なんかすげーマッスィーン出てきたらしい
「今回の作品こそオラの最高傑作にしてオメェを倒す究極の“まっすぃーん”その名も――」
グレイはそこまで行って後ろの大きな物体からシーツを引き剥がす。
「戦う農作業ロボット“田吾作君”だべ!」
グレイの言葉と供に姿を現したのは……珍妙な物体だった。
どうやらそれは人をモチーフに作ってあるらしかった。
胴に当たる大きな丸い筒の両側に手ではなく二本の鍬が取り付けられており、下側には足の代わりに四本の鉄製の車輪がついている。
顔に当たる部分には逆さにしたバケツが据えられ、意味があるのか麦藁帽子をかぶせてある。
バケツから突き出している鼻に当たる部分はどうやらカメラになっているらしかった。
「ギュパ、なかなかどうして古典的な中に先鋭的センスが光る秀逸なようでいてそうでもないようなデザインですな」
シオがわけのわからない感想を言う
「かぁーーっくいいー!」
ルシアのほうは瞳を輝かせている。
「お前ら……本当にそう思ってるか?」
ソードは疲れた声音で呟く。
「はぁーはっはっはぁーーー、どうだべ、恐れいったべか!?」
グレイがまた高笑いをあげる。
「お前が思ってるのとはたぶん違う意味でな……」
ソードは最早アホらしくなって適当な受け答えをする。
しかし、あることを思いつきソードは口を開く。
「そうだ、確か昨夜は魔石に属性が宿っているという話しはしたな、ルシア?」
「え?、あ、うん……そーだったと思う」
突然話を振られたルシアは慌てふためきつつも答える。
「ちょうどいい、昨日の話を実践を交えて教えてやるから見てろ」
ソードは言って妙な物体“田吾作君”に向かって一歩踏み出す。
「魔石はその結晶構造や色合いによって宿る属性が違うわけだが、その構造は自然界に存在する宝石に酷似していることから、その宝石になぞらえて名を呼ばれる……さて、前置きはこのくらいにして、とっとと始めようぜ」
ソードは左手の人差し指を曲げ伸ばししてグレイを挑発する。
「今回こそ吠え面かかせてやるべ、いけっ、田吾作君!!」
グレイは言って取り出したリモコンのボタンを押す。
『ターゲットホソク……ツイビカイシ』
グレイの合図と供に田吾作君が機械的音声で喋り、前進を始める。
それと供に二本の鍬が高速で回転を始める。
「ギュパ、いったん離れましょう、邪魔になりそうですし」
「うん」
シオとルシアは申し合わせてソードから離れる。
一気に田吾作君が加速したのはそのときだった。
土煙を巻き上げて突進してくる田吾作君に向けソードは右の掌をかざす。
その指にはめている宝石の指輪の一つ“紅玉”に赤い光が灯っている。
次の瞬間、何もなかった宙に幾条もの炎の矢が現れる。
「“紅玉”は「炎」の属性、化学変化、熱エネルギーの象徴……“炎矢”っ」
語尾と供に放たれた炎の矢は一直線に田吾作君へと襲い掛かり全弾命中するが、それを吹き散らして田吾作君はソードへと突進を続ける。
「どわぁっ」
予想外のことにソードは声を上げながらも回避行動をとる。
どうにか回避したものの、ソードは転倒し、その上に田吾作君の巻き上げた土砂が降り注ぐ。
「プッ」×2
「はぁーーーはっはっはぁーーーどうだべソード!」
ルシアとシオの小さく吹く声と、グレイの言葉にソードの指の“翠玉”に眩いばかりの光が灯り、ソードは含み笑いをもらしながらゆらりと起き上がる
「ンックックックック……もういい、もう怒った……本気でぶっ壊してやらぁっ!!」
ソードは叫び再度突撃してくる田吾作君をかわして距離をとり、両手を顔の前で交差させる。
「くらえぇっ!“裂空”っっ!!!」
ソードは叫び一気に交差した手を真横になぎ払う。