お気楽極楽に掲載 器用貧乏ファンタジー
窓の外は舞い降りる夜の帳に次第に浸されていく。
前の通りには相変わらず人気はない。
ソードは軋むベッドに腰掛け、一つため息をつく。
その目の前でルシアとシオがランプのそばでトランプに興じている。
「ギュパ、マイルドストレートフラーッシュ!」
シオがわけの分からない役を完成させる、ルシアは震える手で一枚カードを引き
「なんの、エースのシックスカードッ」
やはりわけの分からない役の名を叫びカードをテーブルにたたきつける。
よく見てみればエースが少なくとも七枚出ている
暫く二人は黙り込み
「ギュパァ、ソードさん……これはいったいどっちの勝になるんでしょうか?」
「知るかぁっ!」
シオの問いにソードは叫び返す
「ソード、あんまりカッカしてるとハゲるよ」
「いらん世話だっ!」
ルシアにさらに語気を強めて切り返し、ソードはまたため息をついてうなだれる。
「あのなぁ、ルシア、お前魔術師になりたいんなら、基礎知識くらい身につけてるんだろうな?」
「ないよ、それよりマホー見せてマホー、派手なやつ、ボーって火が出るのがいいな」
はしゃいで即答するルシアにソードは頭痛を覚える
「……こんなとこで派手な炎の魔術なんて使った日には間違いなくこの宿が全焼するだろうが」
ソードは動くたびに小さく音を立てる部屋を見回す
外装に負けず劣らずボロイ部屋だ。こんなところで炎の魔術を見せろという時点で普通考えられない
「分かった、基礎知識だけは教えてやる」
「えー、なんかダルそー、それよりマホー使わせてよ」
「ギュパ、遊びましょうよ、ソードさん」
言ってくる二人にソードはいったん俯き
「いいから……聞け」
ソードは言って顔を上げて二人を睨む
「はい×2」
その威圧感に二人はコクコクと首肯する
「さて、まずルシア、お前は魔法魔法とうるせぇが、この世に魔法が使える奴なんてのは存在しない」
ソードの講釈は意外な言葉から始まった。