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ポケットの中にはポケットがひとつ 3

ポケットの話が続きます

 このタイミングなら僕が質問する権利もあろうというものだ。


「出るときに苦労とかするの?ポケットの中には何かあったの?」


「出るときに苦労はしなかったけど、最初はおっかなびっくりだからさ。半分だけ体入れて、戻ってみたり。杖みたいのだけポケットの外に出しておいたりしたよ。おっかないじゃん、帰れなくなったら。」


 ホント、タケルってこういうことを初めて話すときにも平然としているというか。ビールに口を付けて話を続ける。


…俺もポケットの中身は興味あったのね、おっかないけど。

というのも、外からポケットに介入できないポイントがあるって話したことあるよね。あ、ママ達には話してなかったね。


ポケットって色んな角度から介入できるんだけど、だいたい1か所くらいは介入できない場所があるの。

で、ちょっと大きめの…ビールジョッキで2つか3つくらいのポケットで、介入できないポイントの真裏から奥の方に手を伸ばすと、向こう側もプニプニというか柔らかな感じがして、俺の想像より奥まで手が入っていくことがあるの。


ポケットの向こう側にもう一つポケットがある感じがしたのよ。それが、大きなポケットに入ってみようかなと思った最初。


…タケル、君も充分中二スピリット持ってるじゃん。気が合う理由のひとつが解明されたよ。

__


 ママも目を輝かせている。どうやらママたちの知らない部分がそこにあるのだろう。

ヒロミちゃんも同様だ。どちらが質問をしたものか迷っているのか、辛抱できなかったのがヒロミちゃん。


「タケル君、ふたつ目のポケットに入ってみた?」


「入ってみた。ふたつ目のポケットって、ひとつ目のよりは小さいんだよ、俺が知る限りはね。

大人の俺でも入れるポケット…最初のポケットね、こいつはここら辺に5か所知ってる。その中でふたつ目のポケットに入れたのは1つだけ。それも這いつくばって潜り込む感じだったな」


「実はチルドレンも含めた私たちの記録にも事例はひとつしか無いのよ。ふたつ目のポケットの話、教えてくれる?」


「教えるっていうか、感じたこととかでいいんだろ?話すよ。で、俺の憶測のことはその後に話すよ」


責任重大になってきたな、タケル。ヒロミちゃんも目がキラキラしてる、これは恋の視線じゃないかと思ったけれど、ママの目もキラキラしてた…恋じゃないかもしれない。

__


「タケル君、体感的な話を聞きたいけど。ポケットの中って暗いの?それとポケットから外の世界はどう見えるの?」


「元々ポケットが見えるってのが医学でいう視覚的なものとは違うと思っているんだけど、ポケットの中は暗くは感じない。薄暗いバーの中…くらいには見渡せる感じかな。

で、出入り口みたいな部分があって、入るときは色んなところから入れるんだけど出口への通路は直線的なんだよ。ドアが半分くらい開いてる廊下みたいな。外は明るくて、音が聞こえた。景色はうっすらと見えたかな。夜だったら焚火でもしてなきゃ見えないかも知れない。」


「そう。チルドレンの記録と同じね。でもここから先は機構の記録にはないことなの。しいて言えば伝承レベルの話ってことになるわ」


…そんなに凄い話になっていたのか。僕はこの話を聞いていて命の危険がないか気になっている。

中二スピリットというのはいつでも危険と隣り合わせの冒険者なのだから。

__


タケルの話はふたつ目のポケットになった。しかしそれはとてもあっさりしたものだった。


「ふたつ目のポケットに入ったのは一か所だけ。それも洞窟探検みたいに這いつくばってね。

入った先は少し広かった。8畳間くらい?天井みたいのは部屋よりも低いかな。明るさはあった。そして、外の音は聞こえなくなった。音もしないし同じところにいても飽きちゃうね、寝てるだけならいいんだろうけど。そしてひとつ目のポケットに戻ってから外に出た」


…それだけ?もっと何かなかったのかい、タケルよ。きっとあるだろう?

無ければ僕の中二スピリットは不完全燃焼だよ。そう思っていたらタケルが続けた。


「俺がポケットに入ってから出るまで20分くらいかな。ただ、ふたつ目のポケットに入ったときは12時間経っていて、真夜中になっていた」


…いま時空の話になった?なったよね?中二スピリットは膨張して爆裂しかけたぞ。

ご覧いただきありがとうございます。

ポケットの話、佳境に向かうかも

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