なんか天災科学者出てきたらしい
町の外れにあるちょっとした空き地。
時刻は夕暮れに差し掛かろうとしている。
貧弱な木がまばらに生えているそこにたどり着いたソードが最初に見たのは白いシーツをかぶっている大きな“何か”
そしてそのすぐ下にある御座の上に積まれた山のような大量の菓子。
その嵩は立ったときのルシアの腰ほどもあるだろうか。
そして、その横には幸せそうに菓子の山を切り崩し、口いっぱいにそれを頬張っているルシアの姿があった。
しばしその光景にソードとシオは呆れていた。
「はぁーーーはっはっはぁーーーー!!!、ひっさしぶりだべな、ソーーーード!」
突然高笑いと供にシーツをかぶっている物体の後ろから一人の男が現れる。
年は若いがボサボサの灰髪に牛乳瓶の底のような度のキツイ眼鏡。
着ているのは薄汚れた白衣。
なんとも怪しい男だ。
「おい、ルシアっ!、こっちこい」
ソードはそれを無視してルシアの名を半ば叫んで呼び手招きする。
ルシアはやっとソードたちに気付きお菓子を両手いっぱいに抱えてソードの許に駆けてくる。
「なにー?」
聞いてくるルシアの眉間にソードのチョップが入る。
「あうっ、いったぁーい」
ルシアは痛がりつつも菓子を放そうとしない。
ある意味そこだけは大したものだった。
「なにすんのさっ」
涙目で抗議するルシアにソードは息を吸い込み
「なにすんのさ……じゃねぇだろっ!、あんな『自分は不振人物です』と大声で触れ回ってるような格好のやつにほいほいついて行くな、もし本当の人攫いだったら今頃売り飛ばされてるぞ!」
ソードは男を指差してまくし立てる。
「オメ、そこまで言うべか!?」
男が声を上げるがソードはそれも無視し
「ったく、一時は本気で心配しただろうが」
ソードは言って少し照れくさそうに頭を掻く。
「……ごめん……」
ルシアは素直に謝る。
「ま、無事で何よりだ、とっとと帰るぞ」
「ソードさん、ソードさん」
踵を返そうとするソードの服のすそをシオが引っ張って止める。
「さっきから無視され続けて地面に『の』の字を書き始めてるあの人は誰なんですか?友達ですか?」
その問いに“余計なことしやがって”と言いたげな表情を浮かべてソードはシオをにらみつけた後、シオの言葉通りの行動をしている男に目を向ける。
「……奴の名はグレイ=ダースハルト、信じられないが、一応貴族らしい、さらに自称天才科学者にしてロボット工学者で、ガラクタを作っては俺にちょっかい出して壊させている迷惑極まりない暇人だ……ついでに言えば、”あれ”は”友達”ではなく”知り合い”だ」
「ギュパー、要するに紙一重な人ですね」
「貴族のイメージと違うー」
ソードの説明にシオとルシアが見解を述べる。
「なんかすっげぇ引っかかる物言いだべが、オラが天才科学者にしてロボット工学、機械工学の権威として名高いグレイ=ダースハルトさまだべや」
男、グレイは親指で自身を指し示す。
「……聞いたことあるか?」
ソードの問いにルシアとシオは首を横に振る。
「オメェ等、オラを馬鹿にしてるだろ」
「ああ」「はい」「うん」
異口同音にソードたちは肯定の意を示す。
「クッ……、まぁいいべ、天才はえてして凡人には理解されねぇもんだべや」
グレイはひとつ鼻を鳴らす。
「いいからとっとと要件済ませちまおうぜ、しかたねぇから付き合ってやるからよ、今回のガラクタはどんなのだ?」
「ガラクタ言うでねぇべ!」
だるそうに言うソードに対しグレイはつばを撒き散らして叫び
「今回の作品こそオラの最高傑作にしてオメェを倒す究極の“まっすぃーん”その名も――」
グレイはそこまで行って後ろの大きな物体からシーツを引き剥がす。