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あの思い出は河童だったのかも 2

調査開始です

 幸いにして、次の土曜日は晴れていた。

雨さえ降らなければ調査は行われる予定だったが、晴れている方が動きやすい。


 ヒロミちゃんから「当日は長袖と長靴、帽子でお願いね~」と言われたので、ちょっと山菜でも採りに行くような格好で集まっている。陣頭指揮も運転もヒロミちゃんだ。

僕たちは荷物の積み込みから手伝ったけど、資材とかの保管場所はここでは言えない。


 到着したところは車で16キロも離れていない溜め池だった。車は溜め池の近くにある神社の土地に停めた。特に管理している人もいないし、マナーが悪いこともしないから勘弁してもらえるだろう。


 僕たちは機材を下ろして水辺に運ぶ。1メートルくらいのラジコンボート、それが今回の調査の主役らしい。あたし機械は苦手なんだよね…と、ヒロミちゃんがブツクサ言いながら操作パネルを扱いだす。

スタート地点、ボートの最後尾あたりに杭が打たれたけど…あれはなんなだろう。

2~3分してボートが動き出した。バッテリー駆動なのかな、音は静かだ。


「これって、なにを調べるものなんすか?」


「ここは人造の溜め池なんだけど、元々真ん中あたりに自然の池がったらしいのよ。

 その外周を調べて、出来たら池の底に何があるか調べたいの。まずは外周の探索よ」


ダイちゃんの質問に、簡潔に答えるヒロミちゃん。さすが先生だ。


 タケルはというと、神社の木の陰あたりにテーブルと椅子、そして飲み物をセッティングしている。

バーベキューをやろうとか大がかりなことではなくて、ちょっとピクニックレベルを装って地元の人が不穏に思ったときにごまかすためだ。こういうのを偽装というんだろうか。


 ボートはすぐに帰ってきた。GPSと水中に向けたソナーが設置していて、元々の池の外周はおおよその検討がついた様だ。ダイちゃん、キョトンとしてる。


「え、もう終わりすか?」


「これは最初の段階ね、ペースが良いのは確かよ。これから別の調査になるわ」


ヒロミちゃんは、進行具合に少し満足げな表情を見せて、黒いバッグのファスナーを開けた。

中から、防水機能のついたビデオカメラのようなものが出てきたが、まさに防水カメラだった。


「これ、どうするの?」


「水中の撮影なんだけど、ボートの機材を積み替えるから手伝って」


ヒロミちゃんの説明だと、GPSと水中の同期は一応終わったらしい。

ただGPSそのものは精度が出ないというか不正確なこともあるから、あとから道路の交差点や土地の境界を使って補正するみたいだ。


ダイちゃんとタケルはなんとなく理解しているみたいで、長い巻き尺のようなものを使って、ボートのスタート地点に打った杭から神社の壁とかの距離を測っている。

要領よくて助かるわー、と笑顔のヒロミちゃんだ。

ちょっとハスキーな声もそうだが、笑顔って子供のときと変わらないものなんだな。


ボートにカメラをセットして、バッテリーを積み替えた。カメラの操作とかは自動的にやるらしい。

池の底の面積によるけれど、3回くらいのバッテリー交換で今日の撮影は終わるということだ。


距離を測っていたタケルとダイちゃんが戻ってきて、位置の特定がこれで足りるかヒロミちゃんに確認している。

もう1か所くらい測量をお願いするかもだけど、飲み物もあることだし休憩しましょうとヒロミちゃんが提案して、早目の休憩となった。…僕、ここまで何もしてないかも。


「タケルさん、竜が見えるかもって本当すか?」


「可能性としては本当だ」


「もちろんタケルさんやガットさんのことは信用しているんですけど、ここで見えるんすか?」


「そこらへんの川なんかよりは確率が高いのも本当だ」


「ねえ、タケル君。あたしタケル君に情報をそんなに教えてないんだけど、どこまで知っているの?」


「うん、竜じゃないんだけど、ここで河童を見たかもしれないからな」


河童?カッパ?かっぱ?おい、初めて聞いたぞ、タケル。

僕の中二スピリットをざわつかせるワードとしてはど真ん中じゃないか、タケルよ。


「いつ見たんだ?それ聞いてないんだけど」


はた目から見たら焼きもちをやいている彼女じゃん、僕。


「いや、お前もいたし。見ただろ?」


「見てないよ…というか、いつの話だ?」


さすがに食いつかせてもらう。ダイちゃんもヒロミちゃんも興味あります!の表情だ。


「ほら、向こう側。向こう岸の方にキャンプ場みたいの見えるだろ?あそこ。

 あそこにお前と出かけてバーベキューやったの。何年前だっけ?」


…あ、バーベキュー。やった、やりました。15年くらい前?僕たち20代だった。

僕の会社の女性とタケルがたまたま知り合ったとかで、タケルが僕を呼んだんだった。


で、何人かいた女性の半数以上が僕と同じ会社だったもんだから、そこにタケル経由で呼ばれた僕はイベントがあることも知らなかったものだからちょっと複雑な気分だった。あのバーベキューか…

ご覧いただきありがとうございます。

ガット君、ちょっとフクザツ。かわいそう。

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