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あの思い出は河童だったのかも 4

スイコ?サル?

 確かにここら辺では水虎スイコという表現をしている、そんなことを地元の友人に聞いたことがある。

でもちょっと話が飛躍しているような気がする。そこで僕はタケルに質問をしてみた。


「タケル、スイコの話は僕も聞いたことがある。ただ、スイコについては僕にも疑問がある。

 ひとつ目、スイコは神社などで祀られていることもあるけど、神様なのか。

 ふたつ目、日本の神話の上では虎というのは特段神格視される神獣というイメージじゃないと思うんだけど…これはどう思う?」


僕がこんな質問をしたのは初めてだったからか、質問されたタケルも少し驚いていた。


…ガット、すげーなお前。俺、そんなの知らなかったよ。じゃあ、素人というか土着的な視点で考えられることを俺なりに考えながら話すよ。たった今考えることだから、考えにほころびがあっても勘弁な。


 ひとつ目は神社に祀られているってことだよな。昔の神様ってのは、別に優しい神様ばかりじゃなくて、祟りの神様っての?それがおっかなくて祀るってのもあったと思う。エサやればおとなしい猛獣みたいな感じ?


 ふたつ目ね…これ、俺の直感というか昔は『虎』じゃなくて『狐』だったとしたら読み方もスイコだし神格化出来ていたんじゃない?

 サイズ的にはサルも狐も似たようなもんだろ。その後に背中に模様があるから虎にしたとか。虎ってかっこいいしさ、暴走族の『夜露死苦』みたいな、あれかも知れないと思ってる。


…ヒロミちゃん、ここで吹き出した。

__


「面白いわね、タケル君もガット君も。想像力は素晴らしいわ、『夜露死苦』はサイコー。そして、スイコについての見当は私の考えにとても近いと思う。そうなのよ、ここだけスイコと呼ばれているのは珍しいことよ。02037付近の津軽全域で水に足を取られる単語に河童の面影があることは、論拠としては薄いけど、興味深いことではあるわ。そして…」


ヒロミちゃんは少し間を置いて話した。


「今回の調査はスイコの痕跡を探すことなの」


ダイちゃん、素直に「ふへー、ホントすか」という感想。まあ竜の存在も信じてるからな。

更に、そこでとどまらないのがダイちゃんの知的探求心というやつだ。


「タケルさん、河童の可能性はわかったです、はい。で、竜はいるんですかね?竜。」


ダイちゃんの場合、マタギから竜の話を聞いて以来ターゲットは河童なんかじゃなくて竜だからな。


「ダイちゃん。そこなんだけど、河童がいる確率よりも竜がいる確率は低い。けど、いないとは思いたくない」


…タケル、今日はなんて強気なんだろう。というか普段は僕の中二スピリットを折り続ける君がこんなに妄想しているなんて、あらためて友人になって良かったよ。…でも、なんで?


「なんでですか?」


ダイちゃんも当然の疑問をタケルにぶつける。


「まず、竜神の伝説には竜のかたちがある。竜のかたちのない竜神伝説は少なくとも俺は知らない。

で、この地域というか津軽を広く見ると『虫送り』という祭りがあるよな。」


「あります。02037ではよく見かけると思います。五穀豊穣とか疫病退散ってやつですよね」


「あのかたちは『虫』か?『竜』か?」


「竜です」


「そうだよな、根拠は薄いけれど俺が<竜がいるかも知れない>と思う理由のひとつ目だ」


「うっすいっすねー。水割りか水かって言ったら限りなく水ってくらいに薄いっすよ、それ」


「まあそうだ。竜は滅多に現れない。河童より現れにくいと思うから、俺もこれ以上は強調しない」


ダイちゃん、少しジト目になってる。


「それだけじゃないんですよね」


「うん、浦島太郎のお話。最初に何を助ける?」


「亀っす」


「亀、話して背中に乗せて行くんだよな」


「そうっす」


「どこへ行く」


「竜宮城っす。…あ、ちょっとわかったかも」


「想像の通りだ。亀はチョコチョコ現れても竜宮の王は滅多に人前には現れない」


「でもそれ、亀っすよね」


「河童の甲羅は?」


「亀っす。あー、以前にタケルさんが見たサルが河童で、背中に模様のあるスイコだとしたら…」


「うん。それ以上の想像はしていないけど、俺は伝説レベルにしたら上出来かなと思ってるよ」


タケルにしては中二スピリットを全開してるな、そう思いながら僕もワクワクしている。

__


「1回目のデータが取れたみたいよ」


ヒロミちゃんが帰ってきたボートの方を見てそう言った。

ダイちゃんが率先してバッテリーを載せ替える作業に取り掛かるため、ボートに向かう。


「タケル君、君の考えていることって私たちが考えていることにかなり近い部分があるんだけど」


…なんでそんなことまで知っているの?そんな目でタケルに話しかけている。

ヒロミちゃん、タケルのことをまるでスパイか不審者のように見ているんじゃないか?


「ヒロミちゃんが探しているのは大きな岩とか、そんなものだろ?」


タケルの唐突な質問にヒロミちゃんは目を見開いた。


「その通りよ。タケル君たち、どこまで知っているの?」

ご覧いただきありがとうございます。

おとぎ話っすか…

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