女王の品定め
三塁側ダグアウトは押しかけた人々でごった返していた。
熱気溢れる室内に、少女の涼やかな声が響き渡る。
「まず全員この部屋から出なさい。ひとパーティーずつ順番に入室を許可するわ。質問はわたしからだけ。理解出来たなら速やかに退出して自分達で順番を決めるのよ」
背筋を伸ばして腕を組み、ひとりベンチの上に立ち上がって文字通り俺達を見下ろしながら。
美しき女王様は、卑しき我らに最初の命令を与えて下さったのだ。
「いやーゾクゾクしたねベンさん」
「カリスマだな。皆文句も言わず廊下に並んでやがる」
俺と相棒のベンさんは、きれいに並んだ列から離れて話し出す。
「髪の色はバラバラでもああいう所は日本人だよね。並び慣れしてるというか・・・」
「その辺の感覚は俺にはわからんな。それより俺達は並ばなくていいのか?」
「間違いなく『鑑定』持ちでしょ。そんなに時間も掛からないだろうし最後でいいよ」
「お前もそうだがなかなかの胆力だな」
「ベンさんに褒められるのは光栄だねー」
他愛もない話を続けている間に列は消化され、残り三組になったところで俺達は最後尾に並んだ。
俺達が入室すると、スラリと伸びた長い足を組んでベンチに座る女王様、奥にはキープされているのであろう二組のパーティーが目に入った。
流石に少し疲れた表情で、それでも凜としたよく通る声で女王は語りかける。
「あなた達で最後かしら?」
「ああ、じっくり視てくれ」
綺麗な碧色だった少女の瞳が金色に輝き、少し勝ち気な美しいその目が俺達を見透かしていく。
俺を見て少し驚き、傍らのベンさんに目を移したところで大きな目をさらに見開きながら声をかける。
「あなた本物?」
「・・・」
声をかけられたベンさんが美貌に当てられたのか大きな身体でもじもじしてるので、胆力には定評がある俺が代わりに答える。
「本人だよ」
「驚いたわ・・・」
「さて、俺達は貴女のお眼鏡には適ったかな?」
「・・・ええ、想定以上よ。あなた達のパーティーに入らせてもらうわ」
「ありがとう!!こんなに綺麗な人が入ってくれて嬉しいよ!!」
「これからよろしくね。でも貴方の容姿も並外れて美しいと思うわ」
「・・・」
今度は俺がもじもじしていると、少女は待機していた二組のパーティーに声をかける。
「お待たせして申し訳ないのだけれど、こちらのパーティーに加入することにしたわ。順当に勝ち上がればあなた達とは本戦で戦う事になるでしょう。その際は正々堂々よろしくね」
「結局見た目かよー」
「絶対負けない!!」
「本人って何の事だったんだろう・・・」
思い思いの捨て台詞を残して、四人組と三人組のパーティーが部屋を出て行く。四人組の方の小さな魔術師の女の子が安堵のため息を吐いているのが気に掛かった。というより、その大きな胸部に目を奪われた・・・。
「・・・」
美女のジト目は癖になりそうだからやめてください・・・。
「さて!!パーティールームに移動して改めて自己紹介と、今後について話し合おうか?」
「何?その軽薄そうな部屋は・・・」
「いやそれぞれのパーティーに割り振ってある作戦会議室みたいな所だよ!!ウェイウェイした場所じゃない!!んでベンさんはいつまで緊張してんの?」
「・・・も少し待って」