01_彼女との出会い
薄暗い部屋に窓から差し込む微かな光が、今日という日の始まりを告げてしまう。
雲一つない晴天に怒りすら覚える。
*
毎晩、君を忘れられますようにと星に願っても
毎朝、太陽が君の笑顔を連れてきてしまうんだ。
こうやって俺の絶望は一生続いていくんだろう
君を救うことが出来なかったあの日から。
*
目が覚めてからの数分間、無機質な天井をしばらく見つめていた。
高校に向かうために重い体を起こし、洗面所に向かう。
鏡に映った自分は、いつも通りの冴えない顔をしている。
髪型も乱れ、少し青白い顔が彼自身を不快にさせた。
学校に着くと、周りのクラスメイトたちは楽しそうに笑っている。
どうせ2年後には卒業して大学デビューとか何とか言って、対人関係も上書きされていくんだろうと思うと、心のどこかで冷めた目で見ていた。
強い光が一層影を濃くするのか、ふとした瞬間に過去の記憶が頭をよぎる。
俺が小学生だった頃、隣にはいつも彼女ー東雲絵莉ーがいた。
太陽のように明るい彼女の笑い声、無邪気な表情は今でも鮮明に思い出す。
知らない植物や虫のことを沢山教えてくれたし、何よりそれらを楽しそうに教える彼女の笑顔が好きだった。
彼女のお陰で世界がどんどんカラフルになっていくような、不思議な力を持っていた。
しかし、彼女を目の前で失ったあの日以来、俺の世界はモノクロになった。
彼女が息を引き取った時、医者が彼女の両親に頭を下げるのを遠くから眺めていた。
心の中で、彼女を失った悲しみと何もできなかった無力感が渦巻く。
◇◇◇
「おい!…おい!颯真!聞いてるか?」
クラス内でお調子者の新田だけは、他人との距離を置いている俺にもお構いなしで話しかけてくる。
「あぁ、ごめん。ぼーっとしてた。」
すると間髪入れずに
「職員室で見かけたんだよ!転入生だぞ転入生!あれは絶対に将来可愛くなるタイプだぞ!可愛さの原石っぽい感じだった!
俺らのクラス担任と話してたってことはこのクラスに来るっぽいぞ!お前なら俺の恋路を応援してくれるよな?な!?」
と大声で肩を縦に揺らしながらまくし立てて喋ってきた。
ちなみに、新田は彼女欲しさにクラスの女子の殆どにアタックし、そしてその全てで玉砕している。
転入生が入ったところで結果は見えているが、そっとしておこう。
「俺はどうでもいい。勝手にやってろよ。」
と本心で返事をすると、新田はつまらなそうな顔をしながら去っていった。
新しい出会いなど自分には関係ないことだ。
だが心のどこかでは、純粋に人を好きになれる新田を羨ましく思う部分もあった。
◇◇◇
新田の言った通り、その日の終礼で担任が
「既に知っている奴もいるようだが、明日からこのクラスに転入生が来ることになった。みんな暖かく迎え入れるように」と言った。
―――この出会いが人生を変えるほどの大きな波乱を呼ぶとは、この時は知る由もなかった。




