転校生は美少女で能力があったような 7
ヒロミちゃん、すげー
「ヒロミちゃん、素朴な疑問なんだけど…」
「なに?ガット君」
僕は思いついたことを口にしてみた。
1つ目、ヒロミちゃんが能力を持つ頃に自然災害に遭遇したか
2つ目、ヒロミちゃんの能力は「念動」以外にあるのか
3つ目、ヒロミちゃんの能力を伸ばしたトレーニングってどういうものか
そして、4つ目。
これが最大の謎なのだけれど、なんでチルドレンもいないようなこの町が転勤先なのか。
チルドレンは太平洋側に誕生した。これがほとんどといっても過言ではない。
確かに、ポケットに足を挟まれた女の子もいるのだろうけれど、でもチルドレンと言えば太平洋側が共通認識だ。
ヒロミちゃんは、ちょっと思い出すような、考えを整理するような素振りの後に話してくれた
…じゃあ、順番に言うわね。あたしは幼稚園のときに津波を見たの、地震は日本海側だったわ。
海沿いの町に住んでいて、おばあちゃんと買い物の帰りだったかな。
地震が来たからすぐに高台の方に逃げて、おばあちゃんが抱きしめていてくれたのを憶えているの。
津波は段々に繰り返してくるのよね、大きな波が来ては帰っていくんだけど、最初は波が大きくなっていくのに気づかなかったの。でも近くにある砂浜の公園…防砂林みたいな松が生えているんだけど、普段はジュース飲んだりおやつを食べるところまで来たから、波がすごいことになっているってのがわかったの。
そのときに『怖い!』って思ったからそれがきっかけかな…今になるとそう思うわ。
なぜか近くに同じくらいの年の子供たちが沢山いたのね。遠足かしら。津波は段々に繰り返してくるのよね、一人の女の子がシクシク泣いていて、子供たちが『戻ってきて~』みたいなことを叫んでるのよ。
おばあちゃんが「リボンが流されたのかもね、ほら」って指さして、赤いリボンが波に揺れていて。
タケルの口から「うは」って変な声が出た。
…あたしにとってもリボンは大切なものだから、戻ってきて~とは思うのね。
で、声に出せなかったけど、手をぎゅっと握って、リボンを見つめて、心の中で「戻ってきて、赤いリボン!」って思ってたの。思うとスススって帰ってくるような気がして、やった!って思うと力が抜けるのね、そうするとリボンは遅くなるの。
で、沖の方に吸い寄せられるときも「あー、だめだめ。いかないで」って思うけど、その時はこっちには来ないものなのよ。でも、こっちに来る時だけはスススス…なのね。
おばあちゃんが「おうちに帰ろう」って言ったから帰ったけど、帰るまでリボンのことを見てた。
それが最初かも…そう思ってるわ。
1つ目の話が爆弾過ぎて、2つ目の話に入る前にタケルが口をはさんだ。
「多分…その時の子供たちの中に、俺もいたと思う」
「ええぇー、そうだったの?タケル君もその時に能力を持ったクチなのかもね」
「そう思ってるんだけど、まさかヒロミちゃんもか」
「幼稚園行ける子ってうらやましかったの。あたしは体が弱くて通えなかったんだもん。
能力には相乗効果が出ることがあるから、リボンが加速されたのも解るわ。そっかぁ…へぇー」
ヒロミちゃん、明るくなったな…
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…2つ目の質問は、『他に能力があるか』だったわね。私は無いわ。
基本的に能力って念動とか色々な種類があると言われているけど、近い能力と遠い能力があるの。
手でいえばコップを握る能力とお箸を使うのは近いんだけど、歌をうたう能力は違う、そんな感じね。
「複数の能力を持つ人はいるの?」
僕の質問に、ヒロミちゃんは
「いるけれど、限られているわ。チルドレンでハッキリとして能力として複数持っている子は5人もいないと思う」
タケルは黙っている。
…3つ目の質問はどういうトレーニングで能力を伸ばしたか、よね。
これは『先生』の教え方が良かったのが大きいけれど、能力ってコントロールできないまま使うと効率的に発揮できないし、疲れちゃうの。
だからタイミングよく使うクセをつけて、それからちょっとずつ重いものを動かすようなことが、トレーニングといえばトレーニングと言えるわね。
4つ目のことは、言えないこともあるからごめんね。
チルドレンは全国に避難しているのは今も変わらないの。この町にもチルドレンはいるけど、それは少し。ただ、この02037エリアに広くいるチルドレンたちにアクセスするには地理的にここがベストなのは確かなの。ここは02037…津軽地域は、ちょっと特殊な地区なのよ。
今日、ここで言えることはこれくらいかな。内部資料を読んで、もう少し話せることがあるなら改めて教えるわね。あと機構のことはほとんど言えないけど、きっと話せる部分もあると思うわ。
そう言ってヒロミちゃんはビールを一口飲んだ。
ご覧いただきありがとうございます。
ヒロミちゃんとタケル、偶然過ぎません?
でも田舎って、振り返ると知り合いがいるくらいに人口が少ないものなんです。




