転校生は美少女で能力があったような 6
ヒロミちゃんの能力って
「そんな大事な話、ここでしても大丈夫なの?」
タケルはちょっと心配そうな顔でヒロミちゃんに尋ねた。
「だって、あの話しちゃったんでしょ?遠足のときの。なら問題ないわ」
ヒロミちゃん、こんなにサバサバしてたっけ?
「タケル君、今日まで誰にも話さなかったんでしょ?きっと。ありがとうね」
ヒロミスマイル健在!僕の中二スピリットに着火して炎が噴き出した。
「ねえ、ガット君とタケル君はこの町で仕事してるの?」
「俺は、まあ適当にね。オヤジの店の跡継ぎだよ」
「僕は工場で事務の仕事をしているんだ」
「へえ、頑張ってるんだね。仕事している男の人ってかっこいいよ」
「普通は仕事してるんじゃねえの?」
「うーん、あたしの仕事って、仕事というか任務というか。時間が決まってないのよ。
だから、朝から仕事をしている人ってかっこいいと思う時があるのかな」
ママがカウンターの、少し離れたところで小さくフフ…と笑っている。
「ねえ、ヒロミちゃん。俺のミニカーのこと憶えてる?」
「うん、タケル君は自分の能力のことを遠足の後に見せてくれたんだよね。
あたしは今も秘密にしているよ。タケル君に迷惑がかからないようにね」
「…やっぱりゴメンね。ガットは信頼できる奴だから信用してほしい」
タケルは改めてヒロミちゃんに詫びて、僕のこともフォローしてくれた。
「ぼ、僕も秘密は守るよ。約束する」
「そうね、信用するわ。かわりに今夜の飲み代はおごってね」
もちろんだとも、とタケルは微笑んだ。
ママが、この子たちは信用していいわよ、とフォローしてくれたのは助かった。
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「実は、ヒロミちゃんに教えて欲しいことがあったんだけど」
タケルは少しだけ申し訳なさそうに話しだした。
「なにかしら?なんでも聞いてみて」
「ジャンプのことなんだけどさ」
「うん、前よりは説明できるかも知れないわよ」
ここで詳しいことは書けないのだけれど、それは僕がタケルやヒロミちゃんのような感覚を持っていないために表現できないのが一番の理由だ。
それと、タケルが以前から話してくれないような部分のことは割愛させてもらう。
…ヒロミちゃんとタケルの能力の話をかいつまんで言うと、念動力というのは「加速が出来るかどうか」にかかっているらしい。
ヒロミちゃんがジャンプしていたのは、上にジャンプした時にさらに判りやすい方向に加速したかったから…らしい。
タケルのミニカーも加速で方向を制御している…らしい。
らしい、というのは物理的な加速とは似ているようでちょっと違う、という感覚的な部分があるんだそうだ。
それが解明出来たらエネルギー問題も改善するようなことをヒロミちゃんが言っていた。
僕にはよくわからない世界の話題だった。
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ヒロミちゃんは自分の体を加速出来たのは、ピョンピョン跳ねているときにヒロミちゃんの跳ね方から能力に気が付いて教えてくれた『先生』がいたんだそうで、先生も加速はできたけどヒロミちゃんのように数キロのレベルで操作はできなかったそうだ。
タケルがミニカーとか鉄をコントロール出来るのは、どちらかというとありふれた能力で、生命体を動かす方が珍しいとのことだ。ヒロミちゃんの能力は、重量のクラスと生命体の念動という2点で特別らしい。
お姉さんがそのことに気が付いたけれど、能力のことは隠していたそうだ。大災害のときに、ヒロミちゃんの能力もひょんなことから判明してしまい、管理している省庁が近かったという理由で現在の仕事に変わったと聞いた。
「じゃあさ、その先生がいなかったら能力って伸びなかったかも知れないの?」
僕はチルドレンの能力が伸びるような話を聞いたことがなかったから、疑問をぶつけてみた。
「能力って、結構すぐ頭打ちになるみたい。チルドレンを訓練しても、ちょっとだけは伸びるんだけどね。ほとんどは伸びないのよ」
「伸びるチルドレンも少数ながらいるってことなんだね、スッキリしたよ。それで、伸びる子供に特徴はあるのかな。」
「これもはっきり解明されていないんだけど、普段からコンプレックスがある子供が伸びる傾向はあるみたい」
「あー、それはそうかも。俺もコンプレックスは人並み以上だったもんな」
「あたしもよ…。それ、秘密にしておいた方が良いわよ。機構が手を出してくるかもしれないから」
「機構ってなに?」
「あたしたちの組織、教育訓練機関の上位組織みたいなところ。省庁と直結しているわ」
…見知らぬ単語に僕の中二スピリットの炎は、いま青く燃え上がった。
ご覧いただきありがとうございます。
ヒロミちゃん、スパイじゃないでしょうね




