なく生命値(せいめいち)(けず)(つづ)ける。

過去(かこ)にも、(おお)くのプレイヤーがこの環境効果(かんきょうこうか)軽視(けいし)した結果(けっか)、わずかの(あいだ)体力(たいりょく)半減(はんげん)させられてきたのである。


幸運(こううん)なことに、(わたし)高位(こうい)回復魔法(かいふくまほう)(あつか)うことができた。範囲型(はんいがた)回復術(かいふくじゅつ)──「永命光陣(えいめいこうじん)」を展開(てんかい)することで、移動(いどう)最中(さいちゅう)であっても隊員全員(たいいんぜんいん)生命値(せいめいち)安定(あんてい)させることができた。

同時(どうじ)に、緹雅(ティア)光属性(ひかりぞくせい)浄化結界(じょうかけっかい)発動(はつどう)し、空気(くうき)()ちる毒素(どくそ)中和(ちゅうわ)していく。完全(かんぜん)毒気(どっき)影響(えいきょう)()()すことはできなかったが、それでも被害(ひがい)大幅(おおはば)()らし、周囲(しゅうい)毒霧(どくむ)()さえ()むことに成功(せいこう)した。その結果(けっか)(わたし)たちの行軍効率(こうぐんこうりつ)飛躍的(ひやくてき)(たか)まった。

毒気(どっき)がどれほど厄介(やっかい)でも、結局(けっきょく)時間(じかん)(うば)うだけに()ぎない。本当(ほんとう)試練(しれん)は、まだ(はじ)まってすらいない……。」

芙莉夏フリシャ()()いた(こえ)(つぶや)き、その眼差(まなざ)しには()るぎない自信(じしん)宿(やど)っていた。

(わたし)たちは(みな)、これがただの準備運動(じゅんびうんどう)()ぎないことを理解(りかい)していたのだ。


毒気(どっき)沼地(ぬまち)()けると、足元(あしもと)地形(ちけい)次第(しだい)(やわ)らかく(すべ)りやすい(どろ)から、(かた)岩層(がんそう)へと()わっていった。周囲(しゅうい)気温(きおん)一段(いちだん)()がり、やがて視界(しかい)(さき)には(きり)(つつ)まれた低地(ていち)がぼんやりと()かび()がる。

高所(こうしょ)から見下(みお)ろせば、それは(ふか)穿(うが)たれた裂谷(れっこく)のようであり、その中央(ちゅうおう)には(ふる)びた洞窟口(どうくつぐち)(くち)(ひら)いていた。そここそが、世界級(せかいきゅう)BOSS──耶夢加得(イェモンガド)(いど)入口(いりぐち)であった。

洞窟口(どうくつぐち)(まえ)には、一人(ひとり)白髪(はくはつ)老人(ろうじん)()っていた。()()めてはいながらも、その気配(けはい)凡庸(ぼんよう)ならざるものを(ただよ)わせている。(かれ)古代(こだい)ヨーロッパの教皇(きょうこう)(おも)わせる長衣(ちょうい)(まと)い、()には(つえ)(たずさ)え、石段(いしだん)(うえ)(たたず)んでいた。まるで我々(われわれ)を(なが)きにわたり()(かま)えていたかのように。

システム(じょう)名前表示(ひょうじ)はなく、間違(まちが)いなくこのBOSS戦(せん)発動(はつどう)NPCであろう。

勇者(ゆうしゃ)たちよ、よくぞ(まい)った。」

老人(ろうじん)(こえ)(かす)れていながらも威厳(いげん)()びていた。

邪神(じゃしん)()()たす(もの)(みちび)くため、()いはここに(なが)(とき)()(つづ)けてきた。そして(いま)、ついに(なんじ)らが辿(たど)()いた……。さあ、勇者(ゆうしゃ)である(あかし)(しめ)せ。()いが(なんじ)らに討伐(とうばつ)への(みち)(ひら)こう。」

まさしく運営(うんえい)演出(えんしゅつ)らしい仕掛(しか)けであり、古代神話風(こだいしんわふう)雰囲気(ふんいき)儀式性(ぎしきせい)、そしてプレイヤー(かん)協力要素(きょうりょくようそ)見事(みごと)()()わさっていた。


システム規則(きそく)(したが)い、関門(かんもん)発動(はつどう)する最終権限(さいしゅうけんげん)()つのは隊長(たいちょう)のみである。ゆえに仲間(なかま)たちは、これまで(あつ)めた貴重(きちょう)道具(どうぐ)を一つずつ(わたし)()(たく)していった。

瑞丹(ズイダン)氷霜巨人(ひょうそうきょじん)()(たお)して(うば)った地図(ちず)

艾忨(アイシャン)(よん)つの形態(けいたい)()太陽神(たいようしん)撃破(げきは)した(すえ)()()れた黒石結晶(こくせきけっしょう)白石結晶(はくせきけっしょう)

伊達(イダ)帝王試練(ていおうしれん)突破(とっぱ)した(あかし)として(さず)かった刻印石板(こくいんせきばん)

瓊塔(キョウタ)雪山神女(せつざんしんじょ)(のこ)した封印符文(ふういんふもん)解析(かいせき)したもの、

達希(ダシ)(みっ)(たい)百臂巨人(ひゃくひきょじん)討伐(とうばつ)した(のち)()ちる元素核心(げんそかくしん)……

いずれも我々(われわれ)が(なが)時間(じかん)(つい)やしてようやく(あつ)めた貴重品(きちょうひん)ばかりであった。

凝里(ギョウリ)や~、準備(じゅんび)できたら(はい)ろうぜ!」

亞米(アミ)はすでに(よこ)(こぶし)(にぎ)り、意気込(いきご)んでいる。

私は苦笑(くしょう)しつつも(こた)えた。

「まぁ()てって! この関門(かんもん)は“多隊(たたい)同時突入型(どうじとつにゅうがた)”の設計(せっけい)なんだ。(みっ)つの入口(いりぐち)がそれぞれ(みっ)つの進攻路線(しんこうろせん)対応(たいおう)している。姆姆魯(ムムル)事前(じぜん)調(しら)べた情報(じょうほう)によれば、三隊(さんたい)同時(どうじ)(すす)まなければ(みち)(ひら)かれないらしい。だからまず進入(しんにゅう)順序(じゅんじょ)確認(かくにん)し、(たが)いの歩調(ほちょう)完全(かんぜん)に合わせる必要(ひつよう)がある。」

()()えると、私は仲間(なかま)たちへ視線(しせん)(おく)った。

その表情(ひょうじょう)(だれ)もが真剣(しんけん)で、長年(ながねん)にわたり数々(かずかず)の高難度(こうなんど)BOSS戦(せん)()()えてきた精鋭(せいえい)たちであっても、一切(いっさい)油断(ゆだん)はなかった。


みな姆姆魯ムムル事前じぜん配置はいちどおり、それぞれの洞窟口どうくつぐちってくれ!」

第一隊だいいちたいわたし緹雅ティア芙莉夏フリシャ亞米アミ四人よにん構成こうせいされる。唯一ゆいいつ四人隊よにんたいであり、全体ぜんたい戦力せんりょくもっとたか隊伍たいぐでもある。我々(われわれ)のたいもっと困難こんなん入口いりぐち突破とっぱし、もっと苛烈かれつなモンスターの圧制あっせいめ、戦闘せんとう主導権しゅどうけんにぎ重大じゅうだい任務にんむになう。

第二隊だいにたい狄莫娜ディモナ札爾迪克ザルディク不破フハ三人さんにんかれ三人さんにん非常ひじょう強力きょうりょく正面突破力しょうめんとっぱりょく持続戦闘力じぞくせんとうりょくほこり、おも目標もくひょう高防御型こうぼうぎょがたのモンスターを殲滅せんめつすることだ。

第三隊だいさんたい納迦貝爾ナガベル姆姆魯ムムル奧斯蒙オスモン三人さんにん構成こうせいされ、解謎かいなぞ戦術せんじゅつ遠距離操作えんきょりそうさひいでているかれらが、仕掛しかけを突破とっぱし、てき誘導ゆうどうして牽制けんせいする役割やくわりになう。

正直しょうじきはいまえ毎回まいかいすこ緊張きんちょうするね……」緹雅ティアわたしとなり小声こごえう。

「そうじゃな、老身ろうしんたちはいつも一番いちばん厄介やっかいてき相手あいてにせねばならぬ。じゃが、それこそ面白おもしろいではないか?」

芙莉夏フリシャかるやかにわらってかえした。


「ははっ、わたしきみたちとかたならべてたたかった時間じかんこころからたのしんでいるよ。」

わたし微笑ほほえみをかえし、かれらへの感謝かんしゃ真摯しんしあらわした。正直しょうじきえば、かれらがいなければ、いま自分じぶん存在そんざいしなかっただろう。

「おやおや〜これは内緒ないしょ告白こくはくかしら〜」

緹雅ティア口元くちもとをわずかにげ、茶目ちゃめのある声色こわいろ冗談じょうだんばした。

「な、なにってるんだ!」

わたしすこ気恥きはずかしくなってかおよこそむけた。

「はいはい、みんなってるんだから〜もうイチャイチャはやめなさいよ!」

亞米アミわらいながら、わたし緹雅ティア茶化ちゃかした。

わたしかる咳払せきばらいをして、っていたすべての素材そざい老人ろうじん足元あしもと石板せきばんくぼみにいた。

「それじゃあみな、いつでも連絡れんらくれるようにしておいてね。」

わたし最後さいごにそう念押ねんおしした。

刹那せつなのうちに、みっつの洞口どうこうがそれぞれことなる色彩しきさいひかりはなった。

地面じめんがわずかにふるえ、転送魔法てんそうまほう起動きどうし、わたしたちはみっつのことなる挑戦路線ちょうせんろせんへとそれぞれおくされた。



***「第二部(だいにぶ)は第26(だいにじゅうろくわ)です。」




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