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崩壊HAND  作者: ナタデ 小町【・△・】
序章:【崩壊世界と僕の夢】
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9話「魔の手と書いてハンドと読む」

「よいっしょぉぉぉ![業落とし(カルマオトシ)]ッ……!」


 (ガベル)が横に薙ぎ払われる。

 狙われたのは──。


「危ないです……ねっ!!!」


 ギリギリの所で顔を後ろに大きく反らす──(ミコト)だ。


「避けるかぁ……。流石だね、お兄さん。いや……(オニ)さんって言ったほうがいいかな?ふふ……」


 ぐるり……!と(ガベル)を回し、その威力を殺すこと無く2撃目へと繋げる天子(テンコ)。次は、下からの打ち上げである。


「いったいどこから知ったか知らないですけど……その名前を知っているという事は少なくとも、依頼者はアカシャ関係ですね?」


「どうかな?……そうなんじゃない?」


「知らないんですか……」


「私にはどうでもいいからねぇ!……りゃあぁ!!!」


 フン……!


 空振る(ガベル)。されど、また器用に手元で槌を回転させる天子(テンコ)。そして今度は、ガンッ!と強くコンクリートを踏み締めて、(ガベル)をぶん投げる。


 力強く宙を回り飛んでいく(ガベル)は、(ミコト)を睨み付けていた。


 「依頼者の事を詮索しすぎない、便利屋だって同じことだろう?名前こそ違えど、私、傭兵とやる事はそんなに変わらないんだからさ。あっ……だから(オニ)でも務まるんだ。いや、(オニ)が適材といったほうがいいかな?」


 飛んでくる(ガベル)。強くコンクリートを蹴り、それを冷静に避ける(ミコト)。その先に、天子(テンコ)が立っていた。


「ぁ……!?」


「だって、殺す事には慣れてるもんねぇ……?(オニ)……だもんね?」


「……なっ。慣れるわけ……慣れるわけがないだろう!あんな事ぉ!!!んぐっ……!ぐぁぁぁ!!!」


 危機一髪、何とか腕を構える。そこに容赦なく叩き付けられる回し蹴り。ダンッ!と強い音を立て飛んでいく(ミコト)。その(ミコト)を紅い糸が絡め取る。

 間一髪、ビルの柱へ(ミコト)が叩き付けられる事を防いだ。


天子(テンコ)……でしたっけ?」


 その糸を操るのは勿論、紅鈴(クレイ)である。


「あぁ……そうだよ、なんだい?言いたいことがあるのかな?聞いてあげようか?」


「あんまり便利屋(うち)の社長舐めてたら大変な事になるよ?」


「……へぇ、例えば?」


(オニ)が……仕置きに来るとかですかねぇぇぇ……!!!」


 吠える(ミコト)


 片足を軸にその場で、急速なターンをする紅鈴(クレイ)。そのエネルギーが、彼から紅い糸へと伝わり、更にはそれが絡め取った(ミコト)へ伝わる。


 糸にその身を離される。しかし、受け取ったエネルギーに従い飛んでいく(ミコト)。その先に天子(テンコ)。2者はしっかりと互いの目を見つめ──。


「来いっ!(オニ)ィィィッ!!!」

「うぉぉぉぉっっっ……!!!」


 ドォォォンッッッ!!!


 崩れかけの建物を、紅鈴(クレイ)の紅い髪を、狒々(ヒヒ)の粘性の体を揺らす衝撃。それを起こした原因の2者は、平然とその場で拳を合わせている。


「……強い。そこら辺のアカシャの()よりよっぽど。本気の一発だったんですけど……止められちゃいましたね。それも、ハンマー無しで」


「だ〜か〜ら〜(ガベル)だってっ!」


 拳を合わせながらに語る2人。

 そのどちらもが、まだその身に力を秘めていることは明確だった。両者得物無しで始まったこの戦闘。既に、バチバチに激しく熱く火花が散る。


 だが、2人が拳を合わせる横で、向かい合うもう2人──というよりも1人と1匹──がいた。


「グゥゥゥア゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!」


「はいはい。分かってるよ。お前の相手は俺だって言いたいんだろ?……じゃあ相手してくれよ。十数発撃って、一度も中てられなかったご自慢のパンチでな?」


 雄叫びと嘲り。

 温度こそ違えど、どちらもただ、相手に倒すと言う意志をはっきりと伝えていた。


           ◆ ◇ ◆


 場所は変わり、クズレの国特務隊オフィスビル。訓練室にて、白熱するガラスの向こうの我路(ガロ)とクラゲ型のアカシャの()の戦闘訓練を観ながら話をする4人。

 王・守都 四方画(モリミヤ・ヨモエ)。特務隊メンバー・刃山 堅剛(ハヤマ・ケンゴ)茶畑 香呑葉(チャバタケ・コノハ)。そして、新人・言観 霊架(コトミ・レイカ)だ。


「このクズレの国国家特務隊のメンバーは非常に強い力を持っている。まぁ……その殆どが魔の手(ハンド)と言う霊気能力なんだけどね。とか言うワタシも魔の手(ハンド)を使う側の1人だしね」


魔の手(ハンド)……?れ…霊気能力……?」


「あー……分からないか。ごめんごめん、教えてあげるね、言観(コトミ)君♪」


「あぁ!よろしく頼む!守都(モリミヤ)(じょう)!」


 興味津々と目を合わせる彼女に四方画(ヨモエ)はうんうんと頷き──。


「じゃあ、香呑葉(コノハ)君、出番だよ♪」


 ──その説明を投げつけた!


 実際、霊気の操作に関して言えば、特務隊随一の腕を持つのが茶畑 香呑葉(チャバタケ・コノハ)である。理には適っているのだが、あまりにも変化球で渡されたパスに当然、香呑葉(コノハ)は──。


「へっ!?アタシ?今、四方画(ヨモエ)さんが説明する流れでしたよねぇ!?どんな急カーブのトークパス投げてんすか!?危うくデッドボールっすよ!?……まぁ……やりますけど」


 ──怒涛のツッコミを繰り出した。

 その様子に言観(コトミ)は半分苦笑いであった。


「よしっ!じゃあ、お姉さんが分かりやすく3つに分けて説明してあげよ〜〜〜!よ〜く聞いてるんだよ!言観(コトミ)ちゃん!」

「まず、霊気について!これは簡単。私たちの中にあるエネルギーの事。漫画とか小説で良く出てくる魔力とか、呪力とか、そんな感じのやつの事だね〜!もっと具体的に言うと第二の体力みたいなもの!使うと疲労感があるし、無いと命の危機すらあるそんなもの……かな?」

「で、2個目。霊気能力っていうのはその霊気を使って扱える力のこと!霊気をエネルギーとして変換して、火を出したり、衝撃を生み出したり、色々あるよ!特務隊の人は皆、何かしら持ってるよ」

「そして3個目。魔の手(ハンド)。多分、一番、一般的な霊気能力だね。魂をね、霊気を媒介にして、掌握する技。だから──魔の手(ハンド)


           ◆ ◇ ◆


「……流石に相性が良くないか」


 既に十五分は戦闘を行っている。

 正面からゴリラと戦って分かった事がある。

 このゴリラは近づけば、腕を振り回す攻撃。遠ざかれば、腕を飛ばす攻撃をしてくる事。そう。それしかしない事が分かった。図体の割にそのスピードは速いが、動いていれば、避けるのはそう難しくない。


「グゥゥゥア゙ッ!」


 ただ、このままでは確実に僕の体力切れが先に来る。だからこそだ、落ち着いて考えるんだ。


 僕にできる戦い方を。

 僕の持つ勝ち筋を。


「はっ……!また飛ぶパンチか……!」


 僕の魔の手(ハンド)、【傀儡傀儡(クグツカイライ)】は、殊、拘束に優れた霊気能力だ。腕に紅い糸を出現させ、その糸を操ると言うシンプルな特性を持つ。糸は自在に伸ばしたり、巻き取る事が出来る。されど、針金程の硬さが無ければ、蜘蛛の糸の様に粘性も持たない。言ってみれば、多少好き勝手出来る綾取りを可能にする力だ。それだけだ。それでも便利ではあるし、自由度も高い。


 ……が、それはあくまでも、その糸が通じる場合の話。問題は、今回の様に相手がアカシャの()みたいな奴となると話は別。目の前にいるゴリラはゴリラと言う形こそ持っているが、それを構成しているものはただの黒い粘液。相手に糸を巻きつける事が出来ない。


 ここまでなら、まだ良い。


 問題は、この力の攻撃性の低さだ。


 アカシャの()を倒す方法は基本的に1つ。そのアカシャの()の核を砕く事。黒い粘液のどこかにある掌サイズの球体。

 霊気や有象無象の魂が寄り集まって出来たそれは、アカシャの()にとって脳であり、心臓。せめて場所さえ分かればいいが、攻撃性の低さがそれすらも良しとしない。


 「……いや……待てよ?……ある。あるじゃないかっ!そこにっ!!武器がっ!!!」


 膨張する黒い腕を背に、(ミコト)は武器に向かって駆け出した。 

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