竜と会う 5
『西の果て』ではまずは情報の整理から始まった。
主についてと、それ以外の僕たちが知らない存在やコミュニケーションの取り方などについてだ。
<主について>
・会った主の正体は蛇が成長して巨大化したものであった
・主を「カミ」「タツ」「リュウ」「ヘビ」と呼ぶ者がいた
主からみたら「リュウ」も「ヘビ」も変わらないらしい
・主の生きてきた時間が長いことはわかったが、どれくらい長いのかは解析できていない
・活動期間は夏を中心として活動している
・棲んでいる穴があって、主が夜の間に移動可能の距離らしい
・2つ目のポケットがあり、冬に寝ているらしい
・主には子供がいる、まだ小さな蛇だ(僕たちが見たのは1体)
<主とコミュニケーションが取れる存在について>
・主と話せる者の中に「アイヌ」と自称するヒトがいた
・「カミ」とは命が大きいことらしい
生き物の大きさにも関係があるということだ
・オニがいるらしい
オニは種族というよりは命の在り方が異なると主は言う
・水のそばに住む生き物(カッパ?)みたいのは多分いる
<僕らのことについて>
・主の近くにある『気』は命があるということだ
・ヒロミちゃんには『気』を育てる可能性あり
どうやら話せる人間と話せない人間がいるらしい
(地元なのか)ムラから人が来るようだが、話せないようだ
主は人間社会のことをムラと呼んでいる可能性あり
人間は言葉を駆使して社会のコミュニケーションを作ったがかわりにカミと話せなくなった
主のような存在と会話が出来るのは小さいときの方が有利らしい
・主と話せるのはガット(能力なし)が最初だった
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「…そこなのよね」
ママが疑問に思ったのは僕が主とコミュニケーションをとれていたこと、タケルやヒロミちゃんではない僕が…というところらしい。
「ガット君に能力がないとは言わないけど、兆候が無かったというのは気になるところなのよ」
確かにその通りで、僕はタケルの能力を小さいときに見たので真似を試みたことはタケルも話していたが成功していない。ほかの能力もない…はずだ。
「タケル君に共感している時点でそういう感受性みたいなものがあったのかしら?」
ヒロミちゃんはそう言ってくれたけど、全く予想がつかない。
「話せたんだから良かったじゃん」
タケルは自然なことなのだろうと思っているようだ。
これ以上は考えてもすぐに答えが出るとは思えないので、明日の予定について話すことにした。
・明日は午前中に主に会う
・質問したいことは大きく3つ
1つ目、今後も会えるのか。その時期と方法は
2つ目、僕らが会ったことがない存在の手がかりについて
3つ目、能力について主が知っていることが他にあるか
・主の機嫌を損ねるようなことはしない
記録には残さない
今日のことは全員が大丈夫と合意するまで口外しない
主には誠意をもってこれらを伝える
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翌朝、僕たちはママの運転で主に会いに行った。
前日と同じ量の肉を買い、同じ場所へ向かった。
『気』はあったが主の姿が見当たらない…どこへ行ったのだろうか。
「『気』が残っているのだから、待ちましょう」
ヒロミちゃんがそう言うので正午までの2時間ほどを待つと、ようやく主がやってきた。
「お待ちしておりました。もし警戒させるようなことをしたいたら申し訳ありません」
僕がそう話すと、主は話しかけてきた。やはり僕たちに用心していたのかも知れない。
「森の者たちと話していた。お前たちが我に危害を加えるのではないかと危惧している者もおっての」
「ご懸念なさるのも仕方ないことですが、我々はあなたがご心配なさるようなことはしないと誓って参りました。どうか信用していただければ幸いです」
…なんだか丁寧すぎる気もするが、言葉は通じているようだ。
僕たちは昨夜話し合ったことを正直に主へ話した。そして主が他に望むことがあるかを質問したが、特に無いとのことだった。
また質問への答えは次の通りだ。
1つ目、今後も会えるのか。その時期と方法は
答)会えるが毎年ではない。この時期にいるだろう。
2つ目、僕らが会ったことがない存在の手がかりについて
答)それぞれ最後に会ってから時間が経っているから死んでいることだろう。
子供はいるかも知れない。
海を越えて行ったものもいる。お前たちが会えるとしたらオニだろう。
3つ目、能力について主が知っていることが他にあるか
答)能力というのは元々備わっているものなのでわからない。
お前たちは火を使い、海を渡り、遠くのものと話す。これも能力だ。
また主に会える希望があること、拒まれていないことに僕たちは喜んだ。
タケルがボソッとつぶやく。
「俺、オニに会ってみたい…探してみようかな…」
タケルがいつからオニに会うなんて考えていたんだろうか。
竜がいれば会いたい、オニがいれば会いたい。そんな感じなのだろう。
「ちょ、ちょっと待ってタケル。オニって危険じゃないのかな。」
止める気もないけれど、用心はしてくれよという気持ちで僕の声は少しだけ上ずった。
「大丈夫かと言われたらわかんないけど、いきなり敵対しないようなら会ってみたいよ」
のんびりした奴だな。ヒロミちゃんも「仕方ないわね」という表情だ。
「タケル、あてはあるのかい?主さんだってわからないって言ってるし」
「急がなきゃ何とかなるんじゃんないかな。動くとしても来年の夏以降だろうしさ。
山を探すよ。西側の山を山沿いに探せばいいと思う」
主は動じることもなかったが助言をしてくれた。
「オニは…森に棲む…彼らも挑発を好まぬ…欲もないからの…会えると良いな」
ご覧いただきありがとうございます。
日にちがあいてしましました。
話は出来ているのですが、肩が痛くてタイピングツラい…
だいぶ良くなりました。




