2人の漫才が楽しい適当なファンタジーが再開するとかしないとか
ギシ・・・ギシィ・・・メリメリ・・・・
宿の階段が不安な音を立てる中ソードは慎重な足運びで歩を進めていた。
階段を上りきったあとも床の弱い箇所を避けていく。
診療所からの帰りに買い物をしたため両手は塞がっている。
数日前、ルシアの村に行き着く過程で落としてしまった荷物は村の若者が回収してくれた。
幸い携帯食料がなくなっていただけで済んでいたため食料と消耗品を買い足すだけの出費ですんだ。
(さて、ルシアとシオもそろそろ帰っているはずだ)
ソードがノブを回してドアを開けた瞬間、突然中からシオが飛び出してソードに抱きついてくる。
「どわあっ!?」
ソードは思わず荷物を取り落とし一歩下がり
バキャアッ
見事に床の弱いと箇所を踏み抜き片足を埋める。
シオがソーどの服から鼻を離すと、二人の間に鼻水が糸を引く。
「ソードさん今まで」
「だああ、バッチイッ!」
ソードは叫んでシオを殴り飛ばし、急いで立ち上がって服の汚れた箇所を見る。
そこには言うまでもなくべったりと鼻水がついていた
「ああっ、どうしてくれんだオレの一張羅!」
「ギュパァ、それどころじゃないですよソードさん、ルシアさんが・・・ルシアさんがぁっ!」
シオは半泣きで言ってまたソードに飛びつこうとする。
「寄るなあっ!、っつうか落ち着けえっ!」
ソードはシオの顔面を足裏で受け止め悲鳴じみた声をあげる。
その後、ひとしきり喚いた後シオはやっと落ち着きを取り戻し経緯を話し始める。
「・・・で、ルシアが消えたわけか」
ソードがシオの話の最後を継ぐとシオはコクコクと頷く。
「やれやれ、のっけからこの調子かよ・・・とりあえず街を二手に分かれて探すぞ、日が沈むころにこの部屋で合流、後のことはそれから考えりゃいい、いくぞ」
ソードが立ち上がろうとしたそのとき
トスッ、ビヨンビョーン
突然シオの側頭部に矢が突き立ちしなる。
ソードは立ち上がって矢の入ってきた窓の外に目を向けると、貧相な案山子らしき物体が、矢を打ち終わった体勢で佇んでいた。
ソードは心底いやそうに顔をゆがめる。
「・・・ソードさん、オイラの頭に何か刺さってる気がするんですけど・・・」
シオの問いにソードは刺さっている矢を無造作に抜いてシオに見せる
「ム、何と非常識な、当たりどころが悪かったら死んでるとこですよ全く」
「当たり所は十二分に悪いし生きてるほうが非常識だと思うぞ・・・ん?」
ソードは矢尻に紙が巻きつけてあることに気付きそれをとる。
「矢文か・・・また古風な・・・ま、あいつらしいといえばらしいが……」
紙を開きソードは暫く黙り込んで文面を見ていた。
「ギュパ、どうしたんですソードさん、まさかソードさんが水虫だと言いふらすとかそういった内容が・・・」
ゴス
ソードの鉄拳がシオの頭頂に打ち下ろされる。
「ルシアの居場所が分かった、行くぞ」
ソードは言うや否や駆け出す
「ソードさん、こんなとこで走ったら・・・」
バキイッ
もはや数えることすらもやめた音が宿に響き渡る。
それを聞いて一階でグラスの手入れをしていたマスターは大きな体に似つかわしくない小さなため息を吐き出し
「・・・そろそろ建て替えるか・・・」
と呟いた。