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オッサンでも地味に暮らしていても能力はある 3

オッサンの話は地味なのです。英雄もドラゴンも出てきません。

「今更なんだけどさ、ポケットっていつ頃見つけたの?」

僕はタケルに聞いてみた。


「初めて見つけたのは、小学一年生の頃かな」


()()の後だよな」


「もちろん、津波の前にはなにも感じることはなかったしね」


 ()()というのは、僕たちが小学校に入学する前にあった津波だ。

そのときタケルは津波を目の前にしていた。


どうやらタケルの()が誘発されたのは、この津波なんだろうと僕たちは考えている。


その理由は、似たような能力を持つ子供たちが()()()以降に被災地で沢山見つかったからだ。

__


 大災害から約10年、その子供たちもほとんどが中学生か高校生だ。

そして、タケルは子供の頃に地震と津波を目の当たりにしている。


これが能力発動の条件じゃないかと、僕たちは考えている。


 僕たちが考えている共通点は今のところ3つ


 ・小さな子供のときに怖い経験をした

 ・その経験の時に地震のような自然災害があった

 ・自分でそこから逃げようとか、助けようとした


 僕が知る限り、大災害で能力が発動したのは、すべて子供だったからだ。


今日の女の子も きっとなんらかの経験があったと思うけれど、大災害並みの経験とはなんだったんだろう。

__


 僕はなんとはなしに、タケルに聞いてみた


「その女の子、能力のこと気づいている感じだった?」


 タケルは相変わらず淡々と答える。


「どうだろうな。能力といってもほとんど役に立たないし、大人にバレたら厄介な思いをするだけさ」


 実際、知られている能力でなにかの役に立った事例はほとんどない。


ほとんどが念動力とポケットへの介入、ちょっとした念話といったところだろう。


さらに言えば、念動力のほとんどが小さなネジを2~3秒間、10センチほど浮かせておしまいだ。

そして、例外こそあるが念動力を出せる距離が1メートル程度だ。


 将来的に大災害以降の子供たちが心臓外科手術とかで活躍するかもしれないという理由から、医療部門会社などでは特別の奨学制度も設けたらしい。


医師になれなくても手術に参加できる資格も整備しようとしているような話も聞いたが、ほとんどが高校生や中学生なので息の長い話だ。


 そんな理由で、能力を持っていると知られた子供たちは国に管理されることになる。


思ったよりも制限は大きくて、通常の移動は管理地域(以前の都道府県)内とするとか、定期的に病院で検査されるとか…


解っていないことも多いて 僕ならきっと実験動物になったような気分になるだろう。


特別視される子供の身にもなってみろ、そう思う。

__


「そうそう、ヨーヨーを見つけたポケットの大きさってどうだった?」


僕は自称記録係として、聞き忘れたらいけないことを思い出した。


「うーん、もともとは大人の握りこぶし2つくらいかなと思っていたんだけど。

 新しくヨーヨーを見つけたらかな。その2倍くらいかな」


「大きさが変わったのかい?」


「よくわかならない。大きさが変わったと思えるポケットに記憶がないもん」


「そうだよね、タケルからそんな話は聞いたことないもんな」


 ポケットの大きさは、ほとんどが大人の握りこぶしで1つか2つらしい。

ちょっと大きくてもビールジョッキが2つ入るくらいだ、とタケルは言っていた。

__


 タケルが言うには、大きなポケットもあるらしい。

山の中の大きな岩の近くとか、古い神社の近くでみつけたことがあると言っていた。

ただ、ほとんどが小さなもので、介入できる人間なんてほとんどいないから約に立たないとも。


 今日の女の子も大きくなればポケットに介入も見ることも出来なくなるかもしれないらしい。

子供の時に持っていた能力が大人になれば弱くなるなんてのは、高周波の音が聞こえなくなっていくくらいに自然なことだと、タケルは言っている。


 以前、僕はタケルにこんなことを聞いてみた。


「ポケットの巨大なやつが迷宮なのかな」


 タケルの返事はこうだった。


「迷宮ってのは想像の産物だと俺は思う。ポケットはあちこちにあるけどほとんどが握りこぶしで数個だ。村はずれとかで見かけた大きなポケットも、子供が潜り込める小さなテントくらいの空間だしね。


だから、神隠しというのに遭遇した子供がいたというなら自然なことだと思うんだ。


だけど、遺跡のような中にポケットが存在すのはあり得ることだけど、巨大な空間に迷路や建造物があるというのは、ちょっと想像がつかないな。世界のどこかにあるなら俺も見てみたい…とは思うよ」


 タケルの話は僕の空想でワクワクする気持ち、中二スピリットをことごとく折る。ポキポキ折る。

だが、ポケットの話にしても思ったより地味というのは、むしろリアリティを感じてしまうのも事実だ。

ご覧いただきありがとうございます。この夜の話はあと少し続きます。


もし気に入ってくれたら読んでいただけると嬉しいです。

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