22話「3人寄ればすっげぇー馬鹿」
「それでは早速、何を知りたいですか?可能な限りお答え致しましょう!」
ハイッ!と手をピンと上げて最初に質問の意志を示したのは魅神 命。
「はい、速かった!命様ッ!」
「アカシャの居場所が知りたいんですけど……わかりますか?」
「……残念ながら分かりかねますね。ですが、アカシャに関わっている人物達とその拠点はある程度分かりますよ。例えば、運び屋・WILD ROADとか……」
ガタンッ!
椅子が倒れる。先程まで座っていた鬼頭 一角が、体を前のめりにして三申 狒々丸の肩を掴んでいた。強く。痛い程に。
「運び屋が……アカシャと……関わってるだとッ!!!」
「落ち着きましたか……?」
「……悪い。俺からも質問だ。運び屋は……何をしてる?何故、アカシャと関わってる」
椅子に座り、自身の膝に肘をつき、両手で額を支える一角。その力強く大きな手で顔が隠れている。
「それを説明するなら……アカシャのしていることから説明したほうが早いでしょうね。先程、私は名前持ちの狒々だとお伝え致しましたよね?アカシャはそれが狙いなのです」
「狙い……?」
「えぇ……理由は知りません。ですが、目的なら分かります。名前持ちを創る事。創ったそれを軍事利用したいのか、研究したいのか、はたまた愛玩動物としているのか……。まぁ、何にせよ。名前持ちを創るなら、人間が必要です。……運び屋はそれの収集を担っている」
「あぁ……!頭痛くなってきたわッ!悪い、俺、ちょっと外の空気吸ってくるわ」
部屋を出ていく鬼頭 一角。彼を隠した扉はバァンッ!……と酷く雑に閉まるのだった。
「……」
「……」
重い空気がこの部屋に充満する。
絵画の様に動くことのない光景がただそこにあった。ドアの音から5分は経ったであろうその時、静寂を壊したのは狒々丸だった。
「命様。明日、スラム街に運び屋が現れます。私は彼等と接触してみようと思うのですが、ご一緒にいかがですか?」
「良いですよっ!私も気になってたんです!この目で見て、良し悪しを判断しますッ!でも、なんで私に協力的……というか……友好的……というか……?」
「……貴方がコチラにいらしたというのに、絡繰良 紅鈴がいない。そこで分かりました。恐らく 紅鈴はアカシャに捕まったんですね。ですから、アカシャを探している。そうですよね?」
「私の目的も大体一緒です。咎 天子……私の大事な秘書である彼女を必ずアカシャから取り戻すっ!その為に、力が必要です。奴を倒す為の力が……。なので、これは依頼と捉えて貰って構いません。……咎 天子を助けて下さい……!」
ベッドに座っていた三申 狒々丸は深く頭を下げていた。ぽかん……とする命を置いてけぼりにして、その心の中にある意志を示した。
「三申さん……!」
下から顔を覗かせる狒々丸。
見上げたそこにあったのは太陽だった。底なしに明るくて、不安や悩みのタネをすべて燃やしてしまう様なそんな笑顔がそこにあった。
「知ってる事……余す所なく聞かせてもらいますからね。アカシャにギャフンと言わせてやりましょッ!……狒々丸さん」
「アッ……!勿論、扉の向こうで聞き耳立ててる人もちゃんと手伝って貰いますからねッ!」
バタンッ!
「な……何で気づいたんだよ……」
「風の強い日でもないのに、扉がガタガタ揺れてたらそりゃあ気づきますよ!……不器用ですねぇ……一角さん」
「それは……態度がでしょうか?それとも……手先がですか?」
「どっちもですねっ!」
「やかましぃわ……お前らっ!」
「ふふん……!目的は決まりましたね!運び屋の真相を解明してスラム街を守るッ!そしてアカシャから大切な人を取り戻すッ!そうと決まれば……「そうですね、情報の擦り合せが必要かと!」「アカシャと戦えるぐらいに強くならねぇとなぁ!」……よしっ!守り隊っ!結成ですねッッッ!!!!!」
「「ダサっ……」」
スラム街を守る為。
大切な秘書を取り戻す為。
大事な相棒と再び笑い合う為。
三者三様に想いを重ねて、打倒アカシャへと動き出すのであった。